普通なら慌て焦りまくるだろうが、うちのカミさんは落ち着いて応対していた。
電話が鳴ったのは夕方だった。カミさんが出た。僕は同じ部屋にいて、僕担当の大掃除の一部を遂行していた。
2~3分して電話を切って、僕のところに来た。
「今、振込み詐欺の電話があった」
「えっ!!!! マジ?」
うん、と頷いて、「よかった、昨日友達の話しっかり聞いといて」と言って、話を続けた。
「○○が、携帯電話を失くしちゃったので新しいのを買った、って言うの。新しい番号は…………だから、控えといてって。で、声の調子が違うので、どうしたの風邪引いたの? って言ったら、わざとらしく、ゴホンゴホンとやって、またかけるから、と言って切った」
「ほんとに長男の○○と言ったの?」
「うん。笑っちゃうよ。全然声が違うんだもん」
「でも、お金は要求されなかったんだろ?」
「うん、でもあれはね、後でまたかかって来るのよ。友達が全く同じ状況で、後で金を要求してきたっていうから」
で、話を終えて、カミさんが長男に電話した。やはり、どうしたの? 僕はここだよ、ってキョトンとしていたらしい。
ついにうちにも来た。
世間並みになったか、と感心してばかりはいられない。