「最近、食事の前に僕は、必ず前菜を多く摂るようにしてるんだ」とアニキンに話した。すると彼の股下が、ブフォっと鳴った。これで鼻が曲がってしまった彼は、僕に訊いた。
「何で?」
「血圧。野菜を食事の前に食べるとすごく下がるんだ」
彼は、僕の話した単語を正しい漢字に置き換えらなかったようだ。ブツブツと意味不明の言葉を発し始めた。
「おけつの圧力に興味があるのかい?」
「いやいや、おけつの圧力でなくて、血の圧力!」
「おけつの圧力は、昔は尻圧といった。尻と言えば、なんといっても女の尻だ。尻を見ているだけで、ホラ! 分かるだろ、あれだよ、アレ!」グフフと彼は笑う。
僕の視線はアニキンの口元にいった。そこで僕は固まった。抜け落ちた歯は既になく、歯茎のみが僕の方を見ている。歯茎に見つめられている奇妙な光景がそこにあった!^ ^;;
しかし前向きな僕は、これを芸術だと捉えた。
「で、尻の圧力は、どうなんだ? ふんが、、、ふんが、、、フンフン」
「菜食主義に変えてからは、徐々に克服しつつある。数か月前までは、上は140~150、下は92~93。でも今朝は132と83。昨夜は120、77と、かなりいい」僕が言うと、彼は嘲るように笑った。「それくらいだったら、全然大丈夫アルヨ。ソンナ気ニスル数値ジャナイアルネ」途中から中国調の発音に変わっていった。
相変わらず、血圧をおしりの圧力と勘違いしているのか、ボケでそう言っているのか、この人に限って理解するのは非常に難しい。
食事中だというのに彼は、しきりに下半身の話に僕を引きずりこもうとする。
ま、彼のことはこの辺にしておいて、しかし、この店は旨かった。たった一つの心残りは、アニキンが奢ってくれなかったことだ。あ、、、、、そうだ、彼から寿司屋専用の高級海苔をもらったんだ。だから許してあげよう。^^
食事後に乗った狭いエレベーターには、たくさんの人が乗っていた。アニキンは「いやぁ、こういった混み合った密室で、便秘気味の僕が屁をこくとどうなるだろう。試してみたい。芳しいだろうな!!」と声を大に、はしゃいだ。これには流石の僕も、人差し指を口の前に立てた。周囲の人たちはシーンとし眉根を寄せる。
ところであの日、店の看板の写真など君は撮らなかったよね。あとで、看板写真を撮りに行ったのか? うむ。うむ。ホントに君は、豆だ^^
でも、ここは旨かった。ただ一つ! 心残りは君が奢ってくれなかったことだ。
都立大学パーシモンホールのミュージカル「ミス・サイゴン」はどうだった?
え? 痔なん坊も行きたかったんだって? 今度僕が主演の時にあげよう^^