「号外。号外。号外」
この場には、似あいそうもないオバサンの弱々しい声が聞こえてきた。そこには、まるで緊急性というものが存在していない。
とりあえず僕は、いつでも受け取れるよう片手を空けて歩いた。だんだん近づいてくる。朝日新聞のようだった。何だろう? 大きな活字が見えたが、字も内容もわからない。
二人のオバサンが僕の先を歩いていた。彼女らも僕と同じ気持ちだったのだろう、それを受け取った。僕もその流れの中でもらうつもりだったのに、僕はタイミングを逸した。
立ち停まって貰うのもどこか憚れ思い留まってしまった。仕方なく、ゆっくり歩く。
オバサンたち二人が、僕と並んで歩くような格好になった。二人はその号外を覗き込んでいる。
「何なに?」
「……」興味があった僕は、脇からそれを盗み見る。脂という字が見えた。すると二人は停まってしまった。僕はそのまま進んだ。
次の瞬間、僕の背中にオバサンたちの怒ったような声が突き刺さってきた。
「なによこれ! ちょっと」
二人は食い入るようにして号外を見つめている。
「何かと思ったらナーニこれ。広告じゃない。真面目に見たのに!」
「ゴミ箱行きね」
「違うわ。ブタ箱行きよ」二人で、それをけなしあった。o(^-^)o
思わず僕は、ほとばしってくる笑いを必死に噛み殺した。
横断歩道を渡った。渡りきった所にその号外が落ちていた。『脂肪酸が……。太った人に朗報!』
……!
僕にくれなかった訳が解った。人を選別してたような号外配りのオバサンの様子を思い出した。
でも、号外と銘打った広告! ふむふむ。
うちも、そういう広告を作るか? 起死回生! 会社再生! 会社復活! 儲かりすぎて、何年も行ってない慰安旅行、、、、、、、、、、は、海外?^^!! ぐふふふ、、、、、、。。^^
でも、いいのか? そういう、、、の、、で、、も、、、、、?