田中雄二の「映画の王様」

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『滝を見にいく』

2014-12-02 19:30:48 | 新作映画を見てみた

“沖田マジック”の術中に心地良くはまる。やはり沖田修一はただ者ではない

 『南極料理人』(09)『キツツキと雨』(12)と、僻地での群像劇を得意とする沖田修一監督の新作。今回は“幻の滝”を見に行くツアーに参加した7人のおばちゃんが、山中で迷子になってサバイバル生活を余儀なくされる様子をコミカルに描く。

 素人を含むほぼ無名の7人は全員オーディションで選び、妙高高原でオールロケを敢行している。それ故、初めはテレビの再現ドラマを見るような印象を受け、本当にこれで劇映画として成立するのかという疑問を抱かされる。

 ところが、最初はただ騒々しいだけに見えたおばちゃんたちが、その素性や本性が明らかになるに連れて、どんどん人間味を感じさせるようになる。

 そして、いつの間にか誰かはぐれていやしないかと人数を数えている自分に気付き、苦笑いした時はもう遅い。すでに“沖田マジック”の術中にはまっているのだ。しまいには、おばちゃんたちの輪の中に入って一緒に楽しんでいる自分を見つけることになる。

 今回も僻地での群像劇としてきちんと成立させていたのはお見事。いつもは長い沖田作品だが今回は88分でまとめた点も評価できる。やはり沖田修一はただ者ではなかった。

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