『名画投球術』No.13 いい女シリーズ3「かわいい女を観てみたい」シャーリー・マクレーン
「いい女シリーズ」第3回は、“かわいい女”=シャーリー・マクレーン。アメリカ映画の愛すべきヒロインのパターン(これは男の勝手な理想像なのかもしれないが…)に、“黄金の心を持った娼婦”というのがある。笑顔の時も泣いているように見える独特のファニーフェイスが魅力的、気立てはいいのになぜか男運に恵まれない、ツキのないヒロインを数多く演じたシャーリーはまさにその典型だ。
男から見るとかわいらしくて仕方ないと、いった感じなのだが、本人は「私に回ってくるのはたいてい娼婦みたいな役だった」と、ステレオタイプに陥ることを嫌い、後にさまざまな役柄にチャレンジした。今回はシャーリーのかわいらしさ真っ盛りの、若き日の3本を紹介する。
MVP=最高殊勲選手賞 『アパートの鍵貸します(1960・米)』
舞台はニューヨーク。出世のために自分のアパートの部屋を上司の秘密の情事の場に提供しているサラリーマンのバクスター(ジャック・レモン)。だが彼がひそかに思いを寄せるエレベーターガールのフラン(シャーリー)が、上司(フレッド・マクマレー)との不倫に疲れ、バクスターの部屋で自殺未遂を起こしたことから、彼は人生を見つめ直していく。
ご存じ、ビリー・ワイルダー監督+レモン+シャーリーのトリオによるシニカルではあるが、心温まるヒューマンコメディーの最高傑作。この映画のかわいらしいショートヘアの、しかし不幸なシャーリーを見て、心動かされた男性諸氏は数知れない。よく考えたらひどい話なのだが、ワイルダーの巧みな話術と二人の好演が決してそうは感じさせないばかりか、観客がこれほどハッピーエンドを望んだ映画も珍しい。
ゴールドグラブ賞 『あなただけ今晩は(1963・米)』
舞台はパリ。気のいい娼婦のイルマ(シャーリー)は、実直な巡査バート(ジャック・レモン)にほだされてヒモに採用する。だがバートは、イルマが客との交渉を続けることに耐えられず、借金をして変装して富豪の英国紳士X卿に成りすまし、客として彼女の独占を図るが…。
『アパートの鍵貸します』に続く、名トリオによるアッと驚く展開をみせる爆笑コメディー。この映画のシャーリーはまさに“黄金の心を持った娼婦”だ。客の英国紳士X氏に成りすましたバートが、そのX氏(つまり自分自身)に嫉妬するなどはまさに落語の世界だが、そう思わせる彼女のかわいらしさが、この荒唐無稽な話に説得力を持たせている。『アパート~』と対で見てみることをお勧めする。
ロベルト・クレメンテ=チャリティ賞 『スイート・チャリティ(1969・米)』
ニューヨークのダンサー、チャリティ・ホープ(マクレーン)は気のいい女だが、男という男にことごとくだまされ続ける日々。けれどもみんな許してしまうことから、ついたあだ名は“スイート・チャリティ=甘い施し”。それでも懲りずに明日の愛の夢を見続ける彼女の姿を描いたミュージカル劇。
オリジナルはフェデリコ・フェリーニ監督の『カビリアの夜』(1957)。ジュリエッタ・マシーナが演じた無垢な魂を持ったヒロイン像を、シャーリーが歌と踊りを交えて新たに構築した。“泣くのは嫌だ笑っちゃおう”とばかりに、泣き顔にやがてほほ笑みが戻ってくるかわいらしさは、まさにシャーリーの面目躍如。監督はミュージカルの鬼才ボブ・フォッシー。
TV fan Webに連載中の
『ほぼ週刊映画コラム』
今週は
キャプテン妻夫木、エース亀梨…野球が人々に希望を与える
『バンクーバーの朝日』
名台詞は↓
「また野球しような」
byレジー笠原(妻夫木聡)
詳細はこちら↓
http://tvfan.kyodo.co.jp/feature-interview/column/week-movie-c/982680
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