『パプーシャの黒い瞳』のヨアンナ・コス=クラウゼ監督とこんな話をした。
「ポーランド映画界はアンジェイ・ワイダ、イェジー・カワレロウィッチ、ロマン・ポランスキー、クシシュトフ・キェシロフスキ、女性ではアニエスカ・ホランド…と、世界的な名匠を数多く生み出しています。その理由はどこにあるとお考えですか」
すると彼女はこう答えた。
「一番の理由は教育だと思います。ポーランドには国立の映画大学(ウッチ)があり、そこで教えていた人たちが素晴らしかったのです。彼らは皆二十歳ぐらいの時に戦争を経験したので、若者でありながらとても成熟していました。そのことがポーランド映画の知的、心理的な部分に影響を与え、高水準な映画を生み出すことにつながったのだと思います」
「もう一つは、映画が作られた第二次大戦後の時代や政治的な背景が大きく影響しています。あの時代は物事に対して正直に発言することがなかなか難しかったので、監督たちは検閲の目をかいくぐりながら、いかに真実を物語るかということを考え、その中から、いい意味での映画的な狡猾さやテクニックを身に付けていったのです」
なるほど。