田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『キャッツ』

2020-01-08 14:00:52 | 新作映画を見てみた

 ブロードウェイや劇団四季の公演でも有名な、T・S・エリオット原作、アンドリュー・ロイド・ウェバー作曲の舞台劇を映画化。監督はトム・フーパーで、『レ・ミゼラブル』(12)以来2度目のミュージカル映画の演出を担当した。

 主人公のヴィクトリア役にロンドンロイヤル・バレエのフランチェスカ・ヘイワード、そのほか、大ベテランのジュディ・デンチ、イアン・マッケラン、喜劇畑のジェイソン・デルーロ、レベル・ウィルソン、個性派イドリス・エルバ、ジェームズ・コーデン、そしてジェニファー・ハドソン、テイラー・スウィフトらが“猫”を演じる。

 ロンドンの裏町を舞台に、ジェリクルムーンの夜に、猫たちが集まって天井に上る1匹を選ぶ様子が描かれるのだが、ストーリーらしきものはなく、何だか各キャラクターの顔見世興行を見せられたような気になる。

 そして、擬人化された猫たちの珍妙なリアルさに違和感を覚えて思わず失笑してしまった。デンチなど、まるで『オズの魔法使』(39)の弱虫ライオンのように見える。「メモリー」をはじめとする楽曲、キャストの歌とダンス(猫の動き)などは見事なのだろうが、全体的には、珍妙なものとしか思えなかった。

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『名監督メモリアル』(飯島正)

2020-01-08 10:50:43 | ブックレビュー
 主に70年代に、飯島正さんが新聞や岩波ホール向けに書いた監督に関する文章を一冊にまとめたもの。
 
 
 登場するのは、アレクサンダー・コルダ、溝口健二、アルフレッド・ヒッチコック、伊丹万作、黒澤明、小津安二郎、木下惠介、フェデリコ・フェリーニ、ジュリアン・デュビビエ、五所平之助、小林正樹、カール・ドライヤー、ジャン・リュック・ゴダール、稲垣浩、内田吐夢、成瀬巳喜男、イングマール・ベルイマン、リュミエール兄弟、大島渚、ピーター・ブルック、ウィリアム・ワイラー、ジョルジュ・メリエス、ルネ・クレール、ジャン・コクトー、ヤンチョー・ミクローシュ、ルイス・ブニュエル、豊田四郎、ロベール・ブレッソン、ラノーディ・ラースロー、ジャン・ルノアール、ルキノ・ビスコンティ、アラン・レネ、フランソワ・トリュフォー、鈴木清順、衣笠貞之助。
 
 またも大いに勉強になったが、あとがきに書かれたこんな一文に共感した。「~当時の意見が大切なので、いま考えることを書きたすのは嘘になる危険が多い。~現在それを書こうとしても、これ以上のものは書けない。やはり「当時」がなければ書けないのだ」
 
 もちろん、自分は飯島さんのような大家ではないが、同じようなことは感じるので、過去に書いた稚拙な文章を、“その時の記録”としてここに載せたりしているのだ。
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『地獄の黙示録』

2020-01-08 09:09:43 | 映画いろいろ
『地獄の黙示録』(79)(1980.5.6.渋谷文化)
「恐怖だ。恐怖だ。地獄の恐怖だ」(カーツ大佐)

  
 
 ベトナム戦争下、ウィラード大尉(マーティン・シーン)は、軍から脱走し、ジャングルに王国を築きあげたカーツ大佐(マーロン・ブランド)の暗殺を命じられる。カーツの王国を目指し、川をさかのぼる中、ウィラードは戦争の狂気や矛盾を目の当たりにする。フランシス・フォード・コッポラ監督が私財を投じ、圧倒的なスケールと迫力で描いた戦争映画。
 
 ドアーズの「ジ・エンド」が流れ、やがてヘリコプターの音が重なっていくオープニングの異様な雰囲気から、一気に引き込まれる。その後は、次々にベトナムでの地獄図が映される。アメリカ人のコッポラが、自国の犯した行状を、客観的に捉えて描き切っている。
 
 中でも圧巻は、海岸をサーフィン場にしようとして、ワーグナーの「ワルキューレの騎行」に乗ってナパーム弾で攻撃するシーンや、罪もないベトナム人が乗った船を攻撃するシーンだ。
 
 ところが、ウィラードがカーツの王国にたどり着いてからは、雰囲気が一変し、コッポラの思考のみが映像化されたようで、前半に見られた鋭さが失われてしまったのが残念だった。
 
 マーロン・ブランド、マーティン・シーン、ロバート・デュバルが怪演を披露する。戦争の地獄図を見せられるのだが、それに反して、夜営の場面やラストの宮殿の爆発シーンの美しい映像も印象に残る。題材やスケールの大きさもさることながら、描かれた内容も他の戦争映画とは全く異質のもので、支離滅裂ではあるが、一見の価値はある映画だと言える。
 
 そんなこの映画のことが、もっと深く知りたくなって、終映後、シナリオ採録とコッポラへの一問一答が載っていた「シネフロント」を買ってしまった。
 
  
 
 
【今の一言】2月28日からファイナルカット版が公開される。去年の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト』公開の時も、ほぼ同時にテレビ放映されたが、こうしたタイミングでのテレビ放映は、かえって上映の足を引っ張ることになりはしないか。
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