田中雄二の「映画の王様」

映画のことなら何でも書く

『イーディ、83歳はじめての山登り』

2020-01-27 12:48:43 | 新作映画を見てみた

『イーディ、83歳はじめての山登り』(17)(柏キネマ旬報シアター)

 イギリスに住む83歳の主婦イーディ(シーラ・ハンコック)が、昔、父と登るはずだったスコットランドのスイルベン山への登頂を目指す姿を描く。

 山好きの妻に誘われて見た。そして、こちらの勝手な思い込みだが、登山を通して、老人の夢の実現と頑張りを描いた感動作を予想していたら、これが大間違いだった。

 主人公のイーディは、ひたすら亡くなった夫を恨み、自分は被害者だったと一方的に主張するわがままで頑固な老人。しかも、自分の夢のために周囲に迷惑をかけながら、他人の親切や助言には耳を貸そうとはしない。それに加えて、まだ女としての生々しさも感じさせる、という何とも厄介なキャラクター。彼女を見ていると、腹が立つやら、気分は悪くなるわで本当に困った。

 もっと彼女の人間的な魅力や心の変化を見せろ、とまでは言わないが、もう少しキャラクターの設定や描き方を考えるべきではなかったのかと思う。例えば『ドライビング Miss デイジー』(89)のように。

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『スタンド・バイ・ミー』

2020-01-27 10:00:03 | 映画いろいろ

『スタンド・バイ・ミー』(86)(1987.4.29.丸の内ピカデリー2)

 

 珍しく、スティーブン・キングの原作を先に読んでしまっていた。そして、これまでの彼とは一味違った世界に驚くとともに、意外にも感動させられもした。それ故、見る前は、原作のイメージを壊さないでほしいという願いと、原作の良さを映像で表現してほしいという思いが相半ばして、複雑な心境だった。

 映画を見終わった今は、そんな思いはどこかに吹っ飛んでしまっている。ほとんど完璧に原作の良さを生かし切っていたし、主役の四人の少年たち(ウィル・ウィートン、リバー・フェニックス、コリー・フェルドマン、ジェリー・オコンネル)が全く違和感を抱かせないばかりか、彼ら以外のイメージが浮かんでこなくなるほど、登場人物に成り切っていたからだ。その点では、原作を超えていたとも言えるだろう。

 彼らの存在がなければ、この映画や原作の持つ、過ぎ去った少年時代への郷愁というテーマを表現することはできなかっただろうし、12歳にしてすでに心に傷を持った少年たちの姿が、単に暗いものとして映ってしまったかもしれないからだ。

 そして、少年期だけが持つ二度と戻らない“夏の日”を描いたこの映画を見ていると、現代は、描かれた1950年代後半以上に、複雑な社会であるだけに、せめて少年時代への郷愁が持つ甘さ、切なさ、苦さなどは、時代が変わっても不変であってほしいと願う、自分を含めた大人たちが、この映画のヒットを陰で支えているのかもしれないと思った。

 ベン・E・キングが歌うテーマ曲「スタント・バイ・ミー」が心にしみる。この曲を初めて知ったのはジョン・レノンが歌ったのを聴いた時だった。ジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』(73)もそうだが、この手のアメリカン・ノスタルジー映画には、ちゃんとそれに合った音楽が用意でき、映画のテーマをさらに強める効果があるのは、うらやましい限りだ。

 

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