『ニューヨーク東8番街の奇跡』(87)(1987.12.28.日本劇場) テレビで久しぶりに再見した。
再開発の波が押し寄せるニューヨーク。古いアパートの住人のフランク(ヒューム・クローニン)たちは、立ち退き問題に悩まされていた。ところがある日、UFOのような生命体が現れ、アパートの屋上で暮らし始める。 原題の「Batteries not Included」は「バッテリー(電池)は含まれません」という電気製品の注意書きをもじったものらしい。
今年のラストショーはまたしても“スピルバーグ印”の映画(監督はマシュー・ロビンス)になった。それにしても、最近のアンブリンの多作ぶりには驚くばかりだ。そして、それぞれの映画の奥には、スピルバーグが大好きなディズニーやロッド・サーリングの影響が伺えるのだが、今回はもろにフランク・キャプラのタッチだった。
もともとスピルバーグの映画は、心温まるキャプラ魂を、SFXを使って現代によみがえらせたと言えなくもないのだが、この映画などはその最たるものだろう。
最近、日本でも深刻化している地上げ屋の横行が、ニューヨークでも起きていることには少々驚いたが、地上げ屋という目新しい存在を、かつての街のボスや悪徳政治家に置き換えれば、それに対抗する善良な人々と、奇跡が起きるハッピーエンドは、もろにキャプラのタッチである。まあ、そこに宇宙人を介入させるところが現代風であり、スピルバーグ印映画の真骨頂だとも言えるだろう。
さて、この映画をピリッとしめるのは、ジェシカ・タンディ、ヒューム・クローニンという老名優夫婦の圧倒的な存在感であり、ロビンス監督が『コクーン』(85)の二番煎じにしなかったところが、また見事だった。
【今の一言】なかなかいい味を出していたマシュー・ロビンスだが、残念ながらこの後はあまり活躍しなかった。スピルバーグは『レディ・プレイヤー1』のインタビューで「80年代はイノセントで楽観的な時代だった」と語っていたが、今改めて『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズやこの映画を見ると、なるほどと思う。
【コラム】「1980年代が再びブームに スピルバーグの映画から」
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/85e114aac84e6082e0b867b9fbf80cd5
【インタビュー】『レディ・プレイヤー1』スティーブン・スピルバーグ監督
https://blog.goo.ne.jp/tanar61/e/0252d427482eb27bb9e501c5b7b8acce