田中雄二の「映画の王様」

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『パンク侍、斬られて候』

2018-06-07 09:00:09 | 新作映画を見てみた
久しぶりの目腐れ、超カルト映画



 江戸時代、ある藩に紛れ込んだ浪人・掛十之進(綾野剛)が、自らまいた種のせいで騒動に巻き込まれる。藩内の人々、人間の言葉を話す猿、「腹ふり党」なる新興宗教の教祖…。現代語と時代劇風の言葉を交えたセリフを語る奇抜なキャラクターが登場し、時代劇の形を借りた摩訶不思議な世界を現出させる。

 諧謔、風刺、シュール(超現実)、パンク、カオス…何とでも表現してくれ。オレにはこの映画は理解不能だ。それなりのスタッフ、キャストが集まって、しかも嬉々として演じている姿を見て、あ然とさせられた。奇をてらうことがカッコいいと思っているのならそれは大間違いだ。

 試写会場内は異様な雰囲気に包まれ、オレの左隣のおじさんは何度もはため息をつきながら体をもぞもぞさせ、右隣のおばさんは途中でいびきをかき始めた。その中で、一人だけ役者がセリフを言うたびに大笑いしている若い女性がいた。恐らく彼女にとっては、時代劇の扮装をした役者が今の流行言葉を話すギャップが面白かったのだろう。これはお笑いコントのノリだ。ところが、その女性も、中盤からの訳の分からないグロテスクな展開にはさすがに面食らったのか、おとなしくなった。かく言うオレも何度も席を立ちたい衝動にかられた。

 原作・町田康、脚本・宮藤官九郎、監督・石井岳龍。作っている者だけが楽しんでいるような、久しぶりの目腐れ、超カルト映画だが、よくぞこんな映画を作ったという気もする。『蚤とり侍』の商家の旦那、「半分、青い。」の漫画家、この映画の頭が切れ過ぎる家老…。豊川悦司が“怪優”になってきた。

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