田中雄二の「映画の王様」

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『孤狼の血』

2018-06-04 08:36:20 | 新作映画を見てみた

 昭和63(1988)年、暴力団対策法成立以前の広島を舞台に、金融会社社員の失踪事件を追う刑事たちと、暴力団同士の抗争を描く。



 役所広司演じる、善悪の狭間を漂いながら、ヤクザ同士の間に入ってひっかき回すというキャラクターは、『用心棒』(61)で三船敏郎が演じた桑畑三十郎にも通じるものがあるが、この映画は、松坂桃李扮する“後継者”を登場させたところに新味があって面白い。久しぶりに外連味たっぷりの日本映画を見たという思いもした。

 ただ、『仁義なき戦い』シリーズ(73~)『県警対組織暴力』(75)をほうふつとさせる作劇、展開を見せるのだが、一種コミカルですらあるデフォルメされたバイオレンス描写、セリフ、俳優の演技などから、何だかとても無理をして作っているような印象を受けて、違和感を覚えたのは否めない。昭和末期ですら、描くとなるともはや“時代劇のような感覚”になるのかなという感じである。

 それにしても若い女性客が多いことに驚いた。これはかつてのヤクザ映画では考えられなかったこと。その点でも時代の変化を感じさせられた。

 ところで、今回はTOHOシネマズ上野で見たのだが、導線、落ち着き具合など、映画を見る環境としては日比谷よりもこちらの方がずっといいと感じた。


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