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元中学校校長の昇平(山崎努)の70歳の誕生日。久しぶりに帰省した2人の娘(竹内結子、蒼井優)に、母の曜子(松原智恵子)は、父が認知症になったことを告げる。ゆっくりと記憶を失っていく昇平と家族との7年間を描く。原作は『小さいおうち』の中島京子。監督は『湯を沸かすほどの熱い愛』(16)の中野量太。
アメリカでは、認知症を、少しずつ記憶を失くしてゆっくりと遠ざかっていく様子から、「ロング・グッドバイ=長いお別れ」と表現する。原作のタイトルはそれにちなんでいる。
この映画の、認知症の患者を抱えながら、笑って泣いて前に進む家族の姿が、現実とはかけ離れ過ぎている、甘いという見方もできるが、では、映画でも悲惨で厳しい現実を見たいか、あるいは見せる必要があるのか、せめて映画の中では…という二律背反する思いを抱きながら見た。
まだ、認知症という言葉が一般的ではなかった頃、森繁久彌が『恍惚の人』(73)で、千秋実が『花いちもんめ』(85)で、いわゆる“ボケ老人”を演じたが、どこか遠い話として受け取っていた。ところが、このところ、彼らよりもずっと若いイメージがあった藤竜也(『初恋~』)や、この映画の山崎努がそうした役を演じるのを見て、改めて自分にとっても切迫した問題になってきていることに気づかされた。そんな中、その山崎はもちろんだが、実は松原演じる鷹揚な母がこの映画を支えていると感じた。
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