『教皇選挙』(2025.2.26.キノフィルムズ試写室)
全世界に14億人以上の信徒がいるとされるキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者で、バチカン市国の元首であるローマ教皇が亡くなり、新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」に世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票が始まる。
票が割れる中、選挙を執り仕切ることになったローレンス枢機卿(レイフ・ファインズ)は、何とか無事に選挙が終わることを願うが、水面下でさまざまな陰謀や差別が飛び交い、候補者たちのスキャンダルが次々に浮かび上がってくる。果たして選挙の行方は…。
『西部戦線異状なし』(22)のエドワード・ベルガー監督が、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー。スタンリー・トゥッチ、ジョン・リスゴー、イザベラ・ロッセリーニらが脇を固める。
政治家の選挙そのものを描いた映画もそれほど多くはないが、教皇の選挙となるとなおさら珍しい。この知られざる“イベント”を通して、聖職者と呼ばれる人たち、引いては男たちの権力への欲望の実態を明らかにするという趣向が斬新。
加えて、システィーナ礼拝堂という、外界から閉ざされた巨大な密室内で繰り広げられる権謀術数、何度も行われる投票、投票を重ねるたびに目まぐるしく変わる情勢という、まさに“根比べ”ならぬ「コンクラーベ」の様子を描いたピーター・ストローハンの脚本が優れているのでミステリーとしても面白い。しかもラストには皮肉などんでん返しまである。先に行われたアカデミー賞で脚色賞を受賞したのも納得の出来。ファインズ、トゥッチ、リスゴー、そしてイザベラというベテラン俳優たちのやり取りも見応えがある。
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