硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 僕らのささやかな抵抗。

2020-03-18 20:23:41 | 日記
「ごめんなさい。でも僕は君と違って懐疑主義者だから、正直な所、神の存在は分からないんだ。けれど、今の僕は、君を信じることが出来る。君が語る運命なら受け入れる。単純に、ただそれだけなんだ。これは、理屈じゃないんだよ。」

言葉に力がこもっているのが自分でもわかった。その想いが彼女にも伝わったのか、こわばっていた表情は次第に柔らかくなっていった。

「理屈じゃない・・・か。私には・・・、そういう曖昧な思考はなかった。でも、そう言われて、不思議と安心を得たわ・・・。皆からは、どう映っていたのか分からないけれど、言葉を聴いてからずっと不安だったの。誰にも告げられず、誰も救う事も出来ず、このまま滅んでしまってもいいものかと。」

僕をじっと見つめる彼女。すごくドキドキした。でも、もし、預言通りなら、明日の今頃はこの屋上から見る風景一帯は焼きつくされていて、すべての人がこの世から居なくなるかもしれないのだ。だったら、僕が今やるべきことは一つしかない。

「僕は・・・、君の事が好きでした。」

「好きでした? 」

「うん。もう明日と言う日がないのなら、気持ちを伝えるだけで十分だからね」

「君は面白い事を言うね」

彼女はそう言うと小さく笑った。

これから起こる滅びがどんなものなのか想像できないけれど、僕らには、運命を受け入れるべきなのか、抗うべきなのか、考える余地が残されている。それは、問い続けていた問題に解を出し、預言に不安を抱いている彼女を救う為の選択でもあった。