硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 僕らのささやかな抵抗。

2020-03-24 21:46:51 | 日記
グズグズしている彼女に駆けよると、ツナギを少し強引に引っ張り上げて、彼女の腕を袖に通すと、「なんなのこの服。ゴワゴワして着心地悪くて仕方がないわ。」と、ダボついた両腕を広げてぼやいた。

「文句言うんじゃありません。ほら。こっち向いて。ジッパーをあげるから。」

僕は、信じられないくらい大胆になっていて、何のためらいもなく彼女の肩を掴むと、僕の方に振り向かせ、ダボダボのつなぎのジッパーを首まで上げた。

「これで良し! 」

そう言うと、彼女は、「君、本当は私の下着観たでしょ? 」と問い詰めてきた。
少しめんどくさくなった僕は、「パンツなんか見てもなんとも思いません! 」と、ぶっきらぼうに答えると、彼女は「あなた!それはそれで、失礼よ!! 」と、赤面してむきなった。

誰も知らない彼女の表情が露わになってゆく。僕だけしか知らない彼女がここにいる。僕はとてもうれしかった。なんて言っている場合じゃない!

「これ持って! 」

彼女にリュック渡すと、勘がいいのか、何も問わずに自分のカバンを無理やり僕のリュックに押し込め背中に背負った。
見慣れないツナギ姿の彼女。一緒にバイト出来たら楽しいだろうなと思いながら、彼女にヘルメットを渡すと、ぎこちなさそうに髪を後ろに流しヘルメットをかぶった。
僕はバイクにまたがり、祈る様にセルモーターを回すと、機嫌のいい愛車は一発でエンジンに火が入り、いつでも、発進できる状態になった。

「乗って!」

軽く頷いた彼女は、勢いよく車高の高いオフロードバイクの後ろに飛び乗ると、僕の背中をたたき、「足!足! 足はどこに載せるの! 」と叫んだ。
彼女はバイクを知らない人だったのだ。僕は慌てて折畳まれた小さなステップを指差して、「それを倒して! 」と叫ぶと、「わかった! 」と言って、手でステップを倒し、足を乗せると「いいよっ」と言って背中を叩いた。

「しっかりつかまってて! いくよ!!」

気合の入った僕はスロットルを全開にしてクラッチをつないだ。