硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 僕らのささやかな抵抗。

2020-03-25 18:20:02 | 日記
バイクは勢いあまって、フロントタイヤが空を向いた。後部座席の彼女はびっくりして「きゃっ! 」と、言って、僕の身体にしがみつく。その瞬間、背中に柔らかな胸のふくらみと鼓動が伝わってきてドキドキしたけど、二人乗りのライディングは思ったより難しいし、タンデム走行を楽しむ余裕もなかった。

「彼女を護らねば! 」

自分に言い聞かせ、渋滞気味で流れの悪い山下通りを南下し、都市高速環状線に上がった。

しばらく行くと、港区方面の空に、SF映画やアニメでしか見られないような、この世のものとは思えないフォルムをした怪物が光の翼を広げて浮かんでいるのが見えた。周りの車のドライバーもその光景に驚いていた。
―もう一刻の猶予もない。僕は咄嗟に走行ラインを側道へ移し、車の横を突っ切って中央高速へ進路をとった。すると彼女が大きな声で「どこへ行くの!!」と、言った。

「わからない! とにかく、東京を離れる! 」

ノープランだったけれど、中央高速を下ってゆけば、僕の生まれ育った町という選択もある。
しかし、そこで気が付いた。彼女の両親は大丈夫なんだろうかと。

「ねぇ! 君のご両親は大丈夫なの! 」

「大丈夫! 両親はイギリスだから! 」

少しびっくりしたけれど、それなら問題はない。

アクセル全開のままで、ひたすらに中央高速を下っていると、右に高尾山が見えてきた。ここまでくればと安心かなと思った次の瞬間、耳をつんざくような音と共に、周りの景色が真っ白になった。