硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 僕らのささやかな抵抗。

2020-03-10 17:48:33 | 日記
「確かにその通りで、予知は奇蹟的な事かも知れんが、それだけの材料では誰も彼女を本物の預言者であるとは断定できんだろう。中には、彼女の事を揶揄して預言者と呼ぶ者もいるからな。しかしだ、話が複雑なのは、実質、科学がリードしている現在では、神の声という非科学的なものは、にわかには信じがたいものだが、彼女の助言から、危機を回避した者は、彼女は本当に預言者なのではと言う者もいるという事実だ。俺が思うに、彼女のように由来が少し特殊で、噂に物語がついて拡散されてしまうと、信憑性がおのずと後から付いてくるようになるもので、そこに預言者と呼ばれるようになった理由があるのではないかと思うのだ。」

僕と大井は友田の理論に大きく頷くと、大井は微笑を浮かべ「たしかに、そうかもしれないな。預言者は、偶然がきっかけで、口伝という伝達方法と、長い時間が、作り上げた産物かも知れんしな。」と、言った。

確かに、噂は噂であって、彼女が真の預言者であると、誰も断定はできない。でも、彼女の能力が真実であったなら、僕は、彼女と向き合うとき、どうしたらいいんだろうと悩んだが、友田は、その悩みさえも、払拭した。

「しかし、今、こいつにとって肝心なのは彼女が預言者かどうかではなく、彼女の攻略法なのだ」

「おおっ! そうだったな。すっかり忘れていたな。で、策はあるのか? 」

興味深そうに大井が聞く。僕も頷く。

「それなんだが、俺が思うに、難攻不落であるがゆえに色々と策を練るよりは、素直に自身をさらけ出して挑んだ方が良い結果を生むかもしれん。彼女に挑戦した者達のタイプは様々だが、お前のような純朴なタイプはいない。したがってチャンスはある。と、見ていいだろう」

僕は、本当にネガティブな思考が、良い方向に働くのか疑問に感じ、「それって、喜んでいい事なのかぁ」と、呟くと、友人二人はまた笑い、困り果てている僕を見て、

「いやぁ。失敬。しかしだな、純朴という言葉が当てはまる人物もそうそうはいない。だから誇りに思ってもいいと思うが、どうだろう、大井」

「そうだな。ヘタに策を練って、自分をよく見せようとするより、素のままで気持ちを伝えた方が、彼女は心を開くかもしれんな」

と、僕の背中を押した。