硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 僕らのささやかな抵抗。

2020-03-20 20:40:12 | 日記
そんな表情もするんだぁと思って、おもわずにやけてしまいそうになったが、そこはぐっとこらえて、ちょっとすまして答えてみた。

「うん。僕が上京してきて、最初にできた友達だからね。でも、もうすでに君と会っているなんて想ってもみないだろうなぁ。」

「そうね。だったら、預言者は僕の目の前にいて、ほんとうだよって、言っていると、返信してあげたらいい。」

「そうだね。嘘をついて安心させても、誰の為にもならないしね。じゃあ、そうするね。」

微笑む彼女にドキドキしながら、これから始まるであろう終わりの日に、人生で最高の時間を過ごしているなんて、なんて日だっ!、って思いながら、彼女の言った通りにメールを送ると、驚くほど速く返信があり「ウソだろ。ウソに決まっている。いや、そもそも預言者といる事の方が疑わしい。真実なら写メを送れ。」との文面に、おもわず爆笑した。

「どうしたの ?」

「いやね、君と一緒にいる事が信じられないだって。だから証拠の写メを送れだって。」

「じゃあ、ペアで撮っておくってあげようよ。」

「ええっ。」

「ちょっと貸してみて。」

ためらいのない彼女に戸惑いながら、携帯を渡すと、慣れた手つきでカメラモードに切り替え、腕を精いっぱい伸ばすと、僕の顔に顔を近づけた。彼女の髪からすごくいい匂いがして頭がくらくらした。

「表情が硬い! ほら笑って。はい。」

シャッターを切ると画像をすかさず保存し、「これを送ってあげなよ。」といって携帯を返してくれた。
そこには爽やかに微笑んでいる彼女と、ゆるみきった顔をしている僕が写っていた。早速メールに添付し送信すると、

「ねぇ。あれって、君にも見えてるかな? 」

そう言う彼女の指差す方向を観ると、オレンジ色に発光した小さな球体の束が、空に漂いながら、都心部へゆっくりと渡っていっていた。