硝子戸の外へ。

優しい世界になるようにと、のんびり書き綴っています。

「巨神兵東京に現る」 僕らのささやかな抵抗。

2020-03-09 21:36:25 | 日記
「そうだ。彼女の学部内の連中も、彼女の能力が、直感的に予知できるものなのか、それとも、誰かからの呼びかけによってはじめてその能力が解放されるのか、そして、預言者がどのようにして誕生するのかを解明しようという動きになって、彼女にその趣旨を説明し、同意を得て、検証をしたのだそうだ。しかし、過程が少し面白くてな、同じ学部のギャンブル好きの奴が、能力の検証と称して、彼女に競馬新聞を見せ、第一レースから最終レースまでを予想してもらい格レース1000円ずつ単勝の馬券を買ってみたんだそうだ。」

「おおっ。考えたな。それで。」

「一つも取れなかったそうだ。無論、一例だけでは検証にならん。そこで、悪乗りした奴らが、競輪だのボートだのと持ち出して来て、検証と言う名目で彼女を試したんだが、すべてが同じ結果だった。」

「そんなもんだろう。ギャンブルの結果まで見えたら学校なんか来る必要がない。」

「まぁその通りだ。それで収入が得られるのだからな。しかし、彼女の能力の検証をそれでおしまいとしない俺と同じような奴がいて、彼女にまつわる逸話を拾い集め、分析して、傾向を抽出した結果、人命に関わる事象に置ける予知に特化している事が分かって、俺もそいつと同じ結論に至ったのだ。」

いくら逸話から傾向を抽出した結果だと言われても、腑に落ちない事ばかりだ。それは、大井も同じ考えらしく、「なるほどな。でも、それだけの材料で預言者とは少し乱暴だな。」と、否定すると、友田は自らの解を展開した。