キラキラ橘商店街の鳥やさんは、花火の前日は一家あげて
焼きとりの準備に忙しい。嫁にいった娘さんたちもかりだされる。
すててこや浴衣着て縁側で焼きとり片手にビールで花火を楽しむのがならわしの人たちが
あまたいることを知る。この街にきて9年になるいけど、毎年その忙しさがゆるやかになってきているらしい。
不景気だけのせいではないと思う。「もつ煮」というのが、最近女子をはじめ大きくはばをきかせてきているし、
宅配のピザでビールというのもだいぶ日常になってきた。天真庵の前にある「すしの宅配やさん」も、その日は
お店の前でもちかえりの鮨の特価品販売をやっていた。おもわず「のりまき」を買ってビールの酒肴にしながら
花火を見た。これはこれで「ありかな」と思ったりした。
ひさしぶりに「腹違いの弟」(種も違うけど)が花火を見にきた。彼は焼酎党だったけど、ある日、
久保さんの薄手の志野のぐいのみにほれこみ、それから日本酒党になった。ちょうど八郷にいった
帰りに「渡り舟」を調達してきたので、新作の薄手の焼き締めで飲ませた。ら、また目を丸くして
「この器で飲むと、酒が一段と美味くなりますね」とのたまう。
今日は二十年続いている「順受の会」通称「論語の会」だ。
論語読みの論語知らず、という言葉がある。うちのかみさんもよくオウム返しのように
そんなことをのたまうときが、ままあった。でも今はこの会に積極的に参加している。
天真庵のトイレにこんな詩をかかげてある。
二人が睦まじくいるためには |
愚かでいるほうがいい |
立派すぎないほうがいい |
立派すぎることは |
長持ちしないことだと気付いているほうがいい |
完璧をめざさないほうがいい |
完璧なんて不自然なことだと |
うそぶいているほうがいい |
二人のうちどちらかが |
ふざけているほうがいい |
ずっこけているほうがいい |
互いに非難することがあっても |
非難できる資格が自分にあったかどうか |
あとで |
疑わしくなるほうがいい |
正しいことを言うときは |
少しひかえめにするほうがいい |
正しいことを言うときは |
相手を傷つけやすいものだと |
気付いているほうがいい |
立派でありたいとか |
正しくありたいとかいう |
無理な緊張には |
色目を使わず |
ゆったり ゆたかに |
光を浴びているほうがいい |
健康で 風に吹かれながら |
生きていることのなつかしさに |
ふと 胸が熱くなる |
そんな日があってもいい |
そして |
なぜ胸が熱くなるのか |
黙っていても |
二人にはわかるのであってほしい |