発行人日記

図書出版 のぶ工房の発行人の日々です。
本をつくる話、映画や博物館、美術館やコンサートの話など。

渡辺昇の伝記が出るよ

2025年01月05日 | 本について
 幕末の剣豪、渡辺昇をご存じか? のぼる、じゃなくて、のぼり、と読むの。

 誰? 知らんがな? ですと?

 それも当然、文英堂の『年表対照式日本史必修用語事典』(元号確認にすごく役立つ)にも、幕末を扱った大河ドラマにもそんな名前の人は出てこない。ウィキペディアで紹介されているが「演じた俳優」という項目はない。

 渡辺昇は、大佛次郎の『鞍馬天狗』シリーズのモデルではないかと言われている人物である。鞍馬天狗は浪人だが、渡辺昇は肥前大村藩士である。
 幕末、渡辺さんは、お江戸「練兵館」に剣術修行に出る。そこには大村藩だけでなく、長州藩や水戸藩などからたくさんの生徒が来ていた。剣術以外のお勉強の時間もあった。ご存じ長州の桂小五郎は道場の先輩で、その後渡辺さんは、桂さんの次の塾頭となる。近所で道場「試衛館」をやってる近藤勇からは、しばしば道場破りの助っ人を要請され、そのあとにお酒をごちそうになっていた。

「練兵館」のスポンサーは、伊豆韮山代官江川太郎左衛門英龍(但庵)。この人も神道無念流の免許皆伝で、練兵館の主・斎藤弥九郎と、行商人姿で隠密に歩き回っていたと伝記で読んだ。春になるとパン屋さんに黒目がちな武士のイラストがついた「パンの日」のポスターが貼られるが、その人だ。その江川さんは武蔵国日野も領地だったが、そこの有力名主が佐藤彦五郎(土方歳三の義兄)で、当然江川さんとも交誼がある。だから「練兵館」と「試衛館」の交流も不思議ではない。
 佐藤彦五郎日記に交流試合の話があるとどこかで読んだが、福岡の図書館にあった本はダイジェストされてて、確認できなかった。

 その渡辺さん、藩邸の門限を破って謹慎させられていた時には、桂さんが食べ物を差し入れてくれてた。
 桜田門外の変は、目の当たりにした。
 新選組が活動を始めて敵対する立場になったあとも近藤さんが「新選組がテロしに来るから気をつけてね」と、こっそり言いに来てくれる。
 大村に帰ったあと、お家騒動で命を狙われたが、めっぽう強いため、酔っぱらって外で居眠りしていても、刺客は怖くて近寄れない。
 
 桂さんと近藤さんの共通の友人で、討幕派の剣豪。ねっ、とても鞍馬天狗っぽいでしょ?
 
 ところで、幕末活躍した人たちや、明治元勲って剣豪が多い。
 伊藤博文は暗殺されたし、板垣退助もテロに遭ったため、「強いんだぞぉ」な印象が薄いけど、両者とも幕末はバリバリの戦闘員だし、桂小五郎は逃げる人、と思われているけど、千人を数える道場の師範代にして塾頭をしてた剣豪だし。
 というか、剣豪でないと殺されちゃう時代だから、剣豪が多いのかと。坂本龍馬も中岡慎太郎も強かったから、酔ってなければ暗殺されなかったでしょうね。
 渡辺さんは、明治になってからは、功成り名遂げ、役人から華族というコースをたどり、剣道界の重鎮となったから、その辺は全然鞍馬天狗じゃないけど。
 幕末の志士は、剣道留学などでで知己を得、情報交換していたので、重要な人物は結構顔見知りである。渡辺さんが、英国人との交渉で困っているところに、剣術道場の知り合いで英国(密)留学組の長州藩士が通りかかり助けてもらうようなことも起きる。

 その、渡辺昇の伝記が、もうじき出ます。
 お楽しみに。
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バス・ストップ2024

2024年12月19日 | 日記
 冬である。
 去年と同じように、セーターの上にコットンギャバジンの短いコートを羽織り、淡い色のストールを巻き、帽子をかぶる。冬は、好きなだけ歩けるので大好きだ。

◆バスを待つ間にハミングするわ
 この時期の脳内BGMは、サイモン&ガーファンクルの
「冬の散歩道」(CMが出るけど、さっさとスキップしてね)。足早に歩くときは、シベリウスの「カレリア組曲」の「行進曲風に」。冬はやっぱり寒い国の曲だね。風が冷たいと感じたら、宮本浩次の「冬の花」
「冬の花」は失恋ソングで、宮本浩次が左ハンドルのフェアレデイZを危険運転しているミュージックビデオをネットで見ることができる。大変辛そうな歌だが、それでも生きる決意が歌全体に感じられて好ましい。
 そんなあるとき、突然、脳内に「銭形平次」のテーマ曲が再生された。
 眼前には筑後川、橋を渡れば佐賀県である。バス停は大川橋。
   大川橋→大川橋蔵→銭形平次
 連想は思考より早い。

◆バスを待つ間にうどんを食べる
 冬至すぎ。夕刻。苅田(北九州空港近く)の小波瀬というバス停、天神行きの高速バスには40分ある。JR駅まで15分かけて歩くという方法もあるが、車通りも少ない暗い道だし、この時間は無人駅で、駅の周辺には開いている商店などない。
 バスを待つ間にうどんを食べることにした。バス停のそばにはうどん店しかないので。
 入店時のBGMはピアソラのリベルタンゴ。軽快なバンドネオン。オープンキッチンをぐるりと囲むカウンター。普通のうどん・天ぷら屋。テーブル席もあるけど。そして客は私一人。
 店を出る時にはカウンターは半分くらい埋まっていた。偶然、客がいなくなった時に店に入ったようだ。おいしかったよ。店を出る時に流れていたBGMはNHK「映像の世紀」のテーマソング、加古隆の
「パリは燃えているか」だった。
 バス停近くの安くて早く食べ物や飲み物が出てくる店は間違いなくシェルター。
 小倉南区の例の徳力のマクドナルドは、小倉天神間の高速バスに乗るときに通りかかる。頭上にはモノレールが通り、北に行くと、JRAの小倉競馬場を経由して小倉市街に出る。駐車場が広いので、親が迎えに来る時の待ち合わせ場所なんかにもなっていたんじゃないのか。
 変な人は滅多に出ないのだろうが、住宅地近くのロードサイドのマクドナルドで、夜の豊前田(下関の夜の飲食街)ひとり歩き並みの警戒心を求められても困る。
  

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2024秋のいろいろ

2024年11月04日 | 日記
 博多駅前では11月が始まったばかりというのにクリスマスイルミネーションがはじまり、日暮れともなればホットワインや食べ物や物販の屋台が出、ステージではソプラノ歌手が歌っていて、すっかりクリスマス気分である。
 クリスマスまでふたつき近くあるというのに。
 つい十日前まで半袖で歩いていたのではなかったのか。夏日ではなかったのか。彼岸が過ぎてから日没ばかりが早くなり、でも太陽が出ている間はとても暑かったんじゃなかったのか。
 多分秋はすぐ終わって冬になるんだろう。そうやって人生もさっさと終わってしまうに違いない。毎日を大切に。

 さて今年の秋には何があったかなの順不同。
 
◆美術の時間
「超絶リアリズム絵画 ホキ美術館所蔵名品展」福岡アジア美術館。
 一度鑑賞したいと思っていたが、今行けば千葉に行かなくて済むので出かける。チケットは早くから買っていた。チラシの絵画には「これは絵です」と書いてある。
 実物にびっくりである。近くで見ても、アミ点も銀塩粒子もない。
 たまに筆跡が見つかるが、写真よりも精巧である。そこにその人がいるような、すぐに動きだしそうな、話し始めそうな表情。服の材質や皺や乾き具合、指先の温度、息遣い、そこまで描けるものなんだと。大迫力よ。

◆音楽の時間
 コンサートは北九州のソレイユホール。あそこにはパイプオルガンがあるんだ。「新ケミカル商事創立20周年記念コンサート」。黒崎のひびしんホールで買ったときにはチケットは、まだたくさんあったのに、売り切れたらしく満席。
 石丸由佳のパイプオルガン一曲目は宇宙戦艦ヤマトから「白色彗星」宮川泰作曲。いきなり足鍵盤の重低音が響きわたる。終末感てんこ盛りのどんより暗い荘厳なメロディである。聞きたい人はこちら。CMはスキップして
 次はバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」。誰もがきっと聞いたことがある至福のオルガン。それが済んだら「トッカータとフーガニ短調」(嘉門達夫の「鼻から牛乳」ともいう)これもまたバッハの代表曲の一つ。
 それから九州交響楽団と歌手4人が入場して「オペラ座の怪人」。クリスティーヌと、それからファントム3人という豪華なコンサート。
 あとはスメタナの「モルダウ」。それからドヴォルザークの「新世界」、ただし第3楽章は省略。全曲聴きたい人は九響のコンサートに来てねと指揮者が言っていた。
 質の良いアコースティック音からしか得られない栄養がある。幸せ気分で帰宅。

◆そのほか
 あと、JR九州ホールで、ビジネス系見本市みたいなの(適当)。少し知りたいことがあったので。あとは本を買って読めばいいとわかる。

◆乗り物
 広島のアストラムラインに乗る。JRを新白島で乗り換え。街は本通り、郊外は広域公園前へ行く。専用高架をゴムタイヤ履いた列車が走る。乗ってみたいと思っていたが、これまで機会がなかった。やはり広島の、5月に廃止になったスカイレールは、まるで遊園地みたいな鉄道だったけど、ついに乗らないままだったなあ。

 ほかにまだあればまた。

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竜胆

2024年10月06日 | 日記
 海辺の病院近くにやってくる次のバスまで2時間も待つ気にならない。病院の周辺には家電店と魚屋があるのみ。
 駅まで26分。真夏ではないので歩くことにした。
 夏が暑かったせいか彼岸花が2週間遅れで道端に咲いていた。
 ふと、中学の同級生がこの近くで花屋をしているのを思い出した。
 花屋で検索すると、うろ覚えの店名に近い名前の店が出てきて、地図と営業時間がすぐわかる。いい時代だ。今私がいるところから歩いて3分、しかも営業中だ。
 同級生が留守でも、何か花を買おう。
 脇道にそれて少し歩くと花屋はすぐ見つかった。木のドアの格子のガラス越しに竜胆が見えた。
 店に入った。
 店主は、カウンターに置いた円筒形のガラス花器に、あれはオンシジウムといったか、黄色い蘭の小花を活けているところだった。
 店主はすぐに私の名前を思い出した。
「散らかってるけど……」
 作業中とすればそんなものだろうな。お花がいっぱい。花屋さんだからね。センスの良い花器やリースが飾ってあった。
 見舞いの帰りに寄った旨話す。今日びは生花と食べ物は病院には持って行けないのだ。あとは共通の知り合いの消息などを少し。
 27年前の同窓会以来だった。そのとき彼が、ホテルに入っている大手チェーンの花屋から独立した話をしていたのを覚えていたのだ。
 27年も、立地がいいわけではない場所で商売を続けるには、よほどの営業努力と、研鑚が必要だったに違いない。

 同窓会のとき、他の同級生男子、確か公務員が結婚したいと思っている女性に年末に蟹を贈った話を聞き、ええっ、そう若くもない、ちゃんと収入のある交際相手から年末に贈られたのが蟹ですと? 他のものは贈らなかったの? がっかりしてなかったらよいのだけど。てか私蟹好きだけど、がっかりのガックリだわ。細い細い金鎖でもガラスのついた銀の指輪でもいいわ、なにかロマンチックなものが欲しいところだわ。フォローしとかないと、彼女、正月に親の持ってきた見合い話なんかにうっかり乗ってしまうわよ。今からでも遅くはない。何か宝石っぽいアクセサリー買って、それとS君(花屋さん)に、素敵な花束を作ってもらって、お年玉だ、とサプライズに持って行き、指輪のサイズを聞いてくるのよっ!と発破かけまくったのを覚えているが、それからどうなったのか。S君の作った花束なら効いたんじゃないかと思うが、その話は今回は、しなかった。

 ともかく竜胆を買った。何種類かあるようだったが、「これが一番好き。今日仕入れた」というのを「じゃ、それで」と頼んだ。
「菊と竜胆は、鋏じゃなくて手で折ったほうが水が良く上がるよ」。
 ひとつ賢くなった。対面販売ならではである。また来ます、と言って店を出た。

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I Took Me Out to the Ball Game

2024年06月11日 | 物見遊山
◆ソロ野球観戦
 経緯は略すが、交流戦を見に福岡みずほpaypayドームへ。私は私を野球に連れて行った。ヤクルト戦なので、球場外周には東京音頭が流れ、応援用のビニール傘を売っていて、つば九郎が来てくれていた。
 適当に食べ物を買って内野ビジター側で観戦。これまで福岡ドームの野球の試合に来たことはあるが、2回ともごちそう目当てのスーパーボックスご招待だった。「マネーボール」や「ミスターベースボール」などの野球映画は面白いし、ルールを知らないわけではない。しかし選手が全然わからん。福岡市において非国民ならぬ非市民認定されそうなくらい知らん。ただ、野球見たいならスタンド観戦が正しいことは痛感した。なにしろ、みんな楽しそうだ。
 鳴り物が一時期禁止されたことがあったらしいが、今は金管類も声援もすべて復活してるし、目視する限りマスクも100人に3人くらいで、その人たちも何かしら飲み食いしているし。福岡に限った話ではないだろうし。野球は完全に正常化している。球場以外はどうだ? 
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「トノバン」音楽家・加藤和彦とその時代

2024年06月06日 | 映画
「帰って来たヨッパライ」が、すべてを変えた
 物語じゃないのでネタバレはない。
「トノバン」音楽家・加藤和彦とその時代を描くドキュメンタリー映画。ユナイテッドシネマ、キャナルシティ博多。夕刻の回。チケットを買って店をぶらぶら。無印良品の書店が4階に移っていた。
 映画冒頭は2022年のオールナイトニッポン55周年番組オンエアの様子。「ビタースウイートサンバ」の響きに一足飛びにラジオ少年少女だった時代に連れて行かれる。
 年老いた初代DJ斎藤安弘、なんかお爺さんがしゃべっているぞと思っているうちに、本調子を取り戻し違和感なく聞こえてくる。彼がかける曲が「帰って来たヨッパライ」。
 1967年開始のラジオ深夜放送番組オールナイトニッポンから加藤和彦の活躍がメジャーとなった。「トノバン」は、加藤の愛称。大人が仕掛けたのではなく、アマチュア学生バンドの卒業記念盤から始まった。すべてが新しく、まさに一世を風靡した「帰ってきたヨッパライ」。「Ⅽ」のコードの開放弦にひとつ指を足して、不協和音にして。
 映画ではその言葉はなかったが「東芝レコードが買い取れるくらい儲かった」という談話を読んだ記憶がある。

◆気分は「イエスタディワンスモア」なのさ
「イムジン河(が発売中止になったくだり)」「悲しくてやりきれない」
 曲と関係者のインタビューが続く。存命である北山修、つのだ★ひろ、高中正義、吉田拓郎、泉谷しげる、坂崎幸之助、レコードやラジオの関係者。存命ではないが、高橋幸宏、坂本龍一。
「あの素晴しい愛をもう一度」(
以前も紹介したが映画「愛と誠」の中で武井咲演じる早乙女愛が踊りながら歌っているのが最高に可愛いから貼った。大賀誠が妻夫木聡なのは一目瞭然だが、斎藤工演じるメガネの岩清水弘からも目を離せない)(歌の題名の正しい表記は「素晴らしい」ではなく「素晴しい」なんですと)。リズムがサイモン&ガーファンクルの「ボクサー」のリズムであると言われれば、確かに「ライラライ」に乗っかるなあ。
 サディスティックミカバンド。高橋幸宏がドラムを叩き高中正義がギターを弾いてるじゃないか。映像で見る豪華さ。
 さまざまなヒット曲、レッテルを貼られることへの抵抗、続く進化。
 だが突然それは終わった。
 怒りと悲しみのこもった高中正義の追悼のメロディに心を揺さぶられた。
 ものを作り続ける努力というものについて考える。
 映画の最後は「あの素晴しい愛をもう一度」で締めくくられた。
 まったく気分は「イエスタデイワンスモア」。
 キャナルシティの噴水(写真)は「タイムトゥセイグッバイ」に合わせて踊っていた。物販店は終了している。21時30分のこのプログラムが、一日の噴水の最終回なのかな。
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「呪いの招待状」明朗会計デスノート

2024年03月05日 | 漫画など
◆デスノートは欲しくない
 名前を書けばその人が死ぬノートを手に入れた青年が「新世界の神」を目指し失敗して死ぬ話が全13巻にわたって展開された「デスノート」。大ヒットし、アニメ化され、映画化され、ミュージカルになった漫画。デスノート使用は原則無料だが、もれなく死神が憑く。その一存で命を失うかもしれない。こわい死神に「デスノートを使った人間は天国へも地獄へも行けると思うな」と言われたら、そんなもんいらんがな、と思う人がおおかたなのではないかと。

◆もしもデスノートが明朗会計だったら
 それならリーズナブルな報酬で1件単位で完全犯罪できるとしたらどうでしょう。老舗の「ゴルゴ13」さんは高いので庶民には無理。では10年の寿命でひとりというのはいかがでしょうという漫画がある。ネット漫画「ピッコマ」や「めちゃコミック」で読める曽祢まさこ「呪いのシリーズ」「呪いの招待状」「続呪いの招待状」が面白い。10年の寿命と引き換えに人を呪殺する呪術師・カイの元を訪れる人間たちの物語だ。デスノートの明朗会計バラ売りみたいな話である。

◆1話完結読み切りプロット
 強い殺意を察して怪しい猫がやってくる(「招待状シリーズ」ではカードを渡されるとそれが道案内となる)と、呪術師の部屋を訪ねることができ、10年の寿命と引き換えに人を1人殺めることができる。逃亡不要、ちょっと想像しただけでも鬱になる実名報道の不名誉や、家族係累関係者に及ぶ多大な迷惑、逮捕から判決までの手続き、そして懲役や絞首台なしに!    
 なんてお得なの、と思ったのかどうか。呪術師のもとには、いろんな事情と殺人動機を抱えた人々がやってくる。
 呪術師は、濃紺のスーツにネクタイの美青年である。そんな服装の人はそこら辺にいくらでもいるが、腰まであるロン毛が特徴である。人間の格好をしているが、人ではない生命体で、人の寿命を糧に老いずに長生きしている。人の寿命は何らかの形でいいレートで換金できるようで、ポルシェに乗っている。
 ゴルゴ13さんのように、依頼者の事情を聞いてくれる。ゴルゴさんよりは親切である。また、殺人状況が指定できるのはデスノートに近い。基本、どのような自分勝手な事情でも断らない。依頼者は「客」、呪殺は「仕事」である。
 寿命が残り10年に足りなくとも引き受けるが、客は実行翌日に亡くなる。
 このプロットで何十もの物語が描かれた。

◆同時多発依頼の話
 何回も呪殺依頼してしまい寿命を使い果たしてしまう話はもちろんあるし、父の愛人を呪殺した娘が妻子持ちと交際深入りしその娘に呪殺される話など因果応報の話もある。
 面白かったのは「カルテットゲーム」。父の愛人が小学生の娘を、小学生の娘が父の愛人を、不倫中の父が母を、母が父を、ほぼ同時に呪殺依頼する話である。愛人は愛される邪魔な娘を消して彼氏との生活を、父は妻を消して娘と愛人との暮らしを、母は不倫夫の死亡保険金で娘との贅沢三昧な暮らしを夢見ている。娘は昔のような仲のいい家族を望んでいるだけなのに、大人3人の身勝手さ半端ない。全員同時消滅すれば終了の仕事なのだが、呪術師はどうしたか。
 ホラーに分類されるけど、夢に出てきそうなほど怖い話はない。少女漫画の作者なので、登場人物も可愛い。無料公開されている作品も多いので興味があったら読んでみてね。 

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たれかこきやうをおもはざる

2024年03月03日 | 昭和のおもひで
 郷里のANAクラウンプラザホテルが3月末で閉業となる。
 1983年の開業時は宇部全日空ホテル。
 設計は1936年開業のアールデコ様式が内装にふんだんに使われている市民館と同じ村野藤吾。
 会社近くにあったので、一階の「サルビア」で日替わりランチをしょっちゅう食べていた。スープとサラダとおいしいコーヒーがつき、いつも賑わっていた。
 地下にある「雲海」で食べていたのは松花堂弁当。野菜の炊き合わせが美しく盛り付けられていて、お正月に行くと、ちゃんとお屠蘇が出た。
 中華レストラン「敦煌」は、会社の宴会に使った。おこげの餡かけが好きだった。
 昔はコースの出るレストランも上階にあって、ランチだが食べた記憶がある。
 ショップで気の利いたグリーティングカードが買えた。
 展示会もいろいろあった。データベース検索の展示会は驚きだった。社内データではなく、もっとたくさんのものが調べられる。まだインターネットもメールもする人がいない時代だった。隔世の感。
 一番広い宴会場である国際会議場は、学会に使われていたことはあったが、一度でも国際会議は開催されたのか。そこでの宝石呉服毛皮の展示会には行った。芸能人が呼ばれてのお見立て会があり、ほかの人も来たことがあるのだろうが、加藤剛を見たのを記憶している。毛皮コートやダイヤやダチョウやワニのバッグや叶姉妹が身につけていた宝飾時計やローマ時代のような金細工のペンダントがどんどん売れていた。ミンクやフォックスを皆様どこでお召しになっていたのか。着ている人を街ではほとんど見なかった。たぶん、毛皮というよりも、気分が晴れる、何か華やかなものが欲しくて買い物をしていたのだと思う。
 確かに、ちょっと気分が変わるというか、都会っぽいハレた気分が簡単に味わえる場所だった。
 そして、ああいう実用にそぐわないものも、ほとんどの人が買おうと思えば買える時代でもあったのだ。

 今はどうなっているのだろうか。ショップはどうしているか。

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バスで冒険

2023年12月30日 | 物見遊山
◆西鉄を制するものが福岡を制する
 といっても、乗客の話。西鉄の乗り換えがうまくいけば、福岡のかなりのところに行けるという意味。
 福岡市内なら、天神(高速バスターミナルはあるが、市内便の発着バス停は町中に散らばっている)、博多(市内便はバスセンターに限らない)のほかに、大橋(南方面)、藤崎(西方面)、百道浜(西方面から天神、博多に早く行ける)の攻略が大事になる。
 西鉄電車のどの駅からどの方面にバスが出ているかも大事で、大橋駅(南区の要と言って差し支えない)や久留米駅(八女など筑後各所、うきは、鳥栖、佐賀)のような大きな駅だけでなく、甘木を経て杷木まで行ける朝倉街道駅や、城島を経て大川に行く路線のある大善寺駅、急行も止まらないが、羽犬塚と大川の大野島を結ぶ八丁牟田駅など、攻略すれば便利極まりない。
 海に面した福岡県の西は、唐津に本社のある昭和バスの管轄になる。九大学研都市や糸島には西鉄バス路線はないが、例外的に博多天神をまわり、都市高速で福重まで来て元岡の九州大まで行く「K」という路線がある。今宿の街なかは西警察署バス停で終わりで、あとは人里離れた大学関連施設に向かうが、それを知っていると、いろいろ便利に使える。
 北九州になると、砂津や小倉駅周辺や黒崎バスセンターのほかに、引野口や、三萩野を理解しておく必要がある。

◆西鉄以外のバスだって走る]
 若松方面や、本城あたりは北九州市営が強い。
 柳川や八女などの筑後地区は堀川バスに乗る。八女福島(八女市の中心地)までは、久留米から西鉄バスがたくさん出ているが、そこから先は堀川バスになる。
 福島にある堀川バス本社のバス路線案内を見ると、一体どこへ連れてってくれるのかワクワクしてくる。福島から黒木を経由して日向神ダム(秘境っぽい地名でしょ)脇を通り矢部村に行く矢部川沿いの路線は「をを、これぞ山と渓谷」という美しい景色が続き、眺めてて飽きない。この路線の終わりから1時間かそこら歩くと、地図上では大分の鯛生金山のバス路線があるようだが、そこはまだ行ってない。
 コミュニティバスは、土日に走らない便,月水金(火木土)だけの便など地域ごと、いろいろだ。100円でかなりの距離乗れる路線もある。瀬高駅から山川(みやま市)に行ったときなど、10キロメートルは行ったが100円だった。
 安いがわかりにくいところが結構ある。グーグルマップや乗換案内に出てこない路線が多いからだ。ほんらい地元の人の足だからよその人にはわからなくてもいいということなのかな。
 でも乗るよ。
 


 
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パーキンソン病専門医が作った魔法の『人生100歳健康体操』

2023年12月29日 | 本について

 最近の不調を、ネットで調べたらなんだか難病の症状に近い。パーキンソン病かも。えっ治らない病気なの? 想像するだけでクラっときそうです。
 朝日新聞デジタルの「僕はパーキンソン病」という連載を読み返すと「こりゃ大変だ」と思わざるを得ません。

◆あなたならどうする?
 パーキンソン病は、60歳以上であれば100人にひとり発症という難病としては頻度の高い病気ですが、情報が一般より簡単に入手できそうな新聞記者でさえ、診断を得るまでに葛藤し、躊躇しています。
 
 治らないなら、進行を遅らせ、できるだけ長い間よりよい生活の質を保つためにできることはないか。
 有効なダンスや体操などと、生活習慣上の注意点が読みやすくまとめてあります。楽しいDVDつきで、どんな運動かわかりやすいし、運動すれば病気の進行がゆっくりになり、薬を増やすのも遅くできます。うまく病気とつきあうヒントがいっぱいです。 

 パーキンソン病の診断が出た人はもちろん、
 「自分の不調はパーキンソン病っぽい」と思ったその瞬間から(日程の都合をつけて予約、受診、専門医紹介、またまた日程調整して予約、受診、検査を経て診断を貰うより先に)、家で、道具もなしに、できることを紹介する本です。早い診断が求められますが、すぐ始められます。表紙からして何だか楽しそうでしょ?


『渡辺昇』発刊が遅れます。

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