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工事進行基準(その4) 個別原価計算-仕掛残高の管理

2008-01-25 11:51:40 | Weblog
受託システム開発の原価計算に「個別原価計算」を用いる、と書いた。

個別原価計算では、予定率によって加工費を計算し、
完成するまでは「仕掛品」となり、完成して売りあげて初めて
それが「製造原価」として払いだされることまでは書いた。

このとき、原価には一般費も加算される。

さて、完成までの間、仕掛品残高を見ていくことに
どのような意味があるのか考えてみよう。

これにはグロスと個別の2つの見方がある。

グロスの見方とは、課とか部とか本部とか事業部とか、
ともかく損益単位ごとに作業高の多寡をみるということだ。

一定の人数がいれば、毎月一定の作業高がないといけない。

売り上げが少なくても仕掛残高がそれに見合って増えていればいいが、
逆に売り上げが多くてもそれ以上に仕掛残高が少ないと遊びがあるということ。

直接作業に従事していた比率、つまり作番寄与率も大切なパラメーターだ。

さて、個別作番の仕掛残高の場合はどうか。
課長や係長、あるいは大型のプロジェクトになればプロジェクトリーダーなどは、
個別作業の仕掛を管理監視していなくてはいけない。

このテーマはもともと工事進行基準の問題点を明らかにしていこうとして、
書き始めたものだが、ここで「進捗率」についての考えの違いが出てくる。

工事進行基準については後で述べることにして、
本来受託システム開発においては、その工程ごとに原価見積もりを行っている。

この仕事だと2人で3カ月くらいかな、だから6人月、なんてやり方はしない。

大体1ケタ人月の仕事ならそれでも済むが、数十人月、数百人月の仕事が
そんなどんぶり勘定で分かるわけがない。

実際には百万の仕事でも十億の仕事でもしっかりと要件定義を行い、
工程ごとの工数見積もりをするわけだが、

以下、数字を挙げて説明しよう。
ただし、現実の数値を無視して、計算しやすいように値を設定するので、
工数や工程ごとの比率、金額は参考にしないでもらいたい。

例えば、基本設計、詳細設計、製造、機能テスト、総合テストの
5工程だったとしよう。
(実際にはもっと細かいが、これも説明上簡略化する)

見積もりは、基本設計:5人月、詳細設計:10人月、製造:20人月、
機能テスト:10人月、総合テスト:5人月だったとする。

加工率(予定率)を5000円/人・時とし、月160時間の作業時間とする。

この開発には全体で50人月、人月当たり80万円の加工費だから、
加工費の総額は4000万円の見積もりとなっているわけだ。

実際の作業の進捗は加工費の積み上げとは相関関係にあるものの、
ぴったり一致はしない。

それは失敗や手戻りもあるし、当初予定より簡単だったり難しかったり、
過去の開発資産が流用できたり、その他効率向上が図れることもあるし、
担当者の能力が著しく良かったり悪かったりすることもあるから。

作業工程は、基本設計、詳細設計が各1か月、製造2ヶ月、
機能テスト1か月、総合テスト1か月の6か月とする。

2カ月経過後、基本設計は予定通り進捗したものの、
まだ詳細設計が終わっていないとする。

進捗の見方についてはここではふれないが、
プロジェクトの管理者はその工程が何%進捗しているかを
数字で捉える事が出来る。(と言うか、とらえられないと管理者失格)

詳細設計の進捗率が80%だったとすると、
工程は1か月の1/5、1週間近い遅れ。

この時点で、製造、テストをどのように進めて
遅れを回復させるかを考える必要もあるな、と言うのがわかる。

加工費を見ると、基本設計が予定通りだったとし、
詳細設計の加工費が600万だったとする。
600/800=75%だから、加工費の消化具合、
掛けた人手75%に対し、進捗は80%だから、
思ったより効率はいいのに、工程が遅れている、
つまり、人手が足りていないことを示している。

一方、詳細設計の加工費が800万だったとしよう。
これは、予定通りの工数をつぎ込んでいるのに、
進捗が80%しか進んでいないということだ。

時間ばかり食って先へ進めていないことがわかる。

さらにこの時点で、本来640万程度であるべき加工費が
160万余計にかかっている。
売り上げ損益に200万ほどの悪影響が出ていることもわかる。

作業員の能力不足なのか、
機能上解決できない問題があるのか、
開発環境にトラブルや不足があるのか、
それともお客が無理な要求を出してきたのか、
等々、
遅れの原因を探り早急に対策しないと、
トラブルが解決せず、作業進捗にも大きな影響が出るし、
赤字になるかもしれない。

このように仕掛残高を見ていけば、その作業の状況がつぶさに見てとれ、
その時点の評価だけでなく、そのあとの作番管理にも大きく響くし、
業績の見通しにも関係してくるのだ。

作業進捗率と原価の消化率つまり仕掛品残高は両方見ていかないと
いけないことはお分かりいただけたと思う。

***

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