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『種まく人』2

2009-12-01 22:29:00 | 徒然なるままに
12月2日(火)

今日、3年生のBOX ARTの鑑賞授業の時の欠席者を呼んで、放課後、鑑賞をしてもらった。
一通り他の生徒の作品を鑑賞し、5人選んで感想を書いた後、自分の作品についての自己PRや反省点、取り組んでみての感想を書いてもらった。

その時、一人の生徒が、
「締め切りに間に合いそうもなくて、最後は雑になってしまったけど、せっかく教えてもらった手法をもっと使いたかったなあ・・・。みんなの作品見て、こんなやり方あるんだとか、真似してみたいとかすごい参考になったから、もう一回やってみたい」
と言った。
「そうそう。『この失敗を次に生かして次はもっといいものを作りたい』って書きたいけど、今度やるのは『篆刻』だし、もう絵の具は使わないんでしょ。私たちもう卒業だし・・・。」
「高校に行ったら、美術を選択して、教わった手法を使っていい絵を描けば良いじゃん」
「そっか~、高校でも美術はあるんだ。」
「美術じゃなくても文化祭のポスター作りとか、イベントの時のクラスTシャツを作る時とか、けっこう使えそうじゃん?」
「いいね、いいね、それ!」

そうやって盛り上がった後、生徒達が書いてくれた感想を読んで、私は泣けてしまった。
『先生、いろんな手法を教えてくださってありがとう。今回の作品には上手に生かせなかったけれど、高校で美術を選択して作品作りに生かしたいと思います。』
『先生、せっかく教えてくれたのに、あんまり工夫出来なくてごめんなさい。でも、初めて美術の作品を最後まで仕上げることが出来てうれしいです。』
『最後までしっかり仕上げるまで諦めなかったから、出来上がった時すごく充実した。みんなの作品を見て、いい作品にはその人の本気が伝わってきた。応援したくなる作品もあった』

「先生、上手な人の作品の感想だけじゃなく、ここ、もっとこうすればいい作品になったのに・・・と言うようなことを書いてもいいの?」
「うん、ぜひそういうことも書いて!私が気がつかないことや、あなた達だからこそわかる視点もあると思うから。私にも勉強になるしね」
その生徒が書いた感想は、とても温かな視点で書いてあった。
上手な作品や好きな作品のいいところだけでなく、『ここをこうしたら、もっといい作品になったのに』というような視点で書く生徒はなかなかいない。

今回は、簡単な手法や遠近法など、ほんの基本的なことを教えただけで本番に入ってしまったので、その手法の応用の仕方を十分理解し練習する時間が足りなかった。
だからこそ、それぞれが苦心して作り上げた作品は本当に参考になり、思うように出来なかった生徒ほど、リベンジしたくなるのだろう。

だから、今やっている『篆刻』に賭けるみんなの意気込みはすごい。
卒業までの限られた期間で、受験勉強と両立させながら、効率よく完成させなければならないのだ。
今までの様に説明を聞き流したり、聞き落としていては、やり直しになり、また時間が足りなくなって、不満足な作品にしか仕上がらないなんて嫌だ。今度こそ、『一生もの』のはんこを作るぞ!
と言う意気込みがビンビンと伝わってくる。

赴任当初の頃の生徒達は、人の話は聞かないし、当たり前のように忘れ物はするし、プリントは失くすし、提出物は出さないし、
「締め切りって何?」
「締め切りすぎたら出さなくても良いんじゃね?」
「今度の先生、ウザくね?」
中には
「死ねばいいのに~♪」
なんて言う生徒もいた。
夏休み前は、この先どうなるのか、私にけんか売っているのかと悩みもしたものだった。
でも、
「1年後、見てろよ~!美術は役に立つ。美術は面白い。美術にハマった!って言わせて見せるぞ~!」
と心に誓い、めげずに頑張ってきた。
それが、1年と経たないうちにやる気満々の生徒達が増えて、うれしい限りだ。
私も、3年生もあと4ヶ月を切った。正味後10回もない美術の授業を、1時間1時間充実させて過ごして生きたいと思う。

私は『種まく人』
みんなの心に蒔いたどの種が、いつ芽を出すのか、どんな花を付け、どんな実を結ぶのかは誰も知らない。
何年か経って、私の名前は忘れても、美術の時間に作った作品との思い出は、時々は思い出してくれたらうれしいな。
そして、自分の作った作品にも愛着を持って、大事にしていってほしい。

3月31日の離任式の日には、達成感を持ってこの学校を『卒業』していけるように、これからの1回1回の授業や、みんなと過ごす1日1日を大切に過ごして行こうと思う。