新型フォーカスの公式HPはこちら
webCGから写真を拝借しました↓
全長×全幅×全高=4370×1810×1480mm/ホイールベース=2650mm/車重=1380kg/
駆動方式=FF/2リッター直4DOHC16バルブ(170ps/6600rpm、20.6kgm/4450rpm)/
燃費=12.0km/リッター(JC08モード)/価格=293万円
フォードと言えばアメリカの、、、というイメージでしょうが、フォーカスは欧州フォードの作品であり、クルマの動きがゆったり鷹揚なかつてのアメリカンなクルマとは全く違うものです。実際、
2010年に海外で発売された今回のフォーカスは、2012年上半期の売り上げ世界一を記録したくらい、誰が乗っても良いと感じるクルマに仕上がってます。しかし、日本での輸入車Cセグメントは完全にVWゴルフの独壇場になっていて、フォードは完全にニッチな存在です。
ディーラーの営業の方が「時間があれば時間をかけて試乗してみませんか?」と言ってくださいました。本屋とか行きたかったけど、それはまた次回!と気持ちを固め、お言葉に甘えてそうすることにしました。まずはセールス氏の運転で高速道路のPAまで行き、それから私に交代することにしました。試乗時間は1時間くらいだったと思います。
(外見)
フォーカスの外見、私は好きです。ゴルフのシャープなエッジの効いた板金加工技術もすごいのですが、十分カッコ良いと思います。ボディカラーがゴールドでしたが、これまたよいです。3年、5年たっても、意外と飽きが来ない気がします。他のクルマならどうだかわかりませんが。
(室内に乗り込む)
運転席のドラポジ、すぐに決めれます。ゴルフ7だと足を投げ出す感じですが、フォーカスは比較的足を上から落とす感じです。ペダル配置は、ハンドル中心のオフセットも無かったはず(しっかり確認してなかった、、、)。適度な囲まれ感、これはやる気になる雰囲気です。前後左右を見渡すと、どこかが見づらいといったことも感知できませんでした。
後席、これはゴルフ7よりいいです。まさに椅子に腰かける感じ、足を投げ出さず、上体が寝そべることも無くとても快適。視点が前席より高く感じた気がします。ゴルフ7に比べてウインドスクリーンが上下に長めなので、適度な開放感もあります。
ウインカーレバーは輸入車なのに右です。タイ製だからでしょうか(左側通行の国なので)。
ダッシュボード一式、メーターパネル、カーステレオ(SONY製)、ともに明るいブルーを速度計の針などに多く使われる様は、HONDAオデッセイや新型アコードハイブリッドのような宇宙船的(?)もの。ホンダほどキラキラしていないので、欧州車に慣れた方でも受け入れ可能だと思います。
そうそう、ワイパーがバタフライ方式(オデッセイやプジョー307のような)でした。輸入車ですが、ワイパーの位置が右ハンドル用に設定されていて、右ワイパーが上、左ワイパーが下になっています。307は左ハンドルのままでしたので、運転席側の吹き残しが多く雨の日などはかなり見づらかった記憶があります。
(高速道路を走り出す)
まずは高速道路を走ります。最近の欧州車のトレンドとなってしまった小排気量ターボに慣れた方だと、自然吸気「直噴」にもかかわらず「トルクが薄いなぁ」と感じるかもしれません。実際自分がそうでした。しかし、本来DCTというのは小排気量ターボより、今回のフォーカスのような自然吸気の方が制御しやすいはずです。ターボとDCTの組み合わせだと、エンジンと変速機の協調制御をキチンとしないとどうしてもギクシャクしますから。ていうか、どんなにキチンとしてもギクシャクします。ただそれは低速域に限る話ですけどね。なので、フォーカスに乗って10分もすると、切れ目無いトルクがフラットに出ることに一種の快感が芽生えてきます。これは1.4ターボのゴルフ7にはないものです。数字を比較すればわかりますが、フル加速したときの単純な速さはもちろんゴルフ7の1.4ターボが上です。
高速道路で速度が上がってきたときの感触は「ゴルフ7ほどじゃないけど、かなりビタッと道路に張り付くなぁ」というもの。これはまさしく日本人が想像するドイツ車に限りなく近いです。当然、高速領域での恐怖感は全くありません。もちろん法定速度+αですよ。高速域で欲しいトルクはもれなく出してくれるので、遅くてイライラすることはありませんでした。
エンジンサウンドはこれといって特筆すべきものではありませんが、音質と音量とも、もうちょっと聞かせる演出(ポルシェ911やトヨタ86のサウンドクリエーターとか、小賢しいものじゃなく)があってもいいかも。おおざっぱなエンジンの印象は「静か」です。
(一般道を走ってみる)
Alfa Romeoのような、市街地でもなんか楽しい、てのはないです。静かに快適にまちなかをゆったり走ることができます。市街地ではDCTの変速が頻繁になりますけど、今時のDCTですからギクシャク感はありません。蛇足ですが、森慶太さんがベンツAを「ゴルフ7が1軍選手なら、Aは2軍選手だ。」と酷評してましたけど、我が町のVWディーラーの営業マンもDCTの制御だけで無くすべてが出来損ないのひどいプロダクトだと言ってました(VWジャパンの研修で、Aも運転したらしい)。
(山道を走ってみる)
上り坂を走ってみると、やはりゴルフ7の1.4ターボエンジンとの数値の違いがもろに出ます。平たく言うと「ちょっと遅い」。しかしです。直線でアクセルを踏み込んで、コーナー手前でブレーキを踏み、ハンドルを丁寧に切り込んでいくと、リヤタイヤにスリップアングルが付き、まるで後輪駆動のようにクルマが自転運動を始めます。この瞬間、私は「うわー、楽しいなぁ」とつぶやいてしまいました。標準装備の「トルクベクタリング」が効いているのかもしれません。ちょっとオーバースピードでカーブに進入しても、ちょっとアクセルを緩めてハンドルをゆっくり切り足せば「ヒラリ」とクリヤします。こうなってくると、さっきまでセールス氏に「ここがいいね、ここがもう少し」とか感想を伝えながら運転してたのが、どんどん運転に集中して無口になっていきます。マツダCX-5のときもこのコースを通りましたけど、無口にはなりませんでした。私のようなクルマ好き(ていうかクルマ変態ww)のツボをわかっているのかな、と思ったくらいです。コストをケチってない「と思われる」ダンパーの動きはとてもしなやかだし、ロールの量及びロールスピードは正に「ちょっきり。適正」。
こう書いていくと欠点が無いようですが、大きな欠点がふたつあります。ひとつめはパドルシフトがオプション設定すらできないこと、シフトレバーでティプトロのように前後にガチャガチャ変速もできず(Sポジションを選択し機械任せにすることは出来ますが)、唯一可能なのはシフトレバー横に付いている、妙なサムスイッチ(?)を上下に動かすこと。これがメッチャ使いずらい。それはセールス氏に伝えましたが、案の定他のお客さんからも指摘があったそうです。二つ目は、特に旋回中に気になる「ハンドルからタイヤの反力があまり伝わってこない」。簡単に言うと手応えが軽い上にロードインフォメーションが薄目なのです。高速を走ってたときはそんなに感じなかったのですが。
(ボディ剛性全般)
今日現在、ゴルフ7を上回る剛性「感」を持っているCセグはありません。あの剛性感はエグイというか、ライバル気分を打ちのめすほどのものなので、あれを基準にしてはいけません。なのでそれよりは劣りますが、これも十分あると思います。足回りの剛性感とダンパーとの相性もとても良いです。
(総評)
ラテン車をイメージさせる旋回上等なコーナリングの楽しさ、高速道路でのドイツ車的安定感のある走り。DCTと自然吸気エンジンという珍しい組み合わせのパワートレイン、自然に腰掛けることができる室内空間、最近のアメ車やホンダ車に通じるダッシュボード回りのデザイン。ベーシックでは無いけど、スポーティな外見。正直、もう少しパワーがほしいなと思いますが、パドルシフトの件さえ何とかしてくれれば、Cセグでオススメできる車の1台になります。
あとでセールス氏に聞いたところによると、あるお客さんフォーカスを含め、同じCセグメントのライバル車を、それぞれ6回試乗して(6回×候補車、ですからかなり何度も試乗したんでしょう)フォーカスに決めてくれたお客さんもいたとのこと。
勝手な憶測ですが、日本では「良い機械」を求め、欧州では「操る楽しさ」を求める傾向があるような気がします。もちろん、昔から築き上げてきたブランドイメージやアフター体制の規模も全く違うのですけど、Fordが「ゆるゆるなアメ車メーカー」という先入観を早く打破できるといいなと思った、今回の試乗でした。