Ford Focus(フォードジャパン公式HPより)
日本国内に欧州フォード謹製である現行フォーカスが導入されてから2年ほど経過しました。日本国内では正直言って今もそれほど売れているとは思えないんですけど、2012年上半期には、単一車種として世界で一番売れた自動車(フォード自身が発表したことなので、統計の取り方に色々あったりしますが)なんです。
フォードって誰でもわかるガチガチのボディや足回りはなく、ちょっとハンドルを切ったらギョバッと曲がる異常にクイックなハンドリングも無く、アウディのような上質な内装も無い。
でも実際のボディ剛性はかなり高く、ロールはするけどアスリートが強靱な肉体でグッと腰を沈めるようなしなやかさを持ち合わせた足回りであり、ハンドルは遅くも早くもない「生身の人間が膨大な時間をかけて仕上げないと出せない"チョッキリな"ハンドリング」を実現している、、、などと説明してもなかなか簡単に納得してもらえないしなぁ。
あとはボルボV40シリーズのように、デザインであっと言わせるしか無いと思います。中身だけではクルマは売れないですよ。
現代のクルマは「値段とブランドとカッコだけである」と言い切ったのは福野礼一郎氏ですが、フォードのように中身がいいのなら売るために残された要素はカッコ(強いて言えば広告戦略も)しかないんじゃないかと思うんです。
また、「ゴルフ4がダメグルマになっている間に、初代フォーカスが世界における販売台数でゴルフを追い抜き、ゴルフ5を開発するに当たり、フォーカスの技術者を引き抜いた」という話をしてもなかなか難しい。
さて2年ほど前、モーターファンイラストレイテッドのブログで福野礼一郎氏がフォーカスを試乗したときの様子がチラッと出てました。一部抜粋すると、、、
ここでフォード・フォーカスが本領を発揮します。
うおおおおお!なんだコリャあああああ!
うははははは!楽しい楽しい楽しい!
すげー!うはははははははは!
ふたりで運転を代わりながらこんな車内でした。
こんな感じだったようです(「ふたり」とは福野さんとMFIの編集の方です)。この時の試乗記が実際に文字になったときはもっと冷静な書きっぷりでしたが、それほどまで旋回が楽しいクルマだったんでしょう。ちょっとだけ試乗記を抜粋してみましょう。伊豆スカイラインが試乗コースだったようです。市街地はフツーのクルマとしか感じなかったフォーカス。それがワインディングに行くと、、、
(以下抜粋)
走り始めて最初のカーブを曲がった瞬間に、かなりの手応えを感じた。
前荷重から切り込んでいくと、左右輪が接地感を保ちながら、前下がりのロール軸でぐっと沈め、その姿勢を保ったままねらったラインを実に正確にシャープにトレースしたからだ。
こ、これは。。。という感じ。
切り返しの身のこなしもいい。
あおられずよろめかず、重心だけを左から右へ移し、内側が浮き上がるのではなく、外側が沈み込むようにロールが付く。前荷重をかけずに進入してみたが、フロントの応答感が非常にしっかりしてレスポンスもいいので、操舵切り増し操作だけで車線をキッチリキープできる。
ターンインで素直にヨーがつき、切り増しにもビビットに反応するのはさすがトルクベクタリングだが、左右輪の駆動力コントロールだけでこの感じがすべて出るとも思えない。
フロントのサスとダンパーの取り付け剛性、サブフレームの剛性と取り付け剛性、ボディの剛性。いずれも高い。
土台がしっかり固まっているから、軽やかにバネ下が躍動している、そういう感触がある。
伊豆スカイラインはカーブと高低のリズムに富む屈指のワインディングルートだが、逆バンク気味のブラインドコーナーも多く、前荷重を充分入れないと、浮き足立ってかなり危険な走りになりがちだ。フォーカスはリヤのアシがしなやかに上下して路面を追随し、接地性を常に保っている。ブレーキング時や下りカーブ前荷重で旋回中のリアの接地感は素晴らしい。それでいてフロントがどこまでも応答してくるのだから、ロードホールディングは異様なほどだ。
ミシュランプライマシーの215/50-17なんて普通のタイヤを履いて、これだけ操縦性と操安フィーリングを出している。姿勢が終始フラットに保たれ、終始乗り心地が抜群にいいことにも驚かされるが、、ライバルより細いタイヤを選定したことも、これに一役買っている。
ワインディングの走りにおけるタイヤとバネとダンパーのバランスとチューニングは、ほとんど完璧だった。この操安性の開発者はセンスがあると思う。
あとステアリング。
あとでエンジンルームを覗いてみたら、ラックの横にモーターを置いてベルトでボールスクリュー機構を回転させるという、BMWの5や7、ポルシェ991などが採用しているのと同様の、ラック駆動タイプ電動PSのようだ。低速域では若干操舵力が軽めで頼りない感じだが、Gをかけて旋回中の操舵感は非常にクリーミーで最上のフィーリングだった。
伊豆スカイラインにおけるフォーカスは、まるですべてがファインチューニングしてあるような感触だった。まさしく天国級の走りだ。こんな話は滅多にない。
唯一残念なのは、せっかくのDCTなのに、シフトセレクターの横についたヤボな設計のシーソー式スイッチの操作でしか、マニュアルセレクトする方法がないこと。NAとしては低中速域/低中速アクセル開度からしっかりとトルク感の出ているエンジンだから、3速の守備範囲は非常に広く、6速しかないこと自体には山道でもさほど大きな不満はなかったが、やっぱり電光石火でいつでも2速に落とせるパドルは、どこを走っていても欲しい。
あまりに楽しくて気持ちいいので、下りるはずの韮山峠を通り越し、玄岳まで行ってしまった。
頭を冷やすことにして、萬澤氏にハンドルを渡し、三養荘までの帰路はリヤ席に乗る。
(抜粋終わり)
で、市街地に戻ったら、やっぱり結局フツーのクルマに戻っていたそうです(笑)
私自身は、ベンツ、ビーエム、ワーゲン、いずれのクルマも所有したことがありますが、フォードほどモデルチェンジごとにあまり変わらない、あるいは期待を(値段相応に)裏切らないメーカーは初めてです。過去に所有した特定の自動車会社のファンになったことは一度たりともありませんが、フォードに関しては明らかにファンになっている自分がいます。
フォーカスとフィエスタに共通するのは、クルマが旋回している時の自転軸が空から見てクルマの中心にあること。これは後輪駆動車に似たものです。こうなると、ドライバーは楽しくて楽しくてしょうがなくなるんです。日本のFF車はもちろん、VW・AudiグループのFF車も自転軸も後ろ寄り。その方が曲がりにくく感じても直進安定感を得られますから、どちらが正しいとは言えません。
いずれにしても、多分次もフォードを買うでしょう。カネが無くて当分先の話になるでしょうけど(汗)
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日本国内に欧州フォード謹製である現行フォーカスが導入されてから2年ほど経過しました。日本国内では正直言って今もそれほど売れているとは思えないんですけど、2012年上半期には、単一車種として世界で一番売れた自動車(フォード自身が発表したことなので、統計の取り方に色々あったりしますが)なんです。
フォードって誰でもわかるガチガチのボディや足回りはなく、ちょっとハンドルを切ったらギョバッと曲がる異常にクイックなハンドリングも無く、アウディのような上質な内装も無い。
でも実際のボディ剛性はかなり高く、ロールはするけどアスリートが強靱な肉体でグッと腰を沈めるようなしなやかさを持ち合わせた足回りであり、ハンドルは遅くも早くもない「生身の人間が膨大な時間をかけて仕上げないと出せない"チョッキリな"ハンドリング」を実現している、、、などと説明してもなかなか簡単に納得してもらえないしなぁ。
あとはボルボV40シリーズのように、デザインであっと言わせるしか無いと思います。中身だけではクルマは売れないですよ。
現代のクルマは「値段とブランドとカッコだけである」と言い切ったのは福野礼一郎氏ですが、フォードのように中身がいいのなら売るために残された要素はカッコ(強いて言えば広告戦略も)しかないんじゃないかと思うんです。
また、「ゴルフ4がダメグルマになっている間に、初代フォーカスが世界における販売台数でゴルフを追い抜き、ゴルフ5を開発するに当たり、フォーカスの技術者を引き抜いた」という話をしてもなかなか難しい。
さて2年ほど前、モーターファンイラストレイテッドのブログで福野礼一郎氏がフォーカスを試乗したときの様子がチラッと出てました。一部抜粋すると、、、
ここでフォード・フォーカスが本領を発揮します。
うおおおおお!なんだコリャあああああ!
うははははは!楽しい楽しい楽しい!
すげー!うはははははははは!
ふたりで運転を代わりながらこんな車内でした。
こんな感じだったようです(「ふたり」とは福野さんとMFIの編集の方です)。この時の試乗記が実際に文字になったときはもっと冷静な書きっぷりでしたが、それほどまで旋回が楽しいクルマだったんでしょう。ちょっとだけ試乗記を抜粋してみましょう。伊豆スカイラインが試乗コースだったようです。市街地はフツーのクルマとしか感じなかったフォーカス。それがワインディングに行くと、、、
(以下抜粋)
走り始めて最初のカーブを曲がった瞬間に、かなりの手応えを感じた。
前荷重から切り込んでいくと、左右輪が接地感を保ちながら、前下がりのロール軸でぐっと沈め、その姿勢を保ったままねらったラインを実に正確にシャープにトレースしたからだ。
こ、これは。。。という感じ。
切り返しの身のこなしもいい。
あおられずよろめかず、重心だけを左から右へ移し、内側が浮き上がるのではなく、外側が沈み込むようにロールが付く。前荷重をかけずに進入してみたが、フロントの応答感が非常にしっかりしてレスポンスもいいので、操舵切り増し操作だけで車線をキッチリキープできる。
ターンインで素直にヨーがつき、切り増しにもビビットに反応するのはさすがトルクベクタリングだが、左右輪の駆動力コントロールだけでこの感じがすべて出るとも思えない。
フロントのサスとダンパーの取り付け剛性、サブフレームの剛性と取り付け剛性、ボディの剛性。いずれも高い。
土台がしっかり固まっているから、軽やかにバネ下が躍動している、そういう感触がある。
伊豆スカイラインはカーブと高低のリズムに富む屈指のワインディングルートだが、逆バンク気味のブラインドコーナーも多く、前荷重を充分入れないと、浮き足立ってかなり危険な走りになりがちだ。フォーカスはリヤのアシがしなやかに上下して路面を追随し、接地性を常に保っている。ブレーキング時や下りカーブ前荷重で旋回中のリアの接地感は素晴らしい。それでいてフロントがどこまでも応答してくるのだから、ロードホールディングは異様なほどだ。
ミシュランプライマシーの215/50-17なんて普通のタイヤを履いて、これだけ操縦性と操安フィーリングを出している。姿勢が終始フラットに保たれ、終始乗り心地が抜群にいいことにも驚かされるが、、ライバルより細いタイヤを選定したことも、これに一役買っている。
ワインディングの走りにおけるタイヤとバネとダンパーのバランスとチューニングは、ほとんど完璧だった。この操安性の開発者はセンスがあると思う。
あとステアリング。
あとでエンジンルームを覗いてみたら、ラックの横にモーターを置いてベルトでボールスクリュー機構を回転させるという、BMWの5や7、ポルシェ991などが採用しているのと同様の、ラック駆動タイプ電動PSのようだ。低速域では若干操舵力が軽めで頼りない感じだが、Gをかけて旋回中の操舵感は非常にクリーミーで最上のフィーリングだった。
伊豆スカイラインにおけるフォーカスは、まるですべてがファインチューニングしてあるような感触だった。まさしく天国級の走りだ。こんな話は滅多にない。
唯一残念なのは、せっかくのDCTなのに、シフトセレクターの横についたヤボな設計のシーソー式スイッチの操作でしか、マニュアルセレクトする方法がないこと。NAとしては低中速域/低中速アクセル開度からしっかりとトルク感の出ているエンジンだから、3速の守備範囲は非常に広く、6速しかないこと自体には山道でもさほど大きな不満はなかったが、やっぱり電光石火でいつでも2速に落とせるパドルは、どこを走っていても欲しい。
あまりに楽しくて気持ちいいので、下りるはずの韮山峠を通り越し、玄岳まで行ってしまった。
頭を冷やすことにして、萬澤氏にハンドルを渡し、三養荘までの帰路はリヤ席に乗る。
(抜粋終わり)
で、市街地に戻ったら、やっぱり結局フツーのクルマに戻っていたそうです(笑)
私自身は、ベンツ、ビーエム、ワーゲン、いずれのクルマも所有したことがありますが、フォードほどモデルチェンジごとにあまり変わらない、あるいは期待を(値段相応に)裏切らないメーカーは初めてです。過去に所有した特定の自動車会社のファンになったことは一度たりともありませんが、フォードに関しては明らかにファンになっている自分がいます。
フォーカスとフィエスタに共通するのは、クルマが旋回している時の自転軸が空から見てクルマの中心にあること。これは後輪駆動車に似たものです。こうなると、ドライバーは楽しくて楽しくてしょうがなくなるんです。日本のFF車はもちろん、VW・AudiグループのFF車も自転軸も後ろ寄り。その方が曲がりにくく感じても直進安定感を得られますから、どちらが正しいとは言えません。
いずれにしても、多分次もフォードを買うでしょう。カネが無くて当分先の話になるでしょうけど(汗)
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