明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1056)東日本大震災と福島原発事故から4年、私たちは何をしなければいけないのか(中)

2015年03月18日 11時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150318 11:00)

東日本大震災と福島原発事故からまる4年を経て、私たちは何をなさなければならないのか。明日に向けて(1054)で以下の五点を列挙しました。

一つ。沿岸部の広く長い地域で大津波の被害からの立ち直りを進めること。
二つ。福島第一原発事故による放射能漏れに対して放射線防護活動を強化すること。
三つ。福島第一原発事故の真の収束を進め、並行して原発災害対策を進めること。
四つ。原発再稼働を許さず原発ゼロの道をめざすこと。
五つ。これらすべてと連動しつつ憲法9条と平和を守ること。

前回に続いて三~五の内容を論じて行きたいと思います。
まず福島第一原発事故の真の収束を進めることが私たちに問われています。もちろん収束を行う主体は今のところは東京電力です。
収束作業といってももちろん私たちが現場に関われるわけではありませんが、あれほどの事故に誰も責任をとらず、処罰もされず、今なお、事故隠しを繰り返している東電に作業を委ねているのはあまりに危険です。
そのために市民側からのウォッチを続ける必要があります。これはとても重要な点です。監視の目が光らなくなるほど、現場作業がいい加減になり、より深刻な放射能漏れが起こったり、大惨事に陥る可能性も高くなります。

ただこれまでも繰り返し指摘してきましたが、汚染水漏れなどをめぐって、後から後から「新たな事実」が提出されるため、ウォッチする側が麻痺してしまう感があります。
事実を丹念に追いかけてないと、何がどう問題なのかも分からなくなってくる。口を挟みにくくなってもきます。僕のように分析記事を書いているものにとってこの点はとても重要です。
そこで今回はポイントとなる点、何をどうみたら良いのかを示しておきたいと思います。

福島原発の現状については、東京新聞が毎月現状を図示してくれています。分かりやすい貴重な情報ですのでまずはこれをご紹介します。
 福島第一原発の現状(東京新聞)
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/condition/

最も重要なのは、1号機から3号機の原子炉内の核燃料が、どれもメルトダウンして溶け落ちていて、大変な量の放射線を発していることです。人間が近づけばすぐに致死量に達してしまうほどです。
高線量の放射線はロボットも容易に壊してしまうため、溶け落ちた燃料がどこにどのような形状で存在しているのかすらはっきりつかめていない。コントロールする以前の状態なのです。
しかも放射能を閉じ込めるはずの格納容器が破損しているため、核燃料を冷却するために激しく汚染された水が、あちこちから漏れだして地下水と混ざり、どんどん出て行ってしまっている。汚染が拡大しているのだから、事故はまさしく継続中です。

原子炉の廃炉に向けては東電が「工程表」を作ってきましたが、あまりに予定と現実が食い違うため、原子力規制委員会が今春に「工程表」の書き直しを行いました。
そこでは従来の溶けた核燃料は何年に取り出しを開始する云々という項目が抜けてただひとこと、2019年までに原子炉格納容器の中を遠隔操作のロボットで把握するという。
なんと事故から8年経った時点を、やっと内部が把握できる時期としているのです。しかもそれとて所詮は絵に描いた餅。実際にそこまでいけるかどうかの補償はありません。

溶け落ちた核燃料の持つ放射能量は膨大です。事故で大気中に漏れたのは10分の1と言われてきましたが、今も毎日、大気中にも漏れだしているし、汚染水によって続々と海に運ばれています。
ただこの点のみがクローズアップされますが、何よりこの膨大な量の燃料が、安全管理されていないことが私たちにとっての大変な脅威です。
放射能を閉じ込めるはずの格納容器が壊れているためですが、そもそもどこがどう壊れているかも分かっていない。となるとこの先、さらに崩壊が進行して、核燃料が外に出てきてしまう可能性も濃厚です。

そのとき、どんなことが起こるのかが誰にも分からないのが一番、恐ろしいことです。
この点では実は福島第一原発事故は、原発の危険性を懸命に指摘してきた多くの良心的な科学者の想定をも大きく覆しました。誰もあのような形での事故の進展を予測できなかった。
もちろんそれはこれらの方たちの不備なのではまったくありません。原発事故が一度起こってしまえば、私たち人類の統御をまったく超えてしまうものであることを指し示したのです。

さらにその上、各炉に燃料プールがあり、たくさんの使用済み核燃料が入っている。これが私たちの眼前に大きな危機として存在しています。大地震と爆発でそれぞれの建屋が繰り返しダメージを受けているからです。
もっとも懸念された4号機には1500体以上が入っていましたが、これはさまざま困難を超えて、地上に降ろすことができました。4号機は運転していなかったので、これで危機は去りました。画期的な成果だと思います。
しかし1号機には392体、2号機に615体、3号機に566体、合計1573体もがまだ残っています。しかも4号機と違って、放射線量が高すぎるので、降ろす作業への取りかかりが容易ではないのです。

新たな工程表ではプールからの燃料取り出しについて、3号機は2017年以降に、1号機は2019年以降に完了と書き込まれましたが、2号機は時期すら示されませんでした。
大地震などによる建屋の倒壊が懸念されており、誰よりも東電自身が一刻も早く燃料を降ろしたいと思っていると思いますが、その時期の展望がこのような状態なのです。
順調にいっても、東京オリンピックを予定している2020年でもまだ2号機の燃料が残っている可能性があるし、これまでなんども工程が繰り延べになってきたことをみても、3号機、1号機がこの見込みどうりにいくかどうか怪しい。

非常に重要な点は、状態そのものが分からない膨大なメルトダウンした核燃料と、危険であることが分かりながら、降ろすことのできない使用済み核燃料の恐ろしい量が、私たちの目の前にあることです。
にも関わらずこの巨大な危機がクローズアップされていません。これまで繰り返し述べてきた、危機を認めまいとする「正常性バイアス」がこの国全体にかかってしまっていて、危機がきちんと認識されていないのです。
僕はこの点がまた私たちの危機を強めてしまっていると思います。私たちの国が壊滅する危険性がまだ目の前に残っていることを見据えずして、合理的な対応が進むとはとても思えないからです。

では危機と危機として認識するためには何が必要なのか。福島第一原発が危機に瀕した事態を想定した避難訓練の実施です。東北・関東を中心に広域で行う必要があります。
同じことは他の原発や核施設でも言えることです。放射能量で言えば最も恐ろしいのは六ヶ所村に貯められた膨大な量の核燃料です。それが沈められたプールが自然災害で破損した場合も、少なくとも東日本が壊滅する可能性があります。
各原発にもそれぞれに燃料プールがあります。これらも乾式貯蔵などに一刻も早く移していく必要がありますが、その完了まで避難の準備をとり続けていく必要があります。

まとめます。

私たちが今しなければならないのは、福島第一原発事故の収束が少しでも安全に、合理的に進むように、市民側からのウオッチを継続していくことです。
その中には作業されている方たちの労働環境を守ることも含みます。現場で作業中の死亡事故も起こっていることを踏まえて、あらゆる角度から光を当てていく必要があります。
事故の隠蔽体質が強く、自分たちの逃げ口上ばかりを探している東電の体質をしっかりと見据えて、この作業を継続していきましょう。

当時に、福島第一原発が現状で抱えている大変な危険性への共通認識を何度も作り出していくことです。そのためにも各種のレベルでの避難訓練に取り組みこと、これと連動しつつ全国で核施設の事故を想定した訓練を行うことです。
危険性の認知と避難訓練の実施は対のものとしてあります。人には「正常性バイアス」が働くメカニズムがあるので、どうしても危機の強調だけではそれを受け取れない傾向性があります。
危機への対処法、命を長らえる処方箋、あるいは危機に臨んでの選択肢が示されてこそ、危機を受け取り、いざという時の準備を始めることができるのです。そのために避難訓練は有効です。まずは市民レベルで初めて下さい。

こうした取り組みは、核施設の抱える危険性をさらにクローズアップすることになり、だからこそそれと向き合って作業している人々。放射線を浴びながら必死の作業をしている方たちに光を当てることにもつながります。
僕はそれが現場作業を少しでも向上させることにつながると思っています。なぜか。安倍首相の原発はコントロールされているという大嘘で、何より、現場の方達の労苦が著しく落とし込められてきているからです。
コントロールできないからこそ、現場は壮絶な苦労を重ねているのです。それを社会がもっと強く受け止めていく必要があります。それが現場を支えるからです。その意味で避難訓練は二重三重の効果を持っています。

私たちの前にある危機をしっかりと見据え、勇気を持ってこれに立ち向かっていきましょう!

続く

 

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