明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1328)被曝からみんなの命を守るために三田医師の言葉に耳を傾けて下さい(下澤レポート上)

2016年11月30日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20161130 23:30)

11月27日に京都「被爆2世3世の会」で「福島の被曝、そして広島・長崎の被爆の重ね合わさるもの」という企画を行いました。
東京の小平市で子どもたちを中心に3000人の人々の血液検査を行い、東京で表れている被曝影響をつかんで可能な治療を重ね、やがて自らも岡山に避難移住した三田茂医師をお招きして講演していただき、その後に僕が対談させていただきました。
大きなポイントだったのは、僕も参加している京都「被爆2世3世の会」で行った「被爆2世健康調査」を事前に三田さんに見ていただいて、重なり合うものについて語っていただいたことです。
これをIWJの萩崎茂さんが丁寧に撮影してくださり、中継するとともにアーカイブをアップしてくださいましたので以下にご紹介しておきます。

 被爆二世の健康実態調査報告と原発事故被災者の健康を考える学習講演会 福島の被曝、そして広島・長崎の被爆の重ね合わさるもの
 三田茂医師、守田敏也氏 2016.11.27
 http://iwj.co.jp/wj/open/archives/347977

大変、刺激的な内容で、すぐにもみなさんにお伝えしなければと思っていますし、今後、僕も三田さんのつかまれていることを積極的にあちこちに広めていこうと思っています。
今日の表題にも書いたように、被曝からみんなの命を守るために三田医師の言葉に耳を傾けて欲しいです。

さてそのために報告を書かねばと思っていたら、この日の参加者の方が素晴らしいレポートをFacebookにアップしてくださいました。
書いて下さったのは下澤陽子さんです。東京から関西へと避難移住された方で、岡山の三田医院にも訪れ、娘さん、息子さんの治療を受けてこられました。
下澤さんのレポートが素晴らしいのは、一つにかなり的確に三田さんの話された内容をつかんでまとめられていることです。
同時にご自身の体験と思いが重ねられており、レポートの域を超えた感動的な感想文になっています。

ここまで下澤さんの理解が進んだのは何より下澤さんが被曝当事者であること。
そしてまた、三田さんと出会うまでは医師のもとに駆けこんでもまったく相手にされずに苦しみ、もがき、そんな中で移住を決行されてきたということ、こうした体験を逞しく超えてこられたからだと僕には思えます。
下澤さん自身が、お子さんたちとご自身の命を守るために大奮闘されてきたがゆえに、素晴らしい理解力で三田さんのお話の核心をつかまれたのでしょう。

そこで今回は、下澤さんにご了解いただいて、この内容を転載させていただき、みなさんにご紹介することにしました。
ぜひお読み下さい。その上で、萩崎さんが撮って下さった動画もご覧になって欲しいと思います。
有料になってからでも一定の額を払えばご覧になることができます。
これを機会にこうした活動を続けているIWJを支えるためにも、お金を払っても観ていただけたら嬉しいです。

三田茂さんと下澤陽子さんに感謝を捧げつつ、以下、下澤さんのレポートをご紹介します。(なおタイトルは文章の最後の一文を引用して僕がつけました)
 
*****

被曝からみんなの命を守るため三田医師に耳を傾けて下さい!
~「福島の被曝、そして広島・長崎の被爆の重ね合わさるもの」に参加して~
2016年11月28日 下澤陽子 

昨日は、私の娘と、家族の命の恩人である三田先生と、その恩人へと繋ぐ道を作ってくださった方々の中の一人である守田敏也さんのお話を聞きに京都まで行きました。
「福島の被曝、そして広島・長崎の被爆の重ね合わさるもの」と題する講演会。
京都「被爆2世・3世の会」の主催するものでした。
またも猛烈に長い投稿になりそうですが、ぜひ、三田先生のお話を中心にご紹介させてください。

先生がご講演で話されたのは、原子力緊急事態宣言によって全ての防護の基準がゆるゆるになった中で生活する日本の人たちの被ばくの状況。
それも首都圏東京の被ばくとその健康被害のことについてお話しされました。
まず、先生が話されたのは 血液検査のことでした。
電離放射線健診、これに準じたことをやれば何かわかるかもしれないと、先生が考えられて始められた 血液検査です。
その血液検査はうちの子供達もしていて、その事を何度もFBで投稿してはいるのですがここでまたお話しさせてください。

先生が関東首都圏の3000人以上の人達に血液検査を続けてきて、はっきりとしてきたのは子どもたち、特に10歳以下の子ども達の白血球の中の好中球の値が下がってきているということ、それが今も続いているということです。
以下箇条書きにします。

〇011年から2012年の春にかけての検査を始めて間もない期間では、その傾向が見られていたのは東京の東の方、ホットスポットの多い汚染の強い場所に限られていて西の、東京の真ん中の比較的きれいな地域では、見られなかったのだそうです。
それが今ではどこでも同じ傾向そしてそれが続いているのだそうです。
影響が広く確実に出ているということ、汚染は全然解決されていないということ。

〇血液の数値は転地保養、移住によって 改善される例がとても多い。
私(下澤陽子)の子供達の例を書きますね。

好中球の変化(移住後)
息子 1980→3730→5230
娘 2079→2820→4210→3030

〇一般的には被曝の影響ではリンパ球が下がると言われているのだそうです。 私も他のお医者に下がるのはリンパ球だと言われたことがあります。(でも、現にうちは違うのに)
でも、広島長崎のデータを丁寧に見てみるとぽろぽろとそういうデータが 発見されるのだそうです。(好中球減少)

〇同じ検査は福島健康調査でもしていて、実は白血球、好中球減少の同じ傾向があった。(大人でも)事故後2年目あたりからほとんど情報が出なくなってしまっているとのこと。
人の関心が 甲状腺検査のみに向かっているというのも大きいのでしょう。
三田医院よりはるかに充実したデータである福島のものを、本当であれば公開させてみていく必要がある。

〇最近では、東京の人のデータがとても悪い。
栃木や茨城の人、避難をしている福島の人などと比べても悪い。人口が過密な場所での一般ごみの焼却の影響は大きいのではないか。

〇様々な病気、疾患の傾向について
東京ではインフルエンザは平成24年以降大人の病気に。体力のあるはずの30代~40代の入院が多い。
子どもに替わり、大人が流行を作っている。(数、増え方)
元の数が少ないので目立たないが血液の病気、白血病、リンパ腫の増加。
順天堂大付属の病院の診療実績から230→876
・ 性病の増加。どんな報告も2011年から激増をしている。
・ 東京で同じ患者さんを見続けていたが 子供の鼻炎、副鼻腔炎、蓄膿症が、同じ手法で治りにくくなっている。

喘息は とてもまずいと感じている。2012年に今まで薬で十分にコントロールしていた患者さんが自分の手に負えなくなる。
呼吸器系(鼻のど気管支)は、明らかに影響(放射性物質)を受けている。確実と思う。
・ 手足口病やヘルパンギーナなどの子供の病気が大人がかかるようになっている。逆に帯状疱疹に子供がかかるなどありふれた病気のプロフィールが変わってきている。
・ 医学の診断学、治療学にうまく入らない病気はどんどん増えていると思う。
例えばあちこち体が痛いというのが、リュウマチ性多発筋痛症の治療で上手くいくとか。ぶらぶら病のように不調で活動性が落ちて動けなくなるような状態が実は喘息であったり。(これ!まさに私の娘)

〇放射能によると思われる即時的、一時的症状について
・千葉の柏→岡山、避難後に皮膚炎が始まり水ぶくれだらけになり猛烈に痛がるお子さん。移住後に一時的にひどい症状が現れる例がある。
汚染地から綺麗な所へ転地すると、ガードが固すぎた免疫が裏手にでて激しい反応が出るのではないか。
そして落ち着くと、前は何ともなかったのに東京へ戻ると具合が悪くなる人。
汚染のある地から送られてくるダンボールや、来客で鼻血や皮膚症状など。
微妙な症状の例数々。

〇小児甲状腺癌は現実は小児ではない。平均年齢は16歳ぐらい。10歳以下はわずかである
最もハイリスクで現に進行している年齢層に検査の照準を当てていない。一番激増している15歳以上の検査頻度を減らして5年に一度はあり得ない。今のやり方では後になって数は分かっても適切な時期の治療ができない。
現在リンパ節転移は 患者の8割に登っている。
命を救うということ、病気を小さいうちにみつけるという視点で見ればこのやり方は倫理的に許されない。
甲状腺癌については大人の側が危機的状況にあると見られる。 20代~30代、それ以降。
そしてその原因は放射性ヨウ素とは言い切れない。

〇健康影響について子どものほうが影響大という話ではない。倒れるのは大人。
30代40代の、子供の親である世代の急死も多い。悲劇。

続く

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明日に向けて(1327)放射能について、食について、福島についてお話します!

2016年11月29日 07時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20161129 07:00)

講演等のスケジュールをお知らせします。
今週はコープ自然派の兵庫、大阪、京都のお招きでそれぞれ神戸市、大阪市天満橋、京都市南区でお話します。
この他、宇治市の市長選挙の応援演説にも立ちます。
日曜日は龍谷大学深草キャンパスで福島大学の荒木田さんをお招きしての企画にコーディネーターとして参加します。

以下、企画情報です。

*****

11月29日兵庫県神戸市

子どもたちを”内部被ばく”から守るために
https://www.facebook.com/events/1123205604465105/

私たちの知りたい情報がわかりやすいと好評の守田さんの講演会。最終日では、これからずっと続くであろう内部被ばくのことを学びます。
 汚染された食べものを食べると、体の中で被ばくします。子どもは大人の何倍も影響を受けてしまいます。食べものの選択ポイントを知り、子どもたちの体を守りましょう。
コープ自然派の放射能基準や取り組み、放射能パンフレットの説明もいたします。

【講師プロフィール】守田敏也(もりた・としや)さん
同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、現在フリーライターとして取材活動を続けながら、社会的共通資本に関する研究を進めている。3.11以降は原発事故問題に取り組み、各地で放射線防護の講演を行っている。
※著書:「内部被曝」「原発からの命の守り方」他

***********************

と き:11月29日(火)10:30~12:30
ところ:神戸市勤労会館 3F 308号室
    (神戸市中央区雲井通5-3-1 )

主催 コープ自然派兵庫

■定 員:70名
■参加費:300円( 一般450円)
■託 児:400円(一般600円)
※1歳半以上のお子様は必ず申込み下さい。
※要予約 ※託児申込締切11/18(金)※定員5名
■持ち物:筆記用具
■応募締切:11月25日(金)

***********************

◆イベントのお申し込み先◆

 ①【組合員サービスセンター】
TEL:0120‐408‐300
(携帯・IPフォンからは088‐603‐0080)
「営業日」  月~金
「営業時間」8:30~20:00

 ②【組織企画部】
Eメール:event18@shizenha.co.jp
FAX:078‐998‐1672

※【Eメール・FAXでの申込みをされる皆様へ】
・Eメールをご利用の場合は「コープ自然派イベント申込」と件名へ必ずご記入下さい。
・Eメール・FAXの事務局への着信後、申込確認のご連絡(返信)を致します。 2営業日を過ぎても連絡がない場合は組合員サービスセンターへ問合わせ下さい。

 【イベント当日のご連絡先】
・やむを得ず当日、欠席や遅刻となる場合は必ず事前にご連絡下さい。
 平日(祝日を含む) 「組合員サービスセンター」
 土曜日・日曜日   「イベント携帯 080-2435-4868」

*****

12月1日 京都府宇治市

12.1市民大集会
https://www.facebook.com/events/155550924917259/

宇治市文化センター大ホール
19時~21時

宇治市長選挙が12月11日投票で行われます。
市民共同の力で、福祉・暮らし・子育ての市政を創りましょう。
国の悪政直結よりも市民直結の市政を!

集会では田村和久氏、フリーライターの守田敏也氏、共産党副委員長の市田忠義氏らが市政転換の訴えをします。
多数のご来場を。
 
主催 みんなの宇治 市民が主人公の21世紀宇治を創るネットワーク 電話(23)6201

*****

12月2日 大阪市天満橋

12/2、12/26、1/30 守田敏也さん3回講座「原発からの命の守り方」
http://www.shizenha.ne.jp/osaka/detail/5/index.html?articleId=20191

福島原発事故という悲痛な経験を経てなお、原発推進政策が続いています。私たちの近くには高浜・大飯原発が建っています。
大きな地震が続くなか、原発災害や事故が起きたらどうすればいいのか。食べものの内部被ばくから子どもたちを守るには?
目をつぶるのではなく、立ちすくむのではなく、これから起こりうることに対して、何ができるのかをぜひいっしょに考えていきましょう。

①2016年12月2日(金) 
②2016年12月26日(月)
③2017年1月30日(月)
各回ともに同時間、同会場 10:00~12:00

各回の内容
①教えて!内部被ばくの基礎知識
被曝の基礎講座です。といっても現代社会では被曝の影響が極めて軽く扱われているのでその理由もともに学びます。
②原発災害は「とっとと逃げる!」 
原発事故があったらとっとと逃げ出す事が大事。そのために知っておくべき全ての災害対策に共通のポイントを学びます。
③なぜ再稼働するの?ホントの理由
政府や電力会社が再稼働に執着するのは原子力産業が崩壊しつつあるから。核のない未来にむけて真の理由を学びます。

■場 所: エルおおさか 南72号室 (京阪・地下鉄谷町線「天満橋駅」より西へ300m、京阪・地下鉄堺筋線「北浜駅」より東へ500m)
■講 師:守田敏也(もりた としや)さん フリージャーナリスト。
著書:「原発からの命の守り方(海象社)」「内部被曝(共著、岩波ブックレット)」他、ブログ「明日に向けて」発信中

■参加費:組合員300円、組合員以外450円、子ども(小中学生)無料
■定 員:40名 ※応募者多数の場合は抽選。(外れた方のみ連絡します)
■託 児:あり(1歳~未就学児まで)組合員500円/1人、組合員以外750円/1人
 託児対象外(1歳未満)・子ども同伴:あり 託児申込み締切日:①、②、③とも開催日の1週間前
■〆切:①11/29  ②12/22  ③1/26
■イベントID:①07161842  ②07161843  ③07161844
■主催:コープ自然派ピュア大阪 理事会

■お申込み方法
メール:kodama07@shizenha.co.jp
FAX:072-635-0776
フリーダイアル:0120-408-300
携帯・IPフォンからは088-603-0080

*****

12月3日 京都市南区

【連続講座 】知っておきたい!大切な人を守る方法 ~原発災害編~ 【第3回】内部被ばくから身を守る心得
https://www.facebook.com/events/347554968932730/

東京電力福島第1原発事故から5年を過ぎた今でも、先の見えぬ収束作業の途上で、事故の全容は明らかでなく、放射能は今も海や大地に広がっています。
食品のみならず、さまざまな物の流通により、「被ばく」は京都に住む私たちにとっても身近な問題です。
若狭の原発は今は運転されていません。しかし、国や関電は一刻も早い再稼働をのぞみ、それどころか、運転開始から40年を過ぎた危険な老朽原発までも動かそうとしています。
また、愛媛県の伊方原発が、今夏の再稼働にむかっています。予告なしに訪れる災害や事故、「まさか、自分の身に起こるわけがない」と、どこかで安心していませんか? 
その場に立ちすくむことがないように、今、何をしておけばいいのか?一緒に考えましょう。

日 時:12月3日(土)10:00~12:00
会 場:京都テルサ 東館2階セミナー室2(地図は裏面参照)

■講 師:守田敏也さん(京都市在住。同志社大学社会的共通資本研センター客員フェローなどを経て現在はフリーライター。)
■参加費(1講座):組合員/ 300円  一般/450円
■定 員:50名  *定員に達した場合  先着順
■託児:あり。10名 (1歳半~未就学児) 1人 / 500円
  託児対象外(1才半未満)の同伴:可 ※託児締切は11/23(水)
■申込み締切日:11/25(金)午後5時まで
■主催:守田さん講演会実行委員会
■イベントID: 06161003

 ------------------------
 お問い合わせ・お申し込み
------------------------
<24時間受付> FAX : 0742-93-4485
        mail : shizenha_kyoto@shizenha.co.jp
<月~金8:30~20:00> フリーダイアル:0120-408-300 携帯・IPフォン:088-603-0080

*****

12月4日京都市 龍谷大学深草キャンパス

『ふつうに暮らしたい』 3.11は過去の話?いいえ、未来(あした)の私たち
https://www.facebook.com/events/1699655360355060/

2011年3月11日の東日本大震災から既に5年半経過しました。
 東京電力福島第一原子力発電所で起こった事故は、いまだ収束をみないまま、時間の経過とともに、さらに新たな問題を抱える状況となっています。

 私たちと私たちの未来につながる命と健康をむしばむ「放射能」という人間の五感では感じられない脅威。
それは福島だけのことではありません。
 地震や台風のたびに、原発や放射能の事を心配する暮らしが、果たして「ふつうの暮らし」なのでしょうか?
 今回は、「ふつうに暮らす」「『ふつう』っていったい何?」というところから、福島事故5年半後の現在、改めて事故発生から経過、現実に起こっている問題をしっかり見つめ直します。そして、これからを一緒に考えたいと思います。
 多くのみなさまのご来場をお待ちしております。

2016年12月4日(日)
開場 13:30 / 開会 14:00
[会場]龍谷大学深草キャンパス 和顔館 B201
[参加費]無料
【講演】
 『福島事故5年半後の現在』
  荒木田 岳 さん

《プロフィール》
福島大学准教授 / 行政政策学類 地域と行政専攻
1969年・石川県生まれ 2000年から福島大学に赴任
福島原発事故後、被災地住民の被ばく問題を懸念し、同僚らと自主的な除染活動に参加。
「脱被ばく」を掲げ、政府やマスコミによる被ばく強要を告発している。

 【トークセッション】
守田 敏也 さん(司会)
/ 荒木田 岳 さん / うの さえこ さん / 藤本 真生子 さん

【主催】
原発を考える伏見フォーラム
【連絡先】
原発を考える伏見フォーラム 事務局
TEL 075-604-2133 (京都南法律事務所内・溝江)
https://www.facebook.com/grouptnp3
https://twitter.com/grouptnp3

【会場までのアクセス】
JR奈良線「稲荷」駅下車、南西へ徒歩約8分
京阪本線「深草」駅下車、西へ徒歩約3分
京都市営地下鉄烏丸線「くいな橋」駅下車、東へ徒歩約7分

その他に、会場では、原発関連の取り組みの展示なども予定しています。

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明日に向けて(1326)東電が福島第二原発3号機燃料プール冷却装置停止理由を変更!

2016年11月25日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20161125 23:30)

11月22日未明に福島県沖でマグニチュード7.4という大きな海底地震が起こりました。
この影響で福島第二原発3号機の冷却装置が自動停止、冷却がポンプが再起動されるまでの90分間、停止しました。
東電はその後、燃料プールに隣接し、プールからの水を受けて再度冷やしてプール内に送り戻すスキマーサージタンクの中の水が波打ったことをセンサーが水位低下と判断し、ポンプが停止したと説明しました。

ところが昨日夜半になって東電が冷却装置の停止の理由を水位低下にあったと変更しました。
短い記事で報じられたので、全文を引用しておきます。

***

 地震で冷却停止、原因は水位低下 福島第2、東電が説明変更
 共同通信 2016/11/24 22:06
 http://this.kiji.is/174506626139719157?c=39546741839462401

東京電力は24日、福島県沖の地震により福島第2原発3号機の使用済み燃料プールの冷却が一時停止した原因が、プール脇にあるタンク内の水位低下だったとの見方を示した。
当初の説明は、タンクの水が地震で揺れたことを水位変化と検知したとしていたが、変更した。

燃料プールは、循環している冷却水の上澄み部分が脇にあるタンクに流れ込む構造。タンクの水を浄化・冷却し、再びプールに注水している。
地震時は揺れにより、プールの水の一部が建屋内の別の設備に流れ出たため、本来は脇にあるタンクに流れ込む水量が減少し、タンク内の水位が低下したとみられる。

***

これは一体どういうことでしょうか?

当初東電は、「ポンプが自動停止したのは、水が波打って、センサーが誤って水位低下と誤判断したためであって、何ら問題となる事態ではない」と説明したのです。
しかし変更後の説明は明らかにより悪い事態が起こっていたことを意味しています。水位低下という異常事態が実際に発生し、センサーは正しくそれを感知していたからです。
その意味で設計思想から言えば、ポンプは正しくも止まったことになります。しかし何か異変が起こると、ポンプが止まって冷却が停止されるのでは、事態は安全側に収束しないわけで、フィールセーフの発想が無視されているようにも思えます。

それはともあれ、では水位低下の理由は何だったのか。新たな発表では「プールの水の一部が建屋内の別の設備に流れ出たため」とされています。
つまり22日東電が行った「冷却水漏れは起こっていない」という発表は、事実と食い違っていたのです。またも東電は、事故についてあまやった情報を流したことになります。

さらにここから先は疑問だらけです。そもそも東電は、冷却水がプールから漏れたのかどうか、こんな重要なこともすぐに確認できなかったのでしょうか?
何より東電は、現場でとくに問題がないと判断して1時間半後にポンプを再起動させたと言っているわけですが、しかしもともとの設定のままだったら水位を回復しなければポンプは動かなかったはずなのです。
水位の回復措置は、当たり前ですが水位が下がっているという事実を認識して行うわけで、少なくとも論理的には、この水位回復の過程で、水位が実際に下がったことが認知されたはずです。

しかし東電は最初の発表をこの後に行っているのです。
ということは、水位低下の事実を知りながら隠し、地震の影響を小さく見せようとしたのでしょうか?トラブルの隠蔽だったのではなかったのでしょうか?
この点をどこかのマスコミが追及していないか知りたくて、検索を繰り返していますが、まだこの事態を報じたのは昨夜配信の共同通信のニュースだけ。より悪い事態を東電が発表したのにフォローした記事が見つかりません。

また非常に懸念されるのは、この冷却装置の停止という事態は他の1、2、4号機ではなぜ起こらなかったのか。3号機との違いはなんであったのかです。
ちなみに福島第二原発の原子炉はどれも沸騰水型で、格納容器は1号機がマークⅡ型、2~4号機がマークⅡ型改です。とくに2号機、4号機は問題のあった3号機と同じ構造なので、ほぼ同じ揺れならどうしてそこでは冷却水漏れは発生しなかったのか。
ひょっとして3号機だけより大きく揺れたり、あるいは構造的に弱くなっている要因があるのではないでしょうか。

ともあれ起こってはならないことが3号機燃料プールで起きたのであって、その要因を探り、対処を行って、同じことが起こらないようにすることが大切なはずです。
しかしこうした安全思想から東電は大きくかけ離れており、その中で今回の大きな事実誤認か、事実隠蔽がなされたのだと思われます。

事故は一つ一つは小さなものでも、それらが重なった時により大きく危険性が高いものへと発展します。
またより強い地震のもとでは、そうした事故が同時多発し、対処を難しくもしてしまいます。だからこそ小さなもの一つ一つに丁寧に対応していくことが求められるのです。
その点で、冷却装置と言う最も大事な装置がダウンしてしまったことの要因が、まったく違う方向に転換されたのはとても大きな問題です。きちんとしたフォローが必要です。


なおこの問題ではもう一点、フォローを付け加えたいと思います。
明日に向けて(1323)でこの問題を論じたとき、燃料プールの危険性を詳述しました。福島第二原発だけでも約9500本もの使用済み核燃料が沈められている。このことが私たちにとっての巨大な脅威であるわけです。
ではどうしたら良いのかと言うと、より安全な状態に移すことで、技術的にはプールがいらない乾式のキャスクに安置することが危険の低減のために必要とされています。

ところがアメリカの反原発運動の中で、日本にも売られようとしているホルテック社のドライキャスクの危険性が指摘されていることを知りました。
このことを教えて下さったのは、篠山市原子力災害対策検討委員会をともに担っている玉山ともよさんです。

彼女が僕の記事を読んで指摘してくださったのは、リラッキングが大きな問題であるにせよ、僕が紹介した電事連資料の中で見逃せないのは日本で乾式貯蔵施設の拡大が狙われていることだという点です。
なぜなら、しばらく前から米国のサンオノフレ原発で採用されているホルテック社のドライキャスクが、「ペラペラで放射能漏れが懸念される」というのが、全米の反原発グループ共通の懸念事項となっているからだといいます。
以下、サイトも紹介して下さいました(英文です)
https://sanonofresafety.org/2014/08/21/premature-failure-of-u-s-spent-nuclear-fuel-storage-canisters/

彼女はアメリカが日本に次に売り込んでくるのはドライキャスクだとみているが、「プールを乾式貯蔵にしたところで、危険性は変わらないばかりか、また米国にかもねぎしょっていってたかられることは目に見えています」と指摘しています。
なるほどと思いました。「安全対策」と銘打って新たなビジネスがなされようとしているということだと思います。
今後、この点についてもウォッチを強めたいと思います。


追記

ここまで書いて投稿しようとしたところ、河北新報がより詳しい記事を掲載していることをつかみました。
これも短い記事なので貼り付けておきます。

*****

<福島沖地震>福島第2 停止原因は水位低下
河北新報 2016年11月25日金曜日
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201611/20161125_63025.html
  
東京電力は24日、福島県沖の地震により福島第2原発3号機の使用済み核燃料プールの冷却が一時停止した原因が、プール脇にあるタンク内の水位低下だったとの見方を示した。
当初の説明は、タンクの水が地震で揺れたことを水位変化と検知したとしていたが、変更した。
燃料プールは、循環している冷却水の上澄み部分が脇にあるタンクに流れ込む構造。タンクの水を浄化・冷却し、再びプールに注水している。
地震時は揺れにより、プールの水面が波立ち、水の一部が壁のダクトに流入したため、循環している水の全体量が減少し、タンク内の水位低下が起きたとみられる。
ダクトに入った水の一部は配管を伝い、建屋階下の配管のつなぎ目などから漏れ出し、水たまりが見つかった。第2原発2、4号機でも同様の水たまりが見つかり、3号機を含めた量は計約485リットル。外部流出はないという。
東電によると、3号機は水位が基準より2.2メートル下がると警報が鳴る設定で、地震発生から10分後の22日午前6時10分ごろ、警報が鳴ってポンプが停止した。

*****

やはり2号機、4号機でも同じことが起こっていたのでした。都合、3つの燃料プールから合計で485リットルの冷却水がこぼれてしまっていたのです。
ところが東電はこの3つの燃料プールからの冷却材漏れを、3号機の冷却装置の自動停止の問題にしぼり、しかも当初はセンサーが水位低下とあやまって判断したと発表したのでした。
ますます事故をより小さく見せようとしたとしか思えません。しかしこんなことをやってばかりいると安全性が遠のくばかりです。
ずさんで、誠実さのかけらも持ち合わせていない東電を私たちがしっかりと監視し、少しでも安全性が保持されるべく、努力を続けていきましょう。

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明日に向けて(1325)週末はカノンを観て対談を聞いて三田医師の話とまた対談を聞いてホテヴィラへ集まって下さい!

2016年11月23日 23時30分00秒 | 講演予定一覧

守田です(20161123 23:30)

この土日の企画のお知らせです。京都市内ばかりで恐縮ですが、ぜひ近県の方にもきていただきたいです。
26日土曜日は映画『小さき声のカノン』上演会in京都があります。日本キリスト教団伏見教会にてです。
京都市でおもに福島県飯舘村の方を対象に行ってきた「おこしやすキャンプ」実行委員の中澤さん、木口さんと守田で対談も行います。
なお映画上映は27日日曜日も行います。見逃している方はこの機会にぜひぜひご覧ください!

27日は二つの企画があります。
一つは僕も参加している京都「被爆2世3世の会」の企画。
「福島の被曝、そして広島・長崎の被爆の重ね合わさるもの」です。
午後1時30分~4時30分
ラボール京都4階第8会議室で開催です。阪急電車西院駅から歩いて5分強です。

京都「被爆2世3世の会」はこの間、被爆2世の健康調査を行ってきました。そこで見えてきたものと、福島の被曝の間に重なるものがあるのではないか?
この推論のもと、私たちは東京の小平市で3000人の子どもたちの被曝影響を診てこられて、自らも岡山に避難された三田茂医師にこの健康調査を読んでいただきました。
その上で三田医師が東京での医療実践からつかんできたものと、健康調査を読んで感じたものをお話いただきます。その後に三田さんと守田の対談で内容を深めていきます。
さまざまな意味でチャレンジングな企画で、僕としても思い入れが深いです。ぜひ多くのみなさん、とくに医療関係者の方々に来ていただきたいです。

さてこの日はもう一つの企画があります。
【ホテヴィラ最後の日、ありがとうロクローさん支援パーティー】です。
立食形式で12時から21時まで行います。

ホテヴィラはわが盟友の広海ロクローさんが義挙で立ち上げたベクレルフリーのスパゲッティ屋さんで、かつて京都市岩倉にあったNONベクレル食堂を引き継いでいます。
ロクローさんの大奮闘で運営されてきましたが資金ショートもあって27日で閉店することになりました。
ホテヴィラをただこのまま閉じさせるわけにはいかない。みんなで集ってロクローさんを労い、励まし、次の何かに向けて資金的にも支援したいと声をあげたのは友人の丹下紘希さん。
それにすぐに乗ったのが「小さき声のカノン」の映画監督の鎌仲ひとみさんと、僕、守田敏也でした。
かくして3人を代表とする「ありがとうロクローさん募金勝手連 」が立ち上がりました。
27日にみなさんにちょっとばかりでよいのでカンパを握って集まってもらって、ものすごく楽しく有意義な時間を過ごそうということになりました。

といっても僕自身は三田さんを呼んでの企画があるし、皆さんにもこの企画を聞いてからホテヴィラに向かって欲しいなどと勝手なことも考えていますが、ともあれ身体が空き次第、かけつけて最後の盛り上がりに貢献しようと思っています。
みなさま。ぜひこの週末は紅葉見ごろの京都市に駆けつけ、カノンを見て、対談を聞いて、三田医師の講演を聞き、またまた対談も聞いて、ほんでもってホテヴィラへと集まって下さい。
深まる秋の日に、一緒に熱い2日、心温まる土日を過ごしましょう!

以下、スケジュールの細を貼り付けます。

*****

11月26日

「小さき声のカノン」 上映会 In 京都

【会場】
日本キリスト教団伏見教会
京都市伏見区新町6丁目483

【プログラム】
第1部 13:30~15:40 映画上映
第2部 16:00~17:00 対談
◎おこしやすキャンプ実行委員 中澤千春・木口裕香
◎守田敏也(フリージャーナリスト)
17:00~17:30 交流会

※27日は映画上映のみ
【入場料】1000円
【お問合せ】棚谷直巳 075-601-3646
【主催】「小さき声のカノン」自主上映の会

*****

東電福島第一原発事故被災者の健康と広島・長崎の被爆二世健康実態調査報告学習講演会
福島の被曝、そして広島・長崎の被爆の重ね合わさるもの
http://aogiri2-3.jp/indexbox/20161127.pdf
https://www.facebook.com/events/695300550637486/

■三田茂医師のお話し & 三田茂医師×守田敏也さん(フリーライター)のトーク
■11月27日(日)午後1時30分~4時30分
■ラボール京都 4階第8会議室 (中京区四条通御前西北側)
▼資料代 500円

京都「被爆2世・3世の会」は昨年「被爆二世健康実態調査」を行いました。今回の企画で私たちはこの成果をみなさんと共有したいと思っています。
三田医師は福島原発事故で被災した子どもたちなど3,000人以上を診療してこられた医師で、東京都小平市から岡山市に移転されています。私たちはその三田医師に「被爆二世健康実態調査」の結果の読み解きをしていただきました。
今回、三田医師をお招きし、首都圏のたくさんの子どもたちなどを診られて経験からつかまれてきたこと、調査の読み込みを踏まえての、原発事故被災者の問題と重ね合わせたお話をしていただきます。
講演後に私たちの会員であるフリーライターの守田敏也さんと三田医師との対談で問題をさらに深め、みなさんと一緒に今何をなすべきかを考える場としていきたいと思います。

三田茂医師プロフィール
東京都生まれ。小平市で先代から続く三田医院で長く診療を行う。福島原発事故後、被曝影響が懸念される首都圏の子どもたちを中心に3,000人以上の甲状腺や血液の検査を行い、必要な診療を続けてきた。
この過程で被曝の深刻な実態をつかむとともに同様の検査の実行を多くの医師に訴えてきた。
2014年4月に先代から51年続いてきた医院を断腸の思いで閉じて岡山に移転・開業。自身や家族の防護だけでなく人々に避難を促すための転地でもあった。その後も精力的に全国から訪れる人々の診察を続けている。

京都「被爆2世3世の会」
電話075-811-3202

*****

【ホテヴィラ最後の日、ありがとうロクローさん支援パーティー】
◯日時 11/27 12:00~21:00
◯会費 2000円+別途ドリング代

◯趣旨 
11月27日、ノンベクキッチンホテヴィラ最後の日。集って、大パーティーをやりたいのです。
感謝し、労い、励まし、支援する大パーティー。
共感してくれる人はちょっとカンパを持って集まってくれたらありがたいです。またいつか希望の明かりをみんなで灯したいと思います。

福島原発事故でたくさんの放射能が飛び出して、子どもも大人もみんな危険にさらされたとき、ロクローさんは起ちあがった。
採算度外視で放射能測定機を個人購入し、NONベクレル食堂を京都・岩倉に立ち上げました。
ここにはたくさんの人々が集ったのです。

同時に「政治を変えなあかん」と京都市議選にすら立候補しました。
選挙では大奮戦したけれど当選には届きませんでした。

精神的にも、資金的にも辛い中でも、ロクローさんはキッチンに立ち続けました。
そこから「子どもたちに安全・安心を」という選挙でも発したメッセージを伝え続けました。
しかし、時代はまだ一歩、ロクローさんについてこれていなかったのだと思います。

誰もができることじゃない。
でもこういうことをする人がいるからこんな世でも希望が持てる。
何か面白いことが起こるんじゃないかと思えてくる。

そんなロクローさんに勝手に感謝したいと思います。
労いたいと思います。
励ましたいと思います。
そしてこの勝手連で資金的に援助したいと思うのです。

「ありがとうロクローさん募金勝手連 」
代表 丹下紘希、鎌仲ひとみ、守田敏也

来れない人はちょっとだけでも、カンパを送って頂けたらきっと、励みになると思います。

郵便振替
口座番号 00900-2-331664
加入者名 ノンベクキッチン ホテヴィラ
( 郵便局の払込取扱票に、住所、氏名、電話番号明記の上、通信欄にメールアドレスを記入してください。よろしくお願い申し上げます。)

ーーーーー
子どもと一緒に募金箱作りました。
思い出し笑いしちゃうような。
花が鼻から咲くような気持ちの募金箱。
クラウドファンディングを立ち上げる余裕がなく、ならば勝手にオールドスタイルな「募金箱」だな、と思ったのです。
止むを得ず閉店となった店主のロクローさんの置かれている状況を知りました。
勝手に独りクラウドファンディングみたいにやるつもりが、鎌仲ひとみさん、守田敏也さんも一緒に加わってくれました。
是非、最後の日にロクローさんを送り出すために集まりましょう。
《丹下紘希》

311以降、この国に放射性物質が循環するようになりました。
まずは子どもたちに食べさせる食品は放射性物質が入ってないものにしたいという多くの人々の思いを具現化したノンベクレルキッチン。
ロクローさんが社会に提案した「ノンベクレル」はものすごく大事。なぜなら、放射性物質は地球上最悪の有毒物質の一つだから。
その考え方をもっと広く、この社会にしみこませていきたいですね。
今回はホテヴィラの閉店は残念だけど、ロクローさんのこれからの取り組みをみんなで後押しいたしましょう!
《鎌仲ひとみ》

放射線被曝をから命をまもるためいち早く測定器を自腹で購入してNONベクレル食堂を立ち上げ、さらにノンベクキッチンホテヴィラを運営してきたロクローさん。
世の中よりも数歩進んでいたため資金がショートしてしまいましたが、必ずこの先、世の中がロクローさんに追いついてきます。
そのときのためにもロクローさんがどのような形でも命を守る活動を継続できるようにするためにみなさんに援助を訴えます!
《守田敏也》

ーーーーー

《丹下紘希》(たんげ こうき)
人間、自由無人党員、映像作家
1968年11月24日生まれ。東京造形大学卒。ミュージックビデオの監督、ジャケットデザイン、障害者の就労支援啓発や幼稚園のアートディレクションなどを手がける。架空の政党「自由無人党」の一員。97条の会の発起人の一人。

《鎌仲ひとみ》(かまなか ひとみ)
早稲田大学卒業後、現場でドキュメンタリー制作を学ぶ。
カナダ・NYを経て95年帰国後テレビ番組、映画を多数監督。
イラク取材をきっかけに、核を巡る三部作 
「ヒバクシャ—世界の終わりに」(03年)
「六ヶ所村ラプソディー」(06年)
「ミツバチの羽音と地球の回転」(10年)を完成。
3.11後は「内部被ばくを生き抜く」(12年)を作成。
最新作は「小さき声のカノン」目下、日本中で上映中。
制作スタイルは完全な自主制作であり、その配給も劇場に加え、市民による自主上映を中心に展開しその回数は国内外で3000回を超える。

《守田敏也》(もりた としや)
同志社大学社会的共通資本研センター客員フェローなどを経て社会問題に幅広く関わり福島原発事故降は被曝地を何度も訪問。各地で放射線防護の講演を行う。広海ロクローとも度々行動を共にしてきた。
篠山市原子力災害対策検討委員会委員。著書に『内部被曝』『原発からの命の守り方』がある。

ーーーーー
【ノンベクキッチン「ホテヴィラ」】
http://non-bq.net/
https://www.facebook.com/nonbq.hotevilla/

無農薬、省農薬の食材を中心に、さらに放射性セシウム不検出の食品のみを使用し、安心して飲食をしていただく事に配慮したお店です。
※「ありがとうロクローさん募金箱」は閉店まで店内に設置させて頂いています。
※席数が13席と、少し手狭になっていますので、イベント当日は立席とさせて頂きます。

◯営業時間 12:00〜21:00 ※27日閉店まで毎日営業
◯TEL(電話予約可)075-200-2885
◯住所 中京区三条猪熊町645-1 1F
◯アクセス
・阪急京都線 大宮駅 徒歩7分
・地下鉄 二条城前駅 徒歩7分
・JR 二条駅 徒歩13分

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明日に向けて(1324)福島第二原発3号機燃料プール冷却装置停止の意味するもの

2016年11月22日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20161122 23:30)

本日未明、福島県沖で再びマグニチュード7.4という大きな海底地震が起こりました。この影響で福島県地方の多くが震度5弱の地震に襲われ、数メートルに及ぶ津波が押し寄せた地帯もありました。
しかし事前の避難等が徹底化した事もあって、それほどに大きな人的被害は出ませんでした。
今後、暫くは同規模かそれ以上の地震が起こる可能性があります。本年4月の熊本地震では2日後にエネルギー量にして16倍もの「本震」が起こっているので注意が必要です。みなさまのご無事をお祈りしています。

さて今回の地震で福島第二原発3号機の燃料プールの冷却装置が緊急停止してしまいました。
理由は燃料プールの脇にあって冷却に使われた水を受け、冷やしてポンプで再度プールに水を送り出すスキマーサージタンクの水位低下が検知されたからだとされています。
記者会見などによると、このタンクの中でスロッシングと呼ばれる水が波打つ現象が起こったことが原因とされています。

コップの中に水をはって左右に振ると水が競り上がるように波打ちますが、その時に片方は水位があがり片方は下がります。
これがスロッシングで大きな力が働くのですが、ともあれこの下がったところにポンプがあったため、水位の異常低下と検知され、冷却剤が無くなるのを防ぐ為にポンプが自動停止したというわけです。
地震後すぐにこの現象が起こり、1時間半ほどしてポンプが再起動され、冷却が再開されたと事態は説明されています。

東電はこれまで何度も嘘をついてきたので、本当に安全が確保できたのかどうか多くの方が「心配だ」と言う連絡を僕にくれました。
僕も東電を信用できないので疑いの目を向けざるを得ません。しかし少なくとも今のところは非常に深刻だと言えるような兆候は感じません。
今後、さらに余震、いやさらなる本震も起こる可能性がありますから、またどこか壊れてしまわないかと心配ですが、ひとまずは冷却は続行されているとみてよいと思います。

むしろ今回のことで私たちが注目しておくべきことは、あの過酷な福島第一原発事故が起こってからもう5年と8ヶ月も経つのに、危険な燃料プールに膨大な量の使用済み核燃料が沈められ続けているという事実です。
いま福島第二原発3号機の燃料プールに入っている核燃料はなんと2544体。うち2436体が使用済み核燃料です。新燃料は184体しかない。
では他の原子炉はどうでしょうか。分かりやすく並べてみます。

1号機 使用済み核燃料2334体 新燃料200体  合計2534体。
2号機     同じく2402体  同じく80体  合計2482体。
4号機     同じく2436体  同じく80体  合計2516体。
1〜4合計   同じく9532体 同じく544体 合計10076体。

なんと危険な使用済み核燃料がこんなにもたくさん脆弱なプールに入っている。
さらに重要な点があります。プールの容量はどうなのかというと4つの燃料プールをあわせて10940体なのです。ということは92%も埋まってしまっていることになります。つめつめの状態なのです!

なおこれらのデータは以下から取りました。

 福島第一・第二原子力発電所の燃料貯蔵量について
 福島復興ステーションポータルサイト
 http://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/ps-genan10.html

福島第一原発事故が私たちに突きつけたのは燃料プールの危険性でした。
これまで核燃料はペレット、被覆管、圧力容器、格納容器、建屋という「5重のシールド」で守られているというのが原子力推進派のウリでした。
しかし福島第一原発事故では、この5重のシールドがやすやす破られてしまう事態が発生するとともに、4号機燃料プールが干上がる瀬戸際にたってしまいました。
このことで燃料プールにある核燃料は圧力容器というシールドも格納容器というシールドもなく、水面がむき出しになっていて、水が抜ければただちに危機に陥ってしまうものであることが明らかとなったのでした。

その4号機燃料プールが大破綻を免れたのはほとんど行幸の産物だったのですが、ここから明らかになった燃料プールの危険性は、プールが建屋上部に設置されていることでした。
これは核燃料を交換する際、膨大な放射線を避けるために水の中を移動させなければならないことから宿命化されたことでした。このため高い位置に水を張った巨大なプールを作らなくてはならなかったのでした。
その構造的弱点のために福島第一原発4号機燃料プールは大変な危機に立ち続けたのでした。

この点を考えるならば、核燃料を早く脆弱なプールから降ろす事は安全のための必須事項であるわけですが、福島第二原発ではいまだになんと1万本もが降ろせないままに高い位置にある燃料プールに沈められています。
これを降ろさないのは、あわよくば再稼働したいがためでもあるのかもしれませんが、それよりももっと切迫した事情は、降ろしたくても降ろす場がないことにつきるのだと思います。

というのは原子力推進サイドの思惑では、使用済み核燃料はプールでの冷却期間を終えた核燃料はキャスクに入れて取り出し、六ヶ所村などの再処理工場に送って、プルトニウムを取り出す「再処理」を行うことになっていたからです。
しかし六ヶ所村再処理工場は故障続きで運用の目処が立たない。そればかりかたとえ再処理工場を稼働させてプルトニウムを取り出したとしても、それを使うはずだった高速増殖炉もんじゅが破綻し、もはや廃炉が濃厚となっています。
まったく先の展望がない。だから東日本大震災の大変な揺れに襲われ、当初は原子力緊急事態の対象ですらあった福島第二原発の燃料プールがほとんど埋まってしまって危険な状態にあるのに、なお使用済み核燃料を降ろせないでいるわけです。

さらに重要なのは、さきほど燃料プールは92%埋まっていることを確認しましたが、ある意味ではそれはまったくの嘘であることです。
というのは実は本来は燃料プールはすでに埋まってしまったのに、隙間を詰めることで容量を増やし、そのもとで埋設率が92%になっているという恐ろしい事態があるのです。
この点で参照していただきたいのは以下の資料です。

 使用済燃料貯蔵対策の取組強化について
 電気事業連合会 2015年11月20日 
 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/shiyouzumi_nenryou/pdf/001_03_00.pdf

これは極めて重要な資料です。
電力会社各社が、使用済燃料貯蔵容量の拡大のために、「使用済燃 料貯蔵設備のリラッキングによる増容量」 を行ってきたことが書かれているからです。
リラッキングとは何でしょうか。核燃料をそれまで以上に詰め合わせてしまうことです。そのことでプールの容量を増やしたのです。容量の偽造です。

そもそも使用済み核燃料にはたくさんのプルトニウムが存在しています。核分裂しなかった「燃え残り」と称されるウランも混じっています。だから再処理工場でそれを取り出したいのですが、これら核分裂性物質は扱いが非常にやっかいな物質なのです。
なぜならある一定量集まると核分裂を開始してしまうからです。とくにプルトニウムはその性質をより強く持っています。

もともと燃料プールはこの点を考慮し、地震等で使用済み核燃料が揺らされてもそれぞれが接近してしまわないように設計してあったのです。
ところがそれが一杯になってきてしまった。持ち出す先ができていないからですが、しかし燃料プールが埋まってしまうともう発電ができなくなる。使用済み燃料を取り出せないからです。それで思いついたのがリラッキング=容量の偽造なのでした。
このためある程度の量が集まると勝手に核分裂してしまうプルトニウムなどが入った燃料棒をつめつめにしてしまったのです。それでないと運転ができなくなるからでしたが、そのために安全マージンが大きく削られてしまったのです。
しかもその状態でも福島第二原発は92%も埋まってしまっているのです。その分だけ、燃料プールが揺らされた時のリスクが増大していることは明らかです。

この点はさきほど示した資料の6ページをみてもよくわかります。
元々の設計思想では、使用済み核燃料体はその中心の位置で互いに365ミリ離して燃料プールに入れられることになっていました。ところが変更後にはこの間隔が282ミリに削られ、すぐにもぶつかり合いそうな状態になってしまいました。
そんな形で1万本にもなんなんとする使用済み核燃料を、脆弱で建屋の高いところにある燃料プールにいれているのが福島第二原発なのです。
今そのサイトの近くで大きな震度5弱の地震が起こり、今宵も震度4の余震も起こっていて、今後、さらに大きな地震がくるとも限らない状態におかれているのです。

もう本当にいい加減にしてくれと言いたい!

以上から私たちは今後、福島第一原発だけでなく、福島第二原発のこともあらためてウオッチしていく必要があります。
いやこの二つの原発だけではありません。日本中の原発の燃料プールが同じような状態にいたっているのです。この危険性としっかり向かい合い、無謀で愚かすぎる再稼働を止めさせ、廃炉の推進、燃料プールからの核燃料の撤去を急ぐ必要があります。
今回の福島第二原発3号機冷却装置停止問題から、この点をしっかりと学びとっておきましょう!

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明日に向けて(1323)原子力推進派は福島原発事故の流れ=放射能の放出を事前に的確に予測していた!

2016年11月21日 15時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20161121 15:30)

このところ原子力規制委員会が、原発再稼働や老朽原発の運転延長に向けての新基準の合格を連続して出しています。無責任極まる行為です。
新規制基準の問題点について、これまで多方面にわたって紹介してきましたが、今回は、独立行政法人・原子力安全基盤機構が、原子力防災専門官向け資料として作成していた炉心溶融のシミュレーション画像をご紹介します。2009年作成のものです。
すでに「明日に向けて(1311)島根原発(沸騰水型原発)の構造的危険性を把握しよう」の中でもご紹介していますが、これはかなりレアなビデオです。

これを観ると、原子力推進派は、福島第一原発事故のような事故をかなりの精度で予測していたことが分かります。
その際、ベントを行うことも予定済みでした。にもかかわらず「過酷事故が起こりうる」という重大事実を社会的に明らかにせず、いわんや住民を逃がすための措置を施してきませんでした。
重大犯罪です。何よりも過酷事故が起きる可能性があり、その際にベントを行うことが予定済みなら、そのことを社会に対して、とりわけ原発周辺の住民に対して告げて、大がかりな避難の準備などをしておくべきだったのです。

にもかかわらず、現在の新規制基準のもとでの審査は、この重大なあやまちを問うことなく、同じ構造のもとに進められています。
そもそも正しい判断は、福島原発事故の教訓に基づいて原発を止めることですが、「再稼働」の基準を作ると言うのであれば、最低でも社会に対してこうした過酷事故がありうることをもっと鮮明に知らせるべきです。
またその際にベントを行うこと、つまり事故対策として放射能放出がなされることを周知徹底し、ベントの前に人々がどう逃げるべきなのかの方策も責任をもって作るべきです。

しかしこの点が曖昧なままに再稼働や、運転延長の許可が出され続けています。無責任極まりない。
なぜこんなことが続いているのでしょうか。過酷事故が起こり、放射能が放出されるリアリティが社会にきちんとつながったらとてもではないけれども原発の運転が認められなくなることを原発推進派が理解しているからです。
このために事故のリアリティが曖昧化されているのです。許しがたいことです。

私たちが確認しておかなければならないのは、そもそもベントとは、原発推進派にとってもあってはならない装置だということです。
格納容器の役目は過酷事故があったときに放射能を閉じ込めることにあるからです。その格納容器を守るために放射能のガスを外に排出する。そのことは技術的に格納容器が完成してないことを意味しているのです。
ベントがついた格納容器の運転など、ブレーキが壊れることがある車を動かすのと同じことで絶対に認められません。これは原発に賛成・反対以前の話です。賛成論の前提にある「安全」の根本的な崩壊だからです。

この安全・安心をまったく無視した原発再稼働や延長の動きに対抗していくために、今回はこのビデオ内容の文字起こしを行いました。
ぜひこれをご覧になり各地の学習会などで使ってください。裁判などでも使えるのではないかと思います。
このような事故が再度、起こりうることを前提に、現在の原発の再稼働や延長が認められていること、だから再び過酷事故が起こる可能性が極めて高く、許してはならないことを各地にきちんと伝えましょう。

ただしその際に付け加えて欲しいのは、事態はこのシミュレーション通りにはいかなかったことです。
なぜならビデオでは事故の進展の最後の方でベントを行うことが出てきています。(ベントという言葉は使われていない)
そのあとに、最悪の事態に至った場合、つまり放射能の放出にいたった場合でも、「住民に安心していただけるように努力している」云々という言葉が出てきてまるでパロディのようなのですが、実際の福島原発事故ではベントはうまくいかなかったのです。

1号機から3号機のすべてであらかじめの想定のようにはベントバルブが開かなかったのです。
それでも1、3号機は、圧縮空気を送り込むというマニュアルにはない思い付きでなんとか開けたのですが、2号機は最後までバルブが開かずにベントに失敗。格納容器下部が破損し、1~3号機の中でもっとも大量の放射能漏れを起こしたのでした。
その意味で配管破断から始まるメルトダウン事故の進展は完璧に予測されていたけれども、それに対する対策は失敗したこともしっかりとみてとってください。

以下、文字起こしを以下に貼り付けます。なおナレーションを文字起こしていますが、同時に画面に表示されたテロップもカッコでくくって表示しています。

*****

動画で見る炉心溶融  防災用事故シナリオ理解のための教材(BWRマークⅠ型)
https://www.youtube.com/watch?v=wwYk62WpV_s

今からご覧いただく映像は沸騰水型原子炉の設計基準事故を超えるようないわゆるシビアアクシデントを想定し視覚的に説明したものです。
この例では20数時間におよぶ事故の経過をおよそ5分の映像にまとめています。

「防災用事故シナリオ理解のための教材(BWRマークⅠ型)」
「事故事例 原子力圧力容器に繋がる大きな配管が破断し、大量の放射性物質が環境に放出される事故」

それではマークⅠ型格納容器を例に、原子炉圧力容器につながる大きな配管が破断し、大量の放射性物質が環境に放出される様子をご覧いただきます。

「事故シーケンス 事故発生後に制御棒が完全に挿入され、原子炉が停止した後、炉心を冷却するための全ての注水に失敗するケース」

これは事故発生後に制御棒が完全に炉心に挿入されたことにより、原子炉が停止し、その後、炉心を冷却するためのすべての注水に失敗するケースです。
配管破断事故が発生すると冷却材が流出し、原子炉圧力容器内の水位が低下します。

「冷却材喪失事故発生」
「炉心露出」

制御棒は挿入されますが注水に失敗するため炉心が露出します。
炉心が露出すると燃料の冷却ができないため残留熱により燃料温度が上昇します。
そしてもっとも温度が高くなる炉心中央部の燃料が溶融します。

「炉心溶融 事故発生から約30分後」

溶融した燃料はやがて原子炉圧力容器下部に到達します。

「圧力容器下部到達 事故発生から約1時間後」

解析により事故発生からおよそ1時間でこの状態になると予測されます。
原子炉圧力容器は、厚さおよそ12から15センチの鋼鉄製ですが、溶融した燃料は非常に高温であるため、ついには原子炉圧力容器を貫通します。

「圧力容器貫通 事故発生から約3時間後」

解析により事故発生からおよそ3時間でこの状態になると予測されます。
貫通した溶融した燃料は、原子炉圧力容器を支えるペデスタルの中間床面に落下します。
そしてコンクリートの床を侵食しながら、ガスを放出し、格納容器の温度および圧力を上昇させます。
マークⅠ型格納容器では、その後溶融燃料が、コンクリートで形成されたペデスタルの中間床面を貫通し、さらにその下部にあるコンクリート床面上に落下します。

「ペデスタル サブレッションチェンバ」(注:示された構造説明図の説明)

ペデスタル下部のコンクリート床面に落下した溶融燃料により、ガスが発生します。
このガスが格納容器内に充満して、温度および圧力が徐々に高くなります。

「格納容器異常漏えい」

そして圧力が格納容器の限界を超えたときに、格納容器のフランジ部から大量の漏えいが起こると想定し、防災策を講じます。

「環境への放射性物質の放出」

漏えいしたガスには、希ガスやヨウ素などの放射性物質が含まれており、原子炉建屋を経由して、排気塔から環境に放出されます。

今回は防災用事故シナリオ理解のために、配管破断に起因する最悪の事例をご覧いただきました。

「最悪の事態に至った場合でも、住民の方々に安全・安心して頂けるよう、日頃から、防災担当者への訓練を通し、原子力災害時の対応能力の習熟に努めております。」

万一、こうした事態に至った場合でも、住民の方々に安全・安心して頂けるように、日頃から、防災担当者への訓練を通して、原子力災害時の対応能力の習熟に努めております。

ビデオ終わり

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明日に向けて(1322)内部被ばくを無視したICRPと政府は被ばく被害を過小評価している(東京シンポ発言より)下

2016年11月20日 07時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20161120 07:00)

10月29日に東京で「放射線被曝に備えるシンポジウム」に参加したときの発言の起こしの続きです。
今回は内部被ばくを無視したICRPの線量評価の誤りとそれに依拠して、「広島・長崎でも20ミリシーベルト以下には被爆者はいないのだから福島の人々は帰れ」と考えている日本政府の誤りを指摘しました。

なお企画の全体は以下から動画で観ることができます。

放射線被ばくに備えよう~東京電力福島第一原子力発電所の事故から学ぶ~
https://m.youtube.com/watch?v=h9Kfgyr4H3U

*****

「人々を被ばくから守るために私たちに何が問われているのか」
2016年10月29日 守田敏也

政府はこのこと(注:福島だけでなく多くの地域が年間1ミリシーベルトを上回っており本来政府の責任で人々を避難させなければならない地域であること)を知っていてるがゆえに「緊急事態宣言」を解除しないわけですが、この事態を前に国連の人権理事会のアーナンド・グローバーさんが日本に来られて「健康である権利」が侵害されていると指摘してくださいました。
彼は「科学的な証拠に基づき、年間1ミリシーベルト未満に抑えるべきだ」「健康を享受する権利を守るという考え方からは、年間1ミリシーベルト以上の被ばくは許されない」と語りました。
さらに南相馬市では530人の方がこの問題で提訴されています。年間20ミリシーベルト以下のところに帰らさせるのはあまりにもひどいということでです。
東京新聞に記事が載りましたが、この中で「南相馬・避難勧奨地域の会」の末永伊津夫会長が次のように語られています。

「東京五輪に間に合わせたいのか、政府は避難区域の解除に躍起になっている。その基準とされるのが年 間20ミリシーベルトですが、無理があるのは明らかです。
もしもこれが既成事実となったら、将来、世界のどこで原発事故が起きても20ミリシーベルトまでは大丈夫となる。こんなむちゃを黙認するわけにはいかないのですよ」。

僕はこの方は世界の方のことまで見ていて、このような発言をされているので素晴らしいと思います。

実は福島県で原発問題をめぐる国際シンポジウムがあって、原子力推進派の科学者が世界から集まってきたことがあったそうです。
そのときに、おしどりマコさんと言う方が、ずっとある科学者の横に張り付いて、「本当のところ何が課題なのか教えて下さい」と食い下がったそうです。
そうしたら「これまでは『原発は安全なのだ』と言ってやってきたが福島でそれが崩れた。これからはそうではなくて『放射線被曝は対して怖くないんだ。少しぐらい放射能が出たって問題ないんだ』と言ってやっていかないと世界の原発が運用できない。だから福島の人々が放射線被ばくを受容することが必要なのだ」とおっしゃったそうです。

こんなことを許さないために、僕は日本でも「チェルノブイリ法」を作らなくてはいけないと思います。(注:この点について1時間34分50秒ぐらいから出している東日本被ばくマップとチェルノブイリ法の避難基準をご参照ください)
この法律はロシア、ベラルーシ、ウクライナで現在も通用している法律ですが、避難基準がまったく違うのです。基本的には年間1ミリシーベルト以上の地域全体に何らかの対策が建てられなければならないことになっています。
例えばセシウム137により汚染を基準として一平米あたり37000から185000㏃までの地域は「特恵的社会経済ステータス付居住地域」とされています。徹底的なモニタリングがされるとともに、住民に年間一月もの保養にいく権利などが付与されています。
この値を文科省が出したセシウム汚染マップに重ね合わせてみると、福島県だけでなく栃木県や群馬県など、ものすごく広い地域がここに分類されることが分かります。

さらにその上の555000㏃までの地域は「移住権付居住地域」になります。つまり「ここは怖いから避難したい」と手を上げると、政府が責任をもって避難させなければならないと決められた地域です。
しかしそこが放射線値が高いと言われても、「先祖代々住んできたとても大事な土地なんだ、ここを離れるのは嫌なんだ」と言ったらその方にはそこにいる権利がある。その場合も当然にも先ほど紹介した「特恵的社会経済ステータス」が付与されます。
これもまた日本では福島県のみならず、茨城県北部、栃木県北部、群馬県北部に広がっていることが分かります。これが現にチェルノブイリの周りでは行われていることです。ここに日本を持っていくことが僕は大事だと思います。
(注:ただしチェルノブイリ周辺国では資金難から権利を主張しても順番待ちで待たされている例も多数ある)

このようにまずは帰還にあたっても年間1ミリシーベルトを被ばく限度としている現在の法的ラインを守らせなくてはいけない。
先ほどの井出さんのお話、村の復興に向けたご努力を思うと、僕もこう話すことにとても胸が痛むのですけれども、やはり井出さんを含めて、多くの方の被ばくが減って欲しいと心から思うのです。
ちなみに放射線の被害を考えるときに今の線量だけで考えてはいけないのですよ。なぜかというと福島の方たちは初期にすごく被ばくされているのです。井出さんのお話を聞いてもそうです。
だからまったく健康人で、その時に初期被曝をしなかった人がどれぐらいの放射線を浴びるのかという問題と、ベントなんかすることも教えられず、たくさんの放射能を浴びせられた方たちが、どれぐらいが大丈夫なのかというのは別の話だと思います。

もちろんどのぐらい浴びるとどれぐらい危険なのかについてはさまざまに論争がなされていて、どの見解を選ぶのかはその人の自由だと言われればそれはそうだとは思います。
ただその点について言えば、僕はさきほどご紹介した国際放射線防護委員会の考え方も大きく間違っていると思っているのです。
なぜかと言えば、ICRPの見解は広島・長崎の被爆者調査を基礎としています。それが反映されている厚労省が出した図が問題の理解に最適なのでお見せします。

これはかなりレアな図です。どうレアなのかと言うと、厚労省が後に誤りに気が付いてすぐに消したものだからです。でもそれだけに本音が透けて見えるものともなっています。(注:この図については1時間38分00秒から映し出している図を観て下さい)
どういう図なのかと言うと、被ばくの影響を爆心地からの距離で表しているものです。そして爆心地から2.5キロまでは被爆者がいるけれども、その先は「非被爆者」しかいないと書かれているのです。
ここに表れているICRPの考え方の最大の欠陥は、放射線被曝を外部被ばくでしか評価してないことです。だから爆心地からの距離によって危険性を語っているのですね。

実は最初はこのラインは2キロだったのです。アメリカ軍が半径2キロ以内しか、放射線を浴びて害を受けた人はいないと言い張ったからです。
逆に言うと2キロより外には身体に影響を受けた人はいないと言い張ったことになりますが、この2キロのラインが100ミリシーベルトの放射線が届いたラインとされているのです。
これが「100ミリシーベルト安全説」だとこの図では紹介されています。100ミリシーベルトまでの被ばくでは身体に影響はでないというのです。

この表を見たときに僕は鳥肌が立ったのですが、この図の中の爆心地から2.4キロのところから線がひっぱってあって、ここに年間20ミリシーベルト、「福島帰還基準」と書いてあるのです。
つまりこの言い方では、正確には2.5キロではなくて2.4キロなので少しずれるのですが、ともあれ事実上「ここから外側には被爆者はいないのだから、福島の人々は20ミリシーベルト以下に帰れ」と厚労省は書き込んでいるわけです。

しかしこの図には大きな間違いがあるのです。というのはもともと「被爆者」はイコール「放射線を浴びて害を受けた人」とは規定されていないのです。
爆風で飛ばされたり、熱風で害を受けた方も全て被爆者です。その被爆者の認定は町ごとに行われていて半径2.5キロを大きく超えたところでも認定されています。
その中で、つまり被爆者の中で放射線を浴びて害を受けた方が爆心地から2.5キロまでしかいないと政府は言い張ってきたのです。

ところが実際には放射能の塊である原子雲が数十キロにわたって広がりました。この下の地域にはどこにも放射性のチリが降下してそこにいた人々は放射能を体内に取り込んで内部被ばくされたのです。もちろん100ミリシーベルト以下の外部被ばくもしています。
これに対して被害を爆心地からの距離で表している厚労省の図では、内部被ばくがまったく換算されていないことが分かります。これがICRPの線量評価の最大の誤りです。内部被ばくがもたらした被害がまったくカウントされていないのです。

このことを踏まえて川内村の安全・危険を考えるときにも、放射線量だけで考えると内部被ばくの危険性が入ってこないのですよね。
本当に大変な除染をされたと思うのですけれども、それでも家の周りしか除染できませんよね。集落の周りの樹々はとてもではないけれど除染できない。そうするとだんだんと線量は戻ってきます。
怖いのは樹々にたくさんの放射能があるから、風が吹いて飛んできたときにはそれを飲み込んでしまうことです。しかし線量だけでみているとこの危険性が十分には評価されないのです。
なのでぜひとも風の強い時にはマスクをするとかうがいをするとかして少しでも身体を守っていただきたいと切に思います。

結論を述べます。福島原発行動隊のみなさんへの提言として「人々を被ばくから守って下さい!放射線防護の徹底化と避難権利の拡大のために行動していただきたいです!」と書きました。
ぜひ放射線被ばくの危険性の評価が、原爆を落としたアメリカによって極めて小さく見積もられてきたこと、そこにこの問題の大きな背景があることを知っていただきたいです。
もともと原発は核兵器を作る体系の一部なのです。軍事技術なのです。

そのことを私の方から訴えたいと思います。放射線防護の徹底化、そしてまた避難権利の獲得のために行動しましょう。
その中で井出さんをはじめ、本当にご苦労されてきている福島の方々と一緒に安全を守り、大きな意味での福島の復興のために私も努力したいと思います。
どうもありがとうございました。

終わり

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明日に向けて(1321)「人々を被ばくから守るために私たちに何が問われているのか」(東京シンポ発言より)上

2016年11月19日 09時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です(20161119 09:00)

10月29日に東京で「放射線被ばくに備えるシンポジウム」に参加しました。
「福島原発行動隊」が主催されたものです。以下に同企画のFacebookページをご紹介しておきます。

 放射線被ばくに備えるシンポジウム
 http://hr-hr.da-dk.fb.me/events/545783268961228/

パネラーの一人としての参加でしたが、僕にとって悩ましいものでした。メインスピーカーが元川内村総務課長さんで今は環境省福島環境再生事務所に勤務しておられる井出寿一さんだったからです。
事前に主催者側に送られた井出さんのパワーポイントをみると、前半では原発事故当時の川内村の混乱のもとでの避難の苦労が綴られており、後半で村の復興にむけた取り組みが紹介されていました。
その後半部分で井出さんは、年間20ミリシーベルト以下を帰還基準とする環境省の施策に従いつつ、なかなか帰って来ようとしない村の若者たちをいかに説得して戻させるかを課題とされていることを述べられていました。

「これは見過ごせない、反対しないわけにはいかない!」と即座に腹を括りました。多くの避難者の方たちの顔が浮かびました。
しかしパワポを全体としてよく見てみると、そこには突然、ふるさとを奪われた井出さんの悲しみ、そして復興にかけた思いが沸きあがってもきています。井出さんの誠実さもにじみ出ているように僕には感じられました。
井出さんもまた明らかに被害者の一人です。その井出さんが環境省のお役人として帰還を推し進める立場から発言されようとしている。

これに対してどう向い合っていくのか。何をこちら側からの主張の基軸にするのか。ずいぶんと頭を絞りました。
それで年間20ミリシーベルト以下という放射線値がどれほどの健康被害をもたらすのかという点はとりあえず横におき、もっぱら誰もが合意できる法律を軸にして話を組み立て、その上で可能な限りの僕の思いを届ける構成で発言を練り上げました。
今回はこうした準備のもとに当日行った発言をご紹介します。

ネット上に企画の全体の動画がアップされているのでご紹介します。
僕の発言は1時間26分20秒ぐらいからです。
 
 放射線被ばくに備えよう~東京電力福島第一原子力発電所の事故から学ぶ~
 https://m.youtube.com/watch?v=h9Kfgyr4H3U

これを見られて、あるいは僕の発言は手ぬるいと思われる方もおられるかもしれませんし、自分でもこれで良かったのかはっきりしていません。
でも今後、こういう機会をもっとたくさんもてたらと思いました。たくさんの方が放射線値高いところに戻っているし戻らされているからです。
さまざまな立場の方たち、とくに政府の安心安全論を信じて、放射線値の高いところに戻られている方たちに、本当に「何が問われているか」をお届けしたいです。

以下、発言の起こしを掲載します。(読みやすくするため多少文言を変えてあります)

*****

「人々を被ばくから守るために私たちに何が問われているのか」
2016年10月29日 守田敏也

みなさん。こんにちは。守田敏也です。
今日は「人々を被ばくから守るために私たちに何が問われているのか」というタイトルでパワーポイントを作ってきました。

原発政策が抱えてきた矛盾からみていきたいと思います。
さきほど井出寿一さんのお話をうかがっていると、井出さんが川内村から避難しなければならなくなって「村の境界を越えるときに悔しくて涙が出た」ということを語られました。
その時のことを思い出されたのでしょう。思わず声を詰まらせておられましたが、本当に怒りを覚えます。

そもそも東電の抱えてきた一番の問題は、福島原発にしても、柏崎刈羽原発にしても、東電の管外に作っていたことです。だから福島原発は福島にはまったく電気を供給していなかった。
もしも安全だというのならなぜ東京都に作らなかったのでしょうか。安全ではないことを知っていたからですよね。

さらにさきほどの井出さんの避難の際のお話を聞いていて、本当に怒りに震えたのですけれども、実は2009年に東電は福島原発事故で起こったのと同じことを完全にシミュレートしていました。
5分間のビデオにもなっています。今日は時間がなくてお見せできないのですが、そのビデオでは配管破断からメルトダウンが起こることが完全に予測されていて、その際にベントすることが最後の結論になっているのです。
ベントは大量の放射能を外に出すことで、もともと格納容器というのは過酷事故の際に放射能を閉じ込めるのが役割ですから、ベントなどあってはいけないのです。

なおかつそれでもベントをする可能性があるのなら、そのことをあらかじめ周辺の住民の方に言っておくべきだったのです。
近隣住民はその時にどうするのかという対応方法をぜんぜん知らず、そんなことがありうることすらまったく知らされずにあの事故に遭遇したのです。
政府も電力会社も避難計画も作らず、法整備も何もしなかった。原発の危険性があまねく知られてしまうからでした。

そのことを踏まえた上で、僕は今ある放射能がどれほどの危険度があるのか、またどうしたら帰還できるのかという問題で、環境省が出している年間20ミリシーベルト以下を帰還基準にするというのは大きな法律違反だと思っています。
もちろん大きな危険性のある行為であり、そうすべきではないです。
さきほど事前に井出さんとその辺のことをお話し、「井手さんのおっしゃていることと違っていてごめんなさい」とお伝えしたら、井出さんが「どうぞ、ご自由に話されてください」とおっしゃってくださったのでこのお話をしていきたいと思います。

まず原則として国際放射線防護委員会(ICRP)の出しているものをご紹介します。僕は結論的にはICRPの考え方にも批判的なのですが、まずは世界的に常識として受け入れられているものにICRPの「直線仮説」があります。
線量と危険性の相関グラフが直線を辿るというもので、ここには放射線はどれほど少なくとも危険性があることが示されています。
つまり勘違いしてはいけないのは、この国の被ばく許容度である「年間1ミリシーベルト」という数値も安全値ではないということです。「我慢値」なのです。
「電気は有用だからこれくらい浴びても我慢しなさい」というラインが一般人であれば年間1ミリシーベルトであって放射線作業の従事者が年間20ミリシーベルトとなっているわけです。

これは「原子力基本法」第20条に書かれたことなのですが、そこに「別に法律で定める」と書いてあってそれが「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」とされています。
さらにそこにも「第19条1項廃棄基準=文部科学省令で定める」とあって、これらが「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行令」「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律施行規則」です。
さらにさらに「規則第19条第1項第2号ハ=基準は文部科学大臣が定める」とあり「放射線を放出する同位元素の数量等を定める件」がでてきてその第14条4項にこう書いてあるのです。
「規則第1条第1項第2号ハ及び第5号ハに規定する線量限度は、実効線量が4月1日を始期とする1年間につき1ミリシーベルトとする。」

ずらずらとややこしいですが、ともあれ大事なのは年間1ミリシーベルトを「我慢値」とするということは法律で定められていることなのだということです。
僕自身はこの年間1ミリシーベルトが安全だとは思っていないし、もっと数値を下げるべきだと思っているのですが、しかし「最低限これを守りなさい」という立場でもあります。
ではなぜこの法律が守られていないのかと言うと、実は今、「原子力緊急事態」が宣言されていて、解除されていないからなのです。これが大問題です。

みなさん、そもそも原子力緊急事態が発せられているところでオリンピックなどやるのですか?このことをオリンピックの開催地を決めるときにきちんと言ったのですか?
本当に大問題ですよ。いまは戒厳令状態なのです。この宣言が出ると首相にあらゆる権限が集中して現行法が停止されてしまうのです。僕はそもそもこれは憲法に抵触していると思います。

では緊急事態とは何か。これを定めた原災法第二条にこう書いてあります。
「原子力緊急事態とは原子力事業者の原子炉の運転等により放射性物質又は放射線が異常な水準で当該原子力事業者の原子力事業所外へ放出された事態をいう。」
このように、この法律が施行できるのは「放射性物質が異常な水準で原発の外にある時」だけなのです。つまりいまは福島原発の周りには「異常な水準の放射能がある」ことを政府が宣言している状態なのです。

さらに原災法第15条4項にはこう書いてあります。「内閣総理大臣は、原子力緊急事態宣言をした後、原子力災害の拡大の防止を図るための応急の対策を実施する必要がなくなったと認めるときは、速やかに、原子力緊急事態の解除を行う」
その意味では帰還は、緊急事態宣言を解除できるところまで政府が努力をしたのちに始めるのが法律上の原則です。

それではなぜ政府はいま、安全をうたいながら緊急事態宣言を解除しないのかというと、もし解除すると線量限度は年間1ミリシーベルトになります。それ以外の数値には法的根拠がないのです。
そのためにこのように帰還が進められるといつまでも緊急事態宣言が解除されません。なぜなら例えばさきほど先に発言された神奈川の竹岡さんから、いまだに横浜市栄区のある公園で0.6μSv/hという放射線が計測されるとのお話がありました。
この数値は放射線管理区の値と合致します。この地域では飲食をしてはいけないのです。寝てもいけないのです。18歳未満の人は就労してもいけないのです。それが横浜にある公園のレベルなのです。
だからいま、緊急事態宣言を解除すれば、その公園のある地域の人々も避難させなければならなくなります。避難地域に該当するのは福島県だけではまったくないのです。

続く

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明日に向けて(1320)原発避難は全ての人を救う率先行動であり未来を守るものだ!(避難男児いじめ問題に触れて)

2016年11月18日 01時00分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20161118 01:00)

福島から横浜に避難移住した現在中学1年生の男の子が、学校で耐えがたいいじめを受けてきたことを私たちに明らかにしてくれました。
繰り返し暴力を受けた上に「賠償金をもらっているだろう」などとお金も脅迫され、なんと150万円も強奪された可能性があるそうです。
しかも学校側はまともな対応をしてきませんでした。あまりにもひどい!許しがたいです。

事態をご存知ない方は以下の記事をご覧下さい。

 原発いじめ問題 避難男児に繰り返し暴力
 読売新聞2016年11月11日
 http://www.yomiuri.co.jp/local/kanagawa/news/20161110-OYTNT50180.html

その後、明らかにされた小学校6年生の時に手記で、男の子は以下のように綴っています。
「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」。
・・・胸が痛みで張り裂けそうです。

まずこの男の子によく「いきる」と決めてくれたと感謝の念を捧げたいと思います。
震災で亡くなった方たちにも心を寄せた、愛に溢れた素晴らしい勇気と決断です。拍手したいです。
そうです。あなたはきっといきていて欲しい人です。あなたが生きていることに大きな価値があります。だから本当によく頑張ってくれました。

あなたは放射能から逃れるために避難という苦労をしてくれました。それはあなただけを救う行為ではありません。あなたにつながるすべての人の命と未来を守る行為です。
あなたは頑張って避難することで、他の人の避難の可能性を広げてきてくれたし、同時にあなたはあなたを守ることですべての人の未来を守ってくれているのです。
それだけでもありがたいのに、本当によく辛い時間を超えて生きのびてくれました。心からお礼をいいたいです。

その上で、僕は大人としてあなたにこんな思いをさせたこと、暴力から守ってあげられなかったことを心からお詫びします。
私たち大人はこんなひどいいじめをなくすために精一杯努力をすることをあなたに誓います。
苦しい思いをさせて本当にごめんね。おじさんおばさんがもっと頑張って、きっとあなたに幸せな思いを届けるからね。


みなさん。被曝をめぐる「いじめ」の元凶はどこにあるのでしょうか。政府にあります。政府がまったく無責任にも福島原発事故で起こった被曝を放置していることこそが元凶です。
そもそも学校でおきているさまざまないじめの多くは文科省が元凶ですが、被曝問題で起きているいじめの元凶は政府です。(文科省はこれにも加担しています)
子どもたちの行ういじめのほとんどは、社会で大人たちが行っている人権迫害の縮小版です。いじめた子どもたちは愛をもって厳しく叱らなければなりませんが、肝心なのはいじめの元をただすことです。

そそもそも福島ではいま、年間20ミリシーベルト以下の地域への人々の強制的な帰還が進めらています。
これとともに多くの避難者から住宅補償が奪われようとしていますが、これこそ人権蹂躙であり、いじめそのものです。
この国では年間1ミリシーベルト以上の被ばくを一般人にさせてはならないと法律で決められているのです。しかしそれがまったく無視され、無法行為がまかりとおっています。

こんなことがなされてしまうのはこの国に「原子力緊急事態」が宣言されたままだからです。しかしこれを定めた原災法の第二条には次のように書かれています。
「原子力緊急事態とは原子力事業者の原子炉の運転等により放射性物質又は放射線が異常な水準で当該原子力事業者の原子力事業所外へ放出された事態をいう。」
「異常な水準」の放射能があるのです。だから緊急事態法が解除されていないのです。そんな状態のもとでどうして人々が帰ることなどできるのでしょうか。逃げ続けて当然です。政府にはそれをサポートすべき絶対的な義務があります。

そもそもこんな緊急事態法自身、憲法違反だと僕は確信していますが、せめて帰還を奨励するならば政府の努力で「異常な水準」の放射能を取り除き、緊急事態宣言を解除してからにすべきです。
そうすれば当然のように「年間1ミリシーベルト以上の放射線を一般人に浴びせてはいけない」という規定が復活します。それでやっと人々との「一定の」安心が保障されるのです。
そんなこともせずに違法、無法に人々に被曝を強制する政府をけして信じてはいけません。だから避難を続けるのは正義でありまっとうな選択であり賢い生き方です。


にもかかわらず多くの人々が被曝地帯から逃げられずにいます。
そこにはたくさんの理由があるでしょう。けして動けないから愚かだなどと言うことはないし、そう言うべきでもありません。
ただ私たちがしっかりと観ておかなければならないのは、福島原発事故以降、この国を「正常性バイアス」という分厚い雲が覆っていることです。

「正常性バイアス」とは災害心理学で使われる言葉です。危機に直面したときに、危機を危機として認識せずにやり過ごそうとする心理的罠です。
私たち現代人は都市生活の安全性が向上したこともあって、命の危機に瀕する経験をほとんど持っておらず、その時の心構えができていません。
そのため突然、危機に直面すると、現実に対して「正常になっていく」とバイアス=偏見をかけてしまい、安心を得ようとする心理が働いてしまうのです。

例えばビルの一室にいて火災報知器がにわかになりだすと「火災訓練をやっているの?」とか「火災報知器の故障?」とか考えがちです。その方が心理的に楽だからです。
このとき「とっさの時に周りの行動に合わせてしまう」という集団同調性バイアスも働きます。そうするとますます逃げられなくなります。
にもかかわらず「人は危機に瀕するとパニックになる」ということが過度に強調されているため、危機管理者も危機をきちんと伝えないという事態が重なりがちです。こうなると人は適切な避難行動がとれないのです。

この国には今、放射能問題について、この正常性バイアスによる心理的ロックがかかってしまっています。
しかもそれは政府や政党の中枢、マスコミの中枢にまで食い込んでしまっています。だから放射能が蔓延する東京にどの政党もマスコミも本部・本社を置いたままです。いわんやこの被曝地でオリンピックをやれるなどという幻想もまかり通っています。
この蜃気楼をみているかのような社会化した心理的ロックの強固な存在を大きく打ち破ったのが、被曝地を脱出し、少しでも放射線値の低いところを求めて避難を決行した人々の行為なのでした。

災害心理学ではこれらの行為を「率先避難」と言います。多くの人々が正常性バイアスのロックにかかってしまっている時に、誰かが「逃げろ!」と叫んで行動に移ったら、ロックが解除され出すのです。
だから率先して避難を決行すると後に続く人々をも助けることができます。危機感と真っ当に向い合い、決然と行動することで、人々の蒙昧とした意識に喝を入れて、命を救う行動に向かわせることができるのです。
だから率先避難はたくさんの命を救います。とても重要でありがたいものです。

この行動は避難した先の人々の意識改革にもつながりました。日本の各地で、避難者と出会い、受け入れに奔走した人々が、避難のリアリティに触れる中で原発の危険性に強く目覚めたのでした。
かくして首相官邸前をはじめ、全国の電力会社の本店・支店前、あるいは主要ターミナルで原発撤廃を求める金曜行動が立ち上がりました。今日、その多くが200回を大きく超えています。
この国でこんなに広範で、持続的で、一貫していて、しかも柔軟な団結を崩さずに行われてきた行動を僕は知りません。日本の歴史に残る行動ですが、その大きな柱になったのも率先避難した方たちの活躍でした。


わたしたちが再度、確認しなけれがいけないのは、避難は直接的には本人や家族の心身を守るべきものですが、より大きくは私たちの未来そのものを守る行動だということです。
一人一人が自分を守ることで私たち全体の未来が守られているのです。だから避難者は率先避難によって他の人々の避難や原発への身構えを促しているだけでなく、大きく未来そのものを守っているのです。
だからこの行動は尊いのであり、みんなで感謝し、みんなで労苦を分け合い、守り抜いていかなくてはならない行動なのです。そのことで私たちの未来が守られるのだからです。

私たちはそのことをもう一度、肝に銘じましょう。
あなたが避難者であるならがあなたの行動に強い誇りを持ってください。あなたの行動は社会全体を守る尊い行動です。
あなたが避難者を受け入れる立場にあるならば、どうか避難者に感謝を捧げることから始めて下さい。その上で一緒に未来を守るための行動に参加して下さい。何でもいいので避難者を支えることからそれは始められます。


僕は今、この国の底辺でものすごいことが起こっていることを日々、実感しています。
僕は17歳の春から社会運動に飛び込びましたが、以来、40年間、これほどまでに多くの人々が(しかもその大半が「普通の人」と称する人々が)、決死の思いで能動的に行動したことを見たことがありません。
しかも避難者は、どの政党も、進歩的団体も、けして「逃げろ」とは言わなかったあの時に、自主的に判断して危険な地帯から飛び出したのです。

この日本史を揺るがすような決死の行動を、いまだにどの政党も団体もきちんと評価できていないので、この行動が政治や選挙に十分には反映していませんが、しかし社会の底辺部にはすごい変化が起こっています。
その一つの流れの中に僕の講演会は位置しているので、僕にはそのことが本当に強く感じられます。
「守田さんの講演会に来る人は一部の悟った人たちだ」と言われることもありますが、しかしその「一部」の割合が激増している。だから肩書も学歴も何もない僕の話を多くの方が聴きに集まってくださるのです。

何度も言いますがその変化の先頭に、避難者たちは位置してきました。たとえ表立った政治的活動をしていなくとも、避難を持続しているだけですごい行動です。社会の宝です。
今はまだ試練の方が多いですが、しかしこの宝はそれと結びつき、自らもまた宝の一部に変化しつつある多くの人々とともにやがて大きなうねりを作り出すに違いありません。
僕もそのために懸命にオールを漕いでいます。流れを促進するため?それもありますが、流れについていくためでもあります。この巨大な変化につねに自分に内面的変革を課すことでついていきたいのです。

みなさん。避難者の思いをシェアしましょう。この思いのもとに集まりましょう。そこに未来の可能性があります。
僕もなお一層の努力を傾けます。そのことで横浜の少年への約束を果たします。
いやみんなで果たしましょう!この男の子に「生きると決めて本当に良かった」と思ってもらいましょう。頑張りましょう!

*****

福島の人々の思いや、避難者の思い、避難者を受け入れて奮闘してきた方たちの思いを知りたい方はぜひ以下の企画にご参加ください。
12月4日、京都市での開催です・・・。

『ふつうに暮らしたい』 3.11は過去の話?いいえ、未来(あした)の私たち
https://www.facebook.com/events/1699655360355060/

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明日に向けて(1319)京都「被爆2世3世の会」で三田茂医師を招き、講演会と対談を行います!

2016年11月17日 18時30分00秒 | 明日に向けて(1300~1500)

守田です。(20161117 18:30)

僕が参加している京都「被爆2世3世の会」で11月27日に京都市内で「東電福島第一原発事故被災者の健康と広島・長崎の被爆二世健康実態調査報告学習講演会」と題した企画を行うことになりました。
ぜひ多くの方にご参加いただきたいと思います。
また同会のホームページも新たに立ち上げましたので同時にご紹介しておきます。以下がアドレスです。

 京都「被爆2世3世の会」ホームページ
 http://aogiri2-3.jp/

これまでの会報のバックナンバーや被爆体験の聴き取りなども網羅していて、資料価値が高いと思っています。
ホームページのトップページに以下の企画の案内も載せています。ぜひこちらもじっくりとご覧下さい!

*****

東電福島第一原発事故被災者の健康と広島・長崎の被爆二世健康実態調査報告学習講演会

福島の被曝、そして
広島・長崎の被爆の重ね合わさるもの
http://aogiri2-3.jp/indexbox/20161127.pdf
https://www.facebook.com/events/695300550637486/

■三田茂医師のお話し & 三田茂医師×守田敏也さん(フリーライター)のトーク
■11月27日(日)午後1時30分~4時30分
■ラボール京都 4階第8会議室 (中京区四条通御前西北側)
▼資料代 500円

京都「被爆2世・3世の会」は昨年「被爆二世健康実態調査」を行いました。今回の企画で私たちはこの成果をみなさんと共有したいと思っています。
三田医師は福島原発事故で被災した子どもたちなど3,000人以上を診療してこられた医師で、東京都小平市から岡山市に移転されています。私たちはその三田医師に「被爆二世健康実態調査」の結果の読み解きをしていただきました。
今回、三田医師をお招きし、首都圏のたくさんの子どもたちなどを診られて経験からつかまれてきたこと、調査の読み込みを踏まえての、原発事故被災者の問題と重ね合わせたお話をしていただきます。
講演後に私たちの会員であるフリーライターの守田敏也さんと三田医師との対談で問題をさらに深め、みなさんと一緒に今何をなすべきかを考える場としていきたいと思います。

三田茂医師プロフィール
東京都生まれ。小平市で先代から続く三田医院で長く診療を行う。福島原発事故後、被曝影響が懸念される首都圏の子どもたちを中心に3,000人以上の甲状腺や血液の検査を行い、必要な診療を続けてきた。
この過程で被曝の深刻な実態をつかむとともに同様の検査の実行を多くの医師に訴えてきた。
2014年4月に先代から51年続いてきた医院を断腸の思いで閉じて岡山に移転・開業。自身や家族の防護だけでなく人々に避難を促すための転地でもあった。その後も精力的に全国から訪れる人々の診察を続けている。

京都「被爆2世3世の会」
電話075-811-3202

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