守田です( 20240330 11:00)
● 311以降、2446本の記事を配信しました!
「明日に向けて」、今回の投稿で2400回を超えました。
第1回の投稿は2011年3月26日。それまで「東北地方太平洋沖地震について」等のタイトルで46本配信したので、合計2446本になります。
この13年間、原発と被爆・被曝問題を軸に、社会の現実と切り結びつつ、様々な発信を続けて来れました。多くのみなさまの支えがあってこそです。ご支援に深く感謝いたします。
今回、この活動の継続と新たな展開に向け、さらにみなさんにカンパを訴えます。振込先を記します。どうかよろしくお願いします。
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ホームページトップ画像より 北アルプス奥穂から西穂に向かう途上にそそり立つジャンダルム 写っているのは当時の仲間たち 守田撮影
● 原発を支えているのは「特定の思想の枠組み」
この機会に僕が目指しているものを書き記しますが、実はこの間、感慨深いことに突き当たりました。そのことから紹介します。
この間のNHKの書の連載の中でのことなのですが、この書、かなり重要な新事実がつまっているものの、ある大切なことに触れていない。福島原発が津波の前の地震によって配管損傷を起こし、メルトダウンにいたった可能性が高いことにです。
この点を僕が把握したのは、2011年3月26日の原子力資料情報室における田中三彦さんの会見においてでした。それで今回、田中三彦さんの以下の動画を拝見したのですが、そこで深い共感に遭遇しました。
もっかい事故調オンラインセミナー第10回(2022年12月16日19時~)
https://www.youtube.com/live/EuYwCo126FE?si=YT5qUMHD1C1pcr6w
この2部「原発を支えているものは何か」(1時間47分~)の中で、田中さんは次のように述べておられます。
「今日までそれ(守田注:原発)を存在させてきたのは、われわれが意識的に、あるいは無意識的に選択してきた「特定の思想の枠組み」(パラダイム)の投影だ」。だから私たちは「みずからのライフスタイルを根本から問い直す作業」が必要だ・・・。
しびれました!僕もまったく同じように考えて行動してきたからです。現代社会の「特定の思想の枠組み」のパラダイムチェンジこそ必要であり、僕もそのためにも「明日に向けて」を書き続けてきました。
● 吉福伸逸さんとの対話の中で
田中さんの話、さらに驚きに満ちていました。田中さんは1968年に(株)パブコック日立に入社され、原発の設計に従事したのち1977年に退社されたのですが、その後にたくさんの本の翻訳をされています。
F・カプラ『タオ自然学』『ターニング・ポイント』、A・ケストラー『ホロン革命』などですが、吉福伸逸さんという無二の親友となられた方との共訳が多い。吉福さんは2013年に亡くなられましたが、『仏に逢うては仏を殺せ 吉福伸逸とニューエイジの魂の旅』(稲葉小太郎著 工作舎)という伝記が出ています。
さっそく取り寄せて読みましたが、吉福さん(1943年生まれ)は、1960年代後半からアメリカで強まっていった「カウンターカルチャー」を、翻訳などを通して次々と日本に紹介された方だと知りました。
当時、アメリカはベトナム戦争の泥沼にはまっており、多くの人々がそこに西洋文明の限界を感じて変革を求め、アメリカ先住民族の知恵や東洋思想に注目しだしていました。
例えば『タオ自然学』の著者、F・カプラは「パリ大学で高エネルギー物理学の研究をしていたときに鈴木大拙の著作と出会い、先端科学の理論と東洋思想の符合に驚き、いきすぎた物質主義・要素還元主義に警鐘を鳴らすべくこの本を書」いたのだそうです。(伝記52ページ)
それらのさまざまな問いを、吉福さんや田中さんは「精神世界」というワードでくくりつつ、現代社会の行き詰まりの超克を目指されたのです。お二人の活動に深く共感し、一気に訳書などを集めました。
真ん中の書が吉福さんの伝記、両側にあるのは吉福・田中他の訳本
左 吉福さんをはじめカウンターカルチャーを志向する人に多大な影響を与えて「ドンファンの教え」に関する本
右 田中さんが吉岡さんと訳されたF・カプラの『ホロン革命』
● 廣松渉さんとの対話の中で
実はこうした志向性は、僕自身の歩みと強くシンクロするのです。僕は高校3年生で社会運動に飛び込み、マルクスを学び始め、その中で哲学者廣松渉さんに惹かれて、多くの点を学びました。
廣松さんはマルクスの思想を読み解く中から、その骨格にはあるのは、近代からのパラダイム・チェンジの志向性だと強く述べられたのです。そのためには、自らをも根本的に問うことが求められる。対象と自己の同時変革が課題なのです。
廣松さんはそんなマルクスの思想が、『ドイツ・イデオロギー』という書で開花したと強調するのですが、マルクスはこの書の中でこう書いています。
「この共産主義的自覚(守田注:社会を変革せねばらなないという根本的自覚)の大規模な産出のためにも、また目的とすることそのものの達成のためにも、大群の人間たちの変化が必要である。こうした変化はただなんらかの実践的運動、なんらかの革命においてのみ、おこりうることである。
したがって革命は、支配階級が他のどんな仕方によっても打倒されないことからだけ必要なのではなく、打倒する階級が、革命においてはじめて、すべてのふるい身の汚れをぬぐいおとして、社会のあたらしい基礎をつくる力を身につけるところへと達しうるからこそ必要なのでもある」(『同書』合同出版79ページ)
そうだと僕は思うのです。近代社会は戦争を繰り返してきていて、その暴力の頂点に核体系があります。それを変えたいわけですが、そのためにはこれを存立させていて、私たちの思考の中にも入り込んでいるパラダイムをチェンジしていかなくてはならない。
廣松さんはそのパラダイムの成り立つ仕組みを、「世界の共同主観的存在構造」として描き出し、変革の可能性を訴えたのですが、僕には吉福さん、田中さんが問題にされてきたとそれとの強い繋がりが見えました。
廣松哲学の核心が詰まっている『世界の共同主観的存在構想』 お勧めですが難解です・・・
● 現代社会のパラダイムチェンジのもと、核なき未来をつかみたい
さらに伝記を読み進め、吉福さんの周りに集っていた方たちにも驚きました。宮田雪さん、星川淳さん、浜田光(アパッチ)さん、槇田きこりさん、山田塊也(ポン)さん、澤村浩行(サワ)さん、そして田中三彦さんなどの名が出てくる。
ビックリしました。これらの方々はいずれも僕が311後に出会って、なにがしかの恩を受けた方たちだからです。(宮田さん、山田さんとは生前にはお会いできませんでしたが)
こんなの見つけました!左がきこりさん、右がサワさん
https://youtu.be/vpF0CIcvBE8?si=WJSkEra0uydIH7I2
僕は311直後に、福島原発の危険性を説き「逃げて下さい!」とメールで発信し続けました。50人ぐらいの友人に送ったものをどんどん拡散していただいたのですが、その拡散を担って下さった一人が槇田きこりさんで、すでに東日本を飛び出していた時にメールを受けて、確信を深めて、さらに避難を継続してくれたのが蝦名宇摩さん、小岩井維摩さん姉妹とそのご家族などでした。
津軽三味線の師匠でもある蝦名宇摩さんは、その後に岡山県に移住し、そこを拠点に各地で演奏を行って生計をたてつつ、毎年、移住先の瀬戸内市に関東の方たちを招いた保養キャンプを行って来ました。小岩井維摩さんもパートナーの竜二さんとともに「オぷスト」という石窯天然酵母パン屋を開き、ヨガインストラクターも担いながら、やはりこのキャンプを支えて来ました。
せとうち交流プロジェクトHPより
http://setouchi-kouryu-project.com/
まさに今もキャンプが始まっていて、僕も明日31日夜から合流するのですが、その宇摩さんと維摩さんは、山田塊也(ポン)さんの娘さんです。そのポンさんや吉福さんと親しかったきこりさんが、僕の言葉を拡散して下さっていたのです。
ちなみに京都では僕は、こうした方々にも縁が深い廣海ロクローさんと事故一週間後に出会い、その後、カウンターカルチャーの志向性を強く持った方に、次々と出会わせてもらえましたが、それがまたこのラインナップの方たちとつながっている。
ロクローさんに誘っていただいて登壇した山水人(やまうと)のステージから 2015年9月
一方で同時に僕は、ネットで福島原発のいまを精力的に説いていた元東芝の後藤政志さんを知り、そこから田中三彦さんも知ったのですが、後藤さんも現代の技術のあり方を根本的に問うムーブメントの中におられた方でした。
ようするに現代社会を問い、自分自身も問う道を歩まれてきた多くの方たちと、僕はどんどんお会いしていた。しかもまるで昔からの知己のように。みなさん、いつも温かくして下さったけれど、大きく志向性を共にしていたからだったことが分かりました。
このムーブメントをもっと強めます。そのために今後、この間学んだことを書籍にまとめる作業に注力します。ぜひお支え下さい。また支えて下さることから、あなたもこの歩みを共にして下さい。一緒にパラダイムチェンジへと進みましょう。
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