明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(983)社会的共通資本としての絵本-市居みか展四日市へのお誘い(2)

2014年11月30日 00時30分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20141130 00:30)

社会的共通資本としての絵本の続きをお送りします。

絵本に対する思いをさまざまな経験から深めつつも、しばし滋賀県に通わなくなっていた僕が市居みかさんと再会したのは、市居さんが絵を書き、玉崎洋子さんが文を書いて作った、1枚のチラシがきっかけです。
タイトルは「まずは知らなきゃね」。市居さん描く「あすのわぐま」が、原発について「本当はこうなんだよー」と猫ちゃんに説明しているものです。
何はともあれ以下をクリックしてみてください。A4二つ折り、見開きようのもので、1枚目の右側からスタートしています。
 http://asunowa.shiga-saku.net/e614436.html
 https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=1n4BN-8yTV5-BqPLEixco6GMXyRBn1Hz1NF8pdV_ibNfW20AATCj_rShSINd8&hl=en

僕がこのチラシを手にしたのは、2011年4月に行われた大阪での脱原発デモでのこと。カメラを持って撮影しながら歩道を歩いていた僕に小学生ぐらいの女の子が「はい!」とにこやかに手渡してくれたのでした。一読して、これは原発事故以降のベストチラシだと思った。
それでただちに持ち帰ってマスプリ。周りにじゃんじゃん配りだしたところ大好評でしたが、その頃になって良く読むと「イラスト市居みか」と書いてある。「あ、あの時の市居さんだ」と嬉しくなりました。
チラシのマスプリの許可を得なければと、連絡先の「あすのわ」に電話を入れて快諾を得ましたが、そのあすのわの方たちがのちに「びわこ123キャンプ」をはじめていきました。思えばこれが僕のしがの方たちとのつながりの糸口になりました。1枚のチラシ、素敵な絵の踊るチラシのもつ力でした。

そのころ、つまり2011年過程で、僕は被爆医師の肥田舜太郎さんと出会い、本当に深刻な放射能漏れの中にあって、私たちが前向きに生きてくために必要なのは、放射能の元を断つことと、一方で腹をくくり、免疫力を高める努力を傾けることだと教わりました。
免疫力を高めるためには健康生活をすることが大切ですが、同時に私たちが経験的に知っているのは、精神生活の豊かさもまた、免疫力の向上に大きく寄与するのだということです。だからことばの力、絵の力もまた、免疫力の向上に大きく寄与するのだと僕は思いました。
その意味で僕は「絵本は放射能に効く」と感じました。今でもあの2011年4月の大阪のデモのときに「あすのわぐま」と出会い、心がパッと明るくなった嬉しさ、楽しさを思い出します。そのために僕は折に触れて絵本に接することの喜びを伝えようとしてきました。

今はそれ以上の意味を感じています。というのは安倍首相は今、自分たちの政権の延命だけのために衆議院を解散するなど、正当性のないことばかり繰り返しています。
「アベノミクス解散だ」とか「増税延期を問う解散だ」とか言っていますがどう考えもおかしい。アベノミクスが間違っていて、人々の暮らしが苦しくなり、景気がどうしようもなく悪いから増税なんかできなくなったのであって誰も増税に賛成などしていないのです。
それだけではなくこの首相は本当に平気で嘘ばかりついてきました。福島原発があんなにひどい状態が続いているのに「完全にコントロールされている」と言ってみたり、集団的自衛権行使の強引な決定でこの国がアメリカに率いられて戦争に参加する可能性が高まっているのに「これは日本が戦争に巻き込まれないためのものだ」と言ってみたり。

今日、こうした安倍首相の横暴ぶりは日を追うてひどくなっています。
とくにマスコミや野党に「大義なき解散」との指摘を受ける中で、安倍首相はテレビのキャスターに「今、解散総選挙は必要なんですか?」と問われて「それも選挙で問うてください」と訳のわからない返答をしたり、「経済なんかぜんぜんよくなってない」という町の声が紹介されると「おかしいじゃないですか」と切れてどなったりしています。
そこには誠実さなどかけらもない。相変わらずうそばかりを連発し、少し突っ込まれただけで逆切れを繰り返していますが、私たちが見ておかなければならないのは、このような人物が首相を続けてきたこと、誰も安倍首相を諫めることができない中で、他ならぬ与党の議員たちの多くが想像力を失い、感性を麻痺させてしまっていることです。

なぜかと言えば、あれほど不誠実な嘘の連発や事実を無視した発言が続くにもかかわらず、誰も抗おうとせず、黙認することで嘘への加担を続けているからです。
批判でもしようものならすぐに政権から遠ざけられてしまうからと考えてどんどんイエスマン化してしまっている。国のため、社会のために首相のあやまりの前に立ちふさがる「愛国の志士」もまったく出てきません。それが「劣化」を指摘されている与党議員たちの姿です。
市井の人々に「暮らしが苦しい」と言われても察するイマジネーションを持たず、どう考えても危険な原発を避難計画もなしに動かそうとしていることにもまっとうな危機感を持てない。とにかく自分に都合の悪いことはすべて考えないようにしてしまっている。集団で人間的想像力にふたをしたままこの国をとんでもない方向に進ませつつあります。

ここでぜひ再度、松居さんの言葉を思い起こして欲しいと思います。
 「物語を聞ける力というのは、物語という目に見えない世界を、自分の心の中に見えるようにする、絵(イメージ)にする力です。一般に想像力(イマジネーション)といわれる力です。想像力が豊かであれば、人間は見えないものを見ることができます。絵本は、子どもたちの想像力に大きなかかわりがあります。」
 「子どもは、生まれたときから、豊かな想像力を持っているのではありません。それは直接、間接の体験を通して獲得されるものです。体験が豊かであればあるほど、想像力も豊かになるでしょう。絵本は、幼児にとって体験を豊かにする機会をあたえます。」(『絵本とは何か』p7、8)

こう話をつなげてみると今の政治家たちがどれほどこうした人間的なイマジネーション力を失っているかが見えてくると思います。
思いやりの心を著しく欠いており、だから周辺国と溝が深まるばかりだし、国内にもヘイトクライムを蔓延させています。それどころかヘイトクライム団体と関係の深い人物を多数閣僚に登用すらしている。
私たちはこのあまりにひどい状況に立ち向かっていかなければなりませんが、だからこそ、相手があまりにひどいからこそ、私たち自身の心の豊かさ、想像力の逞しさ、他者の痛みを思いやりシェアできるイマジネーションを、「灰色」の人々に立ち向かう中で失ってしまうことを避けなければならないと思うのです。

そのために今、絵本を読み、文学を読み、美しい絵画を楽しみ、さまざまな音楽に耳を傾けることで、私たちは常に私たちの中の美しいもの、柔らかいもの、優しいものを守り、育んでいく必要があります。絵本などが与えれくれる栄養をたくさん採って、心の健康を保つことが大事です。
そのためにもぜひ市居みか展に行かれてください。あるいは市居みかさんの絵本を手に取ってください。ふしはらのじこさんの絵本も読まれてください。松居直さんの著作に触れてみてください。
さらにぜひ宇沢弘文先生の書に、今、この時期だからこそ、接していただきたいと思います。その中で、社会的共通資本を守ろう!と叫び続けられた宇沢先生のご遺志をシェアしてくださると嬉しいです。僕自身も社会的共通資本を守るため、さらに奮闘を続けます!

*****

再度、市居みかさんの個展情報をお知らせしておきます。

11月28日から12月10日まで。四日市のメリーゴーランド本店にて開催中です。
12月7日午後2時からギャラリートークがあります。

 絵本作家 市居みかの日々あれこれ
 http://ichiipk.exblog.jp/23487278

なお今回の記事は2011年9月にはじめて滋賀県信楽市を訪れてお話するにあたって書いた以下のものをリライトして作りました。

 明日に向けて(271)ことばの力、絵の力、絵本の力 20110927
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/954c69322a4325aecc96c8f86eea952b

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明日に向けて(982)社会的共通資本としての絵本-市居みか展四日市へのお誘い(1)

2014年11月29日 18時30分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20141129 18:30)

絵本作家でアースディしがも担われている市居みかさんの作品展「あのころ」が三重県四日市市のメリーゴーランドで始まりました。11月28日から12月10日までです。
10月に行われた京都展の続きです。僕はポーランドから帰国してぎりぎりの日程で行くことができましたが、本当にとても良かったです。

市居さんは今回の個展のことをこんな風に表現しています。

 子どもの頃にしか感じられなかった、あの感じ。
 わくわくするような、不思議なことが起こるような、ドキドキするような、あの感じ。。。
 思い出しながら、もう一度味わいたいと思います。

 絵本作家 市居みかの日々あれこれ
 http://ichiipk.exblog.jp/23487278

ドキドキしながらあの扉を開けて・・・そんな懐かしいあのきらめきの一瞬があなたの中に蘇ってきます。
お近くの方、また近郊の方もぜひお越しください。会場を記しておきます。12月7日午後2時から市居さんも在廊されるそうです。

 メリーゴーランド
 http://www.merry-go-round.co.jp/index.html

またこの時期に三重県松阪市嬉野図書館で市居さんの講演とワークショップもあります。
定員が親子30組だそうです。われと思われる方は早めにご連絡を。

 絵本作家 市居みかさん講演会ワークショップ
 http://www.library-matsusaka.jp/matsuri5.html

市居さんと出会ったのは僕が滋賀県に一瞬だけ起ちあがった「みんなの滋賀新聞」という新聞社に参加していて県内を走り回って取材していたときのことです。
滋賀県は図書館が素晴らしくいい。間違いなく日本で一番いい。それもダントツにいい。素晴らしいポリシーを持って作られてきています。とくに僕が惹かれたのは当時才津原哲弘さんが館長をされていた能登川図書館でした。何度も通ってお話を聞きました。
そのとき才津原さんに紹介されて参加したのが近江兄弟社小学校の「とりいしんぺい」先生の主催する大人を対象とした絵本を読む会で、その場に参加されていたのが市居さんでした。

絵本を読む会は能登川図書館と、近江八幡のとても素敵なカフェレストラン「茶楽」で交互に行われていました。参加するたびに驚きがありました。とうに忘れていた絵本の力を思い出しました。
たくさんのことを取材して、図書館や絵本に関する連載を企画していたのですが、残念ながら立ち上がったばかりのこの新聞社が一年で力尽きてダウン。
ものすごく溜め込んだ他の滋賀県ネタとともに、すべてがお蔵入りになってしまいました。

その後、恩師の故宇沢弘文先生が僕を同志社大学社会的共通資本研究センターにひろってくださり、僕の社会的共通資本に関する研究が始まりました。
宇沢先生が最晩年に最も力を注いだのは「社会的共通資本としての医療」でしたが、それとともに社会的共通資本の考え方を社会のさまざまなところに適用していくことも意欲的に考えておられました。
そんなときに僕の滋賀県での絵本に関する取材の話から「社会的共通資本としての絵本」という企画を同志社でやらないかということになりました。

このときに宇沢先生がぜひお呼びしようと推薦されたのが絵本の老舗、福音館書店の会長、松居直さんでした。松居さんは同志社のOBでもいらっしゃいました。
もうひとり、京都・堺町画廊の主宰者でもあり、僕の昔からの友人の絵本作家ふしはらのじこさんも来て下さいました。
お二人の話ともにとても素敵だったのですが、今回、「社会的共通資本としての絵本」というタイトルにからめてご紹介したいのは、松居さんのことです。

松居さんは、絵本の世界にいる方の中ではとても有名な方で、絵本道の達人です。
といってもご本人が絵本を書かれてきたのではありません。福音館書店を通じて数々の素晴らしい絵本を世に押し出し、また素晴らしい作家さんたちを育ててこれらたのです。
松居さんは、絵本や、こどもの本にまつわる成人向けの本を何冊も書かれています。『絵本をみる眼』『絵本とは何か』『子どもの本・ことばといのち』などです。とくに絵本やこどもの本を開いてみようという方にお勧めなのは『子どもの本・ことばといのち』です。

ここでは松居さんのお勧めの児童書がずらりと並んで紹介されています。その筆頭にあげられているのは『ハイジ』です。誰もがご存じのアニメーション『アルプスの少女ハイジ』の原作ですが、実は原作とアニメにはかなりの違いがあり、松居さんはそれを次のように紹介しています。
 「久しぶりに完訳で『ハイジ』を読み返したとき、ひとりの読者-それも大人の読者として、私は予想した以上に心をひかれました。これほどまっすぐに心に語りかけ、新鮮な思いに包まれた読書体験も稀でした。
 それに較べてアニメーションの「ハイジ」のなんと貧しいこと。原作者シュピーリが語り伝えたいと願ってあろう本質の問題は、みごとに消し去られているのです。」
 「いえ、その部分は映像化しえないのです。もちろん物語を”読む”というあの楽しさは味わえません。シュピーリが心をこめてことばにした自然の美しさも、人の心のゆたかさや深い悩みも、まるでメッキのように薄っぺらにしか表現されていません。」(『子どもの本・ことばといのち』p10)

僕はこの一説に衝撃を受け、すぐに「ハイジ」の原作を日本語訳して福音館書店が発刊したものを手に入れ、ゆっくりと、丹念に読みました。そして松居さんがおっしゃるように、この本が本当に深い広がりを持っていることを知りました。パウル・ハイの描いたさし絵にとても感銘しました。
実はこのさし絵は、松居さんが日本語訳を編集されたときに、スイスの著明な絵本編集者で、こどもの本のすぐれた研究者でもあったベッティーナ・ヒューリマンさんに相談を持ちかけ、パウル・ハイさんを紹介されて実現したものなのでした。
そのヒューリマンさんが『七つの屋根の下で - ある絵本作りの人生』というこれまた素晴らしい本を出されているのですが、その日本語訳をされたのが、宇沢先生のお連れ合いの宇沢浩子さんでした。

松居さんはさらにこう続けられています。
 「すでに『ハイジ』をお読みになったことがある方々も、改めて矢川澄子訳、パウル・ハイ画の完訳本『ハイジ』を、一行一行ゆっくりと、山に登るときのようなあゆみで読んでみてください。そして作者シュピーリの語ることばと思いに、より添ってみてください。」
 「さらには、登場人物たちの行為やことばだけでなく、アルプスの自然について語る、シュピーリのことばにこめられた、彼女の実体験とあこがれに思いをいたしてください。この作品の新の立役者は、スイス・アスプスの大自然だともいえるのではないかと、私はおもうからです。」(同p12)

松居さんが『ハイジ』の紹介を通じて伝えたかったことは何でしょうか。
ことばと絵が、人間の想像力をかきたてること、そこにこそ「子どもの本」や「絵本」の素晴らしさがあるということだと思います。だから実は優れた本は、大人をも深く感動させます。
正確には、ものごとに感動する私たちのかけがえのない人間的な力を引き出してくれるのです。ピュアに書かれたことばの力、絵の力、そして絵本の力がそこにあると僕には思えます。あらゆる書物の原点もまたそこにあるように思えます。

松居さん自身は、『絵本とは何か』という本の中でこう語っています。小さな子どもたちを集めて、お話を読み聞かせたとき、ついてこれる子と、そうでない子がいる。それはなぜかということを解き明かす中で語られている言葉です。
 「物語を聞ける力というのは、物語という目に見えない世界を、自分の心の中に見えるようにする、絵(イメージ)にする力です。一般に想像力(イマジネーション)といわれる力です。想像力が豊かであれば、人間は見えないものを見ることができます。絵本は、子どもたちの想像力に大きなかかわりがあります。」
 「子どもは、生まれたときから、豊かな想像力を持っているのではありません。それは直接、間接の体験を通して獲得されるものです。体験が豊かであればあるほど、想像力も豊かになるでしょう。絵本は、幼児にとって体験を豊かにする機会をあたえます。」(『絵本とは何か』p7、8)

宇沢先生がもっとも重要視されたのは、医療とともに「社会的共通資本としての教育」でした。
宇沢先生は子どもにはもともと自らを成長させていくインネイトな力が備わっており、その発展、開花を助け、支えていくものこそが教育なのだと考えられていました。その点、松居さんと少し捉え方のニュアンスに違いはあるものの、お二人は同じことを語られていたのだと思います。
子どもの感性をおおらかに伸ばしていくこと、想像力を発達させていくいこと、そのために良質な児童書が必要であり、良質な教育が必要なのです。その教育の場を国家官僚の恣意的支配や市場原理に任せてはならない。だからこそ教育も絵本も社会的共通資本なのです。

この日の同志社での企画も、松居さんが著書に書かれている児童書や絵本の力と意義について語ってくださり、宇沢先生も社会的共通資本としての教育について語ってくださいました。
もうひとりの参加者のふしはらのじこさんも、ちょうど松居さんの立ち上げられた福音館書店から『じんがくんいちばにいく』という素晴らしい絵本を出されており、その話などをしてくださいました。
素晴らしい企画になりました。なお『じんがくんいちばにいく』の紹介もアマゾンのサイトから載せておきます。アマゾンにはさまざまな問題がありますがレビューにはなかなか良いものもありますのでご参考にされてください。

 『じんがくんいちばにいく』
 http://www.amazon.co.jp/gp/product/4834018512%3ftag=osusumeehonsh-22%26link_code=xm2%26camp=2025%26dev-t=1CR2KCSDNRVJY76AMX82

続く

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明日に向けて(981)歪められてきた放射線防護(国際放射線防護委員会=ICRPの考察-1)

2014年11月28日 09時00分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20141128 09:00)

ウクライナの悲劇を分析する中で、チェルノブイリ原発事故による人体への影響を告発するウクライナの医師たちの前に、常に幾つかの国際機関が立ち塞がってきたことを見てきました。
IAEA(国際原子力機関)、WHO(世界保健機関)、UNSCER(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)、ICRP(国際放射線防護委員会)などです。
これらの中で、最も古くから放射線の人体への影響の評価を行ってきたのはICRPです。そのためこの委員会の主張を分析し、放射線被曝の影響の過小評価論に対してしっかりとした批判を行っていく必要があります。

そのため今『ICRP2007年勧告』批判の作業に着手し、読み解きを行っていますが、その前にこの組織を概観しておくこと、設立から今日までの歴史過程をおさえ、多くの方に知っていただくことの重要性を痛感しました。
絶好の参考書としてあげられるのは『放射線被曝の歴史』(中川保雄著 明石書店)です。1991年に公刊されていますが、福島原発事故後の2011年10月に増補版が出されました。
今回はこの書の内容をみなさんに紹介したいと思います。

本書の問題意識は「1 放射線被害の歴史から未来への教訓を-序にかえて」によく表されています。
 「放射能の恐さや放射線被曝の危険性に関する公的なあるいは国際的な評価は、核兵器を開発し、それを使用し、その技術を原発に拡張した人びとと、それらに協力してきた人びとによって築き上げられてきたのである」(『同書』p11)
 「被害をどうみるかが問題とされる事柄を、加害した側が一方的に評価するようなことが、しかもそれが科学的とされるようなことがまかり通ってもよいのであろうか」(『同書』p11)
 「一般には通用しないようなやり方で、放射線被曝の危険性とそれによる被害を隠し、あるいはそれらをきわめて過小に評価することによって、原子力開発は進められてきたのである」(『同書』p12)

まったく同感です。僕自身も、この点について、物理学者矢ヶ崎克馬さんとの共著『内部被曝』(岩波ブックレット)の中でも明らかにしてきましたが、チェルノブイリ原発事故の被害により深く触れる中でこの点をもっと掘り下げねばという思いを新たにしました。
なんとも悔しいことでもあります。私たちの国はアメリカに原爆を落とされましたが、そのアメリカが日本を占領したのちに、広島・長崎に赴いて被爆者調査を排他的に行ったのでした。原爆のデータを独占するとともに、できるだけ被害を小さくみせるためにでした。
情けないことに、私たちの同胞を原爆投下後に二重三重に踏みつけるこの調査に、我が日本政府は全面的に協力したのでした。自らのアジアでの戦争犯罪を訴追されないことが強い動機となっていました。

原爆投下は完全なる戦争犯罪です。非戦闘員の無差別な大量虐殺だからです。いやそれだけではない。人々を戦争が終わった後も長い時間をかけて殺し、新たな世代にまで酷い影響を与えました。
ところが私たちの国は戦後、一度もこのアメリカの戦争犯罪を告発できずにきました。そればかりか70年間もの間、米軍基地のために土地を奪われ続けています。「鬼畜米英を倒せ」と叫んで国民を戦争に駆り立てたかつての政府の末裔の人々がアメリカにすり寄ってこの状態を続けてきたのです。
そのもとに、つまり政治的軍事的に歪められた「一般には通用しないようなやり方で」放射線被害の評価ががなされ、それが今、世界の放射線学のベースにされています。被爆者の痛みの上に、さらに世界の人々に放射線被曝を強要する体系が作りだされてきたのです。

ICRPはどのようにして今の放射線評価にいたったのでしょうか。この組織は1928年にアメリカで成立した組織が国際化した「国際X線およびラジウム防護委員会」を前身とし、1950年に結成されました。
もともとは20世紀になって発見され、商業的に使われるようになった放射線から、労働者を保護することを目的とした組織でした。
当初は放射線はある線量以下であれば生物に影響を及ぼすことはないと考え、安全な値を「耐容線量」と捉えて、1931年に最初の値を決定しました。

委員会はその後1940年に「耐容線量」を大幅に引き下げました。遺伝学者たちからの強い批判があったからでした。本書はこの点を次のように説明しています。
 「その批判は、マラーが1927年にショウジョウバエを用いた実験で放射線突然変異を発見したことに端を発し、1930年代を通じて遺伝学者の間に広がった。
 放射線被曝により遺伝的影響が発生すること、しかも被曝線量に比例することを、他のどの分野の科学者よりも早くかつ深刻に受けとめたのは遺伝学者たちであった」(『同書』p26)

しかし委員会は第二次世界大戦が激化するなかで活動が停滞します。同時にアメリカで原爆開発が進められ、1945年広島・長崎に原爆が投下されたことにより「放射線防護」の持つ意味が大きく変化しました。一部の限られた職種の問題ではなくなったのです。
マラーは放射線被曝の拡大に強い危機感を持ち、各地で放射線の危険性を訴える講演を行いました。そのマラーが1946年にノーベル生理学・医学賞を受賞したことで、放射線の人類におよぼす危険性についての社会的関心が広がっていきました。
核武装を強力に推し進めていたアメリカ政府は、マンハッタン計画=原爆製造の代表を加えて「アメリカX線およびラジウム防護委員会」を「全米放射線防護委員会(NCRP)」に改組しました。

このことで委員会の性格は大きく変わりました。被曝から労働者を保護するものから、核武装を推進する軍産複合体がマラーをはじめとする遺伝学者たちの放射線への危険性への批判から核戦略を防護するための機関になっていったのです。
アメリカはマンハッタン計画に参加していたイギリスやカナダと三国協議を進めてあらたな方向性への合意を取り付け、NCRPの主導のもとさらにフランス、スウェーデン、西ドイツを加えて「国際X線およびラジウム防護委員会」を「国際放射線防護委員会(ICRP)」に改組しました。
 「ICRPは、かつての科学者たちの組織から、それを隠れ蓑とする原子力開発推進者による国際的協調組織へと変質させられたのである」と同書は指摘しています。(『同書』p35)

全米放射線防護委員会(NCRP)はさらに「耐容線量」という考え方を大きく転換し「許容線量」という考え方を導入し、国際放射線防護委員会(ICRP)に追認させていきます。
放射線が遺伝的障害を生むというマラーら遺伝学者たちからの避けようのない批判を踏まえつつ、確かに放射線は危険なものでなにがしかのリスクを生むが、かといって放射線を用いる重要な業務を著しく困難にすることは不利益である。
このためリスクを十分に低くすること。とくに遺伝的影響については「突然変異の発生率が線量に比例してはいるが、遺伝的異常の自然発生率と比べてその発現が大きすぎないように被曝量を制御する」(『同書』p38)とされました。

この際の考え方で大きなポイントとなることは次のことです。同書から引用します。
 「放射線障害に対する感受性は、人によって大きく異なるが、誰が放射線に最も大きな感受性を有するかを前もって決めるわけにはいかないので、平均的な人間をもって考えることにする」(『同書』p37)
つまりNCRPもICRPも放射線に極端に弱い人々も存在していることを十分に認識しつつ「平均的人間」を防護の対象とすることで、これらの人々をあらかじめ切り捨ててしまったのです。

ICRPの考え方は現在もなお世界の放射線防護の基準となっています。放射線防護ではなく核戦略防護の考えなの方ですが、多くの人々がこの考え方が形成された経緯を知らずに適用しているので、実はここからの逸脱も頻繁に起こっています。
その最も重要なポイントは、年間被曝を1ミリシーベルト以下に抑えるという現在の放射線防護基準もまた「平均的人間」を前提していることが忘れられている点です。1ミリシーベルトとて誰にとっても安全値ではありませんが、より放射線に弱い人にはより打撃の強い値になっているにもかかわらずです。
また個人が放射線被曝によって被る打撃に対しても「低線量ではそのような症状はでない」となどと繰り返し語られていますが、あくまでも「平均的人間」についてICRPがそのように判断しているのであって、ある特定の個人がどうなるのかはICRPにとっては埒外だということも忘却されています。

許容線量について本書では次のようにまとめられています。
 「核兵器工場などの原子力・放射線施設の存在と運転の必要性を軍事的・政治的および経済的理由から認めたうえで、放射線をあびて働く原子力労働者をはじめとする放射線作業従事者、あるいは一般公衆に対して、
  それらの被曝を受忍させるために、政府などが法令等の規則で定めた放射線被曝の基準であり、狭くはそれらの線量限度を意味する」(『同書』p39)
 「放射線に最も弱く、したがって防護においては最も重要視しなければならない胎児や赤ん坊をはじめとする弱者を切り捨てる思想から誕生した。
  被害が生じることがわかっていても、その被害者を”平均以下”の人間として切り捨て、社会の発展のためにはその蛮行も許容されるべきであると、多数の「平均的人間」に思い込ませる。(『同書』p40)

この考え方をリードしたのはアメリカのNCRPでした。設立当初のICRPは一定の抵抗を示し「1950年勧告」では「被曝を可能な最低レベルまで引き下げるあらゆる努力を払うべきである」と述べています。
ICRPはもはや維持が不可能になった「耐容線量」という考えを「許容線量」という考えに変えることは受け入れたものの、NCRPの主張に込められた「リスクを受忍せよ」という考え方にしばし抵抗を続けたのでした。
 「ICRPに『可能なレベルまで』と言わせた最大の要因は、放射線による遺伝的影響の問題であった。遺伝的影響については、それが被曝線量に比例することが否定できないがゆえに、被曝量を可能な限り低くすべきであるとICRPは勧告せざるをえなかった」(『同書』p44)

当時のICRPの立場に大きな影響を与えたのは、広島・長崎の惨劇を目にして心を痛めた世界中の人々の声でした。
とくに1950年に朝鮮戦争がはじまり、アメリカのトルーマン大統領が原爆投下の可能性を示唆したことに対し、世界中で核兵器の禁止を求める「ストックホルム=アピール署名運動」が高揚し、全世界で5億人もの署名が集まりました。
世界の人々の声がNCRPによる「リスク受忍論」へのICRPの抵抗を後押ししていたのでした。「被曝を最低レベルにせよ」という文言は、広島・長崎の痛みをシェアしようとする世界の人々の願いがこもった言葉だったのです。

続く

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明日に向けて(980)ヨーロッパ・トルコ訪問報告会等を行います(京都)

2014年11月27日 21時30分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20141127 21:30)

今年は何度も海外にいく機会に恵まれた年でしたが、それらを通じて学んできたことを報告する会をいくつかの団体に開いていただくことになりました。
いずれも京都市内での開催になりますが、ずいぶんたくさんの方に支えられて渡航が実現できたため、できるだけたくさんの方に来ていただけるように5回も場を設けさせていただきました。
お近くの方、日時を選んでぜひお越しください。(12月7日、14日、17日、23日2回)

原発災害対策や集団的自衛権についての講演も行います。(集団的自衛権については大阪講演です)。(12月5日、13日)
年末も何度目かの参加になりますが「びわこ123キャンプ」でお話します。これらの情報もあわせてご紹介しておきます。(12月27,28日)

12月7日 京都伏見区
ヨーロッパ・トルコ訪問報告会の手始めです。この日に行われる「ふしみ原発ゼロパレード」の後の時間帯での開催です。
ちなみにこのパレード、龍馬通りなどふしみの商店街の中をがんがん歩きます。
地元の広範な方の深い理解があってできることでなんだかとても気持ちが良いのです。バンド隊の演奏も楽しい。参加したことのない方、ぜひ一度、一緒にふしみを歩きましょう。僕もパレードから参加します。
以下、案内を貼り付けます。

ヨーロッパ・トルコ訪問報告会
10月、守田さんは2月にベラルーシをドイツの人々(核戦争防止国際医師の会 IPPNWドイツ支部)と訪れたあとに3月にドイツで国際医師会議に参加。
その後と8月に日本が原発輸出しようとしているトルコにも赴きました。そして10月にポーランドでチェルノブイリとフクシマをめぐる国際会議に参加しました。
今回の報告会はそれらやチェルノブイリ原発事故の影響やベラルーシ、ウクライナで行われいる被災者支援のこと、ポーランドのアウシュビッツ博物館でのことなどをスライドを使ってわかりやすくお話していただきます。

報告会
日時:12月7日(日曜)16時
場所:京都南法律事務所4階(入場無料)
講師:守田敏也
参加・無料

パレード
日時  :12月7日 日曜日 午後1時半集合 2時スタート
集合場所:伏見港公園(京阪中書島駅下車、徒歩3分)
コース :伏見港公園→中書島駅→龍馬通商店街→納屋町商店街→大手筋→御香宮

主催:ふしみ原発ゼロパレードの会
連絡先:京都南法律事務所 
TEL:075-604-2133 吉田・溝江まで

チラシ
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10204070403458693&set=pcb.10204070464220212&type=1&theater

***

12月14日・23日 京都市下京区
僕もアドバイザーとして参加する、子どもの給食を考える会・京都に主催してもらう会を3回開きます。
お子さん連れでも来やすいように午前中に2回設定しています。
以下、案内を貼り付けます。

ドイツ・ベラルーシ・トルコ・ポーランドで学んだこと
~チェルノブイリ原発事故による被ばくの現実やトルコへの原発輸出問題~
◇守田敏也報告会◇

本年2014年2月から3月にドイツ・ベラルーシ・トルコを訪れ、8月にトルコを再訪、さらに10月にポーランドに訪問してきたなかで学んできたことを報告します。
これらのなかで、放射線内部被曝のメカニズムと危険性についても触れます 。
例えばウクライナでは医師たちがたくさんの病が放射線の影響で起こっていることを告発しています。
今年の3回にわたる渡航で感じたことを、できるだけ分かりやすくお話しします。

福島原発事故、そして私たちの今に深くつながるヨーロッパ・トルコの話、内部被曝のメカニズムのお話をぜひ聞きに来てください!
なお報告会は3回行います。参加しやすい会にご参加ください。

12月14日(日)10時から12時。ハートピア京都第5会議室
12月23日(火・休日)10時から12時と18時から20時30分の2回 ひとまち交流館第4会議室
参加費 500円(可能な方はさらにカンパをお願いします!)

主催:子どもの給食を考える会・京都
連絡先:morita_sccrc@yahoo.co.jp(守田)

託児はありませんが、会場内にお子さんが過ごせるスペースやおもちゃ、絵本などを用意します。
ぜひお子さん連れでいらしてください。

***

12月17日 京都市中京区
さらに京都被爆2世3世の会の拡大総会でもお話させてもらうことになりました。
なおこの会ではトルコから帰国直後に報告会を行なわせていただいたため、この日はポーランドで学んできたことに特化してお話します。
以下、案内を貼り付けます。

12月の例会は、10月末にポーランドでの国際会議参加と視察をされてきた守田敏也さんの報告を聞く学習会とすることになりました。

日程等は以下の通りです。
日時  2014年12月17日(水)18:30~21:00
会場  ラボール京都4階・第9会議室
テーマ ポーランド訪問で学んだこと ~ユダヤ人をめぐる歴史の深層を踏まえつつ、チェルノブイリ原発事故による被ばくの現実を捉え返す~
今回はオープン企画として行なうことになりました。お知り合い等に広くお知らせいただき、たくさんの方にご参加いただくようお願いいたします。

守田敏也さんのブログ「明日に向けて」でポーランド訪問のことは詳しく紹介されていますが、その一つ、ポーランドのユダヤ人をめぐる歴史はとても奥深いものがあり、今日の東アジアに生きる私たちに大きな示唆を与えるものです。
また、放射能被ばくの世代を超えた影響は私たち被爆2世・3世にとって挑むべき基本的なテーマです。事故から28年を経過したチェルノブイリの実態から多くのことを学んでいきたいと思います。

***

京都市左京区
「来春、京都市政にチャレンジする広海ロクローが主催する勉強会」で災害対策、原発災害避難についてお話します。
ちなみに今年は広島土砂災害や御嶽山噴火なども詳しく調べ、災害対策への知見を広げました。その点にも触れたいと思います。
以下、案内を貼り付けます。

原発事故、その時あなたはどうする?
守田さんと一緒に考える

原発だけでなく、自然災害も隣り合わせの今日この頃。政府が言う「事故があっても助けます」は嘘だと言うことがわかりました。
いつ来るかわからない災害のために今やっておくべきことを一緒に考えましょう。

12月5日(金)18時半から20時半 かぜのね(京都市左京区田中下柳町7-2))
主催:ロクローと市政を考える会
連絡・TEL080-3101-1636
http://6960sakyo.net/profile/

***

集団的自衛権等についてもお話します。場所は大阪市西成区です。
以下、案内を貼り付けます。

たちばな9条の会主催(平和を考えるシリーズ第2弾)

戦争への恐怖の3点セット
~NSC法(国家安全保障会議)・特定秘密保護法・集団的自衛権の行使容認~
(集団的自衛権とは何かを中心に)

日時:2014年12月13日(土) 17:30開場 18:00開始
講師:守田敏也(フリーライター、著書『内部被曝』岩波ブックレット。矢ケ崎克馬氏と共著)

会場: 参学寺「参究道場」 TEL 06-6658-8934
大阪市西成区橘1-7-6
参学寺ホームページhttp://www.sangakuji.com/
メールsangakuji@cwo.zaq.ne.jp

申込:西田靖弘携帯090-9610-8780 メールnishiyan0213@gmail.com
もしくは米澤清恵 電話090-5647-0922 米澤メールkiyoyonyon@hotmail.com

会費:500円 (講師代ほか)

***

びわこ123キャンプでお話します。
27日は集団的自衛権など戦争と平和に関するお話。子どもたちにお話します。
28日は地元の方たちも交えて、原子力災害対策についてお話します。

12月27日(金)夕方より子どもたちに。マキノ高原民宿一二三館
12月28日(土)時間未定 大人たちに。同上?
主催:びわこ123キャンプ

以下は今回のキャンプのご案内です。
http://cocokarapon.blog.fc2.com/blog-entry-291.html 

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明日に向けて(979)ウクライナの悲劇=被曝影響の隠蔽と第2世代の健康悪化・・(ポーランドを訪れて-6)

2014年11月26日 23時00分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20141126 23:00)

今宵は『低線量汚染地域からの報告-チェルノブイリ26年後の健康被害』(馬場朝子・山内太郎著、NHK出版)から学んだことについての続きを書きます。
この本はNHK・ETV特集 シリーズ チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告「第1回 ベラルーシの苦悩」と「第2回ウクライナは訴える」(放送は同年9月16日と23日)のうち、第2回をまとめたものです。
本のこと、また番組のことが以下のブログからも見れますのでご参考ください。

 after311.info
 http://after311.info/radioactivity/post-1696/

前回も述べたように、ウクライナでは甲状腺がんや白血病だけでなく、心臓疾患をはじめさまざまな疾病が今なお増加し続けています。
ウクライナの医師たちは、これらがチェルノブイリ原発事故由来であると告発し続けてきましたが、いつも国際機関が医師たちの前に立ちはだかり、病と放射線被曝の関連性の指摘を跳ね除けてきました。
とくに重要なのはIAEA(国際原子力機関)、WHO(世界保健機関)、UNSCER(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)、ICRP(国際放射線防護委員会)ですがここではIAEAのことについて述べられています。

今でこそ、原発事故で甲状腺がんが起こることは国際的に認知されていますが、IAEAがこれをやっと認めたのは1996年のこと。実に事故から10年も経ってからでした。
IAEAはこれを遡る1991年に国際調査団を現地に派遣し「放射線が健康に及ぼしたという証拠は一切ない」(『同書』p130)と報告したのでした。
本書にはふれられていませんが、この時の調査団である国際諮問委員会(IAC)の委員長に就任したのは日本の放射線影響研究所理事長を務めていた重松逸造氏でした。このもとにチェルノブイリ原発事故では一切、病は起こっていないという宣言がなされたのでした。

ウクライナ、ベラルーシの医師たちはこの頃にはもう小児甲状腺がんの多発に見舞われていることをつかんでおり反発しました。その一人、ウクライナ内分泌代謝研究センターの医師ワレリー・テレシェンコさんはこう述べています。
 「私たちはずっと報告をし続けました。チェルニゴフでの会議に始まり、国際連合の総会でも発表し、学術雑誌に論文を掲載したりしました。ウクライナでは毎年、チェルノブイリ事故が起きた4月26日に、ウクライナ保健省やチェルノブイリ省が国際会議を開催してきました。
 私たちはこういった会議でも報告をしてきました。そしてIAEAはついに認めざるを得なくなりました。学者は全員一致で、この事実を認めたのです。」(『同書』p131)

『ウクライナ政府報告書』の医学関係の記述全体の責任者であるウクライナ国立放射線医学研究センターのアナトリー・チュマク医師は、国際機関に論文を認めさせるには英語力が必要であるとともに莫大な資金がかかることに触れた上でこう述べています。
 「放射線の影響と考えられる疾患がひとつ見つかったとしたら、それが国際的に認められるためには、5年から10年の時間がかかるものなのです。具体的な例をあげますと、1991年に子どもの甲状腺がんが注目されました。
 しかし国際的に間違いなく甲状腺がんが放射線の影響だと承認されたのは1996年、5年後でした。そして除染作業者の白血病が初めて指摘されたのは1997年でしたが、これを国際社会が認めたのは2008年になってからです」(『同書』p134)

チュマク医師はこれに続いて「他の疾病についても、国際機関はいずれそれを承認する」(『同書』p134)とも述べています。いつか必ず認めさせてみせるというウクライナの医師たちの強い決意がこもった言葉です。
また「国際的な合意があってもなくても、それは私たちに何の影響もありません。私たちはここで頑張っています。自分で作り上げた治療方法を持っています」(『同書』p135)とも。
その言葉には国際機関が病の発生の事実を無視黙殺しようとすることに抗い、ウクライナの人々を守らんとしてきた医師たちの熱き思いが溢れています。

しかしそれでもやはり深刻なのは甲状腺がんについては事故から10年後、白血病にいたっては事故から22年後にやっと認められたという事実です。心臓疾患など、多くの疾病が未だに認められていません。
医師たちはその中で懸命な治療活動を続けてきているわけですが、しかし放射線の病への影響が隠されず明らかになれば当然にも受けてしかるべき国際的な援助、とくに国連やWHOの支援を受けることができずにきたことは大変な苦しみだったのではないかと思います。
そうしたこともあって、ウクライナ社会は現在の混乱の中にいたってしまったのだ僕には思えます。いやそうに違いない。チェルノブイリ原発事故の影響と、それに対する医療的対処を妨害してきた国際機関こそが、ウクライナを混乱の中においやったのです。

とくに重要なのは汚染地帯で生まれた第2世代の健康悪化です。『ウクライナ政府報告書』には31万9322人の健康調査に基づき、こう書かれていたそうです。
 「『慢性疾患』を持つ第2世代は、1992年の21.1%から、2008年の78.2%に増加している。例えば、内分泌系疾患11.61倍、筋骨系疾患5.34倍、消化器系5.00倍、精神及び行動の異常3.83倍、循環器系疾患3.75倍、泌尿器系3.60倍である」(『同書』p210)

およそ8割の子どもが病を持っているわけですが、実際、撮影クルーが訪れた学校では「子どもたちが疲れやすいということで、1987年から45分の授業時間を低学年は10分、高学年は5分間短縮している」(『同書』p210)のだそうです。次のような報告もあります。
 「ウクライナでは、チェルノブイリ被災地の学校に特別の規律を作っている。事故の前には5年生から11年生まで各学年で試験があったが、チェルノブイリ事故の後は、9年生と最終学年11年生以外は試験が廃止されたのだ。
 低学年には宿題も出さないという。試験勉強をすると、生徒が無理をして倒れることがあるからだ」(『同書』p215~216)

撮影された学校では保健師のパガリチュック・スベトローナさんが次のように述べています。
 「入学の前に子どもは検診を受けなければなりません。3週間前の検診では、485人の生徒のうち48.2%に甲状腺などの内分泌疾患が見つかりました。背骨が曲がっているとか、背中に異常がある肉体発育障害が22.1%。
 目の障害は19.2%。呼吸器官に障害のある子どもたちは6.7%。消化器疾患、神経疾患は5%というものです」(『同書』p213)

こうした病や障害はいかなるメカニズムで発生しているのでしょうか。『ウクライナ政府報告書』で子どもの健康に関する項目を執筆したウクライナ国立放射線医学研究センターのエフゲーニャ・ステパーノバさんは放射線で子どもたちの細胞内のミトコンドリアが破壊されていることを発見してこう述べています。
 「低線量によって細胞の膜と組織がダメージを受けています。同時にミトコンドリアにも影響を及ぼしています。ミトコンドリアはエネルギーのもとです。
 ミトコンドリアが傷つくと、エネルギーに頼っている器官が損傷します。例えば中枢神経系、心筋、骨格筋、免疫系などに影響が出るのです」(『同書』p219)

本書ではこれ以上に、第2世代の子どもたちの病がどのように発生しているのかには触れていません。特に遺伝的な要因はあるのかどうかという重大な問題に関しては記述がありません。
この点で押さえておくべきことは、汚染地帯に住み続けると、継続的な低線量被曝を受け続けることになるということです。胎児のとき、乳児のとき、そして大きくなる過程でも子どもたちは被曝を続けています。
少なくともそれだけでも大変なダメージが子どもたちに与え続けられていることは間違いのないことです。

この点を考えたときに、私たちの国の中で、高汚染地帯に住み続けることの恐ろしさをもっとクローズアップすべきことを感じざるを得ません。それを一刻も早いウクライナにあるような避難の権利の確立につなげるべきなのです。
また同時に進めなければならないのは、ウクライナやベラルーシで頻繁に行われている国家主導の保養の実現です。両国ともこれまで汚染地のこどもを1年間に3週間から1月は汚染のない地域に送りだして保養させています。
本書にはこのことも触れられていませんが、移住のできない人に対し、そのような手厚いプログラムを施して、それでやっとこの数字に被害がとどめらているのです。それすらも行おうとしない日本の今は本当に深刻です。

医学界の態度にも決定的な違いがあります。ウクライナやベラルーシでは医師たちは、被曝した民衆の側に立ち、国際機関の妨害に抗いながら治療を進めつつ、データ蓄積を進めてきました。
ところが日本ではこの重要な点を国の側に立つ医師たちが押さえようと暗躍を続けています。その筆頭に立ってきたのが重松逸造氏の系譜に連なる山下俊一氏でした。これにいかに抗していくのかが私たちにとって本当に重要な課題です。
関西医療問題研究会に集う医師たちなど、本当に数少ない医師たちが、福島の子どもたちの中でも始まっている甲状腺がんの多発を、明らかなる原発事故によるアウトブレークと指摘して警鐘を鳴らしていますが、こうした声を強める必要があります。

これらを考えるときに、25年前に深刻な事故に見舞われたウクライナと私たちは同じ苦しみの中にいることが見えてきます。核兵器製造に携わってきた国際的な原子力村が放射線被曝を非常に過小評価してきたがゆえに、被曝影響がなかなか認められない仕組みがある。
それがさまざまな形で現場の医療の充実を阻んでいます。いや被曝防護の充実をも決定的に阻んでいる。危険が危険として認知されないからです。
繰り返し述べてきたように、その積み重ねの中で今、ウクライナは社会的混沌の中をもがきながら歩んでいるわけですが、私たちはその苦しみをわがこととしてシェアし、ともに未来への扉をあけるための努力を積んでいかなくてはなりません。

そのために求められるのは、国際機関の行ってきた被曝隠しの歴史をもう一度、広島・長崎原爆にまで遡って明らかにしていくことです。
私たちの国は「唯一の被爆国」と言われてきました。「被曝者」ということで言えばもともと唯一ではないのですが、それでも世界の多くの人々が原爆の被害に心を痛めてきてくれました。
同時にその私たちの国は、だからまた被ばく治療のノウハウをたくさん持っているのだろうと世界に多大な誤解を与えてきてしまいました。

事実はまったく逆なのです。私たちの国こそ、まさにアメリカを中心とした国際機関によってがんじがらめにされ、被爆者が徹底して痛めつけられてきた国なのです。
しかもそのことを十分に国民・住民が知らずにきてしまいました。とくに低線量被曝隠しについては、いわゆる革新陣営の側からも十分な反論を行っては来れませんでした。
被爆医師肥田舜太郎さんが、単身、放射線学で言われていることと被爆した患者の現実は違うとの告発を続け、臨床医でありながら自ら内部被曝に関する文献を翻訳し続けたことのみが、輝かしい成果だったのではないでしょうか。

アメリカは日本政府の全面協力のもとに被爆者への調査を独占し、データを隠蔽し、実態を隠したまま被害を非常に小さく見積もった「放射線と人間」に関する偽りのデータを作り出したのでした。
私たちは長年、それに騙され、たぶらかされ、その中で原発も押し付けられてきたわけですが、ウクライナに対して振りかざされてきたのもまた、こうして積み上げらえたニセのデータです。
この事実を踏まえるならば、ウクライナの人々と私たちが団結できないはずがない。まったく同じ抑圧の下に私たちはいるからです。そのことを自覚し、わがこととしてウクライナと私たちの未来を考えていこうではありませんか。

さらにウクライナ、ベラルーシ、ポーランドの考察を続けます・・・。

続く

 

 


 

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明日に向けて(978)戦争に行くな!選挙に行こう!沖縄の心をともに・・・

2014年11月25日 23時00分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20141125 23:00)

アースディしがに参加してきました。素晴らしかったです!しがのかたたち、とくにおかあちゃんたちの柔らかく、楽しく、何でも包み込んでしまうような素敵なパワーをいっぱい感じ、一日楽しんできました。
これらについてぜひ記事にしたいと思っていますが、今宵はその前に、いよいよ本格化しつつある衆議院選挙について再度、思うところを述べておきたいと思います。中心は沖縄県知事選に続こうということです。

衆院の解散が正式に行われたことで、共産党をのぞく野党が、再編や候補者の一本化などに走っています。
確かに僕も今回は与党議員に一人でも多く落ちては欲しいですが、今の野党議員の多くが実質的には「野党内自民党員」になってしまっています。
「これという投票する政党が見つからない」という人も多いかと思います。しかしだからといってせっかくの投票の権利を放棄してしまえば安倍政権への消極的な承認を与えることにしかなりません。

そのために僕が思うのはたとえ「死に票」になろうとも、今のこの時世に対してまっとうなことを言っていると思える人、これまで嘘をついてきていない人に今回は票を投じようということです。
いやそもそも「死に票」などという言葉があること事態おかしい。そんな言葉が出てくるのは小選挙区制度が間違っているからです。民意を著しく歪める、民主主義に反した誤まった選挙制度です。
この制度そのものへの抗議も含めて議席が取れるかどうかだけでは考えず、何がまっとうな意見なのかを考えて投票にいきましょう。僕はそのことで十分に投票は生きると思います。

選挙の大きな争点の一つは集団的自衛権の行使閣議決定の強行など、安倍政権の戦争政策の是非です。私たちの国はこのままでは、戦争国家へと転落してしまいます。
そのことで私たちは、アジア・中国への侵略戦争や太平洋戦争への反省の中で、世界の人々との間に作り上げてきた信頼関係をも著しく損なってしまいます。
とくに私たちはイスラム圏の多くの人々が、今はまだ私たちの国に多大な好意を寄せてくれていることを知る必要があります。アメリカに原爆を落とされながら、平和産業で復興してきた国というイメージが強いためですが、安倍政権はそれをもふいにしようとしています。

さらに重要なのは沖縄・辺野古への米軍基地建設問題です。ご存知のように沖縄ではオール沖縄共闘をはじめて実現させて基地反対候補だった翁長さんが知事になりました。
仲井真元知事の敗北で安倍政権は大きな窮地に立っていますが、総選挙で沖縄から突きつけられた声をも強引に掻き消そうとしています。その意味でも私たちは沖縄の声に応えて、安倍政権への反対票を増やす必要があります。
沖縄の心をともにして投票に向かおうではありませんか。「戦争に行くな!選挙に行こう!沖縄の心をともに・・・」とアピールして前に進みましょう。

私たちが沖縄から学ぶべきことは、今回の沖縄知事選で実現されたオール沖縄共闘の意義と素晴らしさです。
何が素晴らしいのか。この共闘の実現が、第二次世界大戦以降、長きにわたって私たちの国に支配的な力を行使してきたアメリカによる分断工作を打ち破って実現したからです。
戦後、アメリカが日本にしかけてきたことは何か。日本を属国にしアメリカの世界戦略の一環に組み入れることでした。アメリカはそのために潤沢な資金を費やして日本の保守党の政治家たちを籠絡するとともに、反米の立場に立つ勢力の分断をはかってきました。

アメリカの謀略をまとめた『CIA秘録』(ティム・ワーナ著、文芸春秋刊)という本があります。「まえがき」にこうあります。「本書は、CIAの創設から60年間の記録である。西洋文明史上最強の国が、いかにして諜報機関を作ることに失敗したのかが、綴られる。」(『同書』p9)
つまりこの書は、世界最大の諜報機関であり、スーパーエージェントを多数擁しているかに見えるCIAが、その実、いかに諜報活動や謀略に失敗しつづけてきたのかを延々と立証している曝露本なのです。
例示されている事実のソースのすべてが公開されている点でも説得力を持つ本ですが、読んでいると何とも言えなくなるのは、このCIAの無能ぶりを解き明かした本の中で、対外工作の数少ない成功例としてあげられているのが対日工作であることです。

 「CIAは1948年以降、外国の政治家を金で買収し続けていた。しかし世界の有力国で、将来の指導者をCIAが選んだ最初の国は日本だった」(『同書』p177)
 「岸信介は、児玉と同様にA級戦犯容疑者として巣鴨拘置所に3年の間収監されていた。東条英樹ら死刑判決を受けた7名のA級戦犯の死刑が執行されたその翌日、岸は児玉らとともに釈放される。
 釈放後岸は、CIAの援助とともに、支配政党のトップに座り、日本の首相の座までのぼりつめるのである」(『同書』p178)

僕は「自虐史観」批判を繰り返している方たちにもぜひこの本を読んで欲しいです。なぜか。これまで歴史上、日本に住まう人々をもっともたくさん殺しながら、日本を「てなづけよう」としてきたのがアメリカだからです。
全国の主要都市すべてに行われた空襲、広島・長崎への原爆投下、そして沖縄への上陸戦。明らかなる戦争犯罪が行われ、ものすごい数の非戦闘員がなぶり殺しにされました。しかもアメリカはいまだにその非を認めていないのです。
その歴史から言えば「反米」「嫌米」ムードこそがこの国にあってもおかしくないのに、自虐史観批判を唱える人々は誰もアメリカの理不尽さに抗議すらしていません。むしろ日本に住まう人々の最大の殺戮者であるアメリカを褒め称えていますがそれこそあまりにも自虐的なのではないでしょうか。

なぜそうなってしまったのか。アメリカが日本の反米意識を解体しようとして、長年、さまざまな工作をしかけたからです。その際、最も活用された人物が安倍首長の祖父である岸信介元首相でした。次にあげられるのは中曽根元首相です。
米軍基地を日本に固定化する日米安保体制の基礎も岸政権のもとで固められたのでした。原発の導入はアメリカの策略のもとに中曽根氏と読売新聞が暗躍する中で行われたのでした。これらのことは繰り返し曝露されてもいます。
野党勢力にもこうした工作が仕掛けられました。アメリカが画策したのは反米を貫くものを仲間割れさせることでした。この策謀を残念ながらすべての野党もさまざまな反戦グループも打ち破れずに、分裂抗争を繰り返してきてしまったのではないでしょうか。

沖縄でもこうした分断は繰り返し仕掛けられました。基地をめぐる対立が何度も作られました。しかし沖縄の革新共闘は日本の中で唯一崩れませんでした。そして今回、ようやく保守層の中で基地やアメリカの支配に反対する人々と革新勢力が合同し、「保革対立」を越えて基地反対の声が一本化されたのでした。
沖縄の基地反対オール共闘の実現は、安倍政権を追い詰めることにとどまらず、長きにわたるアメリカの日本民衆の分断の歴史を打ち破る位相をも持っていると僕は思います。
これに対して本土はまだまだ遅れています。自民党や公明党はアメリカべったり。「普天間基地県外移設」を掲げた民主党も鳩山内閣が崩されて以降、まともにこの流れに抗することができない。その上超右派の「維新」や「みんな」など野党内保守、野党内自民党の跋扈ばかりが続いてきました。

しかし今、野党内保守としての「維新」や「みんな」はどんどん崩れているし、さらに何よりも脱原発で目覚めた私たち民衆は「革新共闘」というもはや古い言葉ではくくれないもっと広く大きな統一行動を各地で生み出しています。
ここにこれまで政治から離れていた人々の大きな合流も実現され始めています。それが全国での「金曜行動」の連続100週以上の達成を生み出し、原発再稼働をいまだに止めている大きな力となっています。
私たちは、新たに形作られつつある私たち自身の力に自信を持ち、今こそアメリカの世界戦略に組み込まれた日本のあり方を変えていく歩みを強めようではありませんか。

集団的自衛権行使でイスラム圏の人々と私たちの国が戦うなどまっぴらです。原発だってもともとアメリカに押し付けられたもの。福島で爆発したのもアメリカですでに欠陥が見つかっていたGE社のマークⅠ型原子炉でした。
今の経済不況もそう。冷戦終結後、平和産業を軸に富をたくわえていた私たちの国はアメリカに狙われ、構造調整をしかけられ、そのもとに経済をガタガタにされてきたのです。
にもかかわらずアメリカに原爆を落とされても、欠陥原子炉を押し付けられても、経済をズタズタにされても文句も言えないこの自虐的なあり方を越えて行きましょう。沖縄の心をみんなでうけとめて歩みましょう。

最後に沖縄知事選の最中に、内部被曝の危険性を訴えて全国を走り回ってきた琉球大学名誉教授、矢ヶ崎克馬さんが発したアピールを転載したいと思います。
翁長陣営はこの文章をただちに公式ホームページに載せてくれたのだそうです。今の沖縄に溢れている息吹、本土が学ぶべき心意気が溢れています。
沖縄の心を胸に頑張りましょう。戦争に行くな!選挙に行こう!

*****

 そろそろアメリカという異民族政府の政治的・軍事的・精神的コントロールから抜け出して『主権』を発揮しませんか?
 自らの『個の尊厳』を確保できるようにしませんか?
 その突破口が沖縄県知事選挙「翁長勝利」です。
 米軍辺野古新基地建設を許さない住民の主権の発揮について訴えます。
                                                                                                 
 矢ヶ崎克馬

 仲井真現知事は前回知事選挙の直前に、「辺野古誘致」から「県外」へ政策転換し「普天間・辺野古については争点はない」などとうそぶき、2選を果たしました。
 「県外」は案の定、選挙票目当てでした。昨年末「苦渋の選択」という県民を配慮する言葉もなく「良い正月が迎えられる」と辺野古移設承認をしました。県民を裏切ったのです。
 権力に従い、住民の意思を踏みにじって、住民にどのような犠牲が出ようが構わない、という権力政治の実践者に転落したのです。
 
 思えば、戦後日本の政治はアメリカの言いなりから出発しました。
 1952年4月28日には、沖縄小笠原・北方領土の主権を売り渡す屈辱の講和条約をむすび(安倍内閣は主権回復に日と言い、式典までしました)、同時に日米安保条約を、国民の誰一人に知らせず国会にも諮らず吉田茂首相ただ一人の調印をもって締結しました。

 そもそも、首相も県知事も天皇制国家では任命により天皇の意志を実施する機関でありましたが、民主憲法下ではまさに主権者のために、主権者の命と暮らしを守るために政治を行わなければならない位置づけに変わったのに、まったく旧来の大権力の走狗そのままに、日本の首相が「印鑑をつく」という権力行為を行ったのが、戦後のアメリカによる支配の出発点でありました。
 恥ずべき歴史ですが、日本の「主権」は最初から仲井真のような人間がいて屈辱の道に入ったのです。
 
 「60年安保」で国民の大半は安保改定反対の意思表示をしました。全ての野党、圧倒的多数の国民が意思表示をしたのです。アメリカはこの「アメリカ支配の危機」を日本の支配方法を抜本的に変えることで乗り切ることとしました。いわゆるケネディーライシャワー路線です。
 政権党のコントロールはさらに強化し、野党を懐柔し政権党が変わっても日米関係は同じように維持させるようにする。従わないものは孤立させる。
 実行方法は、労働運動、平和運動、市民運動等々の幹部をアメリカに招待し、学者を特に大量に招待し、厚遇を与え、吹き込んで返す。分断と飴と鞭。その結果政治的共闘、労働運動、平和運動、市民運動はことごとく分断され、分裂し、力を失いました。
 1980年に、以前は革新共闘として野党がそれぞれ独立に判断し共闘してきた歴史に終止符が打たれました。あらゆる県で知事選など、実施されて来た革新共闘は、沖縄を除いて不可能になったのです。
 
 それに対して沖縄の県民の精神はアメリカに支配されず、1972年には復帰を勝ち取りました。住民の運動でアメリカと日本政府の政治枠を変更させた、日本では唯一といってよい巨大な成果です。
 80年以降も沖縄県は知事選挙でも参議院選挙等でも、政党間の革新的共闘が維持され続けた唯一の県です。
 
 今回の知事選で翁長候補は『保守・革新を超えて』「うちなーのアイデンティティー」を呼びかけています。まさに異民族のマインドコントロールにいつまでも支配されるのではなく、わが県民の主権者としての誇りを訴えています。
 県民に「主権者としての一人一人の判断」の独立を訴えています。まさに沖縄の尊厳を確保した復帰闘争は個人個人の主権の発揮でした。
 今回の選挙では、新しい形で県民の主権者としての尊厳を訴えています。
 翁長勝利で、日本住民の主権を取り戻し、国家の主権を取り戻す突破口にもいたしましょう。

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明日に向けて(977)ウクライナの悲劇=被曝の現実を読み解く(ポーランドを訪れて-5)

2014年11月22日 23時30分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20141122 23:30)

ポーランドから帰ってからかの国のこと、ベラルーシやウクライナのことを調べ続けています。今回の国際会議ではじめてウクライナから来ている方たちと知り合ったことも大きなインパクトになりました。
歴史についてもかなり学びすでに記事にしてきました。まだ20世紀のことが残っており続編を書くつもりですが、今回はそこから少し飛んで、チェルノブイリ原発後の今のウクライナの現状について述べたいと思います。
ウクライナはかつてナチスドイツに激しく攻め込まれ、占領されて膨大な死者と損害を出しました。そこから長い年月をかけて復興を遂げてきた1986年にチェルノブイリ原発事故が起こり、大変な被曝を受けました。
1991年に被災者を救済する法律ができましたがその年の暮れに旧ソ連邦が崩壊。独立国となったものの、ソ連邦崩壊による混乱と原発事故のもたらしたさまざまな被害への対処に追われて、経済的な苦境が続いてきました。

それから20数年経って、ウクライナは今、分裂的な危機の中にあります。親EU派の現政権側と、親ロシア派の東部の人たちの間で軍事衝突が繰り返されており、この先どうなるのか見通しが立っていません。
今回、いろいろなことを調べていて見えてきたのは、今の政治的混乱と軍事対立そのものが、チェルノブイリ原発事故による社会的人的ダメージを背景に起こってきているということです。
現在のウクライナ情勢の分析をしている人々、「専門家」の中でチェルノブイリ原発事故と今を結びつけて解き明かしている人士を僕は知りませんが、しかし考えてみれば当たり前とも言えるように思えます。
膨大な被災者がいて病がどんどん深刻化する上に、検査や治療などさまざまな経費がかかってきたこと、その上、原発事故の後処理にも膨大な予算が消費され、社会の体力が繰り返し奪われて疲弊を深めてきたからです。

ポーランドの国際会議などを通じて知ったのは、ドイツのIBBをはじめ多くの民間団体が苦境の中にあるウクライナやベラルーシに手を差し伸べようと努力を重ねてきたことでした。
しかし他方でウクライナの前にはさまざまな国際機関が立ちはだかり、原発事故による病の多発を認めず、医師たちの告発を握りつぶしてさえきたのでした。このためウクライナは病への対処に当然あるべき国際機関の援助をほとんど得られずにきました。
ウクライナの前に立ちはだかってきたのはIAEA(国際原子力機関)、WHO(世界保健機関)、UNSCER(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)、ICRP(国際放射線防護委員会)などです。
これらの団体がそろって低線量被曝の影響を認めず、ウクライナの人々への救済の道をふさぎ続けてきたのです。大変、悲しく、憤りを感じるばかりの事態ですが、これはけして遠い国のできことなのではありません。同じ組織が私たちの前にも立ちはだかっているのです。

ウクライナやベラルーシの人々との連帯のためにも、私たち自身の未来のためにも、チェルノブイリ原発事故以降にウクライナが辿ってきた経過に学ぶこと意義がここにあるのですが、その入り口としての恰好な書物に出あいました。
『低線量汚染地域からの報告-チェルノブイリ26年後の健康被害』です。馬場朝子・山内太郎著、NHK出版から2012年9月に出ています。
NHK・ETV特集 シリーズ チェルノブイリ原発事故・汚染地帯からの報告「第1回 ベラルーシの苦悩」と「第2回ウクライナは訴える」(放送は同年9月16日と23日)のうち、第2回をまとめたものです。
著者たちはいずれも現場に取材に入ったディレクターたちですが、2011年4月に公表された『ウクライナ政府報告書』での病の実態の告発を読んだことをきっかけにこの番組の制作を決めたとのことです。

本書の初めの方にこの『ウクライナ政府報告書』が出てきます。チェルノブイリ原発事故後に作られた「国立記録センター」にまとめられた2012年の時点での236万4538人の被災者のデータをもとに作成されたものです。
被災者のうちわけは、原発事故の作業員31万7157人、原発周辺の立ち入り禁止区域からの避難民8万1442人、低線量汚染地域の住民153万1545人、これらから生まれた第2世代31万9323人、すでに死亡した11万5072人です。
この報告書の第3章「チェルノブイリ惨事の放射線学的・医学的結果」に掲げられた疾病は次の通りです。「甲状腺疾患、白内障、免疫疾患、神経精神疾患、循環器系疾患(心臓・血管など)、気管支系疾患(肺・呼吸など)、消化器系疾患(胃や腸など)」(『同書』p34)
注目すべきことはこれらの疾患が時間と共に増えていることです。「原発周辺の高汚染地域からの避難民のうち、慢性疾患を持った人は1988年には31.5パーセントだったのが2008年には78.5パーセントに増加したという」。(『同書』p35)

これらの内容を先に挙げた国際機関が認めないのですが、その理由はウクライナの報告が疫学的な手法で証明されていないというもの。ある集団の被曝線量と健康被害との間に統計的に有意な相関があって初めて病が証明されたと言えるが、ウクライナにはそのようなデータがないと言うものです。
しかしチェルノブイリ原発事故は当初、ソ連当局によって厳重に秘密にされたので詳細なデータが残っていません。事故対処の混乱の中で測られなかった、ないし意図的に測定されなかったものもあります。2か月と少しで環境中から消えて行く放射性ヨウ素をはじめ半減期の短い核種です。
もちろん個々人の被曝の測定もきちんとされていないし、データも秘密化されて存在しているかどうかも分かりません。そのためこの国際機関の論法では、その後にどんな被害が出ようが被曝との因果関係は証明できないものとされてしまうことになります。
実はこれは福島原発事故でも同じことが言えます。政府は意図的にもヨウ素被曝の実態の測定をしませんでした。政府と言うより福島県によってですが、事故直後の弘前大学のチームによる測定が止めさせられています。さらに福島だけではなくて東京までヨウ素は届いたのに、何の被曝測定もされていません。

これに対してウクライナの医師たちは、当初の被曝データがなくても病と被曝の因果関係を科学的に証明できると訴えてきました。
「自然環境、社会環境、経済的特徴は等しいが、汚染の程度が異なる複数の地域において発病率や死亡率などを比較する方法」(『同書』p40)の採用です。これならば当初の被曝量は分からなくとも、被曝と病の蓋然性が示せます。
というよりも実は僕はこちらの方が科学的に妥当な方法だと思えます。なぜかというと、そもそも個人個人の被曝量が測れるという大前提の方にこそ実は科学的な根拠がないと僕は思うからです。
なぜか。事故当初はものすごくたくさんの核種が飛び出して人々に内部被曝が発生します。内部被曝は体内のさまざまなところで起こります。しかもα線の場合はわずか40マイクロメートルの間で起こるのでありとてもではないけれども測ることなどできないからです。

つまりもともと被曝線線量というものも大雑把に「これぐらい被曝しただろう」という目安のようなものでしかないのです。
詳しくは稿をあらためてICRP批判として展開していきたいと思いますが、そのため土壌汚染などを目安に汚染の違う地域の相互比較や、汚染のない地域との比較から被曝による影響のあるなしは当然にも導き出すことができます。
『ウクライナ政府報告書』はこのような方法で、被災者の現実をことこまかに記録してきたデータであり大変貴重なものです。番組のディレクターたちは次のように評価しています。
「ウクライナ政府報告書は、まさに被災国の叫びそのものだ。数多くの病気は死の存在を証明する手段を、事故後の大混乱や旧ソ連の情報隠しによって奪われ、国際社会から何度『非科学的』だと言われながらも、沈黙することだけは断固拒否したウクライナの人々の叫び」(『同書』p41)

内容の紹介に入りたいと思います。まずは甲状腺癌のことが展開されているのですが、今回は割愛させていただきます。これまでもすでに福島の子どもたちから激発しているものが福島原発事故由来のものであることを繰り返し指摘してきたからです。
それよりも今回、着目していただきたいのは他のさまざまな病との関連です。まずこういうデータが示されています。
「原発周辺の高く汚染された地域から避難した被災者のうち、健康な人は1988年には67.7パーセントだったのが、2008年には21.5パーセントに減少した。逆に慢性疾患を持つ人は31.5パーセントだったのだが78.5パーセントに増加した」(『同書』p96)
「ウクライナ政府報告書によれば、慢性疾患の中でも圧倒的に多いのが循環器系(守田注 主に心臓や血管)の病気だ」「ウクライナ報告書ではその中でも『心筋梗塞』や『狭心症』を取り上げることが多いが、この心臓や血管の病気が、がん以外の慢性疾患による死因の実に89パーセントを占めるという」(『同書』p97)

さらにウクライナ国立放射線医学研究センターのウラジミール・ブズノフさんのがん以外の病に関する証言として次のような言葉が紹介されています。
「発症の時期が早いのは甲状腺の異常。そして最も重要なのが循環器系の異常です。疾患の中では、循環器系の異常は30パーセントを占めています。次に消化器系の疾患が約26パ-セント。次に呼吸器官疾患で慢性気管支炎などです」
「死因に関して言えば、80パーセント以上が循環器系の疾患です。具体的には、脳出血、脳梗塞、心不全、心筋梗塞、そして最終的に心筋梗塞につながる狭心症があります」(『同書』p98)
ここにあるようにがん以外の疾患でもっとも多いのは心臓や血管など循環器系の病であるとされている点に注目していただきたいと思います。なぜなら心筋梗塞などはがんと違って、突然死につながるものだからです。

僕がこの点を強調したいと思うのは、端的にいって福島や、被曝量の高いところに住まわれている方々にぜひとも心臓を守っていただきたいからです。あなただけでなくあなたの周りの方の心臓をもです。
心筋梗塞が起こった時に、医学界から強調されているのは6時間以内に救急救命機関に担ぎ込んで欲しいということです。その場合の救命率は90パーセントであるとされています。
また心筋梗塞にはさまざまな予兆があります。それを見逃さずに事前に循環器内科を受診し、治療を受ければ、少なくとも突然、心筋梗塞に見舞われる可能性はずっと低くなります。だからこそあなたと周りの方の心臓に注意を向けて欲しいのです。
心臓疾患の多いアメリカでは「ハリウッド症候群に気を付けろ」とも言われています。映画をみると心筋梗塞の人は心臓を押さえて倒れる。しかし奥歯が痛んだり、顎がしびれたり、左肩があがらない、左腕がしびれる、お腹が痛むなども心筋梗塞由来であることがあります。これを映画の影響で見過ごすなというのです。

今回、ウクライナの報告を読んでいて、ますます心臓を守りあわねばという思いを強くしました。西日本の方とて安心してはいけません。放射性物質は食べ物に混入してさまざまに西日本にも入ってきています。
さらに西日本には中国から大量のPM2.5や黄砂が飛来してきています。これも大変危ない。PM2.5については肺呼吸から血液に入って心臓にまわっていくため、心臓疾患を引き起こすことがすでに証明されてもいます。
そのことを踏まえて、私たちは大量被曝下のこの国で住んでいく上で、本当に十二分に私たちの心臓に注意を払い、祈りを守っていくことに留意していく必要があります。
その努力を重ねながら、ウクライナの人々の長きにわたる苦しみに思いを馳せ、連帯し、同時に苦難の中で積み重ねてきた努力と知恵に学んでいきたいと思います。

続く

*****

なおこれまで心臓を守るために呼び掛けた記事もご紹介しておきます。とくに(634)では今回ご紹介したハリウッド症候群のことをはじめ、心臓を守る具体的な点を書いてあります。
命を守る重要な記事としてぜひ目を通していただきたいです。これを知っているだけで、いつかどこかで目の前の大事な人の命を救うことができるかもしれません。

明日に向けて(617)福島原発事故の影響から心臓を守ろう!
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/83ed3716ed745eb954ee4d297dbd606a

明日に向けて(631)福島で「震災関連死」が増えている・・・心臓を守ろう!(上)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/7c9f201e69779cb487b63c6113b1ae52

明日に向けて(634)福島で「震災関連死」が増えている・・・心臓を守ろう!(下)
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/34e78bfe8925a0a46a73bd2b80c27f65


さらに今回紹介した書籍とNHKの番組のリンク先が示されているブログを見つけたので紹介しておきます。
時間のある方は本書と共に放映されたNHKドキュメント「ウクライナは訴える」をぜひご覧下さい!

after311.info
http://after311.info/radioactivity/post-1696/

 

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明日に向けて(976)選挙にいこう!問われているのは安倍強権政権の是非・戦争と原発拡大の道に反対の票を!

2014年11月20日 18時00分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20141120 18:00)

安倍首相が衆議院を解散することを宣言しました。新たな選挙が12月14日に行われます。

この安倍政権の突然の解散宣言に対し、野党は一斉に「大義なき解散だ」と叫びました。確かに解散に「大義」はありませんが、しかしこの間の安倍政権の政策のほとんどに大義などありません。そんな安倍政権にどんな「大義ある解散」ができたのか疑問に感じます。
肝心なことはこれから行われる総選挙の課題は、消費税増税延期への信を問うものなのではなく、安倍政権のこれまでの政治姿勢を問うことにあるということです。
なぜか。答えは単純。この政権が公約を著しく裏切ったり、公約に掲げなかったことをおし通してきたりということを繰り返してきたからです。他にもたくさんの嘘をつき続けてきた。にもかかわらず私たちは国政選挙という形での審判が下せずにきました。
今回の選挙ではこの間の安倍政権の国民的合意を無視した政策総体への信が問われています。だからこそ戦争と原発拡大の道への反対票を投じたいし増やしたいものです。選挙制度の限界を見据えつつも安倍政権をまっとうに批判する候補者を応援しましょう!

公約違反=裏切りの最たるものはTPPへの参加表明です。
前回の総選挙の時に自民党は何といったのか。「ウソつかない!TPP断固反対!ぶれない!」でした。
ためしに「TPP 自民党 ポスター」と入力して画像検索すると次のようなものが上がってきます。ぜひご覧下さい。
https://www.google.com/search?q=tpp+%E8%87%AA%E6%B0%91%E5%85%9A+%E3%83%9D%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC&hl=ja&biw=1089&bih=473&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ei=CY5tVOzXOYXOmwWphIHYCA&ved=0CAYQ_AUoAQ

ここで問われているのは前回、このポスターの内容を信じて自民党に投票した方だということです。こんなにひどい嘘を許してよいのでしょうか。ご丁寧に「ウソをつかない!」とまで言ってウソがつかれたのです。
商品取引だったらこんなあり方は詐欺として告発されます。それが政治には適用されないのがあまりに理不尽なのですが、ともあれこの内容に基づいて自民党に投票した方はぜひ反対票を投じて欲しいです。あなたが騙されたのだからです。
もちろん自民党の議員の中に、本気でこの内容で行動しようとした方もいたと思います。しかし安倍政権は自民党員であろうと自分に逆らうものには徹底したいたぶりを続け、反対意見を封殺する政権です。
今、自民党に投票することはこの安倍首相の公約の裏切りや強権的なあり方に「信」を与えることになります。それは私たちの国をウソのつき放題の国に変えてしまい、激しい倫理低下をももたらし続けます。こうした状態に待ったをかける投票が必要です。

安倍政権の公約違反、公約にないことの強引な取り決めは他にもたくさんの例があるのですが、この点について「東京新聞」が11月19日付で実に的確な記事を出してくれました。
タイトルは「自民公約次々変質」。サブタイトルに「秘密法 記述なし⇒制定」「TPP 反対⇒参加」とあります。
ブログ「幸せの青い鳥」が記事の写真を載せているのでご紹介します。
東京新聞は適宜このような的確な記事を出しているのでみなさんに強く購読をお勧めします。僕も京都在住ですが、郵送で東京新聞を取り寄せて読んでいます。

 ブログ 幸せの青い鳥より
 http://blogs.yahoo.co.jp/kotyannomama/GALLERY/show_image.html?id=17053750&no=0

さて最も参考になるのは「自民党が前回衆院選で掲げた公約と現状」という表です。
以下、それぞれにどのような公約が掲げられたのか、それに対して現状がどうなのかを列挙していきます。

 「経済面」
 公約「デフレ・円高からの脱却を最優先に、名目3%以上の経済成長を達成」
 現状「2014年7~9月期のGDP速報値は名目で年3%減(13年度は名目1.9%増)。円安は進んだが輸出は伸び悩み」です。

 集団的自衛権
 公約「集団的自衛権の行使を可能とし、国家安全保障基本法を制定」
 現状「基本法は制定せず、憲法解釈変更の閣議決定で行使を容認」

 特定秘密保護法
 公約「記述なし」
 現状「国民の知る権利を損なう恐れのある特定秘密保護法を制定」

 原発・エネルギー
 公約「原子力に依存しなくてもよい経済、社会構造の確立を目指す」
 現状「エネルギー基本計画で『原発は重要なベースロード電源』と明記。再稼働を推進」

 公約「最優先課題として再生可能エネルギーの最大限の導入を図る」
 現状「大手電力会社が、固定価格買い取り制度に基づく受け入れ手続きを中断」

 TPP
 公約「『聖域なき関税撤廃』を前提にする限り、交渉参加に反対」
 現状「『聖域なき関税撤廃が前提ではない』と交渉参加」

 政治改革
 公約「議員定数削減など国民の求める改革を断行」
 現状「実現せず」

 社会保障
 公約「安心できる制度に向け、弱い立場の人にしっかり援助の手を差し伸べる」
 現状「生活保護の日常生活費を15年度までに計670億円削減」

 地方分権
 公約「基本法制定後5年以内の道州制導入を目指す」
 現状「法案提出に至らず」

 基地負担
 公約「沖縄をはじめ地元負担軽減を実現する」
 現状「沖縄県名護市での普天間飛行場代替施設の建設を推進」

これらをみるならば、公約など何一つ実現できてないばかりか、TPPだけでなく脱原発の方向性も完全にうそだったことが明らかになっています。
さらに「特定秘密保護法」など公約では何も触れてないのに、多数を背景に強引に通してしまいました。これもある意味では公約違反の一つと言えると思います。
公約にないと言えば、原発輸出の積極的推進もその一つ。強引な再稼働の推進もそのための国外に向けた安全性のアピールのためという側面も持っているでしょう。
集団的自衛権についても「国家安全保障基本法を制定」と述べていた。つまり国会で論戦して法を作ると語っていたのに、世論の支持がないことを背景に閣議決定という事実上の密室審議で決めてしまいました。

このように安倍政権は明らかに公約違反のもとに、戦争と原発拡大の方向に走っています。
選挙にあたって、まず自民党や公明党の議員たちは、これら相次ぐ約束の不履行、嘘のオンパレードについて、きちんとした釈明すべきです。支持者の方もそうでない方もぜひこの点を問うて欲しいと思います。
とくに首相の嘘のオンパレードについてどう思っているのか。あれで良いと思っているのかどうかを問いただす必要があります。
明らかに安倍政権の行ってきたことは、民主主義の根本にある合議制の否定だからです。

これらのことからまっとうに考えるならば、今回の選挙で、どうしたって安倍与党を信任するわけにはいかないことは明らかだと思います。
ただしこの先は悩ましい問題が待っています。ではどこに投票するかです。
そもそも民主党もまた政権党になったときにほとんどの公約を実現できませんでした。また野党になってからも存在感を示しているとはまったく言えません。
第三極をめざしたみんなの党は解体を迎えています。維新の党はもともと安倍自民党よりも右寄りであり、なおかつ大阪府政、市政をもてあそぶ姿勢も許されないものです。

しかし今の日本の小選挙区制は、少数政党に極めて不利な歪んだ体制であり、自民党・公明党候補に、反対票を一本化しないとなかなか勝てない仕組みのもとにあります。
選挙制度が大きく間違っており、改革すべきなのですが、それが間に合わない現状では、与党を減らしたくても、対立候補もあまりひどくてなかなかすんなりと現政権への批判を投票に結び付けにくい仕組みがある。
だからといって、投票数が減れば減るだけ与党が有利になります。利権でがっちりと押さえ、嘘を言おうが何をしようが投票をする「組織票」があるからです。
またこのような状況に嫌気がさすがゆえに、これまで選挙にいかない人もたくさんいました。選挙制度が悪いからなのですが、しかしこのように選挙から人が離れることも与党に非常に有利にできています。

その点で僕が呼びかけたいのは、死に票になることを恐れずに、ぜひとも選挙に行こうではないかということです。
どの党の誰にどういう観点から投票するのかはそれぞれで判断が分かれますが、しかしこれだけ酷いことを続けてきた与党に反対する票が少しでも増えることが重要です。
反対票が増えても議席に結びつかないのだとしたら、繰り返し、選挙制度の改革の声も上げて行くことが大切です。
一番、いけないのは無力感に陥ってしまうことです。

安倍首相は勝敗ラインを与党の過半数割れにおきました。過半数を下回ったら退陣すると言ったわけですが、その場合、与党は90議席をも減らしてしまいます。
これに対して他ならぬ自民党の中から「そこまで自信がないのか」「何十議席も失ってもよいと公言するようなもので撤回すべきだ」という声が上がっています。
なぜこのような発言が出てくるのかといえば、まったく論争相手を説得できない安倍首相は、株価や景気=お金による与党への支持だけをあてにしてきたからです。
しかしアベノミクスは完全に行き詰まるとともに、貧富の格差が開くばかりの現実が表面化してきました。そうすれば数々のウソもクローズアップされ、一気に仮称の「支持」すらが無くなることにさすがに気づいているのでしょう。

だからこそ私たちはできるだけ多くの人に、選挙にいって、戦争と原発拡大に向かう安倍政権への反対票を投じることを呼びかけていきましょう。
ただし忘れてはならないのは、この国の選挙制度の歪みのもとで、今回も必ずしも私たちの民意が議席数に反映することにはならないかもしれないということです。
では何が大切なのか。私たちの直接行動です。各地で100回を越えて行われている脱原発を訴えた「金曜行動」がその象徴です。
あれほどの圧倒的議席数を背景に、横暴を極める安倍政権とて、いまだに一つの原発の再稼働も実現できていないのです。なぜか。街頭に議席には反映しきれていない民意が厳然として表れているからです。安倍政権とて今の自分たちの議席数が民意を反映してなどいないことを知っているのです。

それらから私たちは、選挙制度の大きなゆがみをしっかりと見据えつつ、結果としての議席数に惑わされることなく、私たちの民意を表していきましょう。
そのためにも街頭行動、直接行動を一切、緩めることなく、さらに力強く担っていきましょう。
その中で、どこの党の誰であろうと、現在の国難に本当に真剣に向かい合おうとする候補者に目先の議席の獲得など度外視して、票を投じていきましょう!
いろいろな考え方はあるので尊重しますが、僕自身は「勝つための選挙」という数合わせ的な発想が好きではありません。真実を語る誠実な人こそがいつか歪みを破って勝てるようになることをめざし、純粋に支持出来る人にこそ票を投じようではありませんか。

最低限、この間、一番嘘をついてこなかった候補者に投票しましょう。
そのためにぜひ自分の選挙区の候補者がこれまでどのような言動をしてきたのかを調べて下さい。
嘘つきに投票するのは止めましょう。もちろん主張を変えること事態はあります。その際はきちんと主張を変えたことの説明を行っているかどうかが大事なポイントです。
民主主義を担うのは私たち一人一人。その自覚と誇りを持って選挙に行きましょう。行くことを訴えましょう!私たちの行動で下からこの社会を変えて行きましょう!


 

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明日に向けて(975)脱原発をめざし全国で連帯してさらに進もう(青森・岩手・宮城編)

2014年11月19日 22時30分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20141119 22:30)

全国の脱原発運動の紹介の2回目です。今回は東北6県のうち青森・岩手・宮城をご紹介します。
岩手・宮城両県はともに津波でも大きな被害の出たところですが、活発な運動があります。三陸海岸の宮古市でも毎月のデモが行われています。

なお岩手県盛岡市の金曜デモはこの11月7日で100回目となったそうです。
宮城県仙台市の金曜デモは明後日21日で112回目。宮城県大崎市の金曜デモは11月14日で116回目だそうです。
各地で100回を越えるデモが行われています。すごいことです。どこのデモがとくにすごいということはないですが、例えば大崎市は人口約135000人の町。
大都市ではない町でもこうして100回を越えるデモが行われていることに私たちの国の草の根の力を感じます。大崎のみなさん。116回目のデモは15人で歩かれたそうです!

なお、かなりの時間を費やして情報を調べていますが、それでも各地の運動で漏れているものがあると思われます。
「これが載ってないよ!」という情報や、所在地の間違い等々ありましたらご指摘ください。その都度、訂正していきたいと思います。

以下、3県の情報を載せます。

*****

《青森県》
【青森市】
〇核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会
http://nonukesrokkasho.wordpress.com/

原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動
2014年 11月 21日 (金曜日)
場所 青森市新町1丁目2-15
時:17時45分~18時15分
場所:青森市駅前 駅前公園
(木を丸く囲ったベンチのラビナ~バスロータリー側)

主催:「原発なくそう!核燃いらない!あおもり金曜日行動」実行委員会
連絡先:核燃料廃棄物搬入阻止実行委員会
所在地:青森県上北郡野辺地町字中道14-39(澤口方)
電 話:080-6041-5089(阻止実携帯 中道)
メール:hakakunen@gmail.com
☆プラカード持ち込みOK、楽器、歌、パフォーマンス自由、コール&トーク大歓迎!
インターネット同時配信中。

〇なくそう原発・核燃、あおもりネットワーク
http://nakuso-gk.net/

11月22日(土)「核と基地の青森」バスツアー企画
時間:12:20八戸駅西口集合、12:30 八戸駅発、18:00 青森駅着
参加費:3,500円
コース:
A:東通原発フィールドワーク
B:六ヶ所核燃施設フィールドワーク
C:三沢基地フィールドワーク
※夜の「めーどin あおもり」企画 あおもり特色の4店舗会席へ引率

この他、企画多数
http://nakuso-gk.net/event.html

注目のページ
鼻血論争について 北海道がんセンター名誉院長 西尾正道
http://nakuso-gk.net/siryou/02-siryou01.html
 
【八戸市】
〇PEACE LAND金曜アコースティック・デモ
http://peaceland.jp/PeaceFiles/event.html#Anchor-PEAC-48739
 
毎週金曜日5時30分に八戸市役所前広場に集まりタイコのリズムに合わせてみんなで楽しく中心街を歩きましょう
コース 八戸市庁前~六日町~十六日町~十三日町~三日町~市庁前

〇核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団
http://www5a.biglobe.ne.jp/~genkoku/index.htm

【弘前市】
〇「子どもたちに核のない未来を」実行委員会ブログ
http://stopgenpathu.blog.fc2.com/

【その他】
〇この他の青森県で反核行動を行っている団体
原水禁青森
青森県保険医協会
原発核燃をなくす下北の会
六ヶ所・核燃から漁場を守る会 
核の中間貯蔵施設はいらない!下北の会代表

(守田注 六ケ所村を抱える青森県の情報です。さすがに脱原発だけでなく「核燃反対」という言葉がたくさん見られます。
六ケ所村は日本の原発の矛盾のすべてを押し付けようとされている場。これに反対する動きに全国から連帯していきたいです)


《岩手県》
【盛岡市】
〇#脱原発 #盛岡 金曜 #デモ のブログ
http://blogs.yahoo.co.jp/sayounaragenpatsu

〇盛岡でもデモし隊
https://www.facebook.com/moriokademodemo

金曜デモは11月7日で100回目 65人参加
http://blogs.yahoo.co.jp/sayounaragenpatsu/54619368.html

11月21日(金)
デモじゃないよ!お勉強会!!
「持続可能な暮らしと原発-シミュレーションと資料検証で学び合う-」
岩手県公会堂11号室 参加無料
開場18:30 お勉強会 19:00~20:00

〇日曜日もデモし隊 改め 土曜日もデモし隊(サウンドデモ)
https://www.facebook.com/1111moriokademo

〇さようなら原発 岩手県集会2014
https://www.facebook.com/pages/%E3%81%95%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AA%E3%82%89%E5%8E%9F%E7%99%BA-%E5%B2%A9%E6%89%8B%E7%9C%8C%E9%9B%86%E4%BC%9A-2014/691530400915494?fref=nf

〇三陸の海を放射能から守る岩手の会
http://mattasaisyori.wordpress.com/author/mattasaisyori/

〇脱原発昼デモ実行委員会(仮称)
2014年6月より毎月11日昼にデモ

【奥州市】
〇NO NUKES IWATE
http://nonukesiwate.blog.fc2.com/

〇放射能被曝から子どもを守る会・いわて
http://ameblo.jp/miraieforchildren-iwate/

〇放射能問題市民交流会(岩手)
http://serendipity24.cocolog-nifty.com/blog/2014/10/post-3dfd.html

【宮古市】
〇原発ゼロ宮古の会
~毎月11日18:00から、原発NOウォーク実施中(^^)/~
集合場所:宮古駅前西広場(三陸鉄道宮古駅前)
http://nonukesmiyako.jugem.jp/?eid=47

【その他】
〇6月の脱原発運動@岩手
https://www.facebook.com/notes/mitsuhiro-anada/6%E6%9C%88%E3%81%AE%E8%84%B1%E5%8E%9F%E7%99%BA%E9%81%8B%E5%8B%95%E5%B2%A9%E6%89%8B/803359186342744

(守田注 盛岡の金曜デモは日によってコースを変えています。内丸緑地公園集合が多いようです。この他、サウンドデモもあります。
奥州市の団体はいずれも本拠を奥州と明記してないのですが、集会が奥州市で行われているためここに分類しました。
三陸海岸の宮古市では毎月11日にデモが行われています。岩手県も活発ですね。今年の6月の行動の報告ページもご覧下さい。こんなに運動があるよ!と誇らしげな報告がされています)


《宮城県》
【仙台市】
〇みやぎ金曜デモの会
https://www.facebook.com/miyaginonuke
http://miyaginonuke.blog.fc2.com/blog-entry-234.html
(みやぎ脱原発・風の会有志、杜の市民力有志、わかめの会有志などの個人の集まり)

第112回 脱原発みやぎ金曜デモ
【名称】女川原発再稼働するな!子供を守れ!汚染はいらない!みやぎ金曜デモ 
(略称:脱原発みやぎ金曜デモ)
【日時と場所】11月21日(金) 元鍛冶丁公園 18時集合 フリートーク 18時半デモ出発

〇みやぎ脱原発・風の会
http://miyagi-kazenokai.com/event

=風の会・公開学習会 vol.5=
-吉田調書が語る- 『福島原発事故の教訓』
講師 仙台原子力問題研究グループ 石川徳春さん

日時 12月6日(土)18:30~20:30
会場 仙台市市民活動サポートセンター研修室5
(仙台市青葉区一番町四丁目1-3)
参加費 300円
主催 みやぎ脱原発・風の会
問合せ 090-8819-9920 hag07314@@nifty.ne.jp(@をひとつはずしてください)

〇わかめの会 – 三陸・宮城の海を放射能から守る仙台の会
http://lmswkm.net/

〇子どもたちを放射能汚染から守り、原発から自然エネルギーへの転換をめざす女性ネットワークみやぎ
http://blog.canpan.info/joseinet-miyagi/
同団体の署名活動(毎月展開中)
http://blog.canpan.info/joseinet-miyagi/img/E5A5B3E5B79DE58E9FE799BAE5868DE7A8BCE5838DSTOPE7BDB2E5908DE794A8E7B499.pdf

〇原発いらない宮城ツユクサの会
http://blog.livedoor.jp/tsuyukusanokai/

〇i-くさのねプロジェクト
http://www.kusapro.com/

〇東北教区放射能問題支援対策室いずみ
http://tohoku.uccj.jp/izumi/

【大崎市】
〇脱原発大崎demo原発はいらない
http://ameblo.jp/tadappi2772/

11月14日、第116回目の脱原発大崎demo金曜行動 大崎市古川あさひ中央公園で15名の参加で開催

【女川市】
〇「女川原発の再稼働を許さない!2014みやぎアクション」
http://dkazenokai.blog.fc2.com/

〇女川から未来を考えるつどい実行委員会
http://tanoshiroyama.com/onagawa/index.html

【栗原市】
〇放射能から子どもたちを守る栗原ネットワーク
http://kuriharasimin.blog.fc2.com/

(守田注 女川原発のある宮城県の情報です。さすがに仙台市には多様な運動がありますね。僕を講演に招いて下さった方たちの運動もありました。
宮城県南部には僕が良く知っている「みんなの放射線測定室てとてと」と「小さき花・市民の放射能測定室」など、さまざまな測定運動もあります。測定室情報についてはまたの機会にアップします)

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明日に向けて(974)「カノンだより」を観に来て下さい!鎌仲&ロクロー対談+守田、鎌仲&守田対談にも!

2014年11月18日 23時00分00秒 | 明日に向けて(901)~(1000)

守田です。(20141118 23:00)

映画「小さき声のカノン」を製作中の映画監督、鎌仲ひとみさんが京都・滋賀に来られることになりました。
23日は13時半より左京区の「左京いきいき市民活動センター」でカノンだよりVol.3を上映。
その後、ノンベクレルキッチンホテヴィラの広海ロクローさんと対談します。
お二人の対談がメインなのですが僕も飛び入りで参加させてもらうことにしました!なので鎌仲&ロクロー対談+守田となります!

24日は滋賀県栗東市で行われるアースデイしがに鎌仲さんが参加。映画「カノンだより特別版」の上映と講演会があります。
その上映の前に野外ステージで鎌仲さんと僕が対談します!
僕自身としては2日間にわたって鎌仲さんとお話することになります。とても楽しみです。

鎌仲さんと初めて出会ったのは滋賀県高島市で毎年行われている「山水人」の場。
他に二人の方とのパネルディスカッションに参加させてもらいました。
このとき、僕は被爆医師の肥田舜太郎さんをインタビューさせていただき、岩波書店『世界』に載せていただいた後でした。
鎌仲さんはその記事を読んでくださり、肥田さんが言いたいことを僕がきちんと聞き取って文字にしていると感じて、僕を信頼して下さったそうです。

僕は鎌仲さんの温かさ、ポンポン語るテンポのよさ、あけっぴろげで歯に衣を着せないけれどもなんとも楽しい雰囲気、そしてそれらの奥底に流れる優しさに魅了されました。
またこの頃に映画「ヒバクシャ」を観ても唸りました。そもそもこの映画を観たのがこの直前で、鎌仲さんに「信じらんな~い」と怒られてしまいましたが、ともかくとても先駆的だと思ったのです。
「ああ、今必要なすべてのことを、こんなに前からきちんと映像にしていてくれていたのだ」ととてもありがたい気がしたのでした。ちなみにこの映画の重要な主人公のひとりが肥田舜太郎さんです!

その鎌仲さんは今、映画「小さき声のカノン」の製作の真っ只中にいます。
この映画はどんなものなのか。鎌仲さんはどのような思いで作ったのか。
例えばママレボ8号の中に素晴らしいインタビュー記事があり、そこから思いを知ることができます。

ママレボ8号
2014年7月18日金曜日

鎌仲ひとみ監督インタビュー
「子どもを守ろう、と動きだしたお母さんたちの存在は、絶望のなかの希望です」
http://momsrevo.blogspot.jp/2014_07_01_archive.html

そもそも鎌仲さんが放射能と向かい合いだしたのはイラク取材が出発点。
劣化ウラン弾に被ばくした子どもたちを取材して胸を痛めると同時に、ご自身も深刻な健康被害に見舞われました。
その後に福島原発事故が起こった時、原子力村の取材からきちんとした対応をしないだろうとは思っていたけれどもここまで民衆を守らないのかと唖然としたそうです。
しかも自分たちの不始末の隠蔽工作だけは早かった。本当にひどい状況が現れた。

でもそんな中でも大きな希望があった。それが小さい子どもたちを守ろうとした女性たちの行動だったのでした。
鎌仲さんはその行動に寄り添いました。各地で起ちあがった女性たち、お母さんたちのそばに立ってカメラを回し続けた。
同時に彼女はベラルーシ、ウクライナにも飛び、かの地の女性たち、子どもたちを守ろうとしてきた人々の姿もカメラにおさめてきた。

またまた先駆的な映画を作っているなあと僕は思います。
ある意味で残念なことに、こうした女性たちの行動が非常に尊いものであることが、これからどんどんと社会的に光を浴びることになります。
他ならぬ放射線被ばくによって病そのものが急速に発症し始めているし、被ばくが放任されている今のままでは深刻に広がらざるを得ないからです。

やがて社会全体がそれに気が付くことになる。そのとき今よりも強い絶望感が押し寄せてくるはずです。
しかしその中でも希望があったし、これからもあることを鎌仲さんは映像で刻み付けようとしています。いち早く起ちあがった人たち、女性たちの姿があったのです。
そして大切なことに気が付いた人はその時からこうして前を歩いていた人の後を歩めばよい。そのための道筋が「小さき声のカノン」の中に記録されつつあるのだと僕には思えます。

もちろん鎌仲さん自身は、そして僕もまた未来のための覚醒のために動いているわけではない。たった今、多くの人に放射線の危険性を知って欲しいし、手厚い防護を初めて欲しい。
そう思いつつ、東奔西走しているわけですが、しかし映像作家である鎌仲さんの眼はいつも未来の観客の眼をも意識しているのだと思います。
今、すべての被曝を止められない限りそれはとても重要なことです。結果的にものすごく多くの人を守ることになります。

といっても、まだ作品ができていないので全体像は分からないのですが、幸いにも鎌仲さんはこれらの過程を「カマレポ」としてショートストーリーで紹介してきてくださいました。
それをまとめたのが「カノンだより」です。僕は毎月発行のカマレポを購読していて、毎回観させてもらっていますが、その中には僕が皆さんに伝えたいことがたくさん紹介されている。
というか僕もよく知っている方たち、注目している方たちもたくさん登場しています。ぜひみなさんに観て欲しいです。


また今回は京都ではわが友、広海ロクローさんと鎌仲さんとの対談がなされます。
ロクローさんは京都で資材を投げ打って高価な放射線測定器(ベクレルモニター)を購入し、NONベクレル食堂を開設した人です。まさに義挙でした!
実は開設にいたる過程で僕も少し関わりを持たせてもらいました。最初は測定室を建てるつもりという話でお手伝いをしていたのです。
僕はそのころ、宮城県に立ちあがった二つの測定室、「みんなの放射線測定室てとてと」と「小さき花 市民の放射能測定室」に関わりを持たせていただいていました。

ここにともに岩波ブックレット『内部被曝』を編み出した矢ヶ崎克馬さんと一緒に訪れることになり、ロクローさんにも測定室を観てもらいたいと誘ったのでした。
かくして共に宮城県南部を訪問することになりました。二つの測定室とも素晴らしいところで大歓待してくださいました。

このうちの「小さき花」を建てた石森君は、自分が単身、乗り込んで一人で開墾した山の中の農地をすべて放射能汚染されてしまっていました。ロクローさんはそれを聞いて一人涙を流していました。
ちなみに今回の鎌仲さんの映画の題名「小さき声のカノン」の「小さき」はこの「小さき花」が由来していると聞いています。鎌仲さんのセンスの良さに「さすがだなあ」と思いました。

さてこれらの測定室の訪問を終えたロクローさんは、測定室ではなく食堂を作ると言いだした。僕は当初、なぜ食堂なのかよく分かりませんでした。
でもできあがったレストランを観て、そこに訪れるお客さんたちを観てその意味がとてもよく分かりました。そこには、被ばくに苦しみながら避難してきた家族が、安心して、涙を流しながら、美味しい美味しいと肉などを食べている姿がありました。
これらについて食堂ができたばかりのころにインタビューした記事を紹介しておきます。

明日に向けて(588)NONベクレル食堂のめざすもの(上)20121128
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/53019391d83eb2c9151c14dd4bb3bedf

明日に向けて(589)NONベクレル食堂のめざすもの(中)20121129
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/cbc7670f51fe5cd76976a10275930cb7

明日に向けて(590)NONベクレル食堂のめざすもの(下)20121130
http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/20f0a119fa1e4cde34ccb35e8a9f7214

僕はこの試みもとても先駆的なものであり、義挙であったと受け止めています。
ロクローさんは今は食堂から「ノンベクレルキッチン ホテヴィラ」に居を移して、志を継続させています。

さてその鎌仲さんとロクローさんが対談されるわけですが、二人ともすでに山水人の場で仲よくなっており、その時も僕も共にいました。
なので今回もロクローさんに無理をいって僕も後から飛び入りさせていただくことにしました。

その上で、翌日24日には「アースディしが」で、鎌仲さんと僕とでお話します。
この日はロクローさんも別枠で「アースディしが」に参加されます。
二日間、3人で行動を共にすることになります。

僕自身としてはどちらかと言えば聞き手にまわって、お二人からみなさんの力になる話を聞きだしたいなと思っています。お近くの方は、ぜひお越しください。

以下、それぞれの企画と「小さき声のカノン」公式ホームページのアドレスを貼り付けておきます!

*****

11月23日(日)13時半〜

カノンだより Vol.3 上映会
“保養”が子ども達の命を守る!
 ~日本とベラルーシの現場から~

https://www.facebook.com/events/993744797305831/

2015年公開予定の新作「小さき声のカノン-選択する人々」
製作現場より、各地で出会った”小さき声”をいち早く届ける動画メルマガ「カマレポ」を配信中です。
チェルノブイリ原発事故後のベラルーシ、ウクライナの人々。
今も収束しない福島第一原発事故と共に生きる日本の人々。
交差する視点が今の私たちを浮かび上がらせます。

カノンだよりvol.3の上映後、
鎌仲ひとみ監督 トーク解説

広海ロクロー・鎌仲ひとみ監督の対談。

会場の関係で、予約制【定員40名】*メールと電話で受け付けます。
電 話:080-3101-1636
E-Mail:mail@6960sakyo.net
●先着で、託児も受け付けています。
お申し込みの際にお申し付けください。

会場:京都市左京西部いきいき市民活動センター
電話  075-791-1836 京阪電車出町柳駅より徒歩7分
〒606-8201 京都府京都市左京区田中玄京町149

主催:ロクローと市政を考える会
電 話:080-3101-1636

*****

11月24日 滋賀県栗東市

アースディ しが 2014
めぐるすべてのいのちのつながりのなかで 今ここに生きている

11月24日(月・祝)
午前10時~午後5時
野外ステージ音楽ライブ・トークイベント『くらしとせいじカフェ』
11時~ 対談 鎌仲ひとみ&守田敏也

なお中ホールで午後1時半より鎌仲監督の講演と「カノンだより特別版」の上映もあります。

その他のスケジュールも含めて、詳しくは以下をチェック
アースディしが 公式ホームページ
http://earthday-shiga.seesaa.net/category/23116700-1.html

*****

小さき声のカノン
公式ホームページ
http://kamanaka.com/canon/

26年後のベラルーシ編CM 2013年8月5日配信
https://www.youtube.com/watch?v=r-c4P_jWR8I

"カマレポ" CM 〜 100人の母たちから100万人の母たちへ 〜 2013年8月23日公開
https://www.youtube.com/watch?v=jBn3fSwAgUY

"カマレポ"CM 〜チェルノブイリ・ツアー編〜 2013年10月11日
https://www.youtube.com/watch?v=SEGE5v3Y__0

「カマレポ No.12」短縮お試し版! 2014年6月10日
https://www.youtube.com/watch?v=6-J1-Mg4sbc

 

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