守田です。(20160716 10:00)
参院選の結果を受けて、今後、私たちがいかに安倍政権と対決していくのかの考察の後半をお届けします。
私たちが見ておくべきことは、野党共闘が効果を発揮したのは基本的には統一候補を立てた1人区でのことで、複数区ではまだまだ十分な連携が実現されたとは言えないことです。
安倍首相はこうした中で野党、とりわけ民進党を意識して「改憲論議を進めるべきだ」と匙を投げてきました。
これに対し、少なくとも安倍政権のもとでの改憲には応じないというのが民進党の態度でしたが、14日になって岡田代表が「軌道修正を図った」と報道されています。
安倍首相が現行憲法を連合国軍総司令部(GHQ)による「押し付け憲法」と捉える見解を撤回し、立憲主義を順守するとの条件を守れば、9条以外の条文の議論に応じる余地があるというのです。
岡田氏の言う「立憲主義の順守」をどのように担保させようとしているのか良く分かりません。そもそも立憲主義を順守するなら自民党改憲草案そのものを捨てなければならない。
その点でこの流れがどう次につながるのか見えにくいですが、ともあれ今の時点で言えることは、こうした動きに私たちの側からも積極的な意見表明を行いつつ、野党共闘を守り、強化していくことが必要だということです。
安倍首相が狙っているのは産声を上げ、効果を示し出したばかりの野党共闘の分断です。自分がまわった重点区がほぼ全敗したため怖いのでしょう。だからこその分断策を押し返す努力が必要です。
おりしも東京都知事選で最も東京都政に詳しく、都民のことを最もリアルに考え抜いてきた宇都宮弁護士が退かれました。野党共闘を優先されたのです。まさに身を切る努力です。心から受け止めたいです。
今、問われているのはこの共闘の潤滑油となったすべての方たちのさらなる活躍です。そのために私たちが、互いの違いを越えた柔らかくて豊かな団結を保持し抜くことが大切です。
そのためにも、平和を守ろうとする勢力の中の意見の違いに寛大な姿勢を示し会うことが必要です。中でもアグレッシブで相手へのリスペクトが欠けた批判や批難を戒めましょう。
韓国の友人にこういわれたことがありました。「君ら日本人は意見が食い違うとすぐに相手を嫌いになって話さなくなる。俺たちは相手の意見を嫌って徹底して論争するからその後に打ち解けることができるのさ」。なるほどと思いました。
こうした私たちの限界を越えるために、1人区での共闘のもとでの選挙戦に勝利したり善戦をした地域のリアリティに学び、複数区で生かす道を切り開きましょう。
さらに鹿児島新知事の背中を全国から押して、川内原発を停めることに力を集中しましょう。
そのためにこの知事選で、必ずしも川内原発稼働の是非が一番の焦点ではなかったこと、前知事の多選批判の方が強かったことも見ておく必要があります。
また保守王国の鹿児島は県議会でも保守勢力が強く、新知事が意志を押し通していくためにはたくさんの障害もあります。
最も新知事の三反園さんはさっそく「川内原発の停止の申し入れを考えたい」と表明されています。これに全国から圧倒的な応援の声を届ける必要があります。ぜひすぐにも取り組みましょう。
ここで川内原発を停止となれば、伊方原発差止訴訟を含め、各地の原発差止訴訟に影響が広がります。多くの人々が連携して大きな流れが作りだされれば、裁判所も良心的な判決を出しやすくなるからです。
この試みに、各地での避難計画の見直し、原子力災害対策への下からの取り組みをリンクさせてヨウ素剤事前配布を実現する運動などを連結させていきましょう。
さらにその上に付け加えるべき大きなポイントは、今回の選挙にほとんど課題となっていなかった原発避難者・被災者の権利獲得問題、被曝防護の運動を野党共闘の運動に上乗せしていくことです。
なぜならばこの国の中でもっともラディカルな行動を行ってきたのが率先避難を担ってきた方たち、あるいは被曝地で放射線防護活動を展開して方たちだからです。
あの2011年の3月以降にすべての政党や革新勢力が飛び越えられたこと、そのことでこの国の政治状況が根本から変えられ始めたことを私たちは見ておく必要があります。
この率先避難者の行動こそが、もっとも先鋭に今の社会の矛盾に立ち向かうものとなり、各地の原発ゼロの動きをひっぱってきたのです。
戦争法に反対するSEALDsの若者たちや安保関連法に反対するママの会の感動的な活動も、この方たちを先頭に各地で切り開かれたてきた運動に続くものです。
この方たちはものすごいアピール力を持っています。被曝問題を軸に現代社会の根本矛盾にまで踏み込んでいるからです。この力をもっと生かすためにも避難者、被災者の権利獲得を野党共闘の重要な課題へと押し上げましょう。
さらにもう一つ、ぜひみなさんに呼び掛けたいのは、安倍政治を覆す「与野党共闘」の形成へとみなさんの眼を向けていただきたいということです。
米軍基地建設反対の運動の中で与野党共闘を実現した沖縄に学んでです。いや大阪でも維新による都構想に対して部分的な与野党共闘が実現したこともありました。こうした可能性をもっと追及していきましょう。
その中でも重要なのが災害対策です。なぜか。真にリアルに「国を守る」ことを考えるならば、東南海トラフ地震をはじめ大地震や大水害などに備えることこそが内政の最重要課題だからです。
アメリカ軍の補完勢力として自衛隊を海外展開しようとしている安倍政権には、こうした現実の危機から国を守ろうとするリアリティがまったくありません。
そもそもこの原発列島を軍隊で守り抜くのは不可能です。さらに日本列島を襲うさまざまな自然災害に対して、軍備はなんらの役にも立ちません。イージス艦が何隻あったって台風一つ、撃ち落とやしないのです。
にもかかわらず安倍政権は、中央構造線という大きな断層帯の上に立つ伊方原発の再稼働を進めようとしています。まったくもって愚かの窮みです。
さらに原発問題だけでなく、現政権は災害対策のリアリティに立っていません。実はその際たるものが憲法改悪の筆頭に上げられつつある「緊急事態条項」の新設の画策なのでもあります。
東日本大震災で辛酸をなめた東北の首長たちは、大災害に対してむしろ地方自治体の権限の強化を求めています。一部の国家官僚が災害への対応のすべてを見通すことなど不可能だからです。
もっと大胆に現場の裁量を認め、それぞれの地域に力を付けていくことが災害対策の基本なのです。そうでなければ世界的な気候変動の中での災害発生におぼつかないのです。
必要なのは国より自治体へ権限を渡し、現場の臨機応変な対応力をアップしていくこと。行政に任せきりでなく市民の力、災害に対する市民の能動性を底上げしていくことです。
真っ当に災害対策を進めていくことが問われているのですが、この領域では地域を守る意識の強い保守の方たちとの人たちとの連携が可能です。災害対策はイデオロギー的相違を一度横において取り組むことができるからです。
おそらく今回、鹿児島でもこうした意識変化が劇的に進んだのでしょう。
またこうしたことに関わり、保守の方たちと地域で連携してみるとすぐにも見えてくるのは、総じて各地域の「保守」と呼ばれる方たちが、今や「中央」の安倍政権と大きくズレていることです。
これは僕自身が篠山市で原子力災害対策に関わってくる中でも実感してきたことです。保守の方たちの多くがけして安倍政権が進めようとしているような戦争政策など望んでいません。自民党改憲草案にあるような独裁国家の出現も望んでいません。
安倍政治は実は広範な自民党の地域組織の中にすら浸透しきっていないのです。
沖縄では数年前からこうした与党の中の矛盾と亀裂が深まり、伝統的な野党共闘の上をいく基地反対の与野党共闘が成立しました。そしていま、福島や東北でも新しい流れが動き出しています。
これらを踏まえて、私たちはいま、自民党支持層、公明党ないし創価学会支持層に大胆に平和の訴えを広げていくことを進めましょう。
私たちはこれまでの支持層への訴えにとどまっていてはいけないし、とどまっている必要もありません。伝統的な保守層にこそ訴えを広げていく必要があるのです。そのことで与党の支持基盤の中に平和の声を広げていきましょう。
なぜなら保守層の方たちもまた大切に思ってきたこの国の平和を危機にさらし、貧富の格差も拡大して、コミュニティをバラバラにしているのが安倍政権なのだからです。
私たちにとって問われているのは「保守層は変わらない、〇〇の会員に呼び掛けてもダメだ・・・」という発想を過去のものとすることです。
いやそのためにも保守とか革新とかいう枠組みも越えて、およそ「連中は〇〇だからダメだ」というあらゆる固定観念を捨て、まずは意見の違う他者、他党派、他勢力に話を聴きにいき、その上で自分の主張を説得する行為を広めましょう。
とくに保守層、自民党や公明党・創価学会支持者の人々との接点を増やしましょう。各地のJAにも話にいきましょう。伝統的な自民党支持を止めた方々の話を傾聴しましょう。
保守層の中にもあの戦争の悲惨な体験を悲しみ、心の底から平和を愛している人々はたくさんいるのです。繰り返しますがこうした人々の多くは安倍政治を全面的に支持しているわけではありません。
実はそこにも安倍政権が、選挙になると争点を徹底してぼかす根拠があります。安倍政治の姿が選挙の前に鮮明になったら、保守票が離れて行ってしまうのです。
だからこそこうした人々にこちらから近づきましょう。誠意をもって安倍政権が保守層の人々をも手酷く裏切っていることを懇切丁寧に解き明かしていきましょう。
同時に革新層への懸念がどこにあるのかにも虚心坦懐に耳を傾け、正すべきものを正していきましょう。
そうした行為を地道に重ねていけば、僕は安倍政権を孤立に追い込むことはまったく可能だと思います。
そのためにも「マスコミがちゃんと報道しないから悪い」とか「無関心層が悪い」とかの言葉ももう封印しましょう。それではマスコミや無関心層を遠ざけるだけです。
マスコミがちゃんと報道しないなら報道するように働きかけ、良い記事を書いている記者さんを応援しましょう。
無関心層をなくしたいのならその人々にもっと近づき、その深層心理に迫って、心ある説得を進めましょう。
こうした粘り強い行動を貫けば、安倍政権を倒すことは絶対に可能です。
いや安倍政権を倒すと言う小さなことよりも、この国のこれまでの政治的土壌を根本的に入れ替えるような大仕事も僕は可能になると思います。
頑張りましょう!
終わり