守田です(20221019 16:00)
岸田政権の原発推進政策批判のその3をお届けします。
原発推進のために「次世代革新炉」などを指示した岸田首相 ABEMA TIMES 20220826 より
● 次世代革新炉といっても現実性があるのは「革新軽水炉」だけ
前回の記事で岸田政権が原発推進の基軸にあげている「次世代革新炉」の矛盾を明らかにしました。革新炉が必要なのは、今の原発が危なくて仕方がないからです。
今回は「次世代革新炉」の矛盾と限界を指摘します。
「革新炉」には五つのものがあげられています。「革新軽水炉」、「小型モジュール炉=SMR」、「高温ガス炉」、「高速炉」、「核融合炉」です。
このうち2030年代に商業運転を始めるとしているのは「革新軽水炉」のみ。後の4つはどれも「研究段階」で実現の目途が立っていない。核融合炉などまったく可能性がありません。
日経新聞より
● 革新軽水炉とは何か
「革新軽水炉」は、もともと現在使われている軽水炉を「改良」する「第3世代」改良型または「第4世代」と呼ばれるもので、「これでは次世代とは言えないのでは」と指摘するマスコミも。
「革新」の中身は、耐震性の強化、航空機衝突に耐えられるようにする、炉心冷却の手段を多様化などとされています。
三菱重工業、関西電力、北海道電力、四国電力、九州電力の5社が、既存の三菱重工製の加圧水型軽水炉をもとに革新軽水炉を共同開発し、「SRZ-1200」と名付け、2030年代に実用化を目指すとされています。
しかしここでも「次世代革新炉」と同じことが言えます。これが必要なのは、既存の三菱製原発は、耐震性が足りず、航空機の衝突に耐えられず、炉心冷却手段に信頼性がないからです。
「革新炉」が必要なのは第3世代までの安全性が信頼できないから! 三菱重工の革新軽水炉の説明より
● コアキャッチャーが必要=過酷事故を前提している
三菱重工は、この原発を新たな安全メカニズムとして、「プラントの状態に応じて自動作動する高性能蓄圧タンク」や、メルトダウンした炉心を捕まえる「コアキャッチャーの設置」などをうたっています。
「万一の重大事故時に放出される放射能量を低減し、影響を発電所敷地内に留めるためのシステムの設計にも取り組みます」とも。何のことはない!過酷事故=大量の放射能の漏れ出しを防げないことが前提です。
革新軽水炉「SRZ-1200」について
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000423.000025611.html
革新軽水炉 SRZ-1200 (Advanced light water reactor “SRZ-1200”)
https://youtu.be/cdXaH_Cc8sM
何度も指摘しますが、原発はもともと格納容器を最後の砦として設計されたもの。事故時にここに放射能を閉じ込めることで、安全性を確保すると言ってきたのです。しかし実際には大失敗してしまった。
それなら次は、絶対に放射能を漏らさない格納容器を作るしかないのに、できないので放棄し、大事故対策を施すと言っている。しかし格納容器すら完成させられないのに、どうしてそんな技術に信頼がおけるでしょうか?
核燃料が漏れ出してなぜ超安全なのか? 三菱重工のYouTube動画より
● 実は「革新軽水炉」はすでに破たんしている
三菱が開発を目指している「新たな」原発は、実は既にフランスのアレバ社によって建設が試みられ、欧州加圧水型原子炉(EPR)と名付けられました。「第3.5世代」なのだそうです。
フィンランドのオルキルオト原発3号機、フランスのフラマンビル原発3号機、中国の台山原発1,2号機として建設が進められましたが、どこもトラブル続きで難航。2015年に日経新聞に以下のように報じられました。
安全な原発は夢か 仏アレバの新型炉建設が難航 日経新聞20150126
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO82205990R20C15A1000000/
その後、台山原発1号機は2018年、2号機19年、オルキルオト原発は2022年3月から稼働を始め、フラマンビル原発も来年第二四半期に燃料初装荷の予定とされていますが、その間に建築費が当初予算をはるかに上回ってしまいました。
フラマンビルは当初予算約4100億円から約1兆6560億円と4倍に膨張、オルキルオトも2015年の段階でも1兆1600億円になっていました。とても採算がとれない!アレバは2018年1月に倒産しました。
これらから言えることは「原発なもう終わっている」ということです。にもかかわらず、完全に破たんした道を、政府と三菱重工、電力各社が進もうとしています。まるで旧日本軍のようです。
現実を見すえられないこんな政策が続けられれば、必ず再び大事故が起こります。それこそが私たちの最大の危機。原発を止めよ!との大きな声をく上げましょう。
2007年12月に着工したフラマンビル原発3号機は、まだ核燃料装荷もできていない 原子力産業新聞 20220114より
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