明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1131)岩波ブックレット『内部被曝』を読もう!

2015年08月26日 17時00分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!

守田です。(20150826 17:00)

2012年3月に矢ヶ崎さんと一緒に編み上げた岩波ブックレット『内部被曝』、未だに継続的に売れて読んでいただけています。
被爆70年の今年の夏、僕は各地で「戦争と原爆と原発と放射能被曝の太い関係性」について語ってきました。
その中心的内容は、原爆を落とした加害者であるアメリカが、被害者である被爆者を排他的・独占的に調査したデータが、現在の放射線防護学の基礎になっており、そのことが放射線被曝の人体への影響が極めて軽く扱われる大元の根拠になっていることです。
その際に行われたのが内部被曝隠しでした。被曝影響を主に原爆の破裂時に発せられた初期放射線によるものに限ってしまい、放射性微粒子の降下と体内へのとり込みによる被曝の影響が意図的に無視されたのです。

岩波ブックレット『内部被曝』は、矢ヶ崎さんへのインタビューに基づきながら、内部被曝のメカニズムを明らかにしたのちに、アメリカが主導する国際放射線防護委員会(ICRP)がいかに被曝影響を過小評価してきたのかのからくりを明らかにした書です。
被曝の過小評価の歴史的経緯と論理的方法を解き明かしており、ぜひこの点を多くの方に理解していただきたいです。そのためにも『内部被曝』の購読を強くお勧めします。すでに読んだ方には周りに広げていただくことをお願いしたいです。
今、私たちは川内原発の強引な再稼働を前に緊張感を強いられていますが、そもそも原発も核戦略を生き延びさせるための「原子力の平和利用」によって登場してきたもの。その点の歴史的経緯も論じてあります。
そもそも原発の促進とて、内部被曝の軽視なしには不可能だったのでした。原発は正常運転していても放射能を漏らし続けるし、かつまた深刻な被曝労働を作り出すからです。

本書はこれまでさまざまな場できわめて好意的にレビューされてきましたが、この8月と昨年末にもそれぞれに素晴らしいブックレビューを書いて下さった方がいましたのでここに紹介します。先に岩波書店の購入先を案内しておきます。

 『内部被曝』購入先
 岩波書店ブックオーダー係 電話049‐287‐5721 FAX049‐287‐5742
 岩波書店ホームページ・ブックレット
 http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/

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内部被曝の恐ろしさとその隠ぺい
投稿者 哲郎 ベスト1000レビュアー 2015年8月15日
http://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/RYVAX92WRS2DJ/ref=cm_cr_pr_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4002708322

はじめに内部被曝の過酷さを原理的に明快に解説している。
その上で、原爆と原発を推進する国際的な組織ICRPが、その深刻な被害を巧妙かつ徹底的に隠ぺいしてきた事実が述べられる。
これほど重大な事実を前に立ちあがった学者が、著者のほかわずかであるというのがさびしい。
エピソードとして、福島事故直後に東京都町田市で内部被曝の影響を疑わせる事例があったこと、1970年代に日本の6~9歳の子供たちのがん死亡率が6倍になったこと(評者の姪も小学4年でがん死した)、
セシウムは28℃で液化、680℃で気化するから、焼却したらバグフィルターをすり抜ける、といった指摘に教えられた。
著者たちが、原発被害者たちや福島事故被災者たちに寄り添って、ともに被害克服に苦闘しておられることに頭が下がった。

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71ページでうすいが、わかりやすい
投稿者hanakuro2014年11月2日
http://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R36VRGXJXO3S3X/ref=cm_cr_pr_rvw_ttl?ie=UTF8&ASIN=4002708322

物理学的な説明が、とてもわかりやすいです。71ページのうすい本ですが、わかりやすく端的に書いています。目次はつぎのとおり...1章「被曝直後の福島を訪れて」、2章「内部被曝のメカニズムと恐ろしさ」、3章「誰が放射線のリスクを決めてきたの

か」、4章「なぜ内部被曝は小さく見積もられてきたのか」、5章「放射線被曝に、どのように立ち向かうか」

この本を読む前に、JCOの臨界事故についてのNHK取材班の記録をもとにした文庫本、「朽ちていった命-被曝治療83日間の記録-」(新潮文庫)を読んでいました。
これは、零コンマ何秒間の、中性子線とガンマ線被曝で、人体の中のNaが放射性物質Na24に変化して、骨髄細胞の染色体が同定できないくらいにバラバラに破壊され、多臓器が機能不全になって、急性障害で亡くなった、大内さんの83日にわたる、だれもが経験したことのない闘病の記録です。

JCOの事故は、中性子線とガンマ線被曝が原因なのは明白です。一方、ブックレットにある「内部被曝」は低線量の24時間被曝のことです。放射性ヨウ素のように、体内のいろんな部位に蓄積する放射性物質が出しつづけるベータ線は、短い距離を飛行するあいだに、その近くにある原子に衝突して、「効率よく」その電子をはじきとばして、その物質を破壊するのですが、じわじわと晩発性障害を発生させるので、被曝した本人(我々自身かもしれない)ですら、障害と被曝の因果関係に気付くのはむずかしいし、因果関係を立証するのもむずかしいようです。

5章を読んで、..... すでにできてしまった放射性廃棄物については、放射線を出す性質自体を消滅させることはできないので、体積を減量して放射線を長期間、遮蔽する以外に手立てがないように思いますが、これ以上、放射性廃棄物をふやさないために、脱原発は必要に思いました。放射性廃棄物は、とてつもなく長期にわたって、いろんな意味で危険な、子孫への負の遺産です。これは人間が作り出すものの中では、かなり特殊なものであることを認識しなければならないように思います。いま、参考にすべきキーワードは、「ドイツは、すべての原発を2022年までに停止することを決めた」と、いろんな企業が注目しつつある「再生エネルギ」、ではないかと思います。

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岩波ブックレット「内部被曝」
星の対話プロジェクト(災害避難者の人権ネットワーク)2014年12月30日
http://starsdialog.blog.jp/archives/19685191.html

この本は 2012 年 3 月に出版されていたのに,見のがしていたのは失敗。
いまおもえば,書名がそっけない,というか単純すぎて「ああ,わかってる」と錯覚した可能性がある。
「内部被曝」ではなく「放射線被曝にどのように立ち向かうか」という第 5 章のタイトルを書名にしてくれていたら・・・という気がする。
ともあれ,重要な内容である。いまこの問題でなやみ,まよっている人たちへの答えがすでに書かれていたのだ。
第 2 章では内部被曝のメカニズムについて,ていねいに書かれていて,あらためて理解をふかめた。
第 3 章,4 章では,歴史的な経緯を追っていて,科学が政治に服従してきたことがよくわかる。
1か所だけ引用しておきたい。
「科学することは,物を具体的に見ることです。真理は常に,具体的なのです。ですから対象を具体的に個々に見ることなしには,被曝を研究することは決してできません。」(p.39)
さらに重要なのは第 5 章である。これからの社会のありかた,人間の生きかたまで深く考察した内容で,納得できる。自主的に避難したひとたち,とくに子どもをつれて逃げた人たちを高く評価している点は著者の人道的な立ち位置が明確になっている。

目次
第 1 章 被曝直後の福島を訪れて
第 2 章 内部被曝のメカニズムと恐ろしさ
第 3 章 誰が放射線のリスクを決めてきたのか
第 4 章 なぜ内部被曝は小さく見積もられてきたのか
第 5 章 放射線被曝に,どのように立ち向かうのか

著者略歴
矢ヶ崎克馬
1943 年うまれ。沖縄県在住。広島大学大学院理学研究科博士課程単位取得満期退学。理学博士。専攻は物理。琉球大学理学部教授。理学部長などを経て 2009 年 3 月,定年退職。
琉球大学名誉教授。2003 年より原爆症認定集団訴訟で「内部被曝」について証言をする。東日本大震災以降は,福島ほか全国各地で講演をしている。2012 年久保医療文化賞受賞。
著書に『隠された被曝』(新日本出版社),『力学入門(6 版)』(裳華房)などがある。

守田敏也
1959 年うまれ。京都市在住。同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て,現在フリーライターとして取材活動をつづけ,社会的共通資本に関する研究をすすめている。ナラ枯れ問題に深く関わり,京都の大門司山などで害虫防除も実施。東日本大震災以降は,広くネットで情報を発信し,関西をはじめ被災地でも講演をつづけている。また,京都 OHANA プロジェクトのメンバーとして,被災地に中古の自転車を整備して届ける活動をおこなっている。

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「内部被曝」 岩波ブックレット 832
2012 年 3 月 6 日 第 1 刷発行
著者 矢ヶ崎克馬,守田敏也
ISBN978-4-00270832-4
定価 本体 560 円+税
岩波書店
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/
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関連記事
「ドイツ・ベラルーシ・トルコ・ポーランドで学んだこと~チェルノブイリ原発事故による被ばくの現実やトルコへの原発輸出問題~」
http://starsdialog.blog.jp/archives/19321277.html

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明日に向けて(956)岩波ブックレット『内部被曝』6刷が発売されました!

2014年10月18日 23時30分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!

守田です。(20141018 23:30)

少し前になりますが、本年9月10日に岩波ブックレット『内部被曝』の6刷が販売されました。
おかげさまで内部被曝の本質を歴史的かつ論理的に解き明かした本書は今も静かに売れ続けています。

このブックレットを作成したきっかけは、僕が矢ヶ崎さんの著書、『隠された内部被曝』を読んで深い感銘を受けたことでした。
矢ヶ崎さんの着眼点の素晴らしさは、広島・長崎原爆における被曝被害に対し、アメリカがきわめて恣意的な調査を行い、データ管理をしたこと、それを下地に放射線の人体への影響の評価が作られてきたことことに歴史的経緯を遡って迫り、その中から内部被曝の本質を解き明かしていることでした。
このとき、僕は哲学者ヘーゲルが、「本質」は「始原」の中に宿っていると語ったことを思い出しました。そのものが何であるかは、そのものがどこからやってきたのか、いつ、どこでそのものになったのかの中にある。本質は始原を探る中で見出すことができるという意味です。

実際、放射線被曝の問題は、原爆の被害に遡るとその全貌が見えてきます。
そもそも核エネルギーは、平和のためなどではまったくなく究極の殺人兵器として開発され、使用されたのでした。
これに対してたちまち世界的な批判が巻き起こりましたが、アメリカはこの批判をかわして核戦略を維持するために、放射線被曝の過小評価、なかんずく内部被曝隠しを試みたのでした。それそのものが核戦略の重要な一環だったのです。

矢ヶ崎さんはこの事実に、原爆症認定訴訟に参加する中で気が付かれました。
初めてこのことに突き当たった時、矢ヶ崎さんは、どうしてこれほどにいい加減な断言が科学の名のもとに存続してきたのか、どうして科学者の誰も、まともにこれを批判しようとしなかったのか、憤りのあまり、三日三晩、寝れなかったそうです。
そのことも含めて、僕は矢ヶ崎さんが解き明かしてきた真実を、できるだけ分かりやすく多くの人に伝える中に、放射線防護を真に手厚く前進させる道があると直感し、ブックレットの作成を目指しました。

幸い、ブックレット『内部被曝』は多くの方が書評やブログ、口コミで紹介してくださり、今日まで売れ続けてきました。
各地で学習会などでも使用していただけているそうです。その一つとして、明日19日に東京の多摩市永山公民館で午後2時から読書会が行われることを、昨日、ネットを調べていて知りました。
こうしてみなさんで読んでいただけるのはとても嬉しいです。

いま、矢ヶ崎さんと僕はさらにこの本に次ぐものの作成を考えています。とくに矢ヶ崎さんはこの間、さらに国際放射線防護委員会(ICRP)の放射線評価に潜む詐欺性をより深く解き明かすことに成功され、作業を積み上げられています。
僕もその成果を学んでいるところですが、ポーランドから帰国後に、この点に全力を出して集中的に取り組み、さらにICRPや国際的な原子力村が放射線被曝の人体への影響を小さく見せてきたからくりを暴いていきたいと思います。
この点に関して11月19日夜に京都で矢ヶ崎さんに詳しく解説してもらう場を設けるつもりです。詳細が決まったら再びお知らせします。

ともあれみなさんに『内部被曝』を手に取っていただき、熟読していただきたいです。そのために今回は、ネット上にあげてくださったさまざまな『内部被曝』の紹介をご紹介しておきます。
他にも多数、参考文献にあげてくださった方がいますが、今回は何らかの形で紹介や書評が書かれているもののみに絞りました。紹介が載せられたブログ等の名前、当該ページのアドレス、記事名、執筆日時を記載しました。
他にもご紹介していただけているものがありながら把握できていないかもしれません。その時はごめんなさいです。ぜひお教え下さい。

なお『内部被曝』は岩波書店にご連絡いただけると一番確実に手に入ります。購入連絡先を示しておきます。
まだお持ちでない方は、この機会にぜひお求めください!

『内部被曝』購入先
岩波書店ブックオーダー係 電話049‐287‐5721 FAX049‐287‐5742
岩波書店ホームページ・ブックレット
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/

『内部被曝』著者からのメッセージ
https://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/index.html


以下、『内部被曝』の紹介を列挙しておきます!


放射線量測定室・多摩
http://kojukei.blog.fc2.com/

『内部被曝』矢ヶ崎・守田(岩波ブックレット)読書会のお知らせ

10月19日(日) 2~4時
 ベルブ永山(多摩市永山公民館) 3F 講座室

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コモンズ掲示板
http://8918.teacup.com/rev21/bbs/675

矢ヶ崎克馬・守田敏也対談『内部被曝』を読むの紹介
投稿日:2014年 5月14日(水)12時47分50秒

*****

読書メーター
http://book.akahoshitakuya.com/b/4002708322

Meg 2013年9月27日
ブックレットということでページ数は少ないが内容はとても濃かった。被爆量が少なくても放射線の種類などによっては甚大な被害を生むことがわかった。被災地でないから被爆してないという考えがなくなった。
たんぼ  2012年11月25日
やはりそうだったか!と言った印象。関東地方に住む人間は一読しておいた方が良い内容だと思う。原発がある限り、被曝し続けることが良くわかった。
もみのき 2012年7月29日
現実に起きていることに、もう無知ではすまされない。これからどうしていくのか、みんなで考え、答えを出していきたい。
かっぱ 2012年4月29日
薄い本だけれども、内部被爆が低く見積もられている背景など、しっかりと書かれている。日本政府だけでなく、世界の核戦略、原子力産業がからんでいることがわかる。「人命」よりも「政治・経済」を優先した結果の発表であったり、動きである。
広島・長崎の原爆投下の5年後、大きな核実験があった5年後、チェルノブイリ原発事故の5年後、小児癌の死亡率が上がっているという統計、また、免疫力が低い人ほど、放射性物質の影響を受け易いこと(つまり、老人などは大丈夫なように言われているが、何らかの疾患を抱えて免疫力が低下しているので、

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Amazon ブックレビューより
http://www.amazon.co.jp/%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88-%E7%9F%A2%E3%83%B6%E5%B4%8E-%E5%85%8B%E9%A6%AC/dp/4002708322/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1413639452&sr=1-3&keywords=%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D

3・11の前に「隠された内部被曝」を出された著者が、直後の現地福島に入られた。今こそ、日本中の人々が、この守田敏也さんとの対談から学ぶ時だ!とお薦めします。
未来を生きる子らの為に、いのちを守るために、今を生きる大人たちが「内部被曝」のことをもっと学ばねば!と、突き動かされた一冊です。
2013/9/12

*****

女性と女性の活動をつなぐポータルサイト
http://wan.or.jp/reading/?p=8884

セシウム暫定基準値と内部被ばくの正体はいかに
桜川ちはや
2013.1.20

*****

里山のフクロウ
http://minoma.moe-nifty.com/hope/2012/06/post-1373.html

矢ヶ崎克馬・守田敏也対談『内部被曝』を読む
2012年6月23日 (土)

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京都新聞梵語
http://www.kyoto-np.co.jp/info/bongo/20120528_2.html

内部被曝
2012年05月28日

*****

明日に向けて
http://toshikyoto.com/press/452

内部被ばく脅威知って
京のライター 物理学者と本出版
京都新聞 2012年5月10日朝刊

*****

鬼蜘蛛おばさんの疑問箱
http://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-b6b7.html

矢ヶ崎克馬・守田敏也著「内部被曝」を読んで
2012年4月12日 (木)

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ちきゅう座
http://chikyuza.net/archives/21687

矢ヶ崎克馬・守田敏也『内部被曝』是非購入、お読み下さ~い!
2012年 4月4日
諸留能興(モロトメヨシオキ):パレスチナに平和を京都の会

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脱原発の日ブログ
http://ameblo.jp/datsugenpatsu1208/entry-11201701990.html

京都・読書之森:岩波ブックレット「内部被曝」 /京都
毎日新聞掲載 太田裕之記者の記事を転載
2012-03-23

*****

シロツメクサの会
http://sirotsumekusa.sakura.ne.jp/xoops/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=33

内部被ばくに関する新書のご紹介②:矢ケ崎克馬・守田敏也著「内部被曝」岩波書店 2012年3月7日発売
2012年03月16日

*****

弁護士 中村和雄 オフィシャルブログ
http://neo-city.jp/blog/2012/03/post-126.html

岩波ブックレット「内部被爆」の絶賛お薦め
2012.03.06

 

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明日に向けて(724)岩波ブックレット『内部被曝』5刷が発売されました!

2013年08月09日 09時00分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!

守田です。(20130809 09:00)

みなさま。本日は長崎に原爆が投下されてから68年目の日です。長崎原爆で失われた命に追悼の意をささげたいと思います。同時に長きにわたって長崎原爆の影響で苦しまれてきたすべての方々にお見舞い申し上げます。
この長崎原爆投下から68年目の日に、矢ヶ崎克馬さんとの共著、岩波ブックレット『内部被曝』が、お陰様で5刷になったことをご報告したいと思います。8月1日より発売されています。今回から帯がなくなり、表紙にそのまま印刷されています。
自画自賛で恐縮ですが、私たちのブックレット、ぜひこの広島・長崎の痛みを思い起こす日々に読んでいただきたいです。なぜなら私たちはこの中で、内部被曝のメカニズムにとどまらず、それが隠されてきた歴史的背景に深く切り込むことに大きなウエイトを置いたからです。

この点をとくに展開したのは、第4章「なぜ内部被曝は小さく見積もられてきたのか」です。ここで僕の「内部被曝を小さく見積もることも、核戦略のなかでなされてきたということでしょうか」という問いに答えて矢ヶ崎さんは次のように述べています。
「そのとおりです。核戦略という場合、核兵器を製造し、実験し、配備することなどが考えられます。いわば、これは見えやすい核戦略です。
もう一つ重要なのは、核兵器の巨大な破壊力を誇示する反面、核兵器の残虐な殺戮性を隠すこと、とりわけ放射線の非人道的な長期にわたる被害を隠すことです。とくに、内部被曝の脅威をないものにしてしまうことに大きな力が割かれてきました。
ICRPが内部被曝を、無視した体系を作り上げてきたのも、核戦略の重要な一環です。それがいまの福島原発事故への政府の対応、すでに飛び出してしまった膨大な放射性物質への対処を大きく規定してしまっています。」(同書p43)

現在の福島原発事故をとらえるときに、誰もが直面するのが、飛び出してきた放射性物質の人体への危険性について、「専門家」の間であまりにかけ離れた見解が乱立していることです。
その場合、ICRPやIAEAなど、明らかに原子力の推進側に立った人々の安全論がまずは目を引きますが、一方でもともと原発に厳しい立場をとり、民衆の側に足をおいて活躍してきた方たちの中にも、低線量内部被曝の独自の危険性をとらえているとは言えない見解もあり、放射線の危険性を憂う人々の中の混乱の一因ともなっています。
こうした混乱を正すために必要なのは、「放射線と人間」の関係が、誰が、どのような資料に基づき、アウトラインを作り出したのかに遡って問題をとらえ返すことです。そうすると見えてくるのが、原爆を投下した当事者のアメリカが、被爆者調査のデータを独占し、「放射線の危険性」のアウトラインを作り出してきたという事実です。
内部被曝隠しは、軍事作戦としての原爆投下の延長としてあったのであり、まさに核戦略そのものとしてあり続けてきました。このもとに「放射線学」の教科書が作られてしまったことに、現在の低線量被曝の危険性の、徹底した過小評価の根拠があります。

しかしマスメディアの多くはこのことを無視し続けてきました。この点で、内部被曝問題の第一人者である肥田舜太郎さんは「私は311以降、何十回となくインタビューに応えてお話ししてきましたが、いつもこのアメリカとの関係だけ、抜かれてしまいます。ちゃんと書いてくれたのは岩波書店だけです」とおっしゃられました。
「岩波書店だけ」というのは、『世界』2011年7月号で、僕が肥田先生をインタビューをさせていただいた記事、「放射能との共存時代を前向きに生きる」のことです。再び自画自賛になってしまいますが、あえてこの点を強調せざるをえないのは、「放射線学」が純粋学問として成立しているとはとてもいえないからです。核戦略そのものとして、強烈な軍事的、政治的制約のもとで歪められてきました。
たくさんのヒバクシャに寄り添ってきた臨床医である肥田先生が、誰よりも早くこのことに気が付き、「放射線学」で言われていることと、ヒバクシャの体に起きていることはあまりに大きくかけ離れていると告発してきたのですが、それが医学会や、放射線学の領域で取り上げられることはありませんでした。
肥田先生は、独自にアメリカで内部被曝を解き明かしたスターングラス教授に学び、その本を自ら翻訳しながら、この状況の打開を図ってこられましたが、残念ながらこの点も、メディアも、「革新」団体の多くも、正しく受け止めることができませんでした。

その結果として、福島原発事故が起こり、膨大な放射能が飛び出していながら、専門機関や、「専門家」から、政府の安全宣言を批判し、人々の体を守ろうとするまっとうな見解はほとんど出てきませんでした。このため、避けられた多くの被爆までもが避けられませんでした。痛恨の極みです。
こうした歴史背景があればこそ、放射線防護の問題は大学研究機関をはじめとした「専門家」たちに任せておくことはできません。市民が心ある科学者と連携しつつ、積極的に科学を自らのもとに取り返し、歴史的側面と、自然科学的側面からの双方から問題を解き明かし、自分で自分の身を、未来世代の心身を、守っていく必要があるのです。
小著である『内部被曝』は、矢ヶ崎さんのお力の元、その扉を開けた著であると自負しています。それはまた市民的立ってものごとを見ている僕と、市民サイドに立つ科学者として思考している矢ヶ崎さんとの、市民と科学者の間での協力関係の作り方の可能性の一つを開く行為でもあったと自負しています。
これに力を貸してくださったのが、岩波書店で、このブックレットの編集をしてくださった坂本純子さんでした。第三の著者である彼女の尽力があってはじめて、矢ヶ崎さんと僕との紙上対話が成り立ちました。

もちろんそこで果たせなかったものも大変多くあります。僕自身は、内部被曝のメカニズム、とくに分子生物学的にとらえたそれをもっと深めなくてはならないし、放射線被ばくの間接効果やペトカウ効果などを、もっと考察していく必要性を感じています。
一方で、歴史・社会学的には、チェルノブイリ原発事故の被害がどのようなものであり、かついかに隠されてきたのかを明らかにしなければならないと思っています。
いやそれ以外にも、書き足さなければならないことはたくさんあります。少なくとも僕の見識はまだまだ浅いものでしかないことを、歩みを深めれば深めるだけ痛感するばかりで、本書を自画自賛するのに恥じ入る思いも強くあります。
しかし放射線防護からまだまだ歴史的視点が欠けていることを僕は痛感しています。それは私たちがアメリカのマインドコントロールを脱しきれていないことをも意味しています。そのために、この領域に携わるすべての方に、ぜひ今一度、広島・長崎に立ち返り、そこから現在までの「放射線学」の歩みを、己のうちで追体験的に再構成されることをお勧めしたいのです。

ぜひこの夏、すべてのヒバクシャがたどってきた苦難の道に思いを馳せつつ、本書を読んでいただけたらと思います。ともに真の放射線科学を確立し、そのことで未来の可能性を切り開いていきましょう。

なお、同書の購入先と、アマゾンブックレビューを張り付けておきます。ご参考になさってください。

『内部被曝』購入先
岩波書店販売部 電話03‐5210‐4111
岩波書店ブックオーダー係 電話049‐287‐5721 FAX049‐287‐5742
岩波書店ホームページ
http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/

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アマゾンブックレビューより(古い順に)

被曝を具体的な状況において考える必要の提起, 2012/3/13
モチヅキ (名古屋市)

本書は1943年生まれの物理学研究者に、1959年生まれのフリーライターが尋ねる形で、2012年に刊行した本である。本書によれば、第一に原子力の安全神話ゆえ、福島では放射線の防護用品や測定機器の準備がなく、災害弱者の犠牲や農地汚染の深刻化が生じた。
第二に、避難が最善の防護であるが、郷土愛の強い人は逃げないため、著者は「開き直って楽天的になり、危機を見据えて最大防護をしつつ、皆で支え合う大きな利己主義」を指針とした。
第三に、放射線は電離作用による分子切断と、その修復過程での異常再結合(遺伝子変成など)を引き起すが、三種類の放射線は透過性に違いがある。ただし、半減期と放射平衡によりどれが危険か一概には言えない。
第四に、外部被曝はほぼガンマ線によるが、内部被曝は全ての放射線に関わり、局所集中的に遺伝子変性を起こしやすい(50頁のグラフも参照)。また、間接効果、バイスタンダー効果、ペトカウ効果なども考慮されるべきである。
第五に、放射線リスク評価の国際的権威とされるICRPは、放射線被曝についての単純化(エネルギー量の大小のみ)と平均化、内部被曝の危険性の隠蔽を行い(医師の診断に悪影響を及ぼしている)、ECRRに批判された。また、ICRPの被曝限度値も実際には安全ではない。
第六に、ICRPの評価のもとになっているデータは広島・長崎の原爆のデータであるが、それは米国の核戦略の下で歪められており、多くの被爆者と認定されない被爆者を生みだした。
第七に、原発は潜在的な核開発施設として造られた。
第八に、東北住民の苦しみに寄り添う必要がある。また、自主避難支援、汚染ゼロ食品の保証、非汚染地域での食糧大増産、原発敷地内への汚染された瓦礫の収納(焼却禁止)、公費での健康診断と治療等の政策が必要である。
第九に、安価な放射線測定器は精度が高くないので注意すべきである。


「内部被曝」について最もコンパクトで分かり易い本, 2012/3/26
つくしん坊 (東京都)
 
東京電力福島第一原発事故後、便乗本も含めて、多くの放射線被曝に関する本が出版されてきた。しかし、内部被曝について、分かり易く、納得できるよう解説した本は非常に少なかったように感じる。
多くの本は、ICRP(国際放射線防護委員会)の規則をベースにしていた。本書は、ICRPの規則が健康に重大なリスクをもたらす「内部被曝」について十分考慮していない、非常に問題の多いものであることを前提に、内部被曝に関して最もコンパクトで分かり易い解説書である。

政府が金科玉条の如く引用するICRの規則がどのように作られてきたかを理解することは、その本質を知るために、重要である。
本書ではICRPの経緯もコンパクトにまとめられている。要するに、ICRPは、核兵器や原子力開発で排出される放射線・放射能の危険性を隠ぺいするため、内部被曝は最初から無視、あるいは軽微なものとして、科学的な根拠に反して、防護規則を作ってきた。このため、内部被曝を考えれば、年間1ミリシーベルトといえども、決して安全とは言えない。

福島県や近隣の県でいまだ放射能におびえている皆さんだけでなく、今後食品や、全国的なガレキ処理で二次汚染が心配される現在、長く続く放射能汚染時代を生き延びるために、多くの日本人が読む価値のある本といえる。


内部被曝についての格好の入門書, 2012/3/31
小津笛納

我が家にはまだ小さい二人の子どもがいるので内部被曝について正確な情報を知りたいと思っていたところ、守田敏也氏が近所の公民館で講演をされると知り、夫婦で聴きに行った。内部被曝の危険性についてとても分かりやすい話し方で啓蒙してくださり、会場で迷わず本書を購入した。
本書では、物理学者の矢ケ崎氏に守田氏がインタヴューする形で内部被曝についての基礎知識が提供されている。放射線とは何かという基本的なことに始まり、それが人体に悪影響を与えるメカニズム、内部被曝が一般に考えられているよりもはるかに危険であるということ(外部被曝の600倍!)、
原爆の残虐性の隠蔽を意図するアメリカやそれに追従する日本政府によって内部被曝の科学的研究が歪曲・抑圧されてきたこと、日本政府による安全キャンペーンを信じることの危険性、これから我々がとるべき対策、などについてコンパクトにまとめられている。
事実がイデオロギー抜きに説得的に説明されているだけに、フクシマ以後の我々がいかに恐ろしい状況におかれているかをよく分からせてくれると同時に、もはや賽は投げられてしまった以上、腹をくくって対処してゆかなければならないということを否応なく納得させてくれる良書である。
わずか70頁のブックレットでこれほど有益な情報をわかりやすく、かつ包括的に提供することに成功しているのは、インタヴュアーである守田氏の周到に準備された質問と、それに応える矢ケ崎氏の学問的誠実さの賜物であろう。3.11フクシマ以後に子育てをするすべての日本人と今後の日本の医療を担うすべての若者に本書を強く推薦する。


わかりやすく納得できる, 2012/4/11
KURIKEI

内部被曝の第一人者の矢ヶ崎さんとフリーライターの守田さんの対話形式になっており、わかりやすく読みやすいです。
ひとつひとつ、丁寧に背景や科学的根拠が示され、納得のいく内容です。71ページというブックレットの限られたページだからこそ、ぎっちりお二人の伝えたいことが詰まっていました。
事故が起きてしまった中でどう生きていくかという提言もあります。


わかりやすいです, 2012/9/25
ジムシー
 
これから、国民全員が関わっていくであろう、内部被曝。
福島だけの問題ではない現実と向き合っていくために、知っておくべき内容でした。
自分や家族を守るだけに留まらず、どのような声を上げてより良い社会を創っていくかなど、広い視点で書かれている、対談形式のわかりやすい本でした。


レビュー通りわかりやすかったです。, 2013/3/19
マルガリータ

数々のレビューにある通り、被曝のメカニズムや原子力発電所と国の関係、被曝限度量について、とてもコンパクトで鋭く深い説明が載っていました。
私は市民として考えなければならない問題はふたつあると思います。原子力発電所廃絶に向けての取り組みと、被曝した身体をどうするのか、ということです。
前者は単なる既得権益者だけでなく国防にも関係してくるため、世界的に展開しなければいけないし、後者は次世代のために個人がすぐにしなければならないことだと思います。


内部被ばくの恐ろしさが身に沁みてわかる本, 2013/7/28
☆☆☆

放射能の被爆について分かっているつもりでしたが、全く的外れな知識であったことが分かりました。内部被ばくがこうも恐ろしいものであることが、原発事故の前に周知されていれば、事故当時の対応が全く異なっていたであろうと思うと本を読んでいて悔しささえ覚えます。
安価な本ですが内容は「今の日本に一番必要な本」と思えます。通勤の途中でも簡単に読める本なので、是非読んでみてほしいと思います。私はカバーをかけずに広げて、誰かの目に留まってくれればと思い、常に携帯しています
 

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明日に向けて(565)岩波ブックレット『内部被曝』4刷が決まりました!

2012年10月18日 09時00分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!

守田です。(20121018 09:00)

3月に上梓した『内部被曝』、いまなお、多くの方が読んでくださっていて、最近、4刷が決まりました!とてもありがたいです。

同書には矢ヶさんが解明してきた内部被曝のメカニズムと脅威を、できるだけ分かりやすく書けたと思っていますが、同時に、広島・長崎原爆以降、アメリカ核戦略の最重要課題として、内部被曝隠しが行われきたことを後半で平易でありながら詳しく解説しました。
自画自賛ですが、非常にバランスが取れた著述になったと今でも思います。6月に放影研に、ドイツからのおふたりとともに訪問するなどして、ますますその思いを深めてきました。

これから私たちは長い期間、放射線被曝、とくに内部被曝の脅威と向かい合い続けて行かなければなりませんが、そのために必要な基礎的知恵をここに盛り込むことができたと自負しています。

ぜひみなさんに読んでいただきたいし、広めていただきたいと思っているのですが、そんな折り、僕から30冊を買ってくださった元東洋大学助教授の杉浦公昭先生が、首都圏での脱原発デモの現場で、同書を売り歩いてくださっていたという話を、東京の友人から聞きました。胸が熱くなりました。

僕はさらにこれに次ぐものを作っていきたいと思います。より研究を深め、より筆を磨いて、みなさんの手元に必要な知識を、わかりやすい形でお届けする努力を続けます。

同書の購入先を記しておきます。

『内部被曝』購入先
岩波書店販売部 電話03‐5210‐4111
岩波書店ブックオーダー係 電話049‐287‐5721 FAX049‐287‐5742
岩波書店ホームページ http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/

またいろいろな方が、ご自身のHPやブログで、同書を紹介してくださっていますが、そのうちのひとつの「里山のフクロウ」というブログを見つけました。きちんと内容を把握してくださっていてありがたいです。
感謝を込めて、同ブログの内容をここに転載させていただきます。

***********

矢ヶ崎克馬・守田敏也対談『内部被曝』を読む

里山のフクロウ
http://minoma.moe-nifty.com/hope/2012/06/post-1373.html

地元での「脱原発&放射能から子どもをまもる」活動の最初の集まりは、放射能の健康への影響を取り上げた映画『放射線内部被曝から子どもを守るために』(企画・制作:家庭栄養研究会・食べもの通信社・全国農村映画協会)の上映会と決まりました。
広島・長崎とチェルノブイリの教訓から、放射能の健康への影響を紹介するとともに、被曝を少しでも減らすための食生活の工夫や免疫力を高める食べ方・暮らし方を提案しています。
 
集会では、映画上映とともに、内部被ばくについての学習会も計画しました。そこで、この映画に出てくる原発・放射能・内部被ばくなどに関する専門用語を説明した、簡単なパンフレットを作ることにしました。このため早速、にわか勉強の開始。最初のテキストは、矢ヶ崎克馬・守田敏也対談『内部被曝』(岩波ブックレット、2012.3刊)。
矢ヶ崎克馬さんは長年、放射線内部被曝を研究してきた物理学者で、03年から原爆症認定集団訴訟で「内部被曝」について証言してきました。また、3・11以降は沖縄から福島に赴き、数多くの講演会で内部被曝の危険性を訴えてきました。

このブックレットから、「内部被曝のメカニズムとおそろしさ」について、要約します。すべて、同書からの引用です。

内部被曝のメカニズムを理解するためには、その前提となる「物質」について理解する必要がある、と矢ヶ崎さんは力説されます。最初のポイントは、「電離作用と分子切断」。 

つまり、放射能が飛んできて電子にあたると、放射能の持つエネルギーによって、電子を軌道から弾き出してしまう(電離作用)。そうすると電子と電子のペアが壊されて、結合が解け、分子が切断されてしまう(分子切断)。人間のすべての分子は何らかの生命活動をつかさどっているので、分子切断がおこると、生命活動に障害が生じる。
一方、生命体ゆえに、切断された分子を修復し、再び結合しょうとする。しかし、この再結合は、正常におこなわれる場合と異常な場合がある。この「分子切断」と「分子再結合」の相対立する作用、および「正常再結合」と「異常再結合」の相反する修復結果が、放射線被曝を理解するための鍵となります。

以上を踏まえて、放射線被曝による二つのタイプでの危険性が、指摘されます。
ひとつは、分子切断での破壊効果による危険性です。多くの放射線が身体に吸収されて、多量の分子切断が生じると、それぞれの生命機能がうまく働かなくなり、急性症状が出てくる。脱毛、下痢、出血、紫斑などの症状がで、分子切断が多量の場合、死にいたる。このことを、高線量被曝による急性症状といい、おもに外部被曝によってもたらされる。

第2のタイプの危険性は、異常再結合による危険性です。つまり、生命活動がまさって修復作業が進むものの、間違って結合してしまうケースです。
二重になっているDNAは、一本が切られても片方が残っていて、正常につなぎ直すことができる(正常再結合)。しかし、分子切断が密集して起こっている場合は二重らせんの両方とも切られてしまう。その場合は切断された切り口が周囲にあることによって、間違ったつなぎ直しをしてしまう可能性が高い。その結果、遺伝子が組みかえられて、遺伝子情報が誤って書き換えられてしまう(変成)。
変成は、放射性微粒子が体内に入ってしまう内部被曝で増大する。変成された遺伝子を持つ細胞が分裂をくり返したり、変成が数十回くり返されると、ガンにいたると考えられている。免疫力が低下し、さまざまな体調不良や病気、倦怠感につながるといわれている。
また、遺伝子の組み換えによって、不安定さが子孫に伝わる危険がある。
これらは、「晩発性の危機」といわれ、低線量被曝でも生じる内部被曝特有のものです。

分子切断の生じ方は、放射線の種類によって異なり、ダメージのあり方もかなり違います。まず、各放射線の特徴について。
アルファ線は、一番エネルギーが多く、重い粒子が飛ぶ。飛距離は、空気中で45㎜、体内で40μm(4/100 mm)。1本のアルファ線が飛び出してから全エネルギーを使い切って止まるまでに、約10万個の分子切断をおこなう。
ベータ線は、大きなエネルギーを持つ高速電子。空気中で1m、体内で1㎝ほどしか飛ばない。1本のベータ線は、2万5千個の分子切断をおこなって止まる。
ガンマ線は、大きなエネルギーを持つ電磁波。空気中で70m飛び、体内は突き抜ける。物質中の原子との相互作用は弱く、距離あたりの分子切断は、非常に少ない(ゆえに遠くまで飛ぶ)。

外部被曝の場合は、アルファ線とベータ線の飛距離がきわめて短いために、それらによって被曝することはほとんどない。外部被曝で人間に突き刺さるのは、ほぼガンマ線だけ。しかも、体に向かってくる一方向のガンマ線だけにあたる。
一方、内部被曝の場合は、3つの放射線を発する放射性微粒子を、呼吸や飲食で体内に入れてしまうので、すべての放射線に被曝することになる。そして、体内に入った放射線は、全方向に向かって飛ぶために、出てきた放射線すべてが、あたってしまう。
 
ガンマ線は、原子との相互作用が少ないために、「まばらな分子切断」をおこなうことになる。このため、放射線1本ごとに放射線の分子切断とDNAの再結合の成功率を比較すれば、ガンマ線は、正常再結合がなされて、DNAが修復される可能性が高い。
一方、アルファ線とベータ線は、体内で半径4/100㎜または10㎜という局所で「高密度な分子切断」をおこなう(矢ヶ崎さんは「ギシギシと分子切断をおこなう」と表現します)ため、二重らせんの同時切断も多くなり、一つのDNAにあたる放射線量も多くなるので、DNAが死滅したり、異常再結合に追い込まれる場合が多くなる。
以上のDNAの分子切断と再結合について模式化したのが、下の図です。

このように、内部被曝の方が、はるかにDNAが変成される確率は高く、人体に大きなダメージを与え、晩発性障害の危険性が大きい、と結論付けられました。

内部被曝についてのメカニズムとおそろしさについての主な記述は、以上の通りです。物理的知識に疎い私にとっては、比較的わかりよい解説で、基本的なことは押さえられたのではないか、と思います。

この本の後半は、放射線被曝とりわけ内部被曝についての日本政府の過小評価を国際的に支えてきた、ICRP 国際放射線防護委員会に対する批判が、展開されます。そして広島と長崎での被爆以降一貫して、内部被曝が小さく見積もられてきた背景に迫っています。
結論を先取りすれば、「ICRPが内部被曝を、無視した体系を作り上げてきたのも、核戦略の重要な一環」だったということです。日本の原発が、アメリカの核戦略のなかで展開してきたことを、ここでもあらためて確認することができます。原子力基本法に、安全保障の文言を入れた狙いも、原発が核戦力とは無縁でありえないことの、体制側の露骨な意思表示です。

「内部被曝」入門編として、このブックレットを読むことをおすすめします。

 

 

 

 

 

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明日に向けて(474)『内部被曝』を京都新聞が紹介してくださいました!

2012年05月29日 17時30分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!


守田です。(20120529 17:30)

先週土曜日に、富士吉田から仙台・福島を駆け抜けた旅を終えて、京都に
戻りました。非常にたくさんの人と出合い、たくさんの刺激を受けました。
取材内容も高密度で、どれから原稿化すればいいやら迷うところです。
しかし今は、少しお休みをいただいています。

この「明日に向けて」はたくさんの方の本当に暖かい手によって支えられて
います。それだけに一日でも執筆を休むのは気が引けるのですが、それでは
持続可能な活動が維持できない。また「腹をくくり、覚悟を固め、開き直り、
免疫力を最大にあげて、放射線の悪さとたたかう」という肥田さんから
教わったこの時代に必須の生き方を自分自身が実践できない。

なので、高密度な講演と取材の連続のあとは、意識的に体を休めることにし
ました。記事の発信が遅れますが、どうかご容赦ください。


さて今日は、京都新聞が、矢ヶ崎さんとの共著、『内部被曝』を二度にわた
って紹介してくださったので、みなさんとシェアしたいと思います。
一つは昨日28日の朝刊1面の「凡語」欄での掲載です。

「放射能の被ばくにどう立ち向かうか。そうしたテーマの市民学習会などの場で、
さざ波のように広がっている冊子がある▼岩波書店が今年3月に刊行した
ブックレット「内部被曝(ひばく)」(矢ケ克馬、守田敏也著)だ。
「怒りを胸に、楽天性を保って最大防護を」として専門家任せにせず市民が学び、
判断を下すことが大切だというメッセージを伝えている」

・・・との紹介ですが、嬉しくなる美文ですねえ。この文章に続いて、京都
で新たに立ち上がった市民放射能測定所のことにも触れられています。
『内部被曝』と市民測定室のセットでの紹介も嬉しいものです。凡語を書いて
くださった記者さんに感謝します。

また少し前になりますが、5月10日にも、朝刊で『内部被曝』について、とり
あげてきただけました。こちらは、京都新聞の若きホープ、後藤記者が書いて
くださいました。非常に丁寧に取材をしていただき、矢ヶ崎さんと僕が伝えん
とした趣旨を実に鮮やかに書いてくださっています。

残念ながらネットには掲載されなかったようですので、全文を書き写してここ
に転載させていただきます。後藤さん、素晴らしい記事を書いていただき、
ありがとうございました。

おかげさまで『内部被曝』は2刷りが販売になっています。さらに各地で読んで
いただけるといいなと思っています。みなさま、どうか宣伝など、ご協力ください。
岩波書店の担当の方のお話では、学習会の使用などでのまとめ買いの注文も多い
そうです。学習会に向いているとの評判ですので、どうかそのようにお使いいただ
けると嬉しいです。

以下、京都新聞「凡語」5月28日と、記事「内部被ばく脅威知って」5月10日を
ご紹介します。

************

凡語
京都新聞 2012年05月28日朝刊

放射能の被ばくにどう立ち向かうか。そうしたテーマの市民学習会などの場で、
さざ波のように広がっている冊子がある▼岩波書店が今年3月に刊行した
ブックレット「内部被曝(ひばく)」(矢ケ克馬、守田敏也著)だ。
「怒りを胸に、楽天性を保って最大防護を」として専門家任せにせず市民が学び、
判断を下すことが大切だというメッセージを伝えている

▼具体的に何ができるのか。食品の安全性に関して道筋を示す例が今月20日、
京都市伏見区のビル一室に生まれた。関西で初となる市民による放射能測定所
だ。府職員の奥森祥陽さん(53)=宇治市=ら20人がカンパなどで資金を
募り、安定した精度が期待できる機種を海外から購入した▼奥森さんは、震災
発生後に職員として福島県での支援活動に志願したことをきっかけに、
ボランティアとして京都へ避難した家族の支援を始めた▼「自分たちだけが
逃れて本当によかったの」。故郷を離れた母親たちの葛藤や汚染がさらに拡散
する懸念を知る。測定所はその延長線上に実現した。避難家族もいっしょに
お好み焼きなどを笑顔で囲み、開設を祝った▼「京都に学ぼう」と大阪や奈良
から同じことをめざす人も参加した。奥森さんたちは市民測定所が各地に広が
ることを願う。データが集積されると、「安全」と宣言する側の言葉が本当か
市民が見極めることにつながる。めざすのは「自分で判断し安全な道を選択で
きる社会」だ。
http://www.kyoto-np.co.jp/info/bongo/20120528_2.html

**************

明日に向かって 東日本大震災

内部被ばく脅威知って
京のライター 物理学者と本出版
京都新聞 2012年5月10日朝刊

 京都市左京区のフリーライター守田敏也さん(52)が、放射性物質を体内に
取り込むことの危険性をまとめた著書『内部被曝』を出版した。外部被ばくに
比べ、危険性が過小評価されてきた歴史背景に踏み込んでいる。

 物理学者で被ばく問題に詳しい矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授(67)への
インタビューを基にした共著。守田さんは福島第1原発事故直後から、政府が
繰り返す発表を「放射能は怖くないキャンペーン」と批判した。外部被ばくに
比べ危険性が高いとされる内部被ばくの脅威が伝えられていないことに危機感
を抱き、戦後の原爆症認定集団訴訟で内部被ばくの実態を証言してきた矢ヶ崎
さんを訪ねた。

 著書では内部被ばくの特徴として、放射性物質が体内のあらゆる所に運ばれ、
局所的に高密度で分子切断を起こすと説明。DNAが傷つき、がんや心臓病な
どさまざまな病気を引き起こす恐れがあるとした。

 米国が戦後に行った原爆の被爆者調査で、自ら進める核戦略のために内部被
ばくの事実を否定した、と指摘。放射線の非人道的な被害を隠し、日本政府も
黙認してきたと指弾した。

 守田さんは「放射性物質を体内に入れないことが最も大切だが、個人の努力
では不可能。大量生産、大量消費の在り方を見直し、社会全体で安全に生活で
きるシステムを考える必要がある」と話す。岩波書店発行の岩波ブックレット。
588円(税込み)。(後藤創平)
コメント (2)
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明日に向けて(459)『内部被曝』増刷決定です!鬼蜘蛛おばさんの書評をお読みください!

2012年04月27日 22時00分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!
守田です。(20120427 22:00)

矢ヶさんのお話を僕が聞くことで編んだ岩波ブックレット『内部被曝』
おかげさまで一刷がどんどん売れて、増刷していただけることが決まりま
した。嬉しいです!このご報告をしようと考えて、ネット検索していたら、
僕も前から時々拝読していた、鬼蜘蛛おばさんこと、松田まゆみさんの
ブログで、書評を書いてくださっていることを知りました。

松田さんは自然環境に関して大変、深く、豊かな知識をお持ちの方です。
彼女のツイッターの自己紹介には次のように書かれています。
「北海道十勝地方に在住で、クモや動植物、自然環境などに興味を持ち
自然保護運動に関わっています。原発はもちろん反対。自然に逆らわな
い生き方をモットーとしています。」

僕も原発事故が起きる年の前の2010年には、カシノナガキクイムシの移動
に伴う、ナラ類の集団枯損(ナラ枯れ被害)を食い止めようと、京都近郊
の山の中を走り回っていたこともあり、僕などにはおよびもつかない松田
さんの見識、また自然を見つめる暖かいまなざしに何度も共感しながら、
このブログを読んでいました。そうした松田さんのページに、矢ヶさん
と僕の本を取り上げてくださって、大変、光栄に思います。

恐らく、このページには、僕のように、いや僕よりももっと深く自然を愛
し、見つめてきた方々が訪問されているはずです。そしてそうしたみなさ
んが、もし『内部被曝』を手にとっていただければ、きっとすぐに、私た
ちが訴えようとしたことが届くはずだと確信しています。その意味で、こ
こに取り上げていただけたのは嬉しい限りです。

紹介していただいている文章でも、短い中に的確に内容のエッセンスが
きちんと盛り込まれています。最後の方に日本保健物理学会の考えと、
矢ヶさんのそれの対比が出てきていますが、ICRP的に準じた考えの
誤りが一目で見られるような、鮮やかな比較をしてくださっています。

矢ヶさんとも話しているのですが、今後、私たちの国でますますあらゆ
る食材の放射線計測が重要になってくる。肝心なのはでてきた数値をいか
に評価するかです。これはすべての市民放射能測定所にも問われてきてい
ることです。『内部被曝』は、ぜひそうした場で読んでいただきたいと
思います。また矢ヶさんと僕とで、さらに現場の測定や、健康診断で
出てくる数値に即した判断の仕方、数値の読み方を分かりやすく解き明か
し、ICRPに依拠した政府に騙されない民衆的判断のよりどころを
作り出していきたいとも思っています。

ともあれみなさま。鬼蜘蛛おばさんの疑問箱をお読みください!

***************

鬼蜘蛛おばさんの疑問箱Part.2
2012年4月12日 (木)

矢ヶ崎克馬・守田敏也著「内部被曝」を読んで
http://onigumo.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/post-b6b7.html?cid=89922387#comment-89922387

 先日3日ほど東京に行ってきた。最近は本を買うこともあまりなくなっ
たのだが、都心を通ったついでに気になっていた本を2冊購入した。一冊
は矢ヶ崎克馬・守田敏也著「内部被曝」(岩波ブックレット)だ。今日は
この本について紹介したい。

 本書では守田敏也さんの質問に矢ヶ崎克馬さんが答える形で内部被ばく
についての解説がなされている。5つの章からなり、各章のタイトルは以下。

第1章 被曝直後の福島を訪れて
第2章 内部被曝のメカニズム
第3章 誰が放射線のリスクを決めてきたのか
第4章 なぜ内部被曝は小さく見積もられてきたのか
第5章 放射線被曝に、どのように立ち向かうのか

 これらの解説の中から、重要と思われる点についていくつか紹介して
おきたい。

急性症状と晩発性障害
 放射線被ばくによる症状には急性症状と晩発性障害がある。
 たくさんの放射線が身体に吸収されて、多量な分子切断が生じるとそれぞ
れの生命機能がうまく働かなくなることで脱毛、下痢、出血、紫斑などの
急性症状が出る。分子切断が多量の場合は死にいたる。
 もう一つの晩発性障害は、分子切断が密集して起こり、それを修復する際
に間違ったつなぎ直しをすることで遺伝子が組み換えられてしまうことによっ
て生じる。これは内部被曝で増大し、がんや様々な病気、体調不良を起こす。

内部被曝の恐ろしさ
 原発事故で発生する放射線はアルファ線、ベータ線、ガンマ線で、それぞれ
性質が違う。アルファ線は重い粒子で最もエネルギーが多く、大気中では
45ミリメートル程度、体内では40マイクロメートル程度しか飛ばない。ベータ
線は高速電子で、空気中では1メートル程度、体内では1センチメートル程しか
飛ばない。ガンマ線は電磁波で、空気中では70メートルほど飛び、人体の体を
突き抜けるが、分子切断は少ない。
 外部被曝はほぼガンマ線のみであるが、内部被曝の場合は体の中で発射され
る全放射線に被曝するため、外部被曝よりはるかに多くの被曝をすることにな
る。これが内部被曝の恐ろしさである。
 アルファ線は細胞の中で100分の4ミリメートル飛ぶ間に10万回の分子切断を
し、ベータ線では10ミリメートルの間に2万5千回の分子切断をする。アルファ
線の方が高密度に分子切断をするのだが、放射性原子の半減期を考えると必ず
しもベータ線よりアルファ線の方が危険とは言えない。また内部被曝では生物
的半減期も考えなくてはならないので、放射性原子の種類によって被曝の具体
性が違ってくる。被曝を考える際には内部被曝について理解しなければならない。

ICRPの問題点
 内部被曝の影響を過小評価してきたのがICRP(国際放射線防御委員会)であ
る。ICRPは「経済的・社会的要因」を考慮しているが、それは即ち核戦争や
原子力産業の都合のことを意味している。つまり人の命を守ることを考えてい
るのではなく、政治的な判断をしているということ。
 ICRPの評価を批判しているのがECRR(ヨーロッパ放射線リスク委員会)であ
る。矢ヶ崎氏は「外部被曝と内部被曝を比較するならば、数百倍の危険性を
見積もるべきだ」としてECRRの見解を支持している。
ICRPの評価の元となっているデータは広島・長崎で集められたものとされてい
るが、そこでは内部被曝による犠牲者を徹底的に隠してしまった。核戦略を進め
るためには核兵器による放射線の長期の被害を隠さなければならなかったという
ことである。また、核兵器以外で濃縮ウランを使う道が原発であった。原発と
核兵器は表裏一体のものということだ。

放射能とどのように向き合うか
 矢ヶ崎氏の提言は、「悲観して恐怖のうちに汚染を待つのではなく、怒りを胸
にしっかり収めて、開き直って、楽天的に、知恵を出し、最大防護を尽くしつつ、
やるべきことはすべてやる」ということだ。避難、内部被曝を避ける努力、
リスクの総量を減らし免疫力を上げる努力などだ。カルシウムをたっぷり摂るこ
とでストロンチウムの骨への吸収を減らすなどという例もあげている。

 薄い本ですぐに読めるので、詳しく知りたい方はぜひ本書をお読みいただきたい。

 なお、福島から遠く離れている関東地方などでは被曝によって鼻血や下痢と
いった症状が出ることはないと主張している方がいる。たとえば、大阪大学の
菊池誠氏だ。

 菊池氏は日本保健物理学会の見解を根拠に、関東地方などで鼻血や下痢の症状
が出ることはないと断言している。以下がその日本保健物理学会の見解。

 0.07μSvという空間線量率が継続したとして、これを年間の被ばく線量に換算
 しますと0.6mSv/yとなります。この値は直ちに健康に影響を与えるものではあ
 りません。また自然放射線による年間被ばく量の世界平均は2.4mSv/yです。
 日本平均では1.5mSv/y、またブラジル等では10mSv/yを超える地域もあります。
 また、飛行機に乗るなど高度が上昇すると、宇宙線と呼ばれる宇宙から降り注
ぐ放射線によって被ばくしますが、例えば東京-NY間を飛行機で往復する間に
0.1mSv被ばくすると言われています (参考:放医研HP 放射線影響早見図 
http://www.nirs.go.jp/data/pdf/hayamizu/j/0407-hi.pdf )。このような自
然放射線が鼻血などの原因とは考えられていません。
放射線被ばくによる紅斑(毛細血管拡張)が発症するのは、1回に受ける放射線
量が3~6Gy(GyはSvと同じと考えてください。)のときと言われています。
また、放射線影響研究所のHPに記載があるように、原爆被爆者の皮下出血と
いった急性放射線症についても同程度の線量で、被ばく後数日から数週間にお
けて起こったということです。これらのことから、0.6mSv/yという僅かな被ばく
量の増加で、子どもの鼻血が増加するということはないと思います。
http://radi-info.com/q-1243/より引用)

 これに関して矢ヶ崎氏は以下のように説明している。

 体内にとりこまれた放射性微粒子が鼻の粘膜にくっついてしまえば、鼻の粘膜が
集中して被曝します。この場合、外的に見て傷はないのに多量の出血をもたらす。
目では認められにくい小さな傷がいっぱい作られているのです。同様に下痢や
血便なども、ベータ線などの局所的に集中した被曝を想定すると、放射線を原因
と考えうる根拠が明らかに存在します。
もし外部被曝だけで同じ症状を出させるには、そうとう大量のガンマ線照射をし
なければなりません。なぜならば、外部からまばらにしか分子切断をしないガン
マ線の照射では、鼻の粘膜や小腸の壁に分子切断をする確率が非常に少ないので、
多量のガンマ線を照射することが必要になります。
これに対して内部被曝では、局所的に実効線量が高くなる被曝がおこなわれるの
です。
 医師の方には、内部被曝による影響のいろいろなあらわれ方を、頭ごなしに否定
することを、命を守る医師の使命にかけて、ぜひおこなわないでいただきたいの
です。

 日本保健物理学会は外部被曝しか問題にしていないことがよく分かる。原発を推
進してきた団体の調査結果を引用するなど、御用学会といってもいいだろう。菊池
誠さんをはじめとする「ニセ科学批判」の方たちは、矢ヶ崎氏の見解をどう思って
いるのだろうか。

**********

『内部被曝』購入先
岩波書店販売部 電話03‐5210‐4111
岩波書店ブックオーダー係 電話049‐287‐5721 FAX049‐287‐5742
岩波書店ホームページ http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/

またアマゾンの以下のページからも購入できます。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D&rh=n%3A465392%2Ck%3A%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D&ajr=0
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明日に向けて(449)岩波ブックレット『内部被曝』を紹介していただきました!

2012年04月12日 15時30分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!
守田です。(20120412 15:30)

「パレスチナに平和を京都の会」の諸留能興(モロトメヨシオキ)さんが、
ご自身のブログやMLで、私たちの著書のことをご紹介してくださいました。
非常に丁寧に読んでくださり、私たちの訴えたかったこと、伝えたかった
ことを端的にまとめてくださっています。またご希望の方に、送料無料で
販売していただけるとまでおっしゃってくださっています。

諸留さんに心から感謝しつつ、ここにご紹介したいと思います。

***********

矢ヶ崎克馬・守田敏也『内部被曝』是非購入、お読み下さ~い!
2012年 4月 4日
<諸留能興(モロトメヨシオキ):パレスチナに平和を京都の会>
http://chikyuza.net/n/archives/21687


矢ヶ崎克馬(やがさき・かつま)・守田敏也(もりた・としや)共著
『内部被曝』 [71頁]
岩波ブックレットNo.832
定価560円+税
2012[平成24]年3月6日 第一刷発行
ISBN 978-4-00-270832-4 C0336 \560E

 を紹介、お奨めします。
全71頁の、薄くて、小型のポータブルな好著です。
まだ読んでない方は是非、御購入、御一読下さい。

 原子炉や放射能に関する専門的知識の無い方のために、
矢ヶ崎・守田両氏の対話形式で、
大変解りやすい文章で書かれているのも有り難い。

 内容的にも、とても簡潔なだけでなく、
何が問題なのかを、全体を見渡す広い視野から、
的確に指摘しています。
一般市民待望の好著です。

 政府や自治体や専門家が盛んに宣伝している
「この放射能は○○値以下なので安全です」の説明が、
いかに、「国民市民を欺くもの」、
科学的根拠に基づかない「欺瞞的安全神話」でしかないかが、
手に取るように解ります。

 お値段も560円+税と手頃な価格です。
喫茶店のコーヒー2杯分を我慢するだけで、
これだけ豊かで正確な知識が得られま~す (*^o^*)

 福島第一原発事故以降、
放射能や原子力・原子力発電に関する多くの本が出版されています。
しかし、そのほとんどは、細かな専門分野に入り込んだものが多く、
一般市民が、気軽に読めるようなものは(チラシ類以外は)、
ほとんどありませんでした。

 私(諸留)も、こうした状況を嘆かわしいなぁ・・と思っていました。
一般市民向けの解りやすい解説書出版の必要性を、
痛感してましたので、とても嬉しく思ってます。

 「放射能や原子力など、難しいことは専門家に任せておけばいい」といった、
専門家任せの風潮が、今回の全日本列島放射能汚染の悲劇を招きました。
専門家丸投げの神話盲信の過ちを二度と犯さないためにも、
是非、皆様の御一読をお奨めします。

★★購入ご希望の方に★★
 お近くの書店でお買い求め頂けない方は、
私(諸留)まで御連絡下されば
送料無料でお手元まで郵送でお届け致します。


———-以下、簡単な内容紹介—————

○著者紹介氏:
 矢ヶ崎克馬
 1943年生まれ。沖縄県在住。
広島大学大学院理学研究科博士課程単位取得満期退学。
理学博士。専攻は物理。
琉球大学理学部教授。理学部長などを経て、2009年3月、定年退職。
琉球大学名誉教授。2003年より、原爆症認定集団訴訟で「内部被曝」について証言をする。
東日本大震災以後は、福島ほか、全国各地で講演をしている。
 著書に『隠された被曝』(新日本出版社)、『力学入門(6版)』(裳華房)などがある。


 守田敏也氏:
 1959年生まれ。京都市在住。
同志社大学社会的共通資本研究センター客員フェローなどを経て、
現在フリーライターとして取材活動を続け、社会的共通資本に関する研究を進めている。
ナラ枯れ問題に深く関わり、京都の大文字などで害虫防除も実施。
東日本大震災以後は、広くネットで情報を発信し、関西をはじめ被災地でも講演を
続けている。
また、京都OHANAプロジェクトのメンバーとして、
被災地に中古の自転車を整備して届ける活動をおこなっている。


○目次:
第1章 被曝直後の福島を訪れて
第2章 内部被曝のメカニズムと恐ろしさ
第3章 誰が放射線のリスクを決めてきたのか
第4章 なぜ内部被曝は小さく見積もられてきたのか
第5章 放射線被曝に、どのように立ち向かうのか

○本書で一番大切な点:
 原発再稼働の是非、放射能汚染した震災地瓦礫焼却の全国自治体受け入れの是非、
食品安全基準値の是非‥‥など、
今、日本国内では、論争・混乱・対立が、渦巻いています。

 混乱とゴマカシ、欺瞞的な見せかけの安全神話の横行‥‥の、
その「根っこ」には、「内部被曝が過小評価されてきた」という歴史的事実の見逃し、
見落としがあったことを、この著書も明確に指摘し、再確認しています。

「放射線の問題をつきつめていくと、必ず突き当たるのが原爆の問題なのです」
「内部被曝を小さく見積もることも、アメリカ(とそれに従属してきた我が国)の核戦略の
なかでなされたきたということです」
「国際放射線防護委員会(ICRP)が内部被曝を、無視した体系を作り上げてきたのも、
核戦略の重要な一環です。それがいまの福島原発事故への政府(や自治体)の対応、すでに
飛び出してしまった膨大な放射性物質への対処をも大きく規定しています。」(同書43頁)

「国際放射線防護委員会(ICRP)の<1958年勧告>に、放射線のリスクは『原子力の実際上
の応用を拡大することから生じると思われる利益を考えると、容認され正当化されてよい』
という文言が盛り込まれ、これが<1990年勧告><経済的・社会的要因を考慮して合理的
に達成できる限り、放射能を防護する>とみとめられるにいたったのだと思います。」
(同書48頁)

 核兵器開発と経済発展という、
2本柱の目標が最優先される限りでの【放射能防護基準】‥‥(というよりも)【放射能
我慢強制値基準】‥‥これが、現在の我が国の政府、自治体の言う、
放射能安全値の実態なのです。

皆様、一人一人の、真の科学的思考が、いま、問われています。

「放射能に安全値はあるのか?」
「私たちの幸せとは何なのか?」
「高濃度放射能汚染の日本列島で今後長期間生活することになった、
私たち日本人一人一人が、今後、どうやって生きていべきか?」 ‥‥など、
 この好著によって、皆様お一人、お一人が、自分自身のアタマでしっかり考え、
目先だけの損得にとらわれない、数百年・数千年後の、子々孫々の幸せまで見通した、
確かな選択をして欲しいと、切に願ってます。


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明日に向けて(441)書評・岩波ブックレット『内部被曝』(アマゾンより)

2012年04月01日 08時30分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!
守田です。(20120401 08:30)

本年3月6日に発売した岩波ブックレット『内部被曝』は、おかげさまで
好調な売れ行きを示してくれています。各地の集会などで取り寄せて売っ
てくださった方もいます。ご購入をいただいたみなさまに感謝します。

今、全国が政府によるがれき受け入れ強制で揺れていますが、その背景に
あるものこそ、内部被曝の驚異が今なお隠されていることです。内部被曝
が外部被曝と同じように極めて影響が小さく評価されており、そのもとで、
「微量」な放射能など撒いても大丈夫だというまったく誤った見解が流布
され、これに利権が絡むなかで、自治体の首長の中に、丸め込められてし
まう人々が出ています。

これらを覆すために、すでに多くの方々が行動されていますが、岩波ブッ
クレット『内部被曝』はそうした方々の活動をサポートする格好のアイテ
ムになると確信しています。類書にはまったく書かれてない内容を盛り込
んでありますので、どうかお手に取って欲しいと思います。

なお本書に関するブックレビューがアマゾンのサイトに投稿されました。
そのどれもが私と矢ヶさんの思いを、きちんと汲み取って書いてくだ
さっている素晴らしい書評だと思いましたので、ここに紹介したいと思い
ます。

なお3つ目のものは、オルトヴィン・ヘンスラーの『アジールーその歴史と
諸形態』を翻訳された若手の研究者、舟木徹男さんが、FACEBOOKに投稿さ
れたオリジナルです。

レビューの載ったアマゾンの当該ページを記しておきます。
http://www.amazon.co.jp/%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88-%E7%9F%A2%E3%83%B6%EF%A8%91-%E5%85%8B%E9%A6%AC/dp/4002708322/ref=sr_1_3?s=books&ie=UTF8&qid=1333235497&sr=1-3

*****

被曝を具体的な状況において考える必要の提起, 2012/3/13
by モチヅキ

本書は1943年生まれの物理学研究者に、1959年生まれのフリーライターが
尋ねる形で、2012年に刊行した本である。本書によれば、第一に原子力の
安全神話ゆえ、福島では放射線の防護用品や測定機器の準備がなく、災害
弱者の犠牲や農地汚染の深刻化が生じた。

第二に、避難が最善の防護であるが、郷土愛の強い人は逃げないため、著
者は「開き直って楽天的になり、危機を見据えて最大防護をしつつ、皆で
支え合う大きな利己主義」を指針とした。

第三に、放射線は電離作用による分子切断と、その修復過程での異常再結合
(遺伝子変成など)を引き起すが、三種類の放射線は透過性に違いがある。
ただし、半減期と放射平衡によりどれが危険か一概には言えない。

第四に、外部被曝はほぼガンマ線によるが、内部被曝は全ての放射線に関わ
り、局所集中的に遺伝子変性を起こしやすい(50頁のグラフも参照)。また、
間接効果、バイスタンダー効果、ペトカウ効果なども考慮されるべきである。

第五に、放射線リスク評価の国際的権威とされるICRPは、放射線被曝につい
ての単純化(エネルギー量の大小のみ)と平均化、内部被曝の危険性の隠蔽
を行い(医師の診断に悪影響を及ぼしている)、ECRRに批判された。また、
ICRPの被曝限度値も実際には安全ではない。

第六に、ICRPの評価のもとになっているデータは広島・長崎の原爆のデータ
であるが、それは米国の核戦略の下で歪められており、多くの被爆者と認定
されない被爆者を生みだした。

第七に、原発は潜在的な核開発施設として造られた。

第八に、東北住民の苦しみに寄り添う必要がある。また、自主避難支援、汚
染ゼロ食品の保証、非汚染地域での食糧大増産、原発敷地内への汚染された
瓦礫の収納(焼却禁止)、公費での健康診断と治療等の政策が必要である。

第九に、安価な放射線測定器は精度が高くないので注意すべきである。

*****

「内部被曝」について最もコンパクトで分かり易い本, 2012/3/26
by つくしん坊

東京電力福島第一原発事故後、便乗本も含めて、多くの放射線被曝に関する
本が出版されてきた。しかし、内部被曝について、分かり易く、納得できる
よう解説した本は非常に少なかったように感じる。多くの本は、ICRP(国際
放射線防護委員会)の規則をベースにしていた。本書は、ICRPの規則が健康
に重大なリスクをもたらす「内部被曝」について十分考慮していない、非常
に問題の多いものであることを前提に、内部被曝に関して最もコンパクトで
分かり易い解説書である。

政府が金科玉条の如く引用するICRの規則がどのように作られてきたかを理解
することは、その本質を知るために、重要である。本書ではICRPの経緯もコン
パクトにまとめられている。要するに、ICRPは、核兵器や原子力開発で排出
される放射線・放射能の危険性を隠ぺいするため、内部被曝は最初から無視、
あるいは軽微なものとして、科学的な根拠に反して、防護規則を作ってきた。
このため、内部被曝を考えれば、年間1ミリシーベルトといえども、決して
安全とは言えない。

福島県や近隣の県でいまだ放射能におびえている皆さんだけでなく、今後食品
や、全国的なガレキ処理で二次汚染が心配される現在、長く続く放射能汚染
時代を生き延びるために、多くの日本人が読む価値のある本といえる。

*****

『内部被曝』(矢ケ崎克馬・守田敏也 著/岩波ブックレット)の​感想
by 舟木徹男

我が家にはまだ小さい二人の子どもがいるので内部被曝について​正確な情報を
知りたいと思っていたところ、ひょんなことでお近づ​きにならせていただいた
守田敏也氏が近所の公民館で講演をされる​と知り、夫婦で聴きに行った。内部
被曝の危険性についてとても分​かりやすい話し方で啓蒙してくださり、会場で
迷わず本書を購入し​た。

本書では、物理学者の矢ケ崎氏に守田氏がインタヴューする形で​内部被曝につ
いての基礎知識が提供されている。放射線とは何かと​いう基本的なことに始ま
り、それが人体に悪影響を与えるメカニズ​ム、内部被曝が一般に考えられてい
るよりもはるかに危険であると​いうこと(外部被曝の600倍!)、それにも
かかわらず原爆の残​虐性の隠蔽を意図するアメリカやそれに追従する日本政府
によって​内部被曝の科学的研究が歪曲・抑圧されてきた事実、日本政府によ​る
安全キャンペーンを信じることの危険性、これから我々がとるべき対策​、など
についてコンパクトにまとめられている。隠されてきた事実​がイデオロギー抜
きに説得的に説明されているだけに、フクシマ以​後の我々がいかに恐ろしい状
況におかれているかをよく分からせて​くれると同時に、もはや賽は投げられて
しまった以上、腹をくくっ​て対処してゆかなければならないということを否応
なく納得させて​くれる良書である。

わずか70頁のブックレットでこれほど有益な情報をわかりやす​く、かつ包括的
に提供することに成功しているのは、インタヴュア​ーである守田氏の周到に
準備された質問と、それに応える矢ケ崎氏​の学問的誠実さの賜物であろう。
3.11フクシマ以後に子育てを​するすべての日本人と今後の日本の医療を担う
すべての若者に本書​を強く推薦する。
http://www.facebook.com/profile.php?id=100002571007136#!/profile.php?id=100002571007136
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明日に向けて(434)岩波ブックレット『内部被曝』出版に際してお話します。(3月27日)

2012年03月23日 20時30分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!
守田です。(20120323 20:30)

放射能から子どもたちを守る・京都・ママ・パパの会が、3月6日に上梓した
岩波ブックレット『内部被曝』の出版記念講演とパーティーを開いてくださ
ることになりました。残念ながらこの本の主役の矢ヶさんは遠方であるた
めお呼びできないとのことですが、僕にこうした機会を与えてくださること
はとてもありがたいです。

照れる気持ちもあって、「明日に向けて」への案内の掲載は見合わせようと
も思っていたのですが、がれきの問題の緊迫化の中で気持ちが変わりました。
今こそ、内部被曝の驚異をより広く、多くの人に知ってもらわなければなら
ず、そのためにこの日のお話も活用させていただこうと思います。そして
参加された方と一緒に、内部被曝の恐ろしい驚異と立ち向かっていく決意を
作り出せたらと思っています。


昨年の原発大災害以降の流れを概括してみたいと思います。当初、政府は
原発事故は大したことないと強調し、非常に限られた避難の指示しかだしま
せんでした。しかしこれを突き破って実に多くの方たちが自主避難しました。
そして避難した先々で、その地域の脱原発運動と出会い、各地でデモがおき
ました。

この大きなうねりに押される形で、定期点検に入った原発のほとんどが再稼
働できず、原発は次々に停まっていきました。そうして原発をすべてとめて
も実は電気が十分に足りていること、さらに言えば、努力すればもっともっ
と電気を節約することができるうえに、節電で暗くなった夜の町も悪くない
こと、いや夜は暗い方がいいという当たり前のことまでが見えてきました。

原発はあまりにも危険だ、そして原発がなくても十分に生活は成り立つ、そ
のことに国民・住民が目覚めてしまった。これは非常に大きなことです。も
ちろんそれでも福井の原発を再稼働させようとする動きがあるなど、けして
油断をしてはなりませんが、少なくとも原発が非常に危険なものであること
自身は、もはや否定しようのないものになったと言えます。


これに対し、膨大な放射能漏れを起こした東電と政府は、もうひとつの大嘘
作りにやっきになってきました。僕の指摘するところの「放射能は怖くない
キャンペーン」です。がれき問題の背後にもこれが大きく動いています。
「微量の放射能など問題ではない」「ガレキを燃やしても、99・5%は
フィルターで取れる(0・5%だったら大丈夫)」と、こうした理屈が繰り
出されているからです。

実際には「バグフィルターで99・5%は取れる」というのも、まったくの
嘘ですが、こうした政府のキャンペーンをいまだ可能にしている根拠こそ、
内部被曝の驚異が隠されてきたこと、さらに言えば、今なお隠されており、
多くの国民・住民がこれに気づいていないことに大きな根拠を持っていると
思います。

なぜ政府は、「放射能は怖くないキャンペーン」にやっきになってきている
るのでしょうか。そのために内部被曝の驚異を隠し続けているのでしょうか。
一つに、実体が明らかになれば、政府や東電の罪の深さが鮮明になり、刑事
罰を受けることが確実になるからです。第二に広範囲にわたる避難を政府が
音頭をとって進めなければならず、賠償問題と含めて、大変な予算がかかっ
てしまうからです。三つにこれらにより、原子力政策が実は金銭的なものを
含めて、膨大なリスクを背負っていることが明らかになることで、その命脈
が完全に断たれてしまうからです。

さらにこのことは、原子力政策の後ろに控えている核戦略が、人々の利益か
ら恐ろしくかけ離れており、人類を滅ぼしかねないものであることを前面に
押し出すことをも意味します。そのために核戦略を推進してきた大きな国際
勢力が、そろって、「放射能は怖くないキャンペーン」を後押ししています。
現在の「がれき受け入れ強制キャンペーン」も、こうした大きな世界的流れ
の中にあることをみておくことが大切です。


そして肝心なことですが、この「放射能は怖くないキャンペーン」は、脱原
発運動の中にまで入り込んできている問題でもあります。なぜなら内部被曝
を隠してきたのは、アメリカを中心とする核戦略推進勢力であり、その見解
が、国際放射線防護委員会(ICRP)の「勧告」としてまとめられてきている
わけですが、それが放射線学の教科書になってしまっているために、大学な
どで放射線の問題を習ってきた多くの人々が、知らず知らず、ICRP的な発想
の中に入り込んでしまっているからです。

そのため「微量な放射能」は危険ではないという原子力推進派が繰り返す宣
伝に今ひとつ太刀打ちできなくなっている。その間隙を付く形で、「がれき
を燃やしても微量な放射能しか出ないから大丈夫」というキャンペーンがお
しだされ、「安全なのに、どうして受け入れないのだ、東北を見殺しにする
のか」という主張が繰り返されている。

そしてICRPの考え方の枠組みで、「確かに、微量なら大丈夫だ」と考える人々
や「革新政党」の中から、「だったらがれきを受け入れてもいいのでは」と、
考えをかえさせられている現実があります。これらの人々は、ICRP的な、放射
能の驚異の過小評価の上に立っているために、「東北を見殺しにするのか」と
いうキャッチに負けてしまうのです。

本来、長年にわたって、東北を差別的に扱ってきたのが日本政府であり、産業
界であって、だから東京の電力のために福島に原発が建てられ、その原発が東
北電力の電気で動いているというどうともならない構造が作られてきたので
あって、そんなことをしてきたうえに、東北の人々を放射能漏れの恐怖の中に
引きずり込んだ政府にそんなことを言われる筋合いはないのですが、しかし、
「優しい」私たちの国の人々はこうした理屈にとても弱い。

であるとするならば、私たちがなさねばならないのは、内部被曝の危険性を
もっときちんと学び、そのメカニズムや、それが隠されてきた歴史を、周知徹
底し、この分野でも政府に騙されないための知識を積み上げ、核兵器や原発の
廃絶に向けた強い決意を作り出していくことにこそあると僕は思います。


岩波ブックレット『内部被曝』を上梓したのは、まさにそのためです。この
内容をできるだけ多くのみなさんに共有していただくことにこそ、僕は今後、
さらにさまざまな形でなされてくる可能性のある「被曝の強制」から身を守
り、その流れを押し返していく重要なキーになると確信しています。

3月27日の記念講演では、主にこうした観点を主軸しつつ、与えられた演題に
ついてのお話をしたいと思います。できるだけ質疑応答に時間をさき、みな
さんと一緒に考えを深められたらと思います。予約で25名までと少ないキャパ
ですが、どうかお近くの方、ご参加ください。この日を内部被曝の驚異から
子どもたちを、そして私たち自身を守っていく新たな出発点としたいと思い
ます。

企画の案内を貼り付けておきます。
『内部被曝』の購入先のリンクも示しておきます。

***************

皆様、こんにちわ。
いつもありがとうございます

ママパパ事務局です。

内部被曝の権威・矢ヶ崎先生と共著「内部被曝」を出版された
守田敏也さんをお招きし、気軽な講演会とランチパーティーを
企画しました。

ご講演は、出版秘話に始まり、
☆内部被曝と食の安全
☆4号機の危険性
☆今後の日本をどう生きるか
☆質疑応答時間、たっぷり

そのような講演内容になる予定です。是非お誘い併せの上、お越し下さい。

おいしくヘルシーなボリュームたっぷりのランチは
内部被曝にも配慮された厳選された素材を使用

完全菜食なメニューですが、本当に味がしっかりしていて、お肉が好きな方々も、
ご満足していただけるとにかく美味しいレストランです。
講演会とセットで、格安価格でお店をお借りします。
守田さんの講演会とランチがセットになった企画です。

*矢ケ崎先生は、遠方なのでお招きしておりません。*

守田さんのサイン会、なども、勝手に企画しちゃいます。


是非、みなさん、お誘いあわせの上、お越し下さい。
3日前までに要予約でお願い致します。
定員25名です。

日時:2012年3月27日(火)
お話会10:30~ パーティー12:00~
料金:¥1700 (パーティランチ ¥1200込みの特別料金です。)
場所:(京阪 藤森駅 徒歩5分)
VEGANS CAFE AND RESTAURANT
http://vegan.japanteam.net/special.htm  

京都市伏見区深草西浦町4丁目88
TEL: 643?3922(コチラはカフェの電話です。)

*問い合わせ・ご予約はメールでお願いします。(2日以内に返信が無い場合は、
恐れ入りますが、もう一度送信して下さい)

kodomokyoto@gmail.com
akikoiwasa@gmail.com


放射能から子どもを守る京都・ママ・パパの会
WEB: http://kodomo-kyoto.sakura.ne.jp/
MAIL: kodomokyoto@gmail.com

********

『内部被曝』購入先
岩波書店販売部 電話03‐5210‐4111
岩波書店ブックオーダー係 電話049‐287‐5721 FAX049‐287‐5742
岩波書店ホームページ http://www.iwanami.co.jp/hensyu/booklet/

またアマゾンの以下のページからも購入できます。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D&rh=n%3A465392%2Ck%3A%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88%E3%80%80%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D&ajr=0
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明日に向けて(426)読書之森:岩波ブックレット「内部被曝」(毎日新聞京都版書評)

2012年03月13日 15時30分00秒 | 岩波ブックレット『内部被曝』発売中です!
守田です。(20120313 15:30)

毎日新聞京都支局の大田裕之記者が、『内部被曝』についての書評を書いてくだ
さいましたのでご紹介します。この書評、見事だと思いました。よくもこれほど
短いスペースに、きちんとエッセンスを盛り込めるものだと感心しました。僕だ
ったらこの3倍以上書いても内容を盛り込めない。これまた職人芸ですね。

ちなみにブックレットはおかげさまで売れ行き好調です。とくに「バイバイ原発
310京都」の会場では実にたくさんの方が買ってくださり、用意した160冊が
ほぼ完売しました。みなさま、どうもありがとうございました。

『内部被曝』は自信作ですので、まだの方はぜひお買い求めください。必ず何か
のお役に立てると確信しています。ワンクリックで購入可能なアマゾンのページ
を記しておきます。
http://www.amazon.co.jp/%E5%86%85%E9%83%A8%E8%A2%AB%E6%9B%9D-%E5%B2%A9%E6%B3%A2%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%AC%E3%83%83%E3%83%88-%E7%9F%A2%E3%83%B6%EF%A8%91-%E5%85%8B%E9%A6%AC/dp/4002708322/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1331619634&sr=8-2

***************

京都・読書之森:岩波ブックレット「内部被曝」 /京都
http://mainichi.jp/area/kyoto/news/20120311ddlk26070268000c.html

(矢ケ崎克馬・守田敏也著 岩波書店、588円)

東京電力福島第1原発事故で重要な問題の一つが、空気や飲食物を通じて放射性
物質を体内に取り込む「内部被曝(ひばく)」だ。科学的研究の第一人者である
矢ケ崎克馬・琉球大名誉教授に、京都市左京区在住のフリーライター、守田敏也
さんがインタビュー。物理的根拠のある危険性と、核戦略のために危険性が過小
評価されてきた歴史を平易に解き明かした。

「隠された被曝」として実態解明に努めてきた矢ケ崎さんは03年からの原爆症
認定集団訴訟で証言して19判決全てで原告側の勝訴に寄与。原発事故後は福島
県内で調査し、全国各地で百数十回講演してきた。守田さんも矢ケ崎さんや、
6000人以上の被爆者を診た「被爆医師」の肥田舜太郎さんを訪ねるなど取材
を重ねている。

本書はまず、アルファ線▽ベータ線▽ガンマ線の3種の放射線の特徴や違いから
内部被曝のメカニズムを説明。体内に入った放射性物質が血液やリンパ液に乗っ
て体中に運ばれ、外部被曝とは比較にならない高密度な分子切断でDNAの死滅
や異常再結合を招き、さまざまながんや病気を引き起こす危険性を指摘する。

だが、放射線のリスク基準を設定してきた米国主導の国際放射線防護委員会
(ICRP)は、外部被曝とは異なる内部被曝の危険性を無視。日本の科学者・
医師もその下で学び、福島事故での政府対応の誤りを招いてきたと本書は指摘する。

背景にあるのは米国の核戦略だ。広島・長崎での被爆者の調査から内部被曝を覆い
隠し、チェルノブイリ原発事故でも被害を過小評価。「経済的・社会的要因を考慮」
するICRPを通じて「科学がゆがめられ、政治に従属してきた」「日本政府も加
担してきた」(矢ケ崎さん)歴史を振り返る。

一方で、本書は恐怖をあおったり、悲観論に傾くことはなく、前向きな対策も提案。
矢ケ崎さんは「恐ろしさをきちんと知り、知恵を出して最大限の防護を尽くす」、
守田さんは「市民自らが科学していくことが問われている」と語る。本書を読むこ
とがその出発点となろう。【太田裕之】
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