守田です(20180125 23:00)
昨日の「白根山噴火と中央構造線と原発の危険性について」に続いて、広瀬隆さんの最新刊、『日本列島の全原発が危ない!』(DAYS JAPAN1月号増刊)の書評をお送りしたいと思います。
同書は広瀬さんの講演をそのまま本にしたものであり、たくさんのスライドが載せられています。「白熱授業」と銘打たれているのはそのためで、実際、読んでいると広瀬さんの声が聞こえてきそうです。
僕はこれまでも広瀬さんの本を何冊も読んでいますが、今回は2月17日に光栄にも広瀬さんとジョイント講演させていただくことになったので取り寄せたのでした。
昨日までに一気に読み終えて、広瀬さんとご一緒することにいまから興奮を感じています。
企画のイベントページをご紹介しておきます。2月17日(土)、コープイン京都で13時30分から16時までの開催です。
広瀬隆さん&守田敏也さん~ジョイント講演会
https://www.facebook.com/events/368974836849823/
この本の核心は私たちの目の前にある巨大な危機をズバリと教えてくださっていることにあります。しかもとても分かりやすい!
構成は以下のごとしです。
第1部、超巨大活断層「中央構造線」が動き出した!
第2部、住民は避難できるか
第3部、使用済み核燃料と再処理工場が抱える「世界消滅の危険性」
まさにこの書を読んでいるときに、草津白根山が噴火したので、すぐに中央構造線の近くだったはずだと考え、位置関係を調べるとやはりそうでした。
広瀬さんの指摘がまたひとつ裏付けらました。まさに「日本列島の全原発が危ない!」
広瀬さんは東日本大震災と福島原発事故が起きた1年弱前の2010年8月にも『原子炉時限爆弾―大地震におびえる日本列島』を出版され、序章にこう書かれていました。
「私は本書で、大地震によって原発が破壊される『原発震災』のために日本が破滅する可能性について、私なりの意見を述べる。しかもそれが不幸にして高い確率であることを示す数々の間違いない事実を読者に見ていただくが、内心ではそこから導き出される結論が間違っていることを願っている」(『原子炉時限爆弾』p2)
しかしこの結論は不幸にして翌年3月に的中してしまいました。福島原発事故の勃発です。広範囲が激しく被曝し、さらに4号機燃料プールの崩壊により半径250キロ圏が希望者を含む避難ゾーンになりかけました。
あれから7年が経過し、事故で覚醒した民衆の力によって、ひとたび日本の原発はすべて止まりました。
現在運転している原発はたったの4基。しかも伊方原発3号機が昨年秋まで稼働していたものの、定期点検中に広島高裁仮処分が出て動かせなくなっています。
ところが2016年4月に熊本を震度7の地震が2回も襲いました。広瀬さんが繰り返し警戒しなければと語り続けてきた超巨大断層、中央構造線の真上で起きたものでした。
「川内、伊方が危ない!中央構造線が動いている」・・・本書にはそんな広瀬さんの危機感と、大災害から人々を守ろうという熱い思いが溢れかえっています。
私たちにとってこの二つの原発がとくに危険なのは川内が鹿児島県、つまり日本列島の主要な島々の西のはてにあり、伊方が四国の西のはてにあることです。
台風の進路などを考えても明らかなようにここから噴出した放射能は日本列島を横断してしまいます。
福島原発から飛び出した大半の放射能は海に流れていきました。それでも私たちはこんなに苦しんでいるのに、西の原発が爆発したら、列島全体が激しく被曝してしまいます。
海に落ちたものも海流に乗って列島近海を北上していきます。すべての食べ物が決定的に汚染されてしまうのです。この大きな危険性を直視しなくてはいけません。
続いて第3部の「使用済み核燃料と再処理工場」の問題をご紹介します。広瀬さんはここに「世界消滅の危険性」と書かれている。
再処理工場にあるのは「高レベル廃液」です。東海村に430立方メートル、六ケ所村に223立方メートルある。
「東海村の高レベル廃液1立方メートルが漏れただけで、東北地方南部から北陸と甲信越・関東地方まで壊滅します!」と広瀬さんは指摘しています。東海と六ケ所には世界を消滅させかねない膨大な放射能が眠っているのです。
高レベル廃液とは、使用済み核燃料から新たにできたプルトニウムを取り出すため、溶液で溶かし、ウランとプルトニウムと残りの放射能を分けて出てくる死の灰の液です。
液体だと不安定なので、ガラス固化体にする予定だったのですが、うまくいかない。容器に注ぐノズルが詰まってしまい作業ができなくなることの繰り返しなのです。だから液体のまま置かれている。
冷却ができなくなると東海村では55時間、六ケ所村で24時間で沸騰が始まり、38時間、35時間で爆発します。そうしたらもう世界の破滅を待つばかりなのです。
この上に各原発の燃料プールに使用済み核燃料が沈んでいる。持って行き場がないからですが実はもう前から多くの燃料プールが容量いっぱいになりつつあったのでした。
プールが埋まるともう運転できなくなります。だから運転を止めるべきだったのですが電力会社はそうはしなかった。リラッキングで使用済み燃料の間隔をつめて、容量を増やしてしまったのです。
使用済み燃料の中に含まれているプルトニウムやウランは、一定の量が集まると核分裂してしまう大変危険な物質です。だから一定の間隔をおくことが定められていた。
ところが「このままでは運転できない」からと間隔を詰めてしまったのです。広瀬さんは最新データを添えて、この危険性も解き明かしています。
しかもそんなに危ないものが眠っている六ケ所村の再処理工場が、大きな地震と津波の脅威にもさらされていることが指摘されています。
さて最後に第2部をご紹介したいと思います。「住民は避難できるか」で、答えは明白。破局的な事故が起こったらとても避難できないのです。もちろんあらゆる事故に備えた避難計画など立てようがない。
原発事故を考えるときに、まずはこの点をしっかりと見据えることが大事です。真の原子力防災は原発を止めること、使用済み核燃料や高レベル廃液を一刻も早く安全な状態に移す以外ないのです。
だからといって広瀬さんは、事故の可能性に対して「備えることはできない」と言っているのではありません。
「現実から目をそむけずに、大地震時代に今から最悪の事態を予測して、対策をとりましょう。それが今日の集まりの目的なのです」と説かれています。(p94)
ここを最後に持ってきたのは、2月17日のジョイント講演での僕の担当すべきはこの先だなと思ってのことです。
しっかりと目の前にある危機を把握した上で、私たちの生きのびる道をみんなで紡ぎ出していかねば。広瀬さんのお話に続いて僕はこの点を精一杯お話しようと思います。
みなさん。ぜひ『日本列島の全原発が危ない!』をお買い求め、読んでください!
DAYS JAPANの同書の申し込みページを記しておきます。
https://daysjapan.net/2017/10/05/1120%E7%99%BA%E5%A3%B2%E3%80%80%E5%BA%83%E7%80%AC%E9%9A%86%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%AE%E8%AC%9B%E6%BC%94%E3%80%8C%E7%99%BD%E7%86%B1%E6%8E%88%E6%A5%AD%E3%80%8D%E3%81%8C%E6%9C%AC%E3%81%AB%E3%81%AA/