守田です(20161225 10:00)
トルコへの手紙の続きです
今回は使用済み燃料プールの抱える恐ろしさについても書きました。
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使用済み燃料プールも危ない
この熊本地震が教えたことが幾つかあります。一つに熊本地震が地震大国の日本でもこれまで観測されたことのない新たなタイプの地震となったことでした。何せ日本の地震の震度のクラスで最大に位置づけられている震度7の地震が、立て続けに起こることはこれまで観測されたことがなかったのです。これまでの日本の地震学の常識を上回る事態でした。反対に言えばまだまだ日本とて、自分たちの足下で繰り返し起こっている地震について十分に科学的に把握できていないことが明白になりました。
しかもその地震の揺れの規模(ガル)は原発の設計上の想定をはるかに上回っていました。つまり日本の原発が、激しく壊れる可能性があるだけの地震に襲われる可能性があることがはっきりしたのです。
そんな地震が2回連続で来たことがはじめて観測されたのです。同じ事が原発の直下で起こることを考えると寒気がします。あの福島原発が、あのとき、あれだけの事故のあとに、さらに大規模な地震にさらされたことを考えれば、それがどんな破局的な事態を生むのか想像できると思います。
日本は有史以来、たくさんの地震に見舞われてきた地域であり、この島国に住む私たちには、世界の地震の少ない地域の方々たちに比べれば、地震への「慣れ」のようなものがあると思うのですが、しかしその私たちの経験からしても、今回はあり得ないことばかりが続いたのでした。
にもかかわらずこの国の政府は、観測史上初めての事態に遭遇し、避難経路が寸断されてしまったにも係らず、原発を停めようとしませんでした。それどころか今年の8月には、中央構造線に非常に近いところに位置している四国の愛媛県の伊方原発3号機も再稼働させてしまいました。
この国の中ではこのため2箇所で3つの原子炉が動いています。本当に恐ろしいです。
また実は原発は動いていなくても危ないのです。原発を運転するときにウランを加工した核燃料を使います。原子炉の中でウランが核分裂を繰り返してエネルギーを出すわけですが、同時にたくさんの放射能が産み出されます。
もとのウラン燃料も放射能を持っていますが、運転が終る頃には放射能量は約1億倍になっています。同時にこの使用が終った核燃料が大変な熱を持つのです。
どうしてかというと、放射能は原子から放射線を出して違う物質に変わっていきます。これを物理学で崩壊というのですが、その崩壊の時に熱を出すからです。このため放射線がまったく出なくなるまで熱が出続けるのですが、そこまで落ち着くのに実は10万年を越す時間が必要なのです。核燃料の中にはたくさんの放射能がありますが、ものによっては100万年かからないとなくならないものまであります。
このため運転が終ったばかりの核燃料は大変な熱量を持っていて、冷やし続けないと溶け出してしまいます。実際に福島原発事故でも、地震のときにブレーキである制御棒が原子炉の中に入れられて、核分裂自身は停まったのですが、その後に冷やすことができなくなってしまって、炉心が溶けてしまい、原子炉の下部に落下していくメルトダウンが起こってしまったのでした。
この恐ろしい事態を引き起こさないために、すべての原発では、運転が終った核燃料をいったんプールの中に収納します。そこには水がはってあります。水は核燃料から出続ける熱をとるためのものですが、同時に核燃料から激しく出てくる放射線をシールドする役目も果たしています。
このためこのプールを冷却している装置が壊れると、水温が上昇し、水が減り始めます。もしそれで核燃料が水面から出てしまうと、シールドが無くなって放射線が激しく周囲に飛び出すので、人が近づいて作業する事ができなくなってしまいます。そうなると最悪で原子炉の外でメルトダウンと同じことが発生します。
実は日本中の原発で、この原子炉のすぐ横にある燃料プールに、使用済み核燃料がひしめいています。理由は核燃料のその後の処理方法が確立しておらず、持ち運び先が決まっていないからです。このため日本中の原発が、燃料プールの中に使用済み核燃料を抱えており、激しい地震が原発を襲ってプールが壊れた場合に、破局的な危機に見舞われる可能性があるのです。だから私たちは大きな地震があるたびに、飛び上がるような恐ろしさを感じざるを得ません。本当に怖いです。
実際にこの11月22日未明にも福島県沖でマグニチュード7.4の海底地震が起きたのですが、その時に事故を起こした福島原発のすぐ近くにある福島第二原発3号機の燃料プールの冷却装置が壊れて停まる事態が起こりました。幸いにも暫くして復旧したのでメルトダウンに向かうことはありませんでしたが、この時も、あらためて日本中の原発が抱えている燃料プールの危険性がクローズアップされました。
トルコのみなさん。トルコも地震大国です。そのトルコにいま、原発がないのはとても安全なことです。トルコと日本は同じ地震大国ですが、核事故を考えるなら、トルコの方が、格段に安全性が高いです。どうか私たちの幸せの元であるこの安全性を手放さず、危険な原発を導入しないように努力を続けてください。
ご存知のようにトルコのシノップに作られようとしている原発は日本の三菱重工とフランスのアレバによるものです。
私は日本人として強い怒りと責任を感じています。またシノップはもう3回も迎えてくださった場で、もはや私にとってはとても親しみがあり、懐かしい場でもあります。このため私も美しいシノップを守るためにも、日本からの輸出をなんとしても食い止めるために頑張ります。
そのためにも今回、4月に起こった熊本地震と川内原発の関係、地震大国に原発がある危険性をお伝えしましたが、次回に11月22日に福島沖で起こった地震によって、実際に燃料プールの冷却が停まってしまった事態についてももっと詳しくお伝えしたいと思います。
トルコと日本の民衆の協力でシノップへの原発の輸出入と建設を食いとめましょう!
続く