明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1208)高浜原発再稼働は大事故を前提としているから認められない!(新規制基準の誤りー1)

2016年01月28日 17時00分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160128 17:00)

関西電力が明日29日にも高浜原発3号炉の再稼働を進めようとしています。マスコミ報道によれば、午後に32本の制御棒を抜き初めて翌日30日の朝にも臨界状態に、さらに軌道から3日後の2月1日には発電と送電を開始する予定としています。
すでに多くの方が再稼働の危険性を訴え、現地高浜での24日の大きな反対集会をはじめ、全国で抗議を貫いていますがあらためてここで、この再稼働の何が最も許されないものなのか、ポイントを押さえておきたいと思います。

まず何よりも私たちが重視しなければならないのは、再稼働に許認可を与えている原子力規制庁の新規制基準そのものが、とてもではないけれど安全性の観点から言って許容しがたい内容の上に成り立っていることです。
端的には「大事故の発生を前提とし、これへの対策を施す」ことを再稼働の条件としていることです。大事故を絶対に起こさないのではなく、起きうることを認めて、対策を重ねると言っているのです。

このとんでもない内容を最も分かりやすく示しているのは、昨年3月に原子力規制庁が作成し、3日により高浜町のケーブルテレビでの放映を開始した後にホームページにも掲載した以下のビデオです。
全体で29分のものですが実質的な説明が行われているのは2分40秒からで全体で26分20秒のものです。興味のある方はご覧下さい。

 高浜発電所に関する原子力規制委員会の審査概要について
 2015年3月
 https://www.youtube.com/watch?v=azZk3mPHUrg

ここで説明されているのは新規制基準は福島原発事故の反省を踏まえて作られたという点ですが、その核心として語られているのが「福島原発事故までは重大事故の発生を想定してなかったからいけなかった!」という点です。
これはもう本当にとんでもない開き直りです!チェルノブイリ原発事故が起こった時に日本政府と電力会社は「あのような事故は日本では起こり得ない」と語り「だから運転を継続させてくれ」と国民住民に公言してきたのです。
ところが実際にはチェルノブイリ級の事故が起こってしまった。つまり約束が破れてしまったのですから運転を止めなければならないのです。にも関わらず「事故が起こり得ないと考えていたのが間違っていた」と開き直った。これが一番ひどい!
私たちは何よりもこの点に、川内原発をも含めて、再稼働がまったく認められない点があることをしっかりとおさえ、もっと強く、政府と電力会社に迫っていく必要があるし、マスコミにもこの点を取り上げてくれるようにアピールする必要があります。

原子力規制庁のビデオでは3分35秒から9分00秒で、高浜原発の審査内容を説明する前提として説明されているのですが、とりわけ重要なのは旧規制基準と新規制基準のポイントを語った5分35秒から9分00秒までの内容です。
以下、ポイントを抜き出しておきます。

***

【規制基準の変更について】

1、旧規制基準のポイント(5分35秒から) 
想定しなければならない自然現象の種類が限定的だった。例えば地震についてはさまざまな想定していたが、津波についての基準はほとんどなかった。
規制の考え方として、そうした自然現象は想定の範囲を超えることはほとんどないという考え方に立っていた。

安全確保のために設備を多重化すること、例えば注水ポンプを2台にと求めていた。ところが2台が同時に壊れることは考えていなかった。
基準を満たせば核燃料が溶けたり、放射性物質が外部に大量に放出する可能性のあるような重大事故につながることがないよう対策を問題なく行うことができると判断していた。
つまり基準を満たせば大きな事故は起きない。しかも対策の中身は設備面での対策を重視していたということになる。

2、新規制基準のポイント 7分21秒から
平成25年7月に新しく作られた規制基準は、こうした反省、教訓をしっかりと踏まえ、考え方を大きく転換している。
一つ目の見直しは自然現象など重大事故の原因になりうる事象の想定を厳格にしたことだ。
例えば施設の設計にあたって想定する地震や津波を厳しくするとともに、竜巻などの自然現象への対策、や森林火災、内部溢水などの対策を新設したり強化した。
発電所内の電源が使えなくなった時のために、発電所内の非常用電源を手厚くするなど電源確保の要求も厳しくした。

その上で対策はしっかりしているから事故は起こらないという従来の考え方を大きく転換。それでもなお事故が発生しうるという発想にたち、万が一、重大事故が発生したときに備えた対策をあらたに求めることにした。
原子炉を止めたり、冷やしたりすることがうまくいかなかった場合でも、原子炉が壊れないように事故を食い止めるための設備や手順、体制の整備。
さらに原子炉が壊れないための対策も失敗し、原子炉が溶けて核燃料が溶けてしまっても、外側の格納容器が壊れないようにするための対策を新たに求めている。

***

どうでしょうか。完全な開き直りです。なおこのように開き直るに際して、実は重大な用語=タームのすり替えも行われていることをここで指摘しておく必要があります。
これまでこのような大事故のことはシビアアクシデント=過酷事故と呼ばれており、ある時期までこの対策も「過酷事故対策」と呼ばれてきたのです。そして過酷事故には明確な概念規定があります。設計上の想定をすべて突破された事故だということです。
つまりそこからはどのように進展するか分からない段階に入った事故であり、本質的に対策を立てることが困難なものなのです。なぜってどうなるか設計者にも分からないのですから。
原子力規制庁はこの点を十分に知っているがゆえに、この想定できない事故への対策を練るという矛盾を隠すために、「過酷事故」という言葉を「重大事故」にすり替えたのです。

原子力推進派の方たちはどうしていつもこれほどに不誠実なのでしょうか。言葉を変えたって安全が増すわけではありません。いやむしろことの本質を隠すがゆえに、その分、危険性が周知されず、安全マージンを削るばかりなのです。
しかも、このビデオを最後までみると、一通り関電が施した対策を紹介した後で、この「重大事故」すら越えることも想定している!というとんでもない発言までが飛び出します。26分30秒よりの以下のような説明です。

***

新規制基準では「安全追及のための思考を常に止めないことが重要」という発想に立っている。
重大事故の発生という想定をもさらに越えて、大規模な自然災害が発生したり、故意による大型航空機の衝突といったテロリズムによる発電所の大規模な損壊が発生した場合も考えて、態勢や手順の整備を求めている。
もちろんどんなものでも食い止めることができるというわけではない。
しかし高浜発電所3号炉4号炉の審査ではそのような厳しい状態になった場合でも環境への放射性物質の放出をできる限り低減するよう必要な態勢、対応手順を整備することを確認した。

***

「どんなものでも食い止めることができるというわけではない」・・・。
もう、「そこまで言うのか」という感じですが、このように原子力規制庁は自ら定義した「重大事故」をも上回る事故がありうること、「発電所の大規模な損壊」をも前提に運転を認めるというのです。
この最も重要な点が、国民・住民にほとんど周知されておらず、あいまいにされたままに川内原発の再稼働が強行され、いままた高浜原発再稼働が強行されようとしています。あまりに理不尽です。
断固反対の声をさらに高く上げましょう!

続く

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明日に向けて(1207)追悼!陳桃アマ!

2016年01月24日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160124 23:30)

悲しいご報告です。1月11日に台湾の旧日本軍性奴隷問題犠牲者の陳桃(小桃)さんがお亡くなりになられました。享年94歳でした。
僕は第一報を亡くなられた2時間ぐらいあとに台湾の友人から教えていただいたのですが、ちょうど台湾総統選の最中であり、政治利用を避けたいとの判断もあって、暫く公表を控えて欲しいともお願いされました。
その後、アマのサポートを続けてきた台北市婦女援助会から追悼文が出され、台湾のマスコミ報道にも載りました。それでも僕は原発ケーブル問題の分析をしなければならなかったこともあり、ご報告が遅くなってしまいました。申し訳ないです。

ともあれ今宵は、アマのご冥福を心の底からお祈りしたいと思います。
またアマの遺志をしっかりと受け継いで、今後も走り続ける決意をみなさまの前に明らかにしたいです。
アマに心の底から感謝しつつ、ただ合掌あるのみです。

アマの逝去について記された婦援会発行の「阿媽之友 電子報」日本語翻訳版を転載します。
ちなみに「小桃」アマというのは陳桃さんのニックネームです。他にも桃という字を使うアマがおられたため、小柄な陳桃さんが「小桃」アマと呼ばれ続けたのでした。

*****

【さようなら、小桃阿媽、あなたの精神は永遠に私たちの心の中に生き続けます】
台湾で最も毅然としていた、女性の人権と命の闘士を追悼する

2016年1月11日(月)夜8時過ぎ、台湾最高齢の女性の人権のために闘った陳桃阿媽が病気のため亡くなった。享年94歳だった。

昨年2月中旬、阿媽は関節の悪化に加え、脊柱側弯症、慢性閉塞性肺疾患、消化管出血等の病気を併発している、と診断された。一人での生活は困難となり、入院、治療の後、南区の老人ホームで暮らしていた。
先月中旬、阿媽はインフルエンザに罹り、入院、加療中であった。ところが、阿媽の容態が急変し、今週月曜日の夜8時過ぎ、安らかに息を引き取った。
大変残念でならないが、阿媽が病苦から解放され、苦難に満ちた生涯の重荷を下ろし、安らかに眠ることを願う。
  
小桃阿媽、1922年生まれ、台北市出身。3歳の時に母を亡くす。家の暮らし向きは大変厳しかった。
19歳の時、インド洋のアンダマンに売り飛ばされ、「慰安婦」になることを強要された。一日に10人から20数人の客を相手にさせられたが、一度も給料をもらったことがなかった。阿媽は、アンダマンの慰安所内で三度も自殺を図ったが、未遂に終わる。
日本が敗戦すると、小桃阿媽は、どうにかこうにかやっとの思いで船に乗り台湾に戻った。既に24歳になっていた。
列車で台北に行き、家族を尋ねると、可愛がってくれた祖母は亡くなっていた。年長の親族は聞くに堪えない侮蔑の言葉を浴びせ、阿媽を家から追い出したので、住むところがなくなった。
小桃阿媽は、あちこちで賄い婦として働き、28歳で結婚したものの、子どもができなかったため、姑に無理やり離婚させられた。45歳で再婚した後は、いつも怯えながら戦争中の不幸な境遇に声をひそめて忍び泣いていた。
その後、阿媽は台湾・屏東市場の露店のそばに建てた鉄板の小屋に長く住み、90歳まで椰子の実を売りながら、自力で生活を立てていた。

阿媽には、生涯にわたる二つの願いがあった。
その一つは「学校に通い、一日教師になること」、もう一つは「日本政府の正式な謝罪を受けること」だった。

2011年、小桃阿媽は90歳の誕生日を迎えた。ちょうど日本での証言集会に参加するため、台北に来た時だった。婦援会が開いた祝賀会の席で、はっきりと「日本政府がすぐに謝罪すること」という宿願を語った。
阿媽は、長年にわたり、勇敢で毅然とした態度で、「慰安婦」、女性の人権運動の第一線に立ち続けた。昔を想い、涙を流すことはあっても、委縮したり、正義のための如何なる闘いの機会も放棄したりしなかった。
阿媽は、我々に数限りない思い出だけでなく、不撓不屈の強靭な精神と逆境に立ち向かう勇気を残してくれた。阿媽は、痩せ衰えても強い意志が表れていた。それは苦難の人生で鍛錬された智慧と強靭さであり、無限の勇気と力を放っていた。

小桃阿媽、あなたのすべてに感謝します。正義は死なず。あなたが安らかに旅立たれることを願っています。訳:夏井町子)

*****

僕が小桃アマと初めてお会いしたのは、アマたちが6人で参加して下さった2007年の東京での証言集会の時のことだと思います。
京都に他の3人のアマをお呼びし、アマたちととても仲が良くなってからのことでした。その後、何度も台湾にも行くようになり、アマたちのワークショップにも参加させていただいてその度にアマとお会いすることができました。

子どもの頃、学校に通うのが大好きだったアマは、日本語もしっかりと学校で身に着け、その後も忘れずにいてとても流暢に話してくれるので、いろんなことを話すことができました。
アマはいつもこんな風に言っていました。
「日本政府はね、ずるいよ。どうして自分たちのしたことを認めないんだい。私はね、お金なんかいらない。ただ謝って欲しいんだよ」・・・。
そう。アマはいつも、しっかりとした日本語で、途中で涙声になりながら、こう言い続けました。「日本政府はね、ずるいよ」・・・その言葉が今も耳にはっきりと残っています。

このときは江戸東京博物館にもアマたちと一緒に見学に行きました。いろいろな展示をみてまわったあとに、昭和初期のさまざまな小物が置いてあるコーナーにいきました。
お手玉などもあって、何人かのアマたちが楽しそうに遊び出しましたが、小桃アマが真っ先に取り上げたのは尋常小学校の教科書でした。
広げてみたら「ススメ ススメ ヘイタイ ススメ。」とか「キグチコヘイ ハ テキ ノ タマ ニ アタリマシタ ガ、シンデモ ラッパ ヲ クチ カラ ハナシマセンデシタ。」とか書いてある。

でもアマは懐かしそうにその教科書をなでながら僕に言いました。
「私たちはね、これだったんだよ。あんたたちはもう違ったでしょう?」
その時、アマの眼は笑っていました。軍国主義だろうがなんだろうが、アマは学校で学ぶことが大好きだったのです。だから教科書が懐かしかったのです。
そんなアマはもっともっとたくさんのことを勉強したいと思っていた。でもそんな少女の楽しい夢は、旧日本軍によって、無残に切り裂かれてしまったのでした・・・。

にもかかわらず、謝ろうとしない日本政府に対して、アマは、しっかりとした日本語で「日本政府はね、ずるいよ」と言い続けた。何度も何度も言い続けたのです。
日本政府の誠実な謝罪を求める気持ちはアマたちに共通のもので、けしてそこに強弱があったわけではありません。
そのことは十二分に分かっているつもりなのですが、それでもどこか僕には、一番、強く日本政府の謝罪を、心からのお詫びを求めていたのは、小桃アマであったようにも思えてしまいます。
そのアマにとうとう日本政府は最後まで謝りませんでした。そうして私たちも、謝罪を引き出してアマに届けてあげることができませんでした。そのことがただただ悲しいです。申し訳ないです。

罪を犯しながら、認める潔さを持たず、ごまかし続けてきた日本政府。その「ずるい」姿勢をただすために、アマは何度も日本にやってきました。
あちこちで証言をし、裁判を行い、国会などにも出向きました。辛い話、辛い気持ちを、何度も涙を流しながら伝えてくれました。そのことにただただ感謝あるのみです。
今、僕に、そして私たちにできることは、アマの遺志をしっかりと受け継いで、日本政府のあまりに「ずるい」あり方をただすため、そのことでアマたちの尊厳を取り戻すために行動を続けることです。
そのための、心からの固い決意を、アマに捧げたいと思います。


小桃アマ。去年の秋にお会いしたのが最期になりましたね。
「また会いに来るからね」と言いながら病室を出ていく私たちに、アマはベッドで横になったままうんうんとうなづいて手を振り続けてくれましたね。
アマはきっと、まだまだ生きて、日本政府をただす意志を私たちに示してくれたのですね。最期までそんな姿を私たちに見せてくださったのですね。
そのあとにアマはもう本当に疲れてしまって眠りにつかれたのだろうけれども、でもアマ、94歳まで、本当によく生きてくださいました。

あんなに辛いことがありながら、たくさんの涙を流しながら、アマは生きて、生きて、生きて、そして本当に最後まで日本政府をただそうとしてくださいました。
アマ、ありがとう。本当にありがとうございます。アマの思いはみんなでしっかりと受け取りました。ここからは私たちがアマの分まで走り続けます。
だからどうかゆっくりとお眠りください。もう泣きながら証言してくれなくていいんだよ。もうあの頃の辛い思いを語ってくれなくていいんだよ。

いつまでもアマを忘れません。
だからアマ、今は、さようなら。本当に、たくさん、ありがとうございました。

合掌 

 

 

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明日に向けて(1206)原発ケーブル不正敷設問題が示すのは規制当局に適正がないことだ!

2016年01月20日 11時30分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160120 11:30)

原発ケーブル不正敷設問題の続報です。
冒頭に再度、緊急署名の要請を貼り付けておきます。本日20日が第一次集約、2月20日が第二次集約です。まだの方はぜひ署名をお願いします。

 高浜・川内原発も調査を!ケーブル不正問題についての緊急署名
 https://fs224.formasp.jp/f389/form1/

この問題について前号で背景を詳しく説明しておきました。
できるだけ多くの方に問題を広げられるように、ポイントを短くまとめて提示することにしました。ぜひご活用ください。

①昨年9月の柏崎刈羽原発6号機の中央制御室床下を剥がした際、ケーブルの敷設状況に不正があることが判明しました。火事対策としてなされるべき安全系ケーブルと一般のケーブルが分けられていなかったり防火壁が設けられていませんでした。
②このため同原発1号機から7号機までを調査したところ、同様の不正が次々とあらわれ、合計で1049本ものケーブルに不正があることが分かりました。
③同じような不正が他の原発でも行われていないか調べたところ、福島第二原発3、4号機、浜岡原発4号機、志賀原発1号機、東通原発1号機及び女川原発3号機でも同じ不正があることが分かりました。
④事態を重く見た原子力規制庁はすべての電力会社に同様の不正がないか全原発の調査を行う指示を出しました。
⑤しかしながら再稼働を強行した川内原発1,2号機と、再稼働の許可が出されている高浜原発3、4号機のみ、調査対象から除外されました。新規制基準にこの点の調査指示が含まれており、すでに合格しているからとの理由です。

ご紹介している署名はここまでの事実をもとに、とてもではないけれども川内原発と高浜原発のケーブル敷設に不正がないとは信用できない。ただちに調査を行うべきだ。そのため川内原発を止め、高浜原発の再稼働も延期すべきだと訴えるものです。
極めてもっともな内容ですのでみなさんにご紹介し、協力をお願しています。

その上で僕が背景説明として付け加えたのは次の点です。

⑥今回の不正は「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和四十年六月十五日通商産業省令第六十二号)」の第4条の二への違反になります。1975年12月の改定で加えられたものですから、違反は40年以上にも及んでいることになります。
⑦そもそもこの改定はそれまで建設された原発のケーブルが可燃性であったのを難燃性に代え、同時に安全系ケーブルと他のケーブルを分けたり、防火壁を設けるなど、火災対策を強化することを目的としていました。
⑧これは原発で火災が起こった際に一基あたり1000~2000キロもあるケーブルが延焼のもとになってしまうこと、また安全系ケーブルが燃えて安全危機が止まってしまうことなど、対策を施さなければ大きな危険があるがための措置でした。
⑨ところがこの改定は、75年以前に作られた原発には適用されず、その後も福島原発1~5号機を含む17基もの原子炉が可燃性のケーブルのままに運転を続けてきました。これだけでも国と電力会社は大変な危険を放置してきたことになり責任重大です。
⑩今回、さらに明らかになったのはこの75年に義務付けられた対策が、当初よりきちんと守られず、不正敷設が放置されてきたということです。前述の17基だけでなくさらに多くの原発が決められた火災対策をきちんとしないままに動かされてきたのです。
⑪ここに表れているのは、75年に決められた対策をきちんと行ってこなかった電力会社各社の問題だけではなく、それを40年以上も見過ごしてきた国の側の重大な過失責任です。規制当局として完全に失格です。
⑫まずなすべきことはこのような重大事態をなぜ40年間も見過ごしてきたのかの捉え返しです。それがなされるまで国に規制当局としての資格はありません。川内原発をただちに停止し、高浜原発の再稼働を見送り、猛烈な反省をすべきです。

以上の点をできるだけ多くの方にお披露目ください!
最も責任が重いのは監督責任を果たしてこれなかった国です。原子力規制庁はその責任の継承主体です。この点を強調して下さい!

なお参考にしていいただきたい記事のアドレスを貼り付けておきます。

 明日に向けて(1205)大半の原発がケーブル不正敷設のまま運転してきていた!再稼働など許されない!
 2016年1月19日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/a6d034ceb978ac359df36622c3a74505

 明日に向けて(604)原子力規制庁と経産省が原発防火の不備を指摘・・・なぜ?
 2013年1月3日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/ca90c89e036b12f8d7978f7cdded0eed

続く


 

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明日に向けて(1205)大半の原発がケーブル不正敷設のまま運転してきていた!再稼働など許されない!

2016年01月19日 09時30分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160119 09:30)

「明日に向けて」前号で、原発のケーブル不正敷設問題についての緊急署名を取り上げました。
昨年9月に柏崎刈羽原発6号機で発覚したケーブル不正敷設が、その後、他の多くの原発でも行われていたことが明らかになった問題です。
このため原子力規制庁は本年1月6日に各電力会社に対して、すべての原発で同様の問題が起こっていないかどうかを点検する指示を出しました。

ところがこの指示からすでに再稼働している川内原発1号機2号機と、再稼働が予定されている高浜原発3号機4号機が外されているのです。
理由は新規制基準でこの点の審査がなされたことになっているので問題ないというのです。本当でしょうか?再稼働を進めたいからよしとしているだけではないでしょうか?
ケーブル問題は原発の安全性の根幹にある問題の一つです。にも関わらず再び三度杜撰なことが強行されようとしています。
昨夜、ここで提案したのはこれを食い止めるための署名への協力です。再度、掲載しますので、ぜひお力をお貸しください。

 高浜・川内原発も調査を!ケーブル不正問題についての緊急署名
 https://fs224.formasp.jp/f389/form1/

さて、今回は問題をより一歩深めて、ケーブル不正敷設問題が、どれほど大きなものなのかを論じていきたいと思います。
今回の不正は「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令(昭和四十年六月十五日通商産業省令第六十二号)」への違反と言うことになります。
1965年に制定された、原発の運用全体をカバーする法律ですが、焦点のケーブルの問題は第4条の二にあたります。
これは1975年の改定であらたに付け加えられた附則(昭和五〇年一二月二三日通商産業省令第一二二号)に記されています。

後に第四条二の内容も詳しく見ていきますが、重要な点はこの改定が目指したものは、それまで原発に使われているケーブルが可燃性のものであった点を難燃性のものに変えさせることにあった点です。
同時に火災が起こった場合の影響をさらに減らすための防火壁の設置なども求められました。このためケーブルをひとまとめにせず、必要に応じて分けて敷設し、万が一ひとつの系統がダメになっても他の系統が生き残れる指示などがされたのです。
まず指摘しておきたい重大問題は、この1975年に発せられた安全対策の指示が、それ以前に作られた原発には適用されず、危険な可燃性のケーブルが使用され、防火壁やケーブルの仕分けもないままに多くの原発が運転され続けた来たことです。

これがどれほど危険かと言うと原発内で火災が発生した時に、可燃性ケーブルによって延焼が拡大してしまう可能性があるからです。ちなみに原発のケーブルの長さは1基あたり1000~2000キロもあります。これだけのものが燃えやすい素材で敷設されていた。
実際に1975年3月に起こったアメリカアラバマ州・ブラウンズフェリー原発1号機の事故では、1600本以上のケーブルが焼け、原子炉の安全性が確認できなくなってしまったという実例がありました。
火災事故は国内の原子力関係施設でも度々起きています。1967年~2012年3月に136件も発生していて、1967年の日本原子力発電東海原発では5人が死傷しています。
07年の新潟県中越沖地震の際には、今回問題となった柏崎刈羽原発3号機の変圧器が燃える事故が起こりました。11年の東日本大震災でも東北電力女川原発1号機で高圧電源盤がショートし7時間以上燃えました。

1975年の法令改定は火災事故の際の危険性を大幅に低減するためのものだったのに、なんと17基もの原発がこの適用を免れてしまい、危険な可燃性ケーブルのままに運転を続けていたのでした。以下に当該の原子炉と起動年を記します。、
東京・福島5号機・71、関西・美浜1号機・66、美浜2号機・68、高浜1号機・69、高浜2号機・70、美浜3号機・72、大飯1号機・72、大飯2号機・72、中国・島根1号機・69、四国・伊方1号機・72、九州・玄海1号機・70、日本原電・敦賀1号機・66。
これにすでに廃炉となった福島1~5号機を含んで合計17基になります。

この問題は毎日新聞が2013年1月1日の元旦の紙面に一面トップで大きく報じて明るみに出ましたが、実は12年に新規制基準に向けた有識者懇談会でも指摘されていました。記事の中でも以下のように指摘されています。
「11月21日の有識者会議で規制委の更田豊志(ふけたとよし)委員が「火災については『いいよ(遡及適用しない)』というのはいかんだろう」と2度も強調した。」
記事ではさらに極めて重要な内容が付け加えられています。

 「経産省の積極姿勢には裏がある。関係者は「電力会社に古い原発の廃炉をのませ、代わりに新増設を進める作戦」と明かす。
 安倍政権の脱「脱原発」路線を見越した動きだ。しかし、安全と新増設は次元のまったく異なる問題だ。取引材料のように使うことは許されない。」

素晴らしいスクープだと思います。なおこの記事を書いたのは高島博之、松谷譲二という二人の記者さんです。

僕もこの1面の記事を読んだときに、なぜ経産省が17基もの原発が可燃性ケーブルを使って運転し続けてきたことをある種積極的に明らかにしたのかいぶかって見ざるを得なかったのですが、この指摘で腑に落ちるものがありました。
経産省、そして規制庁は、原発の安全性の根幹を揺るがす可燃性ケーブル問題を、あえて積極的に表に出すことで、電力会社に古い原発の廃炉を飲み込ませ、「新増設」に向かおうとしていたのです。
以上の点を当時、僕なりにまとめた記事を以下にご紹介しておきます。今回のケーブル不正敷設問題の大前提になりますのでぜひお読み下さい。毎日新聞の記事の全文も貼り付けてあります。

 明日に向けて(604)原子力規制庁と経産省が原発防火の不備を指摘・・・なぜ?
 2013年1月3日
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/ca90c89e036b12f8d7978f7cdded0eed

さてその上で今回の事態の重大性について明らかにしたいと思います。
今回明らかになったのは、1975年12月にケーブルの安全性向上のための法令改定がなされたにもかかわらず、実際にはそれが適用されず、75年以前に作られた原発どころか、実に多くの原発が危険なままに運転を続けていたということです。
原発の安全性に対する信頼を根底から揺るがす重大問題です。これだけでもすべての原発の運転はただちに止められなければならないし、問題の深部がえぐられ、責任者が処罰されるまで、とても次に向かうことが許されるものではありません。
まずはすべての原発に対して、これまで電力会社が規制をすり抜けていたことに重点を置いた徹底した点検が行われるべきです。それがなされるまで、日本のすべての原発の信用性は担保されていないことこそが突き出される必要があります。

とくに重要なことは、法律で定められた安全性の順守を電力会社が守っていなかった事態を、規制当局がまったく把握してこれていなかったという事実です。実に40年間もです。長きにわたって安全性の根幹が見過ごされてきたのです。
悪いのは安全性をないがしろにしてきた事業者だけではありません。規制当局の資質こそが問われ、法令無視を見過ごしてきた責任者こそが追及されなければならないのです。
にも関わらず、原子力推進派は、主な責任主体である旧経産省保安院を潰してしまい、原子力規制庁を立ち上げることで、実にこの責任の継承性を断ちきるという無責任なことを行ってきたわけです。

しかし原子力規制庁は国の機関です。当たり前ですが、この安全のための重大な法規制が破られていたことを40年も見抜けなかったことに国は責任を負い続けているのであり、原子力規制庁も当然にも負わなければならないのです。
国の原子力政策を担ってきた機関には、原発の稼働の是非を問う資質がないことそのものがここにくっきりと明らかになっているのです。問題の本質はそこにあります。
私たちは電力会社や原子力規制庁という責任制の継承にほっかむりした無責任な団体によりも、運転の最終責任を負ってきた国に対して、安全性を無視した運転が日本中の原発で行われていた責任を問うのでなければなりません。

当然にも全貌が明らかになるまで再稼働論議を行うことなど論外そのものです。
この点を強調し、各地に広めていきましょう。マスコミの記者さんも、電力会社の批判者のように立ちまわっている原子力規制庁の言動に惑わされず、ぜひこのような問題の本質を追及して下さい。
この場でもさらに問題を掘り下げるために、より詳細に、見過ごされてきた第四条の二の内容、またそれに対する東電の弁明と、規制庁側の問題を曖昧化させようとする態度の追及を続けていきます。

分析を続けます。

続く

なおこれらについて以下の企画でお話します。お近くの方、お越しください。

京都の今を考えるⅢ 1月22日(金)
―どうなる原発!編―
https://www.facebook.com/events/1057606290928311/
 

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明日に向けて(1204)原発のケーブル不正問題は極めて重大!再稼働を止めるべきだ(署名にご協力を)

2016年01月18日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160118 23:30)

原発のケーブル不正敷設問題が大きく浮上しています。
問題の発端は昨年9月に柏崎刈羽原発で、中央制御室の床板をはがした際に、電気ケーブルが安全のための規定を無視した敷設がされていたことが明らかになったこと。
このため同原発の他の号機や、他の原発でも調査を進めた結果、同様の不正が多くの原発で行われていたことが明らかになったのです。
このことに踏まえて、すでに稼働している川内原発を直ちにとめて調査をせよ。高浜原発でも厳正調査をせよという署名が起ちあがっているので、今宵はこれをみなさんに紹介したいと思います。

この問題にはかなり深い背景があります。
実は今宵、論点を整理して提示したかったのですが、十分にまとめきることができなかったので、ともあれ署名を先に紹介することにしました。
第一次集約は20日です!ただし第二次集約もありこちらは2月20日です。
ぜひご協力下さい。拡散もお願いします!

以下、署名要請を貼り付けます。

******

<緊急署名>
ケーブル不正問題/高浜・川内も調査を!これで高浜原発の再稼働をとめよう!

みなさまへ

柏崎刈羽原発で発覚した法令違反のケーブルの不正敷設問題は、浜岡や女川、東通など他の原発にも広がっています。
原子力規制庁は、全国の原発に対し3月までの調査を指示しましたが、なんとその対象から、高浜原発3・4号機と川内原発1・2号機は除かれています。これは明らかに再稼働を優先した対応です!許されません!!
今すぐ署名をお願いします!これで高浜原発3号機の再稼働を止めましょう!

<拡散希望>***********************

高浜・川内原発も調査を!ケーブル不正問題についての緊急署名
https://fs224.formasp.jp/f389/form1/

*****************************

こちらからすぐに署名できます
https://fs224.formasp.jp/f389/form1/
第一次集約は1月20日です。拡散のほうもよろしくお願いします!

<ケーブル不正問題緊急署名>

ケーブル不正敷設は「新規制性基準に適合していない」と規制庁は認めながら 高浜3・4号、川内1・2号は特別扱で、調査報告の免除は許されません
高浜原発3号の1月28日原子炉起動は中止!川内原発1・2号は運転停止!他の原発と同様に、詳細な調査報告等を提出させるべきです

原子力規制委員会 委員長 田中俊一 様

昨年9月に柏崎刈羽原発6号機で、中央制御室の床板等をはがした結果、電気ケーブルの不正敷設問題が発覚しました。
事故時に必要な安全系統のケーブルと一般のケーブルは、火災が発生しても延焼しないよう、仕切り版等で隔離されている必要があります。
しかし、柏崎刈羽原発では、分離板の未設置等で1,049本ものケーブルが不正な状態であることが明らかになりました。
これについて、原子力規制庁は1月6日に文書(※1)を出し、技術基準違反・保安規定違反で「新規制基準に適合していない状態」だと指摘しています。
そして、東電のみならず、すべての電力会社に同様の問題がないか詳細な調査を実施し、3月31日までに報告するよう指示文書を出しました。

ところが、運転中の川内原発1・2号と、原子炉起動を1月末に控える高浜3号、同様に2月末に起動予定の高浜4号については、特別扱いをして、原発の稼働を最優先にして、具体的調査報告の提出を免除しています。
1月6日の規制庁文書では、川内1・2号については「ケーブルの分離に係る施工方針が示されており、当該方針どおりに施工されていることを使用前検査において確認を行っている」。
高浜3・4号については「当該方針に係る使用前検査を現在実施中である」と書いているだけで、不正なケーブル敷設があったのかどうかもブラックボックスです。
さらに「指示」では、東電の不正が他の事業者にも「共通する可能性がある」との認識に立ち、品質マネジメントシステムの検証を一般的に求めています。

高浜原発の場合は、関西広域連合や福井県原子力安全専門委員会等で「原子炉停止、冷却等に必要な安全機能の系統分離方針(3時間以上の耐火能力を有する隔壁等)を確認」と規制庁は説明しています。
実態は確認せずに、関電の「方針」だけを確認したということでしょうか。あまりにも無責任です。

要請事項

高浜原発3・4号の原子炉起動は中止し、川内原発1・2号は運転を停止したうえで、ケーブル不正敷設問題について、他の原発と同様に詳細な調査報告等を提出させること。

※1:柏崎刈羽原子力発電所における不適切なケーブル敷設に係る東京電力からの報告に対する評価及び今後の対応について」
2016.1.6原子力規制庁 http://www.nsr.go.jp/data/000135349.pdf

署名呼びかけ団体:川内原発30キロ圏住民ネットワーク/反原発・かごしまネット/福井から原発を止める裁判の会/避難計画を案ずる関西連絡会/
グリーン・アクション/アジェンダ・プロジェクト/NPO法人 使い捨て時代を考える会/美浜の会/ FoE Japan/原子力規制を監視する市民の会/グリーンピース・ジャパン

署名第一次集約:2016年1月20日 第二次集約:2月20日

紙版署名の送り先(郵送かFaxでお願いします)
グリーン・アクション 京都市左京区田中関田町 22-75-103
Tel:075-701-7223 Fax: 075-702-1952


 

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明日に向けて(1203)高浜原発再稼働への動きを見据えつつ災害対策についてお話します!

2016年01月14日 22時30分00秒 | 講演予定一覧

守田です。(20160116 22:30)

年頭にあたっての世界の俯瞰の途中であり、トルコでの事件も分析中で、その間にジャカルタでも爆弾が破裂しましたが、原子力災害対策について何か所かでお話しますので先にお知らせしておきます。
これもまたまったく無謀な高浜原発の再稼働が強行されつつあるからです。まずは再稼働を食い止めるために多くの方と努力したいと思いますが、同時に、災害対策を広げていくことが重要だと思います。

今回はこれまで語ってきたこの点とともに、まったく違う方向を目指しつつある京都市と大津市の災害対策の違いについても触れたいと思います。
またいよいよ1月31日より篠山市で安定ヨウ素剤の事前配布が始まりますので、この点についても触れます。

なお篠山市で全市民向けに配られている「事前配布説明会開催のお知らせ」をFacebookに掲載しましたので以下からご覧下さい。配信元は篠山市役所市民生活部市民安全課防災係です。
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10206789706799577&set=pcb.10206789719959906&type=3&theater

まずはじめに1月16日土曜日に大阪市でお話します。
天満橋の「エル大阪」においてです。

翌日17日に京都府八幡市でもお話します。
午後2時より八幡市「浄泉寺」においてです。

22日に京都市でお話します。金曜日の関西電力京都支店前抗議行動の後です。
午後7時15分から「キャンパスプラザ京都」においてです。

30日に滋賀県野洲市でお話します。ここでは主に自然災害対策に焦点を当ててお話します。
午後2時より「コミュニティーセンターやす」においてです。

なお来月の取り組みですが、2月28日午後2時より滋賀県高島市でも原子力災害対策についてお話する予定です。
詳細が決まり次第、お知らせします。

以下、それぞれの企画の案内を貼り付けておきます。

*****

1月16日大阪市

「平和と電気ネット」第8回学習会

なお「平和と電気ネット」は「平和」(平和外交、安全保障など)と「電気」(原発、自然エネルギーなど)の問題について学習するメーリングリストで、学習会や講演会も開催しておられるグループです。
このネットの第7回と8回の学習会の講師を務めさせていただくことになり、12月の「原発事故と健康被害~内部被曝って何?~」という講演に続き、今回は「原発災害にいかに備えるか」の題でお話します。

大阪市天満橋のエルおおさか(研修室3)で13時30分から16時30分まで。
参加費500円
主催「平和と電気ネット」

なお会場が狭いため、要申込です。
ご参加を希望される方は、事務局の野村東洋夫様にご連絡ください。以下がアドレスです。
nomtoyo@wing.ocn.ne.jp

*****

1月17日京都府八幡市

◇『原発からの命の守り方を学ぶ』八幡のつどい ◇
https://www.facebook.com/events/1732679616953046/

高浜原発から80㎞圏内に位置する、京都府八幡市。
原発が再稼働されれば、万が一の事故の際には、八幡市にも放射能汚染や健康被害が及ぶ危険性は否めません。 
  
原発再稼働から、子どもや家族を守るために…私たちができること。
篠山市原子力災害検討委員をされている、守田敏也さんを講師に迎えて、「原発からの命の守り方」を八幡の皆さんで一緒に考えていきましょう。
  
◇日時:2016年1月17日(日)
◇開演:13:30 15:30まで 参加費無料
◇会場:八幡市「浄泉寺」(八幡市八幡馬場41-7)
 tel :075-981-2201

◇講師:守田 敏也さん (篠山市原子力災害対策検討委員)

主催:「放射能から子どもを守るママの会 八幡」 
  
参加者把握のため、こちらのページからの参加申し込みを受け付けています。 
参加予定の方は、参加予定をお知らせください。
お問い合わせは、代表:山田 (090-4647-5024)まで 
  
※「浄泉寺」さんをお借りしての講演会のため、人数により「寺子屋」もしくは「本堂」での講演会になります。
※「浄泉寺」の駐車場はほとんど使用できない状態になります。駅前パーキングに止めていただくか、公共交通機関を利用してお越しください。
※「浄泉寺」へは、八幡市駅から徒歩15分ほどです。
  
*****

1月22日京都市

 京都の今を考えるⅢ ―どうなる原発!編―
https://www.facebook.com/events/953779554692984/

高浜原発が動き出すかも
危ないでしょう どう考えても
そもそも政府も関電も
嘘つきだから信用できないし

でもどこがどう危ないのか
ごちゃごちゃしていてわかりにくい
きちっと知って
ごまかされないようにしたい

高浜原発から
京都市役所までたったの61.6㎞
だから京都市も私たちも当事者
なのに今の京都市の
原発事故対策は寒すぎる・・・

ここで頑張らないと
大変なことになってしまうかも

高浜原発からの
私たちの命の守り方
京都の町の守り方を
一緒に考えよう

☆主に原発問題をテーマに今の市政について考えていきたいと思います。
メイントーク 守田敏也 高浜原発の危険性と防災について
スピーチ   山田みすず 八幡市の取り組みについて

1月22日(金)
ところ キャンパスプラザ京都 5F第4演習室
じかん 19:15~21:00(キンカン終了後)
主催「京都の今を考える」実行委員会
TEL 090‐3704‐3670(マキタ)

入場無料(カンパ制)

*****

1月30日滋賀県野洲市

防災、減災 自然災害に備えて
命を守るためにできること、一緒に学びませんか?

「気候変動」や「地震の活動期」といった言葉をよく耳にするようになり、大地震や大型台風、竜巻、局所的豪雨、大洪水といった大きな自然災害が地球規模でひんぱんに起こるようになってきたように思います。
このような自然の驚異に対して、私たちはどのようにすれば命や財産を守ることができるのでしょう?
東日本大震災以降、東北支援活動を通して被災地の教訓から防災についても研究してこられたジャーナリストの守田敏也さんをお招きして、自然災害の防災、減災についてのお話をお聞きしたいと思います。
多数のご来場をお待ちしております。

演題 防災・減災 自然災害に備えて
講師 守田敏也さん
日時 1月30日(土) 14時~16時(受付13時半より)
場所 コミュニティーセンターやす 研修室1,2(旧称 野洲公民館)JR野洲駅南口より徒歩3分 野洲文化ホール隣り

参加費 800円
主催 暮らしを考える会
お申込み・お問い合わせ asnowa_kouenkai@yahoo.co.jp 077‐586‐0623

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明日に向けて(1202)中東・トルコ・ロシア等々に広がる混乱を捉える-年頭に世界を俯瞰する2

2016年01月12日 19時00分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160112 19:00)

年末から京都市長選や大津市長選などでさまざまに動いていて「明日に向けて」の更新を怠ってしまいました。申し訳ありません。また頑張って書き綴っていきたいと思います。

さて前号で戦争と貧富の差の拡大の中で混迷を深める世界のあり方を俯瞰しました。
そして問題が、1970年代末期から猛威を振るい始めた新自由主義のもとで、世界の中の貧富の差が著しく開いており、社会的矛盾が蔓延していることにあること。
しかもアメリカが2000年代に入って、アフガン、イラク戦争など、その暴力的体質を全面化し、破滅的な戦争を続けてきた結果、中東が乱れに乱れ、その中で「イスラム主義武闘派」を自称する人々がさまざまに台頭してきたこと。
この構造化をベースに、ISなどへの欧米各国の空爆がエスカレートし、これに対する報復としての殺人攻撃もエスカレートしつつあること、これらが今起こっていることです。

さらにこうした暴力の全面化は、各国のいわば自制をかなぐり捨てた暴力化にもつながり、戦争参加がどんどん拡大されつつあります。
これも簡単に構造を観ていくと次のように整理することができます。
まず第一に2003年からの米英によるイラク侵略戦争によって、イラクの統治機構が崩壊してしまい、周辺地域の政治的安定性が失われ、武装勢力の群雄割拠状態ができてしまったこと。
その中でクローズアップされているのがIS(イスラム国)ですが、この地域への周辺各国の利害は必ずしも一様ではなく、思惑の違いもある中でISだけでなくさまざまな勢力がしのぎを削る状態になっていることです。

2015年前半まで、米英とこれに追従するアラブ各国のISへの空爆が攻防の軸となっていましたが、この中でシリアが国家的に崩壊し、膨大な難民が出てきてしまいました。難民の多くはヨーロッパ、とくにドイツに向かいました。
こうした中で昨年夏にトルコが新たに参戦しました。トルコはシリア情勢をめぐっては長らくアサド政権を批判して反政府武闘派を支持しつつも、ISをめぐる攻防については傍観的態度をとり続けていました。
しかしトルコ政府が長年にわたって独立運動を弾圧してきたクルド人の中の武闘派が、シリア国境付近でISとの対峙の先頭に立ち、アメリカからの支援を集めるなどの中で参戦し、ISばかりでなくクルド人武闘派への攻撃も始めたのでした。

これに対して親アサド政権のロシアもまた対ISでの参戦に踏み切りました。ロシアの直接的な利害は、地中海に自由にできいける冬に海が凍らない港を、長年にわたってアサド政権に借り受けていることにあります。
このためロシアとしてはアサド政権が倒れるのはまずい。そのため対IS攻撃を宣言しつつ、その実、シリアの反政府武闘派への攻撃を強めました。ちなみにこれらの反アサド政権の武闘派を支援しているのもアメリカです。
トルコとロシアはともに対ISを掲げつつ、実はアサド政権に対しては真逆の立場にあるわけですが、そのような中でトルコ上空への侵犯を理由に、トルコ軍機がロシア軍機を撃墜し、一気に両国の緊張関係が強まってしまいました。

ロシアの側から見ると二つの重要なポイントが見られます。というのはそもそもロシアはウクライナの同行をめぐって欧米との緊張関係の中に先に入っていたことです。
ウクライナは2000年代に入って、親ロシア派と親欧米派が政権交代を続ける不安定さを続けてきましたが、2014年になって親ロシア派政権を親欧米勢力がクーデタで打倒。新政権を打ち立てました。
するとロシアは迅速に軍事力を展開させ、黒海の北部にあるクリミアを選挙。住民投票によってロシアへの編入を決めさせてしまいました。さらに東部のドネツク周辺で親ロシア派を支援し、内戦状態にコミットを続けてきました。

この一連の流れをロシア側から分析すると、旧ソ連邦の崩壊以降、旧ソ連圏を欧米勢力によって次々と浸食されてきた流れを断ち切るような位置性を持っており、そのためにもクリミアの占領が行われたと言えます。
というのはクリミアは、ロシアとトルコの間で数百年の間に5回も行われた来た露土戦争の主戦場の地であり、ロシアにとって愛国心が発揚される位置性のある場でもあるからでした。
ロシアはこの行動において欧米との軋轢を覚悟し、実際に経済制裁を受けましたが、国内でのプーチン政権への支持率は高く、迅速な軍事行動に強い支持が集まりました。

2015年夏以降の、ロシアのイラク・シリアへの全面的軍事介入は、ロシアの軍事的意向を国内外にさらに示すものとしても行われたことをみておく必要があります。
このためにロシアは巡航ミサイルは最新鋭大型爆敵機などを惜しみなく戦線投入しました。というかおそらくは長らく待ち望んできた実践テストを兼ねての参戦だったと思われます。
このときロシアの計算の中に入っていたのは、実はクリミア半島占領のときもトルコが欧米の経済制裁に同調せず、静観を守っていたことにあっと思われます。実際、ロシアはトルコのエルドアン政権と原発輸出に合意し、建設を始めようとしていました。

トルコの側も、南の側でのISと諸勢力とのぶつかり合いにも、クリミアをめぐるロシアと欧米の対立にも不介入の姿勢を示し、国の南北での政情不安、軍事対立の激化に深入りしない戦略をとってきたのだと思われます。
しかしトルコの内側にも大きな位置性を持つクルド人勢力がISとの攻防でどんどん台頭し、支持を集めることになったことをみすえて、大きくかじ取りをかえ、軍事介入に踏み込みました。
踏み込んでしまうと実はトルコはシリアをめぐってはロシアと利害が反対の立場にあります。欧米との対立をかかえている上にさらにトルコとの対立激化をのぞんでいなかったはずのロシアの目論見が崩れてしまった。

一方でトルコの側からすると大変なパンドラの箱を開けてしまったのではないでしょうか。あの地域でトルコが関わることでさまざまな矛盾が均衡を失ってとめどない混乱の加速を産んでしまったのではないか。
もちろん、ロシアもトルコもIS支配地域に激しい爆撃も加えていますので、報復の対象となってしまってもいます。そのためロシアの旅客機がすでに爆弾を仕掛けて落とされて200人以上が死んでいます。
そんな中で不可解なことも起こっています。とくに謎なのは昨年10月3日にアンカラで起こった爆弾事件です。100名を越す死者が出ました。トルコ政府はすぐに「ISの犯行」と断定しましたが、それならISは自らの行為を誇るはずです。

しかし自らが行ったという声明は出ていない。では犯人は誰なのか?憶測が飛んでいますが、実はトルコ政府の側が仕組んだのではないかと言う分析もトルコの多くの方たちが語っています。
ともあれこの事件は、僕にはトルコが大変な混乱の中に踏み込んでしまったことの象徴の事件のように思えます。今後、さらなる事件が起こってしまうかもしれません。


・・・みなさま。なんていうことでしょう。ここまで書いていたら、つい先ほど、イスタンブールで爆弾がさく裂したという報道が飛び込んできました。本当になんていうことだ・・・。
詳細はまだ分かりませんが、すでに10人が犠牲になったと報じられています。ということはまだ犠牲者数が増えるのではないかと思われます。
イスタンブールには知り合った方たちもたくさんいます。でも知り合いであれ見知らぬ誰かであれ、僕は誰にも死んで欲しくないし傷ついて欲しくもない。でもまた死者が出てしまった・・・。

世界遺産のスルタンアフメットモスク(通称ブルーモスク)やアヤソフィア博物館がある旧市街の歴史地区だそうで、昨年春に僕が二日かけて一人で夢中になって歩いたところです。
宿泊はブルーモスクの裏手の安いホテルだった。あのとき、一人で興奮して歩き回ったあの街のどこかで爆弾が破裂し、そうしてあのとき目にした人々の誰かが亡くなったのかも知れません。

平和を!平和の道を探さなくてはいけない。そのためにこの事態と僕は向き合い続けます。
分析を続けます。

続く

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明日に向けて(1201)年頭に世界を俯瞰する・・・連載1200回を超えて-カンパの訴え1

2016年01月05日 15時00分00秒 | 連載の節目に・・・カンパのお願い

守田です。(20160105 15:00)

みなさま。明けましておめでとうございます。
昨年のみなさまの恩に心から感謝申し上げます。みなさまの支えがあってこそ2015年を走り抜くことができました。昨年はとみにそんなことを痛感する一年でした。
今年も精一杯の活動を行います。どうかよろしくお願いします。

同時に今回の投稿をもって「明日に向けて」は連載1200回を超えました。この前に地震情報を合計46回出していますので、通巻では1247回目になります。
2011年3月11日から今日まで約1.4日に1本のペースで発信してきました。
今後も引き続き発進していきますが、現代世界が大きな転換点にあることを見据え、今後は領域を文化・哲学・思想等々にも拡大したいと思っています。

それらはすべて密接につながっています。
無論、基軸は放射線防護活動に置きますが、よりトータルな展開を行うことを通じて、私たちが、明日に向けて、いかに考えるべきなのか、考察の素材になることを提供し続けたいと思います。
連載1200回を超えて、こうした活動の継続のため、みなさまにカンパを呼びかけます。ぜひお力添え下さい!以下、振込先を記しておきます。

 振込先 郵貯ぎんこう なまえ モリタトシヤ 記号14490 番号22666151


年頭にあたって世界を俯瞰したいと思います。
東日本大震災と福島原発事故から5年近くが経ちました。
この間、日本社会だけでなく世界が大きく変わってきました。この変化をどう捉えたら良いのでしょうか。

昨年年頭に僕は私たちが立っている場が、世界史的にどのような流れの中にあるのかを分析し、この場で連載しました。
その時に突き出そうとしたのは、新自由主義の登場の背景と私たちがなすべきことでしたが、あのフランスの新聞社襲撃事件が起きてしまいました。
さらに後藤さん、湯川さんが人質になっていることが発覚し、二人の救出に全精力を傾けたいと思ったこともあって、連載を中断してしまいました。

ご存知のようにその後、二人は殺害されてしまいました。こうした暴力の応酬の流れが止まることを願いつつ、平和に向けた発信を続けましたが、世界の暴力の応酬はむしろエスカレートしていきました。
昨年の夏ぐらいからIS(イスラム国)を叩くと称した空襲が、各国の参戦のもとに強化され、たくさんの民間人が巻き込まれました。
これに対する報復の無差別殺害事件が、モスクワ行き飛行機の爆破やパリの劇場での乱射による100名以上の殺害などの形で行われました。アンカラでの爆弾を使った100名殺害のように、実行者がはっきりしない事件も起きました。

僕は今一度、この世界の流れをおさえておくべき必要性を感じています。そのために以下に昨年の連載のアドレスを記しておきます。

 明日に向けて(1005)世界を新自由主義が破壊している・・・年頭に世界を俯瞰する-1
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8e0a39551f43bdbef371752ad4b75098

 明日に向けて(1006)ケインズ主義の崩壊と新自由主義の跋扈・・・年頭に世界を俯瞰する-2
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/8fc6ceaebfc21528ad16188ec248f8f3

 明日に向けて(1007)高度経済成長と新自由主義に共通する非人間的価値観・・・年頭に世界を俯瞰する-3
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/a2b0d7045410bc422dfa3efdae72a1e1

 明日に向けて(1008)私たちは開発の中で大切なものを失ってきた・・・年頭に世界を俯瞰する-4
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/c1e7d8b766935cabd514323ce9ce208a

 明日に向けて(1010)フランス新聞社襲撃事件の背景にあるものは何か-(年頭に世界を俯瞰する-5)
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/922073679244fa4b684e8db1b99c7523

 明日に向けて(1011)アメリカこそが過激主義者を生み出してきた元凶だ!(年頭に世界を俯瞰する-6)
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/2aa88bebde2c1c46ab8d09083a065176

僕が書いたのは、私たちの社会の矛盾は、何も安倍政権になってから深まったのではなく、新自由主義以降に生まれたのでもないこと。むしろ戦後の各国の経済成長のもとでたくさんの大切なものが失われて、矛盾が拡大してきたことでした。
ただしこの矛盾にはさまざまな歯止めがありました。社会主義の影響がそこにありました。

しかし1970年代後半から社会主義が崩れだし、旧ソ連や東欧社会主義政権が80年代末から崩壊していきました。同時に資本主義の中で社会主義を取り入れてきたケインズ主義も崩壊していきました。
その意味でこれは現代資本主義の行き詰まりでもありました。もっと大きくは近代の行き詰まりです。科学の力によって生産力を発展させ、経済を成長させていくことに未来を託す考え方の瓦解です。

その恐ろしい表れの象徴だったのが、スリーマイル島、チェルノブイリ、福島と続いてきた原発事故であり、放射能による健康被害の激化でした。
いやそもそも放射能による被害は、核実験の繰り返しですでに世界に大変な規模で起こってきたことを私たちはもっと自覚する必要があります。
ここに表れたのは科学の発達で無限の力を手に入れることができる。今できないことも先送りすればいつか解決できる。だからビックパワーを得よう。その中で儲けたいものは儲ければいいという近代のパラダイムの限界です。

さらに現代ではこの上に、貧富の差の強烈な拡大が襲ってきています。つつましやかな生活をしている人が汗水流して働いて作り出した価値の搾取と収奪が激化しているのです。
これを進めたのものこそ資本主義の行き詰まりを突破すると称した新自由主義でした。実態は弱肉強食の市場経済への舞い戻りでした。
この序曲をなしたのは1970年代に世界が金本位制から変動相場制に移行したことです。ものの価値をはかる絶対的な基準がなくなって為替が激しく動き、そこに人々が群がるようになりました。

あらかじめある通貨を安い時に買っておけば、高くなった時に売り払って大儲けできてしまう構造が生まれ、マネーゲームが拡大し始めました。
これらは合法的に行われていますがおかしいと思わないでしょうか。働きもしないで大儲けができる。その儲けは一体どこから来るのかと言えば、日々、汗を流して人々が生み出したものからです。
だから今の世の中では真面目に働いていてもいいことはないと思われがちです。そんなことはないのですが、手っ取り早く他人の生み出したものを収奪できるシステムの拡張が世界のモラルをも激しく壊しているのです。

そんな理不尽なことの横行の中で、今、世界中でイスラム教徒が増えています。イスラム教の理念があこぎな儲けを戒めているからです。
いやもともと他の多くの宗教も、他者の生み出した価値の強奪など認めていません。にもかかわらずキリスト教国のアメリカが悪辣な儲けに奔走し、仏教の強い日本がその後ろを走っている。
資本主義を一番批判してきたはずの社会主義国の中国も、儲け主義をひけちらかせているため、キリスト教世界の欧米に虐げられてきたイスラム圏の思想に共感が集まっているのだと僕は思います。

ただしそこにアメリカ流の暴力思想が入ってしまった。出発点は旧ソ連のアフガン侵攻へのイスラム教徒の抵抗にアメリカが大きく介在したことでした。
その後にさまざまなイスラムを名乗る武装集団が生まれました。これらの人々はアメリカの暴力思想をコピーしてしまいました。
原爆投下に顕著なようにアメリカは平気で無差別殺戮を行ってきましたが、戦争の中ではこのように非人道的な方が強い。武装集団が取り入れたのは人殺しが最も上手なアメリカの戦争方法でした。

しかも今、世界ではこうした武装勢力に、社会の底辺に落とされ、絶望を深めた人々が合流しだしています。
昨年、起こったパリの事件も、フランス育ちの若者が、社会への絶望感の中で、命を捨てても報復を行う決意を固め、実行してしまいました。
アメリカでは武装集団に共鳴した若い夫婦が、組織的接触もないまま、近隣の人々を殺害するということまで起こってしまいました。

この流れは絶対に空爆によっては断ち切れません。というよりこの流れはアフガン・イラク戦争の中で拡大してきたのです。
恐ろしいのはこれに対する反撃が、欧米の軍隊に向けられていた段階を越えて、各国の都市で爆発しだしていることです。

しかし私たちはまだこの攻撃がある種のモラルのもとで行われていることも見ておくべきです。
大量の人を殺すだけならば、もっと容易にやれることがあります。ガスタンクの爆破や鉄道転覆でも大変なことになる。さまざまな毒薬も容易に作れてしまいます。
まだ攻撃はそこまでエスカレートしていません。ぜひとも私たちはこの段階で攻撃を止めなくてはいけない。

そのためには元凶であるアメリカなど欧米の攻撃を止めさせる必要があります。武装集団の攻撃はこれらに対する報復なのですから。欧米の攻撃は過った解決法というよりも、問題の元凶そのものなのです。

続く

 

 

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