守田です。(20140630 23:30)
すでにさまざまな形で伝わっているように、昨日6月29日、東京の新宿で、集団自衛権に反対する男性が歩道橋の上に登り、暫くメガフォンで主張を述べた後に自らに火を放ちました。
火は男性の全身を覆いましたが、周りにつめかけていた消防隊がただちに放水を開始。マットを敷いた床に男性を落としてさらに消火を継続しました。男性は一命はとりとめたと報道されています。
この男性の行為がさまざまな形で伝わっていますが、まずはっきりと自分の意見を述べたいと思います。
彼の新宿決起は義挙です!!日本の若者が人を殺し、殺されることに派遣されようとすることを、命をはって食い止めようとされたからです。断固支持します!
彼は自らに火を放つ前に、与謝野晶子の「君死にたまうなかれ」を読まれたそうです。
そうです。私たちはこの国の若者に、人殺しをさせてはいけない。殺される場に立たせてもいけない。若者の命がかかっているのです。そのために男性は命賭で訴えを敢行したのです。
これまで世界の中でもこうした決起は繰り返し起こってきました。お隣の国、韓国では1970年、平和市場の22歳の青年、全泰壱(チョンテイル)が、当時の悲惨な労働者たちの実情の改善を訴え、自らに火を放って「僕の死を無駄にするな」と叫び、絶命しました。
当時の韓国は軍事独裁下の国。労働運動にも激しい弾圧が繰り返されていました。その韓国政府を強力にバックアップしていたのが、日本の自民党政府でした。
チョンテイル青年はその理不尽な体制に命をかけて抗議を行いました。そしてその思いは瞬く間に韓国全土に伝わり、独裁政権を揺るがす民主化の大きなうねりが起こっていったのです。
このインパクトは日本にも波及してきました。だんだんに彼の思い、決起にいたる過程の出来事、彼の遺した言葉が伝わり、私たちの心を揺り動かし、韓日の民衆連帯のもとでの、独裁を倒す努力が重ねられていったのです。
僕自身も1977年、高校3年生のときに、チョンテイル青年の決起のことを知り、ものすごい衝撃を受けました。そして彼の思いをシェアしたくて、日本の中での韓国民主化支援運動に起ちあがりました。
僕が許せなかったのは独裁政権を自民党政府が支えていることでした。そのため日韓定期閣僚会議反対集会に赴きました。
当時の、韓国軍事政権と連携していた日本の警察も、今よりもずっと暴力的だった。警官隊とデモ隊との衝突でもみくちゃになるなかで、僕は機動隊に「公務執行妨害」の名目で逮捕され、警視庁丸の内署に留置されました。高校3年生の9月の時でした。
そのとき留置場に韓国の若者たちの獄中記が差し入れられ、むさぼるように読んだことを覚えています。韓国の若者たちはみな「チョンテイルの死を無駄にしない」との決意で、圧政に立ち向かっていました。
今の日本はあのときの韓国と同じではありません。私たちにはまだまだ強い人権がある。しかし今や国会は完全に骨抜きにされています。憲法と言う国の根幹をなし、政権を制限する法典が、議員たちの論議も経ない閣議決定で捻じ曲げられようとしています。クーデターです。
それだけではありません。膨大な数の人々が本来、飲み食いも、寝ることも禁止されているはずの放射線管理区域の中に今も住まわされている。当然にも行うべき国の保障のもとでの避難が行われていません。国家が何も責任をとっていないのです。
さらに「原発関連死」で少なくとも約1500人もの福島の方が亡くなっているのに、つまり東電がそれだけの人を殺害しているのに、ただの一人の逮捕者も出ていない。
今は私たちの国の法律はぐちゃぐちゃなのです。法的正義がまったく通らない。憲法違反が堂々とまかり通ってしまっている。それなのに政府は東京オリンピックという「平和の祭典」をやれるとさえ思っている。
そんな状況の中で、今、さらに憲法9条が解体され、自衛隊が他国に行って、米軍を守るために戦わされようとしている。戦後、唯の一人も海外の人を殺したことのない自衛隊が初めての殺人をさせられようとしています。
当然にも自衛隊の若者にも死が強制されることになります。命の問題が差し迫っている。だから彼は自らの命を差し出す決起を行ったのでしょう。
胸が震えます。もちろんすごく痛いし悲しい。でもそれは全泰壱(チョンテイル)の死を知った時の衝撃と重なります。だから僕は彼の義挙に感謝し、心からの支持を表明したい。そもそも若者のために命を投げ出した行為が誰からも支持されないなんてそんなことあってはならない!
「命を粗末にするな」とか言う声も聞こえます。でもそれは安倍政権にこそ向けるべき言葉です。公明党幹部にこそ向けるべき言葉です。安倍自民党と公明党幹部がこの国の若者に人殺しをさせ、殺されることを強制しようとしているのです。問題の本質はここにこそある!
さらに付け加えたいのは次のことです。とくに心ある公明党員のみなさん、創価学会員のみなさん。聞いて下さい。
私たちの国、あるいはアジアでは、これまでの歴史の中で僧侶たちが繰り返し衆生の幸せのため、自らの命を投げ出してきました。自らの命を捧げることこそ最も高貴な供養とされてきました。
私たちの国や東アジアの仏教の中心にあるのは法華経の教えです。その巻第七の薬王菩薩本事品第二十三には、一切衆生喜見菩薩という求道者が出てきます。
彼は法華経に学んだ後、「神通力によって奇蹟を現したとて供養にはならない。自分の肉体を捨てることによって供養するにしくはない」と考えていきます。
そうして「沈香・乳香・薫陸香(くんろくこう)の樹脂を食べ、チャンパカの花の油を飲」んで12年を過ごしたのち、次のような行為に及んだのです。
「自身の肉体を天上の衣服でつつみ、香油にひたし、堅い決心をした。彼は決心をしたのちに、如来と『正しい教えの白蓮』という経説に供養するために、自分の身体に点火した。」
これに対して、「80のガンジス川の砂にひとしき尊き仏たちが、すべて、彼の行為を賞賛し喝采した」とあります。
彼らは「立派だ。これこそ偉大な志を持つ救法者たちの発揮しうる真の勇気であり、これこそ如来への真の供養であり、教えへの真の供養である」と述べたのです。(引用は『法華経』(下)岩波文庫より)
こうした教えを受けて、本当にたくさんの僧侶が命を投げ出してきました。飢饉のとき、あるいは天変地異のときに、集団で入水していく僧侶たちすらいた。歴史にたくさん記録されています。
さらにアジアに目を移すならば、ベトナム戦争のときに、ベトナムの僧侶たちがアメリカの侵略に抗議して自らに火を放ちました。苦しむ衆生のために自らを捧げたのです。
チベットでも、中国の抑圧に抗議してたくさんの僧侶たちが身体に火を放っています。
そしてそれらが世論を動かし、歴史を動かし、人々の幸せの拡大につながっていったことが実際にたくさんありました。それらの一つ一つが義挙でした。
法華経は仏典の中でも非禁欲的で、人々が豊かになり、喜びを増やし、幸せになることこそを奨励している経典です。
それは諸教の中でも明るい経典であり、だからこそ、東アジアで絶大な人気を誇り、語り継がれてきました。京都を中心に日本に浸透している「おもてなし」の精神もその出発点は法華経にあると僕は解釈しています。
法華経は、真理のため、衆生のために命を投げ出すこともまた最高の生き方として、喜びとして説いている。それは宗派をこえて私たちの集合的無意識の中にまで織り込まれているものと言っても良いのではないでしょうか。
この世で最高の喜びとは何か。人を喜ばすこと、人を幸せにすること、人の笑顔をみることにある。そのためだったらわが身を投げ出しても悔いはない。そんな思いが私たちのアジアには大きく漂っているのではないか。中国にも、韓国にも、北朝鮮にも、他の国々にもです。
安倍政権はこのまったく逆をいく政権です。その証拠に、東北・関東の人々が被曝で悶絶の苦しみの中にいるのにまったく助けようとしない。それどころか「今も未来も健康被害はまったくない」などと大嘘をついて被害者を踏みしだいている。
アメリカが「大量破壊兵器をイラクが隠し持っているから」とのいいがかりで始めたイラク戦争に対しても「大量破壊兵器がないことを証明しなかったイラクが悪い」と開き直る始末。いいがかりの末に大量に殺害したイラクの人々への痛みをかけらも持ってないのです。
ちなみにイラク戦争のときに首相としてアメリカを全面的に支持したのは小泉氏であり、官房副長官だった安倍氏です。安倍氏は明確にイラク戦争の責任者の一人なのです。彼はそのことを問われたと思って逆切れしたのでしょう。
その安倍氏がありもしないような「想定」を持ち出し、これまでの自民党の憲法解釈=国民への約束すら軽々と捻じ曲げて、戦争に日本の若者を駆り立てようとしているのです。これを止めずして一体どうするのか。そう考えて男性は起ちあがったのです。
その決起のインパクトが今、世界中を駆け回っています。凄い力です。世界の多くの国の人々が、日本が自国軍隊の戦闘を禁止する憲法を持っていること、それを安倍政権が変えようとしていること、これに対して命をかけて止めようとする日本人がいることを知ったのです。それはどれだけ私たちの力になったことでしょうか。
またアメリカの戦争に加担しようとしているのが、ウルトラナショナリストの安倍政権と大多数の党員を裏切った公明党幹部たちだけであること、これに対して大きな反対の声があることもまた世界中に示されつつあります。今後、世界の報道は私たちのデモもおいかけてくれるでしょう。それは私たちをウルトラナショナリストの安倍首相とを分けて見る眼を世界に与えてくれるでしょう。
それやこれや本当にたくさんの意味で、この男性は私たちに大きなプレゼントをくれました。心から感謝したいです。そうして彼の熱き思い、身を焦がしてまでも若者たちを守ろうとする、深く優しい心を共有したいと思います。
そしてここまで書いて付け加えたいのは、焼身という行為は、やはりあまりにも心が痛いし悲しいということです。とにかくまずは助かって欲しい。元気になったらお会いして一緒にデモをしたい。そうしていつかどこかで「憲法9条を守れたね」と笑い合いたいです。
最後に新宿で決起された男性にメッセージを送ります。
新宿のあなたへ
あなたはあなたの
命をかけた
若者たちのために
未来のために
真実のために
愛のために
平和のために
深く胸を打たれ
感謝し
共感し
続こうと思うのだけれど
でもあたなよ
死なないでください
どうか
生き延びてください
一緒に
歩んでください
このまま
あなたと出会わずに
あなたの声を聞けずに
あなたのいない世界を
迎えたくはない
あなたと一緒に
若者たちの
子どもたちの
柔らかい笑顔が見たいのです
だから
あなたの決起を
心の底から支持しながら
僕は
生きてくださいと
あなたに叫びます
ともに
一緒に
みんなで幸せを紡ぎ出して
笑い合いましょう
いつの日か
必ず