明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1079)安保条約も逸脱しアメリカのための戦争に走る安倍政権を止めよう(5月2日篠山)

2015年04月29日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150429 23:30)

安倍政権がアメリカで戦争に突っ走っています。

日米両政府は27日、ニューヨークで自衛隊と米軍の役割分担を決めた「日米防衛協力指針(ガイドライン)」の大幅な改定を合意しました。
最も重要な点は、従来のガイドラインが日本の防衛にアメリカが関与することをベースとする「安保条約」に基づき、日本有事、および朝鮮半島有事などの「周辺事態」への対応への指針としていたことに対し、地域的制約をなくしてしまったことです。
要するに世界中どこでも米軍の戦闘行動に自衛隊が参加することを約束してしまったのです。安保条約にも逸脱し、もちろん憲法9条にも完全に違反しています。

しかも安倍政権はより具体的な項目において、国内法を国会で審議し、成立させなければならないとしてきた戦時の機雷掃海や米艦防護、弾道ミサイル防衛などの集団的自衛権を行使する活動内容をアメリカに約束してしまっています。
国会どころか公明党との与党協議さえも無視しています。民主主義のルールを踏みにじった暴走であり独裁政治そのものです。あまりにひどすぎる。
安倍首相のやり口は、国内で国民・住民を十分に説得できないことを、勝手に外国と約束し、既成事実化し、推し進めてしまうというもので、合意のプロセスを踏みにじる民主主義の破壊行為そのものです。こんなことを絶対に許していてはなりません。

しかも安倍首相はこのような暴挙を働きながら「(日本が)戦争に巻き込まれるとレッテル貼りのような議論が行われるのは大変残念だ」と国内での安倍政権批判に言及したと言われています。
さらに「60年安保闘争」で倒された祖父の岸信介元首相を引き合いに出し「55年が経過し批判が間違っていたことは歴史が証明している」「(安保条約により)戦後日本の繁栄があり、アジア太平洋地域の平和と安定が守られてきた」とも語ったそうです。
私たちは日本民衆を侵略戦争に駆り出したA級戦犯でありながらあろうことか首相に返り咲いた岸信介氏以降、日米安保同盟のもとでアジアの人々に塗炭の苦しみを強いてきたこの国の歴史を賛美するこの考え方とこそ真っ向から対決しなければなりません。

何より私たちが忘れてはならないのはこの安保条約のもとで、米軍が沖縄を始め、日本各地の基地からベトナムなど東南アジア各国に出撃し、北ベトナム爆撃をはじめとした大変な戦争犯罪を行ったことです。
「アジア太平洋地域の平和と安定が守られてきた」どころか、ベトナムは「絨毯爆撃」にさらされ、さらには枯葉剤など猛毒を散布されるなどして、未だにその後遺症に苦しみ続けています。
この国が戦火にさらされなかったのは、ベトナムの人々が侵略してくる米軍への自衛的な武力の発動にとどめ、出撃拠点の在日米軍基地にまで攻撃してこなかったからです。その意味でベトナムの人々の寛大さゆえに私たちは直接的な戦火を免れたのです。

もちろんそのことは、私たちの国の中で、激しいベトナム戦争反対運動が繰り広げられたことをベトナムの人々が知ってくれていたからだとも思います。
60年代後半の激しい学生運動も、ベトナム戦争を背景にしなければ起こりえなかったことでした。
しかし一方でそのころの日本企業が、戦争特需で大儲けしたことも否定できない事実です。日本は朝鮮戦争への経済的関与で戦後復興を成し遂げ、ベトナム戦争への関与で、経済成長を成し遂げたのです。

その後の私たちの国の経済的爛熟、バブル期のモラル崩壊と、その後のさらにひどい状態への移行もまた、僕はベトナム戦争による血塗られた儲けにこの国が乗ってしまったことと無関係ではないと思います。
しかも朝鮮戦争、ベトナム戦争と続いたアメリカへの戦争協力は、私たちの国への原爆の投下や都市空襲、沖縄上陸戦などでのアメリカ軍が重ねた戦争犯罪を問う力を内側から削いでしまい、この国をアメリカのもっとも悪い側面に隷属させてきました。
僕はそれが岸信介元首相がベースを作った「日米安保体制」のもとで重ねられてきたものであり、安倍首相が急速に加速させているものだと思います。

私たちは今、そのことにこそ目覚め、平和を守るというより、平和を取り戻していくべきだと思います。
原爆を投下され、たくさんの自覚的・非自覚的ヒバクシャを抱えていたのに、さらに原発を押し付けられ、喜んで受け入れてしまったこの国のあり方。その挙句に福島原発事故に横着したこの日本国のあり方を変えたい。
例え国内が平和であっても、他国への政治的・経済的・軍事的侵略への加担によって経済が成り立っているようなあり方の中にいるのはもうごめんです。もうこれ以上、加害者の中に僕はいたくないです。いやこの国を加害国の中に置き続けたくないです。

そしてそれは多くの人々の率直な思いだと思うのです。
人が苦しんでいるのを見過ごしていたら心が穏やかではない。ましてやそれに加担していると知ったら、夜もおちおち寝ることができない。
それは世界中の人々の大半を占める共通の思いではないでしょうか。

そのためにすべてのみなさんに憲法9条の本当の精神に立ち戻ることを安倍首相に対抗して訴えます。憲法9条の精神は、戦争放棄です!集団的自衛権どころか個別的自衛権すら否定した世界初めての憲法が日本国憲法なのです。
なぜってどの国も自衛権を理由に戦争をはじめるからです。近代国家の中で一つとして「これから侵略を始めます」といって戦争を行った国などありません。常に自衛権の行使が戦争の大義とされたのです。
それに対して私たちの憲法が唄ったのは、自衛権をも含んだ「国の交戦権」なのです。

憲法前文にはこう書かれています。
 「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」
憲法9条にはこう書かれています。
 「1.日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2.前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」

私たちは今こそこの憲法に帰るべきです。(ただし「日本国民」を「日本人民」にあらため、国籍による差別をなくすべきです)
そのために、軍隊である自衛隊を解体し、災害救助隊に再編しましょう。実際に自衛隊がやっている活動のほとんどは災害救助で、自衛隊はまだ一人の「外国人」も殺してないのだからこれは完全に可能です。
ただしそうはいっても自衛隊は人殺しの訓練もしてきていますから、隊員をリハビリし、平和思想に戻れるようにする教育は必須です。

その上で日本の技術をふんだんに投入し、さまざまな災害に対応できる車両や機材を開発し、世界の中で群を抜いた災害対応力を作るのです。
そもそもこの国には世界の活火山の1割もが存在しており、国土の広範な地域がいつ大地震や大津波にやられるかも分からないのですからこれは最もこの国の人命・財産を守ることにも直結します。費用対効果を考えても最も合理的なのです。
そして災害救助隊が整うや否や、この部隊をこそ世界の災害地に積極的に派遣していきましょう。

今や世界は地球的規模での気候変動に見舞われており、各国各地域で「想定外」の自然災害が頻発しています。
そこに日本から災害救助隊がたびたび派遣されていく。そして世界最高水準の救助技術を披露していくのです。そうなればこの国への信頼度、親近感はどんどん増していきます。
当然にもそれはこの国へ軍事的な危害を与えようとするあらゆる意図に対しても大きな抑止力になるでしょう。「あんなにいい国を攻撃してはいけない」。それこそが最も強い防衛力です。

しかも日本がこうした行為を積極的に行っていけば、この国は、人類の歴史の中で、はじめて他国の災害に関与することを自国の大きな使命とした国として歴史に残っていくことになるでしょう。
そうしてやがて人類が成熟を深め、今の国境も次第になくして、融和を深めて行ったとき、その国境の垣根を越える象徴的な行為を率先して行った国、ないし地域として私たちの行いが歴史に刻まれるでしょう。
何も「日本」という名が残る必要などありませんが、私たちが戦乱にあけくれた野蛮な人類前史から、友愛にもとづく人類後史への移行に貢献したことが歴史に刻まれれば、僕はそれは少しは愉快なことだろうと思います。

こういう僕の論に対して、「それは単なる夢だ、青っちょろい理想だ」と言う声がたくさん聞こえてきそうですが、それに対して僕はこう答えましょう。

You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one
I hope someday you'll join us
And the world will live as one

あたなは僕を夢見がちなやつだというかもしれない。
でも僕は一人じゃないよ。
僕はいつか君が僕らと一緒になってくれると思う。
そしてきっと世界は一つになるんだよ。

Power to the people!

*****

こうした内容を5月2日に兵庫県篠山市でお話します。
以下案内を記しておきます。

日本国憲法施行 68周年 守田敏也氏講演会
「子どもたちを放射能と戦争から守るために」

5月2日(土) 13:30~15:30
篠山市立中央図書館視聴覚ホール
参加無料

主催:九条の会・ささやま
連絡先 079-552-4857(池田)

後援:篠山市・篠山市教育委員会・神戸新聞社・丹波新聞社


 

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明日に向けて(1078)使用済み核燃料中間貯蔵施設建設を食い止めよう!(5月9日宮津)-1

2015年04月28日 21時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150428 21:00)

川内原発、高浜原発再稼働問題が大きく揺れていますが、そんな中で5月9日に若狭湾にある京都府宮津市で講演することになりました。
「原発ゼロをめざす宮津・与謝ネットワーク結成」集会に呼んでいただき、講演をさせていただきます。あらたな運動体の立ち上がりにお話させていただくのはとても光栄です。とくに今回のネットワークの立ち上がりには重要な意義があるのでなおさらです。
チラシにはこう書かれています。「~わたしたちは原発再稼働に反対です。京都・宮津に使用済み核燃料の中間貯蔵施設をつくるのはごめんです~」。
・・・同会の結成は原発再稼働に反対するとともに、使用済み核燃料の「中間貯蔵施設」作りの動きと対決するものでもあるのです。

宮津に「中間貯蔵施設」が作られるのではないかという推測は、関西電力の八木誠社長が、昨年9月の記者会見で、「使用済み核燃料の中間貯蔵施設の候補地は『福井県外』『港がある』『発電所内』」と発言したことを大きな根拠としています。

 核燃料中間貯蔵施設、条件で自治体困惑 関電社長が発言
 京都新聞 2014年10月21日 22時40分
 http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20141021000169

もう少し詳しく見て行くと、関西電力の保持している発電所は4府県に13か所あります。

京都府  宮津エネルギー研究所(宮津市)・ 舞鶴発電所(舞鶴市)
大阪府  南港発電所(大阪市)・堺港発電所(堺市)・ 関西国際空港エネルギーセンター(泉南郡田尻町)・多奈川第二発電所(泉南郡岬町)
兵庫県  姫路第一発電所(姫路市)・姫路第二発電所(姫路市)・ 姫路LNG基地(姫路市)・相生発電所(相生市)・ 赤穂発電所(赤穂市)
和歌山県  海南発電所(海南市)・御坊発電所(御坊市)

このうち京都府の2か所のみが若狭湾に面しており、福井の原発群から近距離にあります。
他の11か所に運ぶにはいったん大きく西に航路をとり、山口県をまわって瀬戸内海を運行しなければならず、もし施設ができたときの運用の弁やコストを考えると京都府の二つと比べて大きな開きがあります。
さらに宮津エネルギー研究所は大阪府の多奈川第二発電所と共に「長期計画停止中」となっています。
「中長期的な需給状況や経済性などを踏まえ、当面稼動する見通しがない発電機を計画的に停止する運用」とのことで、何のことはない、使われていない施設なのです。これらをみただけでも宮津エネルギー研究所がターゲットとなっている可能性が極めて高い。

さらに地元では市役所の人事の動きや、議員に対する関西電力からのアプローチ、またエネルギー研究所での新たな施設建設計画の動きなど、中間貯蔵施設建設に向けたと思われるさまざまな兆候が市民によってつかまれています。
これらと八木誠社長の発言を重ね合わせたときに、施設建設にむけた動きがあることはほぼ間違いのない事実だと思います。
またもともと「福井県外」「港がある」「発電所内」という条件だけでも、宮津エネルギー研究所は候補の中に入りうるのですから、僕はそれだけでも積極的に施設建設反対の声を上げて行く意義があると思います。
ただし距離の近さから言えば、舞鶴発電所も候補の中に入りますから、ぜひ舞鶴でも声をあげて欲しいです。

いや私たちは「施設がやってくる地域だから声をあげよう」というだけでなく、どこからも声を上げて行く必要があります。
この点で注目すべきは、電気事業連合会会長でもある同じ関電の八木社長が、3月20日の記者会見で、この間、決定された原発5基の廃炉に関連し、中間貯蔵施設の設置で、電力各社が連携する可能性を検討していく考えを示したことです。
この際、廃炉作業によって発生する放射能濃度が高い廃棄物についても、「今後の規制基準の整備を踏まえたうえで各社共同での処分地確保を検討する」と述べています。

 電事連会長「中間貯蔵施設で連携を検討」-使用済み核燃料処分で個社対応の限界露呈
 東京経済ONLINE 2015年03月25日
  http://toyokeizai.net/articles/-/64005

記事には八木社長が次のように述べたことも紹介されています。
「中間貯蔵施設を造るのは個社対応が基本だが、なかなか難しい。だが、この問題を解決しないと、円滑な廃炉ができないので、(共同設置など)あらゆる可能性を含めて検討したい」。
「互いに困っているなら、連携がスタート地点だと思う」。

さきほどあげた関電の京都府以外の11施設に港があるかどうかは確認できませんでしたが、こうなってくるとこれらの施設とて港など物理的条件が揃うなら候補にあげられない可能性はなくなります。伊方原発からは姫路などの方が近いからです。
反対に各電力会社の火力発電所も対象になる可能性があるし、電力会社が連携しあいながら中間貯蔵施設の建設を模索し始めたことに対し、私たちも全国で共同でこの施設の建設を許さない運動を組み上げていく必要があります。
その意味でも建設候補の可能性がとくに高い宮津から大きな声を上げることはとても重要です。

そもそも使用済み核燃料中間貯蔵施設とは、それぞれの原発サイトにある使用済み核燃料を再処理工場に送るまでに「中間貯蔵する」という名目で作られようとしているものですが、再処理が思うように進まないからこそ生じてきたものです。
再処理とは使用済み核燃料からプルトニウムを取り出すことであり、それを「もんじゅ」など高速増殖炉に入れて燃やし、稼働させながらさらにプルトニウムを作り出すというのが、核燃料サイクルの「夢」でした。
しかし未だ世界で高速増殖炉建設に成功した国はないし、成功の展望もまったくありません。また再処理工場も深刻な事故を繰り返しています。日本は独自に六ケ所村に作りましたが、当初よりトラブル続きで長い間、とまったままです。

このため燃料プールに核燃料がどんどん詰まってしまって容量がなくなりつつあります。いやそもそもいったんは容量が尽きてしまったので、燃料の間隔を設計段階よりも詰めてしまう「リラッキング」をしたのですが、それでも一杯になりつつある状態なのです。
だからこの施設を作ることができなければ、例え再稼働に踏み切っても原発は数年で行き詰ってしまいます。それゆえ原発再稼働と連動するものとして、使用済み核燃料貯蔵施設の建設が目指されようとしているのです。
電事連会長としての関電社長が、貯蔵施設建設での電力会社間の連携を呼びかけている理由もここにあります。今、強引に進められようとしている原発輸出と同じく、瀕死の状態の原発と原子力産業の延命策なのです。

重要なことは、だとすれば私たち民衆の側が、貯蔵施設のそれぞれの候補となりうる場で連携しあい、反対を貫いていけば、原子力政策全体にストップをかけることができるということです。
そのために単に宮津のためだけではなく、日本全体の未来を守るために、この場への核燃料貯蔵施設の建設反対の声を上げることが必要です。僕も宮津の方たち、若狭の人たちと一緒に、ここから日本を守る声を上げるつもりです。
5月9日の講演では、高浜原発再稼働問題とともに、これと深くつながっている核燃料貯蔵施設建設問題を扱いたいと思いますので、ぜひ多くのみなさんにご参加いただき、聞いていただきたいです。集会案内を末尾に貼り付けておきます。

なお「中間貯蔵施設」問題をめぐっては連載を続けます。

*****

5月9日 京都府宮津市

原発ゼロをめざす宮津・与謝ネットワーク結成のつどい
~わたしたちは原発再稼働に反対です。京都・宮津に使用済み核燃料の中間貯蔵施設をつくるのはごめんです~

宮津市 歴史の館にて 午後1時より
1、オープニングの歌
2、原発ゼロをめざす宮津・与謝ネットワーク結成宣言
3、あいさつ(津島英一)
4、福島支援宮津プロジェクトからの報告
5、講演「生き続けられるふるさとを~高浜原発再稼働問題から~」(守田敏也)
6、今後の取組と行動提起(濱中博)
*つどいの終了後、ミップル前宣伝。

主催 原発ゼロをめざす宮津・与謝ネットワーク
連絡先 与謝地方教職員組合内 0772-22-0321

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明日に向けて(1077)トルコシノップで原発反対行動に44000人が参加!

2015年04月25日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150425 23:30)

ほんの少し前にトルコのプナール・デミルジャンさんから報告がありました。
チェルノブイリ原発事故から29年を迎えたこの日、トルコのシノップに44000人が集い、大きな原発建設反対集会が開かれました。胸が熱くなります。
プナールさんが最速で書いた記事をご紹介します。

 4万人がシノップで原発に反対!
 http://yesilgazete.org/blog/2015/04/25/40-bin-kisi-sinopta-nukleer-e-gecit-yok-diye-haykirdi/

 交差点にも大きく「シノップ市民は原発に反対する」と書かれました!
 https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10153221114514534&set=a.10150758843444534.462464.604259533&type=1&theater

僕もシノップには4月12日に行ってきたばかりです。その時も熱い討論が行われました。
あの時、あの場にいたみなさんが今日の集会に参加されているのだと思います。
今回の訪問では最後の日に新聞社のインタビューも受けたのですが、非常に大きな記事を一面に掲載してもらえました。
これも今日の集会に向けての特集でもあったのではないかと思えます。その意味では今日の大成功に僕も少しだけ力になれたかもしれません。

 記事の写真をご紹介しておきます。
 https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10153207744594534&set=a.10150758843444534.462464.604259533&type=1&theater
 ネット版の記事も
 http://www.birgun.net/news/view/nukleer-felaket-tanigi-konustu-is-verdik-diyecekler-olume-goturecekler/16826


周知のように日本政府、とくに安倍政権はこの間、原発輸出に向けた「トップセールス」を精力的に展開してきました。
これは小泉政権による「2005年大綱」から路線化されてきたものですが、福島原発事故を経た今では、日本の原子力産業の重要な生き延び策となっています。
なぜか。答えは簡単で日本の全原発が止まっているために産業の維持がどんどん苦しくなっているからです。
ウラン燃料をはじめ、原発関連物資が売れないし、技術者も仕事がないのでどんどん腕がなまっていく。さまざまな意味で、全ての原発が止まっていることが脅威であり、だから輸出で時間稼ぎをしたいのです。

そもそも原発はどれぐらい止まっているのでしょうか。本日4月25日で日本が原発ゼロになってから587日が経過しています。
ただしその前に動いていたのは大飯原発のみ。3号機と4号機の2つの原子炉しか動いていませんでした。他の原発はほぼ4年近く動いていてないのです。
今年の4月15日を基準点としてそれぞれの原発がどれぐらい動いていないか具体的に見てみましょう。

 柏崎刈羽2号機(新潟)            7年9カ月
 柏崎刈羽3、4号機               7年8カ月
 島根1号機(島根)                5年
 女川2号機(宮城)                4年5カ月
 浜岡3号機(静岡)他3原発3基      4年4カ月
 高浜1号機(福井)                4年3カ月
 東通1号機(青森)他2原発2基      4年2カ月
 福島第二1号機(福島)他3原発8基  4年1カ月
 川内原発1号機(鹿児島)他3原発5基 3年11カ月
 高浜原発4号機(福井)他1基       3年8カ月
 敦賀原発2号機(福井)他4原発4基  3年7カ月
 玄海1号機(佐賀)他1基           3年4カ月
 伊方2号機(愛媛)他3原発3基      3年3カ月
 島根2号機(島根)他1基           3年2カ月
 高浜3号機(福井)                3年1カ月
 柏崎刈羽6号機                 3年
 泊3号機(北海道)                2年11カ月
 大飯3号4号機(福井)             1年7カ月

 平均停止期間 約3年10カ月

 グリーンピースジャパンの以下のページの資料から作成
 http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/1/blog/50568/

このように日本の原発はすでに平均で3年10カ月も動いていないのです。しかも世界最大出力を誇る柏崎刈羽原発の2号機~4号機が8年近くも止まってしまっています。
柏崎刈羽原発が止まっているのは直接的には地震の影響です。しかしその後の安易な再稼働を私たちが許してこなかった面も大きくあります。
その意味で私たち日本の民衆は、すでに福島原発事故以前から原子力行政に一定の歯止めをかけてきたのです。

同時にこのように並べてみると非常にはっきりするのは、原発がなくても電力は完全に足りているということです。
いやそれも正確ではありません。原発が止まって、多くの人々が省エネを考えだし、実行してみたらかなり無駄な電力が使われていたことが分かったのでした。電力は余っていたのです。
今はどうでしょうか。夜に町に出てみて下さい。たくさんの自動販売機が煌々と闇夜を照らしており、街中にはたくさんのコンビニエンスストアが営業しています。その意味で実はまだまだ電力使用は減らせます。

実はこのこと自身が、政府にとっても電力会社にとってもとてもまずいのです。上述の日本の全原発の停止状況は、実は日本のような経済大国でも原発なんか必要ないことを如実に示してしまっているからです。
政府や電力会社はこのことに世界が覚醒することを何よりも恐れているのだと思います。
繰り返します。日本という経済大国は、ほとんどの原発が平均すれば4年近くも動いてないのに、経済を回すことができているのです。
ここに「原発のウソ」がくっきりとあらわれています。原発など実は無用の産物なのです。いますぐに世界の原発を止めたって何とかやっていけるのです。(根拠は不安定な電源である原発は必ずバックアップの火力発電を持っているからです)

やっていけないのは原子力産業だけです。ウランが消費できない。技術を維持できない。関連産業を保てない。
だからこそ、生き延びるために必死になっている。青息吐息で延命を模索しているのです。その大きな道が原発輸出です。

もちろんこれに地域でさまざまな意味で大国にのし上がりたい各国政府の思惑が絡んでいます。トルコのエルドアン政権がより大きな支配力を得るために原発を欲しており、日本の延命策と利害が一致しています。
だから強引な原発輸出・輸入が進められようとしているわけですが、反対に言えば、これを食い止めることで、それぞれの政権の覇権化を食い止めつつ、日本の原子力産業の延命策にふたをすることができます。
その意味で原発輸出を止めることは、受け入れ国と日本の住民の双方の未来に大きな幸をもたらすことになります。

だから日本に住まうみなさん。本日、シノップで行われた4万4千人の行動は、直接に私たちの幸せをサポートするものでもあることを知ってください。
だからこそ私たちはこれに応えぬく必要があるのです!!

核のない世の中を目指すことは、さまざまな意味で本当の平和な世の中を目指すことにもつながります。
私たちはそのための共同事業を、トルコの方たち、世界の方たちと今、ともにしているのです。
だから今日のシノップでの集会の大成功を共に祝いましょう!そこから勇気と希望をくみ取りましょう。
シノップの熱い息吹を私たちの力に変え、行動に変え、トルコの人たちに力強くお返ししましょう!

シノップ反原発集会の大成功に乾杯!!


 

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明日に向けて(1076)川内原発再稼働容認判決は火山学会の噴火の予知などできないという常識を無視している!

2015年04月23日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150423 23:30)

昨日22日に鹿児島地裁は、地域に住民が川内原発再稼働差し止めを求めた仮処分申請を却下する決定を下しました。
これに対して前号で後藤政志さんの提言に学びつつ、加圧水型原発における過酷事故対策の誤りの解説を載せておきましたが、今回はこの決定の中で特筆つべき点について論じておきたいと思います。

端的に言って火山噴火に対する見積もりです。
川内原発の立地する鹿児島県は、桜島の度重なる噴火で知られる火山活動が活発な地域です。
当然にも火山活動への対応が問題になるわけですが、その場合の大きな軸は桜島などの活火山で今後、大規模な噴火がありうるのかということと、それを事前に予知できるのかということです。

鹿児島地方裁判所の下した決定の中では「可能性が十分に小さいとは言えないと考える火山学者が火山学会の多数を占めるものとまでは認められない」とされました。
しかしこれに対して判決直後に、火山学会重鎮の火山噴火予知連絡会会長で東京大学の藤井敏嗣名誉教授がこの決定を全面否定する以下のようなコメントを出しています。

 「カルデラ火山の破局的な噴火については、いつ発生するかは分からないものの、火山学者の多くは、間違いなく発生すると考えており、『可能性が十分に小さいとは言えないと考える火山学者が火山学会の多数を占めるものとまでは認められない』とする決定の内容は実態とは逆で、決定では破局的噴火の可能性が十分低いと認定する基準も提示されていない。
 火山による影響については、今回の判断は、九州電力側の主張をそのまま受け止めた内容で、しっかりとした検討がされていないのではないか。」

この火山学会の提言については、「明日に向けて」の紙面でも何度か取り上げてきました。
記事をご紹介します。

 明日に向けて(972)原子力規制委の噴火評価はデタラメ!火山学会の誠実な提言を受け入れるべきだ!
 http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011/e/9f924552b380fc1efc744322658a6fad

実は火山学会は、科学者としての良心にかけて、人間がまだまだ把握できていない火山活動を軽視することの誤りに対しての警鐘を打ち鳴らしてきているのです。
明日に向けて(972)でも紹介していますが、以下の記事(FoE Japanの満田夏花さんがドロップボックスに紹介)をご参照ください。

 火山の危険軽視 「予知可」科学的根拠なし 再稼働「安全神話」の復活
 東京新聞 2014年9月10日
 https://dl.dropboxusercontent.com/u/23151586/tokyo_140911.pdf

今回の鹿児島地方裁判所の決定は、このように火山学会の方たちが、繰り返し訴えてきた火山活動の軽視に対する警鐘をまったく無視したものであり、火山学会の方たちの科学的良心をも踏みにじるものに他なりません。
火山学会の方たちは、火山活動の予知が大変難しいこと、だからこそ火山活動を軽視してはならないことを本当に必死になって訴えてきたのでした。
さらに世界の1割におよぶ火山大国であるこの日本で、火山学への予算配分があまりに少なく、学会が存亡の危機にすら立っていることも訴えてきました。ここには目の前にある危機を直視しようとしないこの国の根本的欠陥への告発が含まれていました。

にもかかわらず、火山学会、なかんずく火山噴火予知連は、昨年の御嶽山の噴火の時に、「なぜ噴火を予知できなかったのか」と、社会から猛烈にバッシングされました。
それだけに火山学会や予知連は、噴火活動を容易に予知できるかのような考えこそが、この国に住まう人々に多大な危機をもたらすと考えて予知の難しさを語り続け、だからこそ、安易に予知を可能だと言い張った原子力規制委員会をも批判してきたのです。
これは学問的に良心から人々を災害から守ろうとするきわめてまっとうな姿であり、原子力規制委員会も鹿児島地方裁判所もこうした真摯な声に耳を傾けるべきです。

いやそもそも原子力規制委員会は、実はこうした火山学会の見解を知っているがゆえに、火山学の専門家を招請せずに新規制基準を作ったのではないかと思われます。初めから原発を動かせる基準作りを目指したからです。火山学者がいてはまずかったのです。
私たちはこの点に今回の決定の大きな矛盾があることを押さえ、ここで挫けることなく、川内原発再稼働反対の声を高めていく必要があります。

以下、決定を踏まえた弁護団の声明のアドレスを紹介し、とくにその中で噴火問題に触れたところをピックアップして貼り付けておきます。
ぜひこの点に学んでください!

*****

司法機関の住民の安全を守る責務を放棄した鹿児島地方裁判所 川内原発1号機、2号機再稼働差止仮処分決定に強く抗議する
2015年4月23日
http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/archives/15-04-23/

(噴火問題の個所のピックアップ)

破局噴火のリスクを無視した決定
南九州地方は、破局噴火を起こしたカルデラが数多く存在する地域であり、原発を設置する立地としては極めて不適切な場所である。
九州電力は①カルデラ噴火は定期的な周期で発生するが現在はその周期にないこと、②破局的噴火に先行して発生するプリニー式噴火ステージの兆候がみられないこと、③カルデラ火山の地下浅部には大規模なマグマ溜まりはないことから、破局噴火が起こる可能性は十分に小さいことから立地に問題はないと主張していた。

本決定は、「原子力規制委員会は、本件原子炉施設に係る火山事象の影響評価についても、火山学の専門家の関与・協力を得ながら厳格かつ詳細な調査審議を行ったものと評価できるから・・・不合理な点は認められない」とするが、完全な事実誤認である。
川内原発の火山影響の審査過程で、火山学者は誰も招聘されていない。火山影響評価ガイドをつくる段階で、一度だけ、火山学者が招聘されただけである。
本決定は、住民側の主張を容れ、長岡の噴火ステージ論とドルイット論文が一般理論のように依拠していることには強い批判があることは認めた。しかし、この批判が妥当するとしてもマグマだまりの状況等の知見、調査結果と総合考慮されるので、不合理とはいえないとしてしまった。現時点では、マグマだまりの状況を的確に調査する手法は確立されておらず、決定は事実誤認である。

火山学会の大勢は破局的噴火の活動可能性を認めている。
また、本決定は、破局的噴火の活動可能性が十分に小さいといえないと考える火山学者が、一定数存在することを認めつつ、火山学会提言の中で、この点が特に言及されていないことから、火山学会の多数を占めるものではないなどと判示し、石原火山学会原子力問題委員会委員長が、適合性審査の判断に疑問が残ると述べたことを無視している。
本決定は、他の箇所では「火山学者50人にアンケートを実施したところ、そのうち29人がカルデラ火山の破局的噴火によって本件原子炉施設が被害を受けるリスクがあると回答したとの報道がある」と認定しており、学会の多数が規制委員会の決定に疑問を呈していることは明らかである。

決定後のNHKの報道もこのことを裏付けている。火山噴火予知連絡会の会長で、東京大学の藤井敏嗣名誉教授は、「今回の決定では、火山による影響について、『国の新しい規制基準の内容に不合理な点は認められない』としている。
しかし、現在の知見では破局的な噴火の発生は事前に把握することが難しいのに、新しい規制基準ではモニタリングを行うことでカルデラの破局的な噴火を予知できることを暗示するなど、不合理な点があることは火山学会の委員会でもすでに指摘しているとおりだ。
また、火山活動による原発への影響の評価について、火山の専門家が詳細な検証や評価に関わったという話は聞いたことがない。」「カルデラ火山の破局的な噴火については、いつ発生するかは分からないものの、火山学者の多くは、間違いなく発生すると考えており、『可能性が十分に小さいとは言えないと考える火山学者が火山学会の多数を占めるものとまでは認められない』とする決定の内容は実態とは逆で、決定では破局的噴火の可能性が十分低いと認定する基準も提示されていない。
火山による影響については、今回の判断は、九州電力側の主張をそのまま受け止めた内容で、しっかりとした検討がされていないのではないか。」と述べたという。決定内容は、明らかな事実誤認であり、抗告審でこの誤りは必ず正さなければならない。

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明日に向けて(1075)川内原発再稼働も禁止すべきだ!~加圧水型原発事故対策の誤りを後藤政志さんに学ぶ~

2015年04月22日 18時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150422 18:00)

トルコから日本時間の16日夜に戻りました。翌17日は1日寝ていて、18日に京都被爆2世3世の会の年次総会に参加。
そして19日に朝から群馬県前橋市に向かい「アースデイ群馬inまえばし」に参加してきました。午後4時半から講演させていただきました。夜には前橋のみなさんからたくさんのお話をうかがいました。
翌20日は、東京で福島県須賀川市に自社工場のある会社の社長さんとお会いしました。何度も「明日に向けて」への手厚いカンパをしてくださっている方ですが、今回初めて福島原発事故以降の須賀川市での奮闘をお聞きしてきました。
トルコでも前橋でもさらには須賀川のことでも重要なことをたくさんつかんできましたがまだ整理中です。おいおい発信させていただきたいと思います。

なおこれらのことを連続で担っていたために、「明日に向けて」を書く余裕がありませんでした。
そのため一部の方に「守田はトルコから帰って寝込んでいるのではないか」とご心配をかけてしまったようです。
もちろん疲れはしましたが心地よい疲労で、それもだんだんに癒えています。
今回は体調を崩すこともなくいたって元気に行って帰ってこれましたし、その後にも元気に動き回っていましたのでどうかご心配なく!・・・ご心配をおかけし申し訳ありませんでした。お気遣いいただきありがとうございました。

さて表題にもあるように今回は「高浜原発に続き川内原発の運転も当然にも禁止すべきだ」ということをあらためて表明したいと思います。
というのは、川内原発1、2号機の運転差し止めを住民が求めた仮処分申請に対し、本日22日、鹿児島地裁(前田郁勝〈いくまさ〉裁判長)が却下の決定を下したからです。
鹿児島地裁は、再稼働の前提となる新規制基準や原子力規制委員会による審査に対して、どちらも「不合理な点は認められない」と語っていますが、まったく非科学的で無責任な決定であり、強く抗議します。
敗訴した住民の方たちは、福岡高裁宮崎支部に即時抗告する方針だそうですが、私たちも全力で「川内原発の再稼働も禁止すべきだ」という声を高めていく必要があります。

そのために川内原発の再稼働に向けた新規制基準やそのもとでの審査にどのような矛盾や誤りがあるのかをさらにしっかりと深めていきましょう。
今回はすでにポイントをご紹介してきた後藤政志さんの講演による当該箇所を再び文字起こししてご紹介しますので、どうかしっかり読んで下さい。
後藤さんの説明は毎回、本来設計というものはどういう思想に基づいてなされなければならないのか、プラントの安全性とはどのように担保されなければならないものなのかをバックボーンになされています。
このため、後藤さんの語られる思想面を学ぶことで、当該原発の問題だけではなく、他の原発やプラントに対する私たちの観察眼をも養うことができます。

この点で私たち自身の科学力をも発展させながら、原発再稼働を阻止する声を高めて行きましょう!
以下、後藤さんの講演から、川内原発(加圧水型原発)の重大事故対策のあやまりについの部分をご紹介します。なおこの文字起こしは守田が要約したものですので、その点をお含みおきください。

*****

後藤政志(工学博士)川内原発が溶け落ちるとき~元・原子炉格納容器設計者が問う原発再稼働~
2015年1月31日 薩摩川内市まごころ文学館にて講演 1時間5分45秒から1時間23分40秒
https://www.youtube.com/watch?v=4QEwDJhrwFE&feature=youtu.be

ここからが川内原発(加圧水型)のポイントになる。
川内原発では水素をどう処理するかということ、炉心の冷却をどうするかが問題だ。実は炉心の冷却ができない。
配管破断や電源喪失が起こった時に炉心を冷やそうとしても多分、水が入らない。この時は「あきらめましょう」となっている。
もう溶け落ちてもいい。そのために格納容器が大きいので、スプレーして水をふいて、下に水をためてそこに溶融物が落ちる。
そうするとコアコンクリート反応が抑えられてそのまま冷却ができるというシナリオになっている。これが加圧水型のシナリオだ。

そのときに水素が発生するのでどう処理するかが問題になる。再結合装置といって水素を化学的に処理する装置がある。それを付けることになっている。
しかし能力は1時間あたり1.2キログラムしか処理できない。過酷事故のときに出てくるのは数百キロだ。500キロから900キロぐらい。
したがってこれを数台つけても何の足しにもならない。焼け石に水だ。数%のものなど対策と言うなと言うのだ。

しかもアメリカでこの装置をあるプラントでつけようとしたら、この部分で水素が熱くなって水素が発火し、爆発を起こしてしまう可能性が指摘された。
そのためこれを付けるのはやめようということになった。そういう報告書が出ている。

その装置はあてにならないということで、電気式の水素燃焼装置の「イグナイター」を付けようとしている。
電気で通電して水素が出たらその時に燃やすというもの。水素が広がる前に燃やしてしまうというものだ。
しかし事故のときはどういう状態かと言うと、さまざまな装置が働くべき時に働かず、働くべきでないときに働いたりするものだ。
そのようにひねくれた考え方をしていって、その点をクリアしないといけない。

考えられることは、これを動かさないときに動かそうとして動かないことだ。困ってなんとか動かそうとするが、その間に水素がどんどん出て行く。
時間が経って、やっと直ったということで作動させたら、すでに溜まっていた水素をドーンと爆発させてしまうかもしれない。これはありうるシナリオだ。
事故とはそういうことだ。一番安全なときではなくてまずいときに作動することもあって、それを防げない限りは安全の確保はできない。

配管破断ならまだ対処の余地は残されているが爆発は違う。起こったらもうおしまいだ。
こんな危ない自爆装置はつけてはいけない。
水素が格納容器の中に8%ぐらいまで動かすと言っている。12%で危ないと言われている。しかしこんな数値だって信憑性がない。計算があまりに難しい。
一例を言うと、格納容器容積の精度もそれほどではない。中に複雑な構造物があり、機械の間に気体が入っていく。そうするとこの体積がどうのと言われてもとても難しい。
それらを考えてもとてもこれで水素処理ができるとは思えない。

しかも細かく読んでいくと自ら水素濃度が13%以上になることもあると自ら言っている。しかし短時間だから大丈夫だと言うのだが、必ずしもそうなるとは限らない。
それでもいろいろな条件で大丈夫だろうと希望的観測を述べているが、こういう考え方はまったくおかしい。
こういうあいまいなことをやってはいけないし、こんなぎりぎりの設計など絶対にしてはいけない。設計はもっと余裕を持って行うのが常識だ。

次に原子炉圧力容器に水を入れようとするのだけれど、入らない可能性がある。それで格納容器の上から水をふいて圧力容器の下に貯めると言っている。
しかし実際に設計図をみると、原子炉下部のキャビティ室の入口にドアがありそこに150ミリ程度の穴があってそこから水が入ることになっている。
あるいは開口部があり、これが195ミリ×395ミリになっている。
こういうところから水が入るといっている。水が溜まった後に溶融物が落ちてくる。

信じられないような絵にかいた餅だ。
実際の過酷事故では原子炉内のいろいろなものが壊れて流れてくる。15センチの穴など塞がってしまうと考える方が自然だ。
20センチ×40センチの開口部でも、何かが流れてきたら容易にふさがれてしまう。塞がらない方がまれだと思う。
ところがこれが塞がって詰まった時のことをまったく考えてない。

こうした装置は設計的には100%生きている場合と100%は動かない場合を考えなくてはいけない。
溶融物が落ちてきたときに水がないと、コアコンクリート反応が起こり、大量の水素と一酸化炭素などが発生し、冷やされずにどこまでも浸食していく。チャイナシンドロームになってしまう。
ほんの少しの水でも浸食がとまらないので同じことになる。
一方でしかし水がはってあってそこに落ちてきた場合は、水蒸気爆発が起こる危険性が高い。

私は福島原発事故の時も水蒸気爆発をとても恐れた。しかし福島原発のマークⅠ型原子炉はプールが真下になくて横になるので、溶融物が落ちてきても水の中には落ちなかった。
水蒸気爆発を起こしにくい条件だったので助かったのだと思う。
ところが川内原発の場合は、水蒸気爆発をわざと起こしやすくしてしまっている。

これに対して九電は水蒸気爆発は起こりにくいのだと言っている。
溶融物が落ちてくると細かく分かれて粒子の周りに空気のまくができる。
その状態からどこかの一個が蒸気のまくが割れて、水と溶融物が直接反応した時に水蒸気爆発が起こる。一個が起こすと連動して大きな爆発が起きる。

細かくみていていくとよくわかなかった。それで実験をやった。やったらなかなか起こらなかった。トリガーがなければ水蒸気爆発にはならないという。
しかし現実にはトリガーはいくらでもありうる。
水素が充満しているときに金属を落としただけで火花が出て爆発する。水蒸気爆発も同じで、トリガーがないなどというのは意味がない。
地震が来たらトリガーになる。トリガーが少ないから起こりにくいとは言えても、起きないとは絶対に言えない。

JEAEのレポートをみると実験でやっているのは実際の100分の1、キログラムの単位での実験だ。スケールが違いすぎる。
だからこの実権の報告書には、100倍の外挿、実機レベルではまったく実証されていない、結果の見直しがあり得ると書いてある。
にもかかわらず大丈夫だと言っている。まったくひどい。

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明日に向けて(1074)原発輸出を止めることで日本の原発を完全に止めよう!

2015年04月15日 07時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150415 07:00トルコ時間)

 
イスタンブールのホテルからです。
いよいよ今日がトルコ滞在最終日となりました。いつものことですが怒濤のような日々でした。たくさんの方と出会い、たくさんの話を聞き、たくさんの経験と知恵を詰めました。とてもありがたい一週間でした。
とくにこの旅の初めに14日に高浜原発再稼働禁止処分決定が出るという情報をつかみ、結果的に素晴しい朗報をトルコの方たちに伝えられてとても嬉しかったです。
 
発言内容もサムソン、イスタンブールでは変更しました。ご紹介した講演用原稿のうち、1の放射線の危険性の数値的目安の紹介に基づいた日本の放射能汚染マップの紹介と、2の小児甲状腺がんの広がりや心臓病の増加が懸念されるデータの紹介まではそのままとし、その後は割愛して日本の情報に差し替えました。
今回はメインテーマがチェルノブイリと健康問題であったために、事前にご紹介したような原稿を作っていったのですが、やはりもっと日本の情報を出してくれ、再稼働問題等もあった方が良いとの提案を受けたからです。それで福島県で住民の方たちがきちんとした防護服などないままに除染活動をしなければならなかったことや、子どもたちがマスクをして運動会をさせられたことなどを紹介しました。
 
また安倍首相がオリンピック招致発言において「原発はコントロールされている」「汚染水は完全にブロックされている」「今も未来も健康被害は全くない」と大嘘を言い放ったことへの批判を語りました。「私たちの国の首相は大嘘つきなのでだまされないでください」と話すと大きな拍手が起こりました。また浪江町議会がすぐさま「わが町は関連死で290人がすでに亡くなっている。福島を軽視し見下す政府と東電に憤りを禁じ得ない」と声明したことも紹介した上で安倍首相とエルドアン首相(当時)が握手している写真を示して「嘘つきにだまされないように気をつけましょう」と語ると大きな笑いが返ってきました。
 
その上で日本民衆の抵抗運動の写真を何枚か紹介しました。示したのは京都で行われている関西電力前での金曜行動です。僕もたびたび参加して撮影していますが、同じような行動が全国で250カ所近くで行われていること、(月1回の行動も含む)こんなことは日本の歴史の中でこれまでなかったこと、画期的な行動であることを紹介しました。
そして重要な情報として現在日本の全ての原発が止まっていることを明らかにしましたが、実はこの点はトルコの知識人層でもあまり知られていない情報だったので、伝える意義がとても高かったです。
 
次に伝えたのは日本政府はそこから原発を生き延びさせるために二つの狙いを持っていることです。
一つはとにかくどれかの原発を動かすことで、狙われているのは高浜原発と川内原発であること。そしてもう一つの狙いが原発輸出であることです。
なぜ原発輸出に日本政府が固執しているのか。端的に言って原子力産業を維持するためです。国内でたとえ一つか二つの原発を再稼働させたとしても、その後にたくさんの原発を動かすことは難しい。ならば先に輸出を進めてしまい、技術力などを保持するとともにいわば外堀埋めようとしているというわけです。
 
ここからは時間がないので発言に入れなかったことですが、原発輸出路線は、もともとはアメリカのブッシュジュニア政権のときに原発回帰政策が狙われたことにタイアップする形で小泉元首相が2005年の政策大綱で路線化したものです。しかももはや生産ラインを失っているアメリカに変わって、日本が原子力のリーディングカントリーにのし上がり、独自の輸出構造を作っていくことまでもが狙われました。
 
しかしアメリカはすでに原発回帰から撤退してしまいました。現実的な展望が見いだせなかったからです。だからまた福島原発事故以降、小泉元首相も転換を唱えだしたのではと僕は見ていますが、一方でアメリカに肩を並べ、さらにアメリカに変わって世界のリーディングカントリーになりたい安倍首相は、福島原発事故後も日本独自の原発輸出路線に固執してきたのでした。
そこで日本の原子力産業の延命という目的が付け加わったのです。あるいはそれこそ主目的になったとも言えます。
 
以上を踏まえて、トルコの方達には、「それだけに今、トルコの民衆と日本の民衆が固く連帯して頑張れば、原発輸出を止めることは可能だ、そのために自分たちの力をあげよう。民衆の力をアップさせよう。Power to the People!」と訴えました。大変、大きな拍手をいただけました。
 
さてここからは日本のわたしたちの問題です。
これまで述べてきたように、実際に原発輸出は日本の原子力産業の保持の位置性を強くもって行われようとしています。それだけに輸出政策を止めることには私たちの国の原発を止める上で非常に大きな位置があります。
さらに僕は再稼働の動き自身がまた原発輸出とも連動していると考えています。理由は単純です。自分の国で安全性が担保できないことを理由に原発が動かせなかったら、当然にも輸出に大きな影響が出るからです。
日本の原発がなかなか再稼働できないなかで輸出で時を稼ごうとしているわけですが、しかし輸出のためにも再稼働を急がないわけにはいかないというジレンマのもとに安倍政権は立っている訳です。だからこそ私たちは、日本の原発政策をさらに追いつめるために輸出反対にもっと力を注いでいく必要があります。
 
その点でも原発輸出国の人々との連帯はますます重要性が増しています。トルコやベトナムで原発反対の声が高まり、輸出ができなくなれば、今、一つの原発も動かせていない日本の原子力産業はますます衰退の道を辿ることになるからです。その意味でトルコやベトナムの方達の頑張りは、直接に私たちの原発のない未来の可能性を開くものとなります。そのような構造的なつながりをしっかりと把握して、私たちはトルコやベトナムを初めとする原発輸出が狙われている先の国々の人々との連携をもっともっと強めていく必要があります。
 
さらにトルコとの関係で言えば、今回の再稼働禁止決定で、電力会社や原子力規制庁が地震のことを把握できていないこと、いや今の科学の水準では最大の揺れがどれほどになるか把握できていないのであって、もしそれでも原発を動かしたいというのであれば、地震基準動を大幅に引き上げるべきだという点が打ち出されたこともとても大きい。
なぜかと言えばトルコもまた日本と同じような地震大国だからです。
日本国内で地震への備えがあまりに脆弱であることを指摘された原発を地震大国のトルコに輸出等していいわけがありません。
 
もう一つ、今回の決定は直接的に加圧水型原子炉を要する高浜原発に向けられたものですが、この原子炉を作ったのは三菱重工です。その三菱がトルコ・シノップへの輸出も担おうとしているわけで、今回の加圧水型原子炉への批判はそのままシノップへと輸出されようとしている原子炉の安全性への批判にもつながります。これもまた非常に重要な点です。
 
以上に踏まえて僕は帰国してから今まで以上に原発輸出反対のために奮闘しようと思っています。とくにその中でも僕の役割はトルコの民衆と日本の民衆の連帯の橋渡しになることですから、その点での努力をさらにアップします。頑張ります。心がうずうずしています。
 
ちなみに今はトルコ時間では朝の7時。
すでに予定されたスケジュールは全て終えていて、今日はグランドバザールなどを観光してこようと思っていますが、ありがたいことに午後2時よりトルコの新聞社が僕をインタビューしてくれることになりました。貴重な機会ですから高浜原発再稼働禁止決定の意義を語り、トルコ民衆との連帯、原発輸出阻止に向けた僕の熱い決意を披露しようと思っています。話したいことがいっぱいですからとても嬉しいインタビューです。
 
以上を終えて今夜のフライトで日本に戻ります!
みなさま。どうかトルコへの原発輸出を止める行動にぜひお力を貸してください。
以上でトルコからの報告を終えます!!
 
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明日に向けて(1073)高浜原発再稼働禁止処分決定!しかも新規制基準を痛烈に批判!

2015年04月14日 17時00分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150414 17:00トルコ時間) 

イスタンブールのホテルからです。
注目が集まっていた高浜原発再稼働差止をもとめた仮処分裁判、ついに決定が出ましたね!すでにたくさんの報道がなされていると思いますが極めて決定的なことです。僕はこの決定は、原発の危険性をさまざまな形でうまずたゆまず訴え、行動してきた日本の民衆の力こそが生み出したものだと思います。
「司法が勝った!」という表現もありますが、まあ、それはそれで良いのですが、僕自身は勝ったのは民衆だと思います。司法はあくまでまっとうで良識ある判断をくだしたということです。
 
たくさんの記事があり、まだ一つ一つを吟味できていませんが、とりあえず毎日新聞の記事をご紹介しておきます。

 高浜原発:3、4号機再稼働差し止め 福井地裁、仮処分
 毎日新聞 2015年04月14日 15時33分
 http://sp.mainichi.jp/select/news/20150414k0000e040208000c.html
 
ともあれ素晴しい勝利ですね!
今は日本時間では午後10時、こちらでは午後4時ですが、2時間後の6時から今回の訪問で最後の講演会が始まるので、その場でこの朗報をトルコ、イスタンブールのみなさんにお伝えします。
ちなみに講演原稿をアップしましたが、シノップでの発言後、アンゲリカ・クラウセンさん、アルパー・オクテムさんと討論をし、もっと日本の情報をたくさん入れて欲しい、ウクライナのことは今回は語らなくても良いのではなどのアドバイスをいただき、サムソンでの講演より内容を大きく差し替えました。そして講演の中にこの高浜原発をめぐる裁判のことも入れていました。そのため講師陣とコーディネーター一同、裁判のことを知っていました。
 
今朝は早朝早くサムソンをみんなでたち、飛行機でイスタンブールへ。その後、市内のホテルに向かいチェックインしました。さっそくホテルのWi-Fiを使ってニュースをチェック。ちょうどフロントでみんながパスポートを出している時に僕が「再稼働差止決定」のニュースをゲットして「やったあ!」と叫ぶとフロントの前でみんなから歓声が!アルパー・オクテムさんが僕に「おめでとう」と抱きついてきてくれました。
この感動そのままに今日の会場での報告を行うつもりです。
 
今回の決定、再稼働差止が出されたことそのものが素晴しいですが、内容的にもとても意義が深いです。
というのは決定内容が、高浜原発を動かそうとしている関西電力に対する批判にとどまらず、再稼働を認めた原子力規制庁の新規制基準そのものへの明確な批判になっていることです。
これは昨年5月に同じ福井地裁の樋口裁判長が出した大飯原発の運転差し止め決定と同じなのですが、今回は一歩踏み込んで、新規制基準への批判を前面に押し出しています。僕はこの点が素晴しいと思いました。
決定は以下の弁護団のページから読めるのでぜひご覧下さい。
 
脱原発弁護団全国連絡会
http://www.datsugenpatsu.org/bengodan/news/15-04-14/
 
決定文要旨
 
さてこれからイスタンブール町中での講演会が始まるのでどれだけ書けるかわかりませんが、非常に重要なポイントなので、主に決定文要旨に基づき、この短い時間でできる限りの解説を試みてみたいと思います。
 
まず1から3で論じられているのは地震についてです。
1では基準地震動700ガル以上について述べられています。基準地震動とは設計にあたってプラントが耐えられなければならない地震の揺れの最高値です。今回の新基準ではそれが700ガルであるとされているのですが、再稼働禁止決定では、700ガル以上の地震が来ないという根拠などどこにもないというまっとうな科学的知見が打ち出されています。
 
決定はこう述べています。
 「全国で20箇所にもみたない原発のうち、4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以降10年足らずの間に到来している」
・・要するに地震の想定など、従来の方法ではまったくあたってないではないかと指摘しているのです。
 
また活断層の状況から地震動の強さを推定する方式の提言者である入倉幸次郎教授が新聞のインタビューに以下のように答えていることも引用しています。
 「基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない。」「私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある」
・・入倉教授が述べていることは現代科学では私たちはまだ来るべき地震の最大値を把握することはできないのだという事実です。
これらから決定は「来るべき最大の地震である700ガルに耐えられるようにした」という関電の主張を退けているわけです。
 
2つ目にその700ガルまで耐えられるという主張のおかしさも指摘しています。というのはもともと高浜原発は370ガルを基準地震動として設計されたのでした。ところが今回、「実は余裕をもって作ったのでもっと基準地震動を引き上げても大丈夫だ。550ガルまでは大丈夫なことが分かった」と言ってここまでは何の対応もなしに数値をあげてしまいました。
このため耐震補強など何もせずにただ文言上だけで「370ガルまでは耐えられると言ってきたが実は550ガルまで耐えられることがわかった」と言っているにすぎません。ここが本当に酷いのですが、この点も裁判所はきちんと批判しています。ここまではいわば関電のひどさです。
 
その上で550ガルから700ガルへの基準地震動のさらなる引き上げにおける原子力規制庁の考え方への明確な批判が行われています。
というのが規制庁はこの150ガル分の引き上げにおいて新たな対策を施すことを要請した訳ですが、それがなんと地震で重大事故(過酷事故)が起きない対策なのではなく、「起きた時」の対策になっているのです。
端的に外部電源が喪失し、冷却ができなくなり、原子炉圧力容器がメルトダウンを起こしたときの対策です。
決定要旨には触れられていませんが、このとき新規性基準は圧力容器を納めている格納容器の上からスプリンクラーのように水を撒き、格納容器下部にためてそこにメルトダウンした燃料が落ちるようにする、それでそれ以上の事故の進展を防ぐといっているのです。メルトダウンという原発設計者が絶対にあってはならないと想定してきた事故をいわばあっさりとありうることにしてしまい、その時の対策を行ったと言っているわけです。
 
これはこの「明日に向けて」でも後藤政志さんの発言を紹介しながら何度も解説してきた新規制基準のまったくあやまったポイントです。原発は、いや全てのプラントは、非常時にどうなるのかを考えて安全装置を考えるのであって、それが突破されてしまうことは設計上の破綻なのです。つまりコントロールのできない事態、想定のできない事態がその先に続くのです。そうなることを許容するのは、ブレーキが壊れうることを前提にした車を売り出すのと同じことです。しかも原発は車等とは比較になりようもないほどの危険性を秘めているにもかかわらずです。
 
この点のあやまりを再稼働禁止決定はきちんと述べていて、とても胸のすく思いがしました。
大事な点はこれは高浜原発に限らず他のすべての加圧水型原発にも通じる問題だと言うことです。いや考え方は沸騰水型原発にも適用されているのですべての原発に通じる問題だと言えます。
福島で重大事故=過酷事故が起こったことを反省して、二度と過酷事故が起こさない原発を作るというのではなく、「過酷事故が起きないと考えて対策を立てなかったのが間違っていた。これからは過酷事故が起きうるとかんがえて対策を重ねることにした」という新規制基準のいわば居直りにも似た提言を、裁判所はそれこそ一刀両断しています。この点が実に素晴しいです。
 
さらに再稼働禁止決定では4において燃料プールの危険性がきちんと批判されています。
実はここは新規制基準がすり抜けようとしているところなのです。というのは原子力規制庁は重大事故=過酷事故の発生の可能性について「これまで核燃料は5重の防壁に守られていて放射能漏れは起きないと考えられてきたが福島原発事故の現実からそれが突破されてしまう可能性がありうることがわかった」という言い方をすることで、実は燃料プールにはペラペラの建屋以外、なんの防壁もないことを意図的に避けて、新規性基準を作ってきたのです。だから燃料プール対策はまったく触れられていません。
裁判所はこの点をもきちんと批判しています。
 
それらからするならば、1、基準地震動を大幅に引き上げて耐震工事をする、2、外部電源と主給水の耐震性を大きく引き上げてSクラスにする、3、使用済み核燃料を堅固な施設で囲い込む、4、燃料プールの耐震性を大きく引き上げてSクラスにする、これらから免震棟も即刻作らなければならないのであって、それがなされないのであれば運転は到底認められないとしています。これらが5、6で書かれています。
 
以上から、今回の再稼働禁止決定は高浜原発にとどまらず新規性基準そのものへの非常にまっとうな批判になっていることを私たちはきちんとつかみ広げていく必要があります。
今日のイスタンブールの講演ではここまで細かくは伝えませんが、ともあれみなさん、この点を踏まえて、原子力規制庁への批判そのものを強めましょう。
 
そう考えたら、実は東京のFoE JAPANがさっそく行動を提起していることを知りました。
いつもながら動きが速くて凄いですね。東京での行動になりますがご紹介しておきます。
行ける方はぜひご参加ください!
 
明日(4/15)12時~@原子力規制委員会前(六本木一丁目)
【原子力規制委前アピール】高浜原発運転差し止め仮処分決定を受けて
~ストップ!すべての原発の再稼動、 規制基準は撤回を!
http://www.foejapan.org/energy/evt/150415.html
 
さて僕も講演会に向かいます。
今回の決定を迎えることができた私たち日本民衆の力に誇りと自信を抱き、世界の核のない時代を作ろうという声と結合して前に進みましょう。
講演を頑張ってきます!
 
 
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明日に向けて(1072)福島原発事故と人々の健康と気づき(トルコ講演用原稿2)

2015年04月12日 08時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150412 08:30トルコ時間)

今日からはじまるシノップ、サムソン、イスタンブールでの講演用原稿の後半をお届けします!

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福島原発事故と人々の健康、気づき

守田敏也

4、ウクライナ政府報告書とウクライナ危機の持つ意味

この点で非常に大きな位置を持った報告書が提出されました。「ウクライナ政府報告書」です。(Twenty-five Years after Chernobyl Accident: Safety for the Future Ministry of Ukraine of Emergencies )

チェルノブイリ原発事故の被災者約250万人を追跡したデータです。重要なのは被曝によると考えられる病が多様に列挙されていることです。また原発周辺の高汚染地域からの避難民のうち、慢性疾患を持った人の割合が、1988年には31.5%だったものが2008年には78.5%に増えていることも指摘されています。なんと8割が慢性疾患です。

NHKがウクライナ政府報告書と、国際機関の一つ、国連科学委員会の見解が大きく異なっていることを示しています。ウクライナでは放射線による害とされている「心筋梗塞」「狭心症」「脳血管障害」「気管支炎」などを国際機関は認めていないのです。

汚染地で生まれた第2世代の影響も甚大です。慢性疾患を持つものの割合が1992年21.1%から2008年78.2%に激増しています。子どもの8割が病気です。このためウクライナでは子どもたちの学校の授業を短縮しています。学年試験の多くも廃止しています。

この報告書の画期的な位置性は、核政策の推進派であるICRPなどの国際機関への徹底批判になっていることです。これを認めればすべての放射線防護体系が崩れます。

しかし今、ウクライナ社会は混迷し内戦状態です。これにはチェルノブイリ原発事故の後遺症が関係していると思われます。甚大な被害のため社会が疲弊し分裂したのです。

ウクライナは原発の危機も抱えています。昨年11月末にヨーロッパ最大のザポリージャ原発が緊急停止しました。配線のショートのためでしたが一週間で再稼働しました。きちんとした点検が行われたとは考えにくい。内戦状態で電力事情がひっ迫していたからです。

さらに恐ろしいのはウクライナの原発はロシア製のため、核燃料が入りにくくなったことに対しアメリカ製核燃料が売り込まれたことです。親欧米政権の2005年から2009年にウクライナ南原発にこれが使われましたが、燃料棒が深刻に破損しました。親ロシアの前政権はこの燃料の使用を禁止しましたが、昨年2014年2月に親欧米派がクーデタを起こすと禁止が解除されてしまいました。ロシアは大事故を起こす可能性を指摘しています。

そればかりかロシアはすぐさまクリミアを軍事占領し、欧米と軍事対立しましたが、この核兵器の使用準備も行っていました。ウクライナは核をめぐる大変な危機の最中です。

 

5、放射線被曝影響の過小評価の仕組み

なぜ放射線被曝は過小評価されてきたのでしょうか。放射線と人間の関係が調べられたのは原爆投下の後です。アメリカはなぜ二つ落としたのか。広島がウラン型、長崎がプルトニウム型だったからでした。人間を使った核実験だったのです。そしてその後にアメリカが排他的に被災者調査に入りました。目的は原爆の威力を知ることと、被害を軽く見せることでした。このため放射線の影響が過小評価されました。

その仕組みを少し述べます。被曝を考えるとき、放射性物質と放射線を分けなくてはいけません。ライトで言えばライト本体が放射性物質、光が放射線です。このため被曝の仕方は二つあります。ライトに外からあたる外部被曝が一つ。ライトに相当する放射性物質を飲み込んで身体の内側からあたる内部被曝です。この時大事なのはあたる放射線は主にα、β、γ線ですが、α、β線はあまり飛ばないことです。空気中では4㎝と1m。細胞内では1000分の4㎜と1cmです。このため外部被曝では主にγ線にあたります。内部被曝では全部に当たるため放射性物質を飲み込んで生じる内部被曝の方が打撃力が高いのです。

ところが内部被曝では身体のごく一部が被曝するので、現実には測りようがないのです。これをアメリカは外部被曝に換算して数えることにしてしまいました。換算などできないにもかかわらずです。そのため被曝がとても軽く扱われました。

例えば心臓で考えると、アメリカの主張では同じ力であたった放射線はどこに当たろうとも同じ害をもたらすことになります。ところが実際には同じ力でも当たり所によってぜんぜん意味が違ってくる。心臓なら洞結節といって心臓の鼓動の電気信号を出すところがあります。ここが傷ついたら大変なピンチなのです。他のところとぜんぜん危険度が違います。あるいは針でつつくことを被曝と考えてみましょう。同じ力でついたのは同じ力だと言うのがアメリカの立場です。しかし同じ力でもほっぺたをつつかれるのと目の玉をつつかれるのではまったく打撃が違います。この被曝の具体性を無視し、内部被曝の特有な危険性を隠してしまったのが、アメリカが作り、国際機関に受け継がれた体系です。

なぜアメリカは内部被曝の影響を隠したのか。一つには人間の臓器に破壊的影響をもたらし、さまざまな病気を起こすからです。もう一つは内部被曝は測りようがないので管理ができないからです。しかしそれでは核戦略が維持できないので、アメリカはこの点を隠し、核大国がこれを認めたのです。このためにさまざまな病が被曝のせいではないと強引に言われています。このあり方を覆さなければなりません。

 

6、国際連帯で核の時代を終わらせよう!

そのために必要なのは国際連帯です。すでに強められてきています。昨年10月にも国際会議に参加しました。ポーランドで行われたもので、今日、一緒にいるプナールさん、アンゲリカさん、アルパーさんも一緒でした。「チェルノブイリとフクシマの後の未来のために」と題したもので、ベラルーシやウクライナからもたくさんの人が招かれていました。

主催してくれたのはドイツの団体でした。ドイツはチェルノブイリ被災者にとても深い支援を続けています。その理由の一つに、かつてベラルーシやウクライナが、ナチスドイツが攻め込んだ戦場だということがあります。そのお詫びもかねてドイツは1000以上の市民グループが支援をしているそうです。とても感動しました。

会議の中ではアメリカのマイケル・シュナイダーさんが講演し、世界的に原発がどんどん減っていることが示されました。世界でも横ばい、ヨーロッパは減っている、そのため原発はどんどん老いていて、産業的に行き詰っています。さらに日本の原発がすべて止まったためにウランの国際価格が暴落して、原子力産業がますます後退しています。このために強引になされようとしているのが原発輸出です。

ドイツの主催団体の代表は「われわれの運動は成功しつつある運動だ」と述べました。ここにはチェルノブイリ事故のときに命がけで収集作業を行った「リクビダートル(回収人)」の方たちも多数招かれていました。僕も発言してトルコのみなさんと私たち日本人の連携でシノップ原発建設を止めようとしていることを紹介しました。発言を終えたときに真っ先にかけつけてくれたのはウクライナの男性でした。「トルコ人、日本人、頑張れ。応援している」と語ってくれました。旧ソ連の核実験で被害を受け続けたカザフスタン政府の方たちとも同じヒバクシャの国として固い握手を交わすことができました。 

核の問題は世界の問題です。私たちは今、核の事故をなくし、核のない未来を目指す共通の目的を持っています。この固い国際連帯の中でこそ、地球上から核を無くせます。そのために必要なのは私たちの団結です。団結して私たちが力を得ることです。そのために僕もこれからも何度でもトルコに来て、わが故郷、シノップを守ります。

最後にこの言葉をみなさんに送ります。Power to the people!

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明日に向けて(1071)福島原発事故と人々の健康と気づき(トルコ講演用原稿1)

2015年04月12日 07時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です。(20150412 07:30トルコ時間)

トルコのシノップのホテルからです。みなさま。今日は統一地方選の投票日ですね。ぜひ投票に行きましょう。そして戦争と原発のない世の中に向けて一票を入れてください。すべての戦争に反対し、脱原発をのぞむ候補の当選をここシノップの地から願っています!

さて今日は午前中に原発建設予定地にいきます。3度目の訪問になります。とても美しいところです。今から心が躍ります。午後2時から講演会です。5人の発言者の一人として登壇します。頑張ります!

以下、講演用原稿をご紹介しておきます。発言時間が短いので説明が足りないと思われる方もおられるかもしれませんが、おいおい補足させてください。なお長いので2回にわけて掲載します。

*****

福島原発事故と人々の健康、気づき

守田敏也

トルコのみなさん。こんにちは。日本の京都から来たジャーナリストの守田敏也です。

昨年3月に初めてトルコを訪れて以降、今回が3度目の訪問です。昨年は3月11日にシノップを訪れました。ゲジ公園で警察にガス弾を撃たれた少年が亡くなった日でした。翌日にシノップの原発建設予定地に連れていっていただきました。美しい風景に魅了されました。以来、シノップを自分の故郷だと思って頑張っています。

今回はトルコのみなさんに原発事故の悲惨さを知っていただくために、日本で生じている健康被害についてお話したいと思います。

1、放射線の値に関する若干の学習

放射能の被害を考えるとき、放射能汚染でどれくらいの被害が出るのかたくさんの数字や単位が出てきます。被曝の危険性を知っていただくため少し放射線の値のお話をします。

放射線の単位の中にシーベルト(Sv)があります。Svは身体に当たった放射線の打撃力を表します。人間への影響が一番の管理目標になるので、政府がどれぐらい人工の放射線を住民に当てることを容認するかが国際的に決まっています。1年間で1ミリ(m)Svです。1時間に直すと0.114マイクロ(μ)Sv。これが1年間で1mSvになります。この1mSvは安全値ではありません。放射線は小さくても身体に害があるというのが国際的常識です。

では1mSvはどれぐらいの害があるのかというと、10万人がこの量の放射線を浴びたら、5人がガンで死ぬとされています。ICRP(国際放射線防護委員会=International Commission on Radiological Protection)の見積もりです。

アメリカの化学者だったジョン・ゴフマンが、ICRPのデータ解析は危険性が8分の1にされている。実際のリスクは40人が亡くなることだと述べました。

ただICRPやゴフマンの分析では、放射線による被害で起こるのはガンだけになってしまいますが、これを覆す報告書が出されました。「ウクライナ政府報告書」(2014年4月)です。チェルノブイリ原発事故で被災した約250万人の調査から、がんだけではなく心臓病など多種類の病気が発生していることが分かりました。しかしICRPなどの国際機関はこれを認めていません。

さらに「放射線管理区域」(radiation controlled area)というものがあります。放射線が厳しく管理されて医るエリアです。病院のレントゲン室などです。飲食や寝ることが禁止されています。この数値がシーベルトでは1時間当たり0.6μSvです。

これを踏まえて日本の汚染地図を見てみて下さい。薄い黄色、濃い黄色、赤い黄色の地帯はみんな放射線管理区域です。この地域に数百万人の人々が暮らしています。さらに年間1mSvを超える地域が色がついたところです。この地域はチェルノブイリの基準では「避難権利区域」です。日本では避難の権利のない人々が一千万人以上、暮らしています。

 注記 このお話で使ったのは早川由起夫さんの火山ブログの「放射能汚染地図」です。           http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-570.html

原発から60キロ離れた福島駅の様子をお見せします。2012年末ですが、手に持っているカウンターの値は0.61μSv、放射線管理区域です。この時、10代前半の少女たちが通り過ぎていきました。この時、放射線値が上がり0.81μSvになりました。こういう写真を撮っていると頭がクラクラします。目の前を歩いている少女たちを被曝から守ってあげられないからです。放射線は男性よりもより女性に深刻な害をもたらすのに、被曝を止められないのです。

2、健康被害が広がっている 震災関連死と小児甲状腺がんと心臓病

こんな状態ですから、健康被害はどんどん広がっています。データでみられるものをご紹介します。一つは「原発関連死」です。2011年3月の大地震のときに、津波とはまったく無関係に原発事故で政府に命じられて避難した人々のうち、途中で亡くなった人々のことです。2014年9月末までで1800人以上です。東京電力はすでにこれだけ殺しています。

この他、激増中なのが福島の子どもたちの小児甲状腺がんです。2014年末までの検査で38万5千人中118人がほぼ間違いなくがんです。日本の子どもたちは0歳から14歳の発症率は100万人に1人以下、15歳から19歳で5人です。今回の調査対象の9割は14歳以下の子どもで、100万人に306人も出てしまっています。

心臓病も増えています。福島市にある大原医療センターが心疾患の入院患者数などを分析したところ、震災以降に明らかに増加が認められました。震災前の2010年には心不全143人、2011年には心不全199人に増加。さらに2012年は6月までの半年間の統計で、心不全184人と2010年の数を超えてしまいました。心不全の発症率は2.57倍。明らかな増加です。

茨城県取手市も小中学生の心臓検診における異常の多発が確認されています。この検診は取手市が毎年小学1年生、中学1年生に実施しているものですが、24校を対象とした2012年度の検診で、一次検査で「要精密検査」と診断された児童・生徒数が2011年度に比べて急増しました。2012年度に一次検診を受けた小中学生1655人中、73人が要精密検査と診断され、2011年度の28人から2.6倍となりました。中学生だけで見ると17人から55人と3倍強に増えていました。心臓に何らかの既往症が認められる児童・生徒も、2010年度の9人から11年度21人、12年度24人と増えました。

この発表を受けて、地域の生活協同組合が茨城県と千葉県の15市町の0歳から18歳までの子どもたちを対象とした尿検査を実施しました。すると子どもたちの尿からセシウムが検出されました。

3、データに表れていない様々な健康被害の事例が急増中

ここまではデータ的裏付けのある話です。ここからは取材で耳にしたことです。

2013年6月27日に福島市から避難している女性から来たメールです。「守田さん。福島の会社の上司が亡くなりました。肺がんで見つかったときは既に全身に転移していたそうです」「この会社の近辺で、他に2名の方、私の近いところで亡くなっています。勤務して6年でしたが今までそんなことありませんでした。」問題の上司は50歳代。健康に気を使ってジョギングを10年以上続けていました。

翌日、また同じ女性からメールが。「今日また2人の悲報が入りました。高齢の方ですが。お一人は癌だと。もうお一方は聞けていません。あちらでもこちらでもです。」

また福島原発の直近に住んでいた方から2012年末に「村内の知り合いが一週間に5回も葬式に出た」という話を聞きました。それで福島原発のすぐ北にある南相馬市の方にこの話をして「そんなにお葬式が多いのですか?」と聞いてみました。その方が計算してみたら12日に1回の割合だと分かりました。やはり非常にお葬式が多くなっています。

これ以外に聞いた話を列挙すると「視力が急激に低下した」「記憶力が急激に低下した」)「認知症が激烈に進んだ」「胎児が無脳症になった」「8歳の子どもの気管にがんができた」など、いくらでもあげられます。

今年になってからはある日、群馬県から講演依頼電話が入りました。理由を尋ねてみると「自分の周りで水頭症の赤ちゃんが3人続けて生まれたので不安になったから」だと言います。水頭症は髄液が脳に溜まった肥大してしまう病です。もう一人「口蓋裂の赤ちゃんも1人生まれた。その子は上唇から喉の奥まで裂けていた」とのこと。「それなら周りで心筋梗塞も起こりやすいので注意をしてください」と語ったら、彼女は暫くしてから「すでに30代の男性の友だちが亡くなりました」と答えました。

ここまで深刻ではなくても普通の病気やケガが治りにくいことをよく耳にします。免疫系がダメージをうけるためだと思われます。例えば「身体に不気味なあざができて治らない」「風邪、怪我がなかなか治らない」「鼻血が大量に出た」「下痢が続いている」「だるくて頭がまわらなくなっていく感じ」「目にずっと違和感がある」などなどです。これらの症状の多くは、本人が西日本に避難すると止まります。

病は東日本を中心に深刻なひろがりを見せており、日本は大変な危機に直面していますが、この危機を深めているものこそ、ICRPをはじめとした国際機関が放射線による病を小児甲状腺がんや白血病、白内障など、極めて限定したものしか認めていないことです。

続く

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明日に向けて(1070)イスタンブールからシノップへ(トルコ訪問報告2)

2015年04月11日 11時30分00秒 | 明日に向けて(1001~1100)

守田です(20150411 11:30)

前回の配信記事で高浜原発仮処分事件に関する決定が14日に出ることをお知らせしましたが、京都精華大学の細川弘明さんが、やはりこの決定は樋口裁判長から出されることに間違いないことを教えてくださいました。細川さんのメールから引用します。

「樋口判事は4月1日付けで名古屋家裁に異同しましたが、同日付で名古屋高裁が「職務代行辞令」を発令したとのことですので、高浜原発仮処分事件については、樋口判事が担当裁判長として決定を出します。」

やはり運転禁止決定が出される可能性が極めて高いです!決定は午後2時に出されます。

これから僕は原発建設予定地のシノップに行き、12日シノップ、13日お隣のサムソンという町で講演して14日にはイスタンブールに戻ってきますが、決定が出るのはイスタンブールでは14日朝8時になるのでこの日のイスタンブールでの講演は午後6時から。これは日本では夜中の12時に相当しますので、この日は朗報を届けられる可能性が高いです。もちろんシノップ、サムソンでもこのことを伝えます。

昨日はイスタンブールで、この間、トルコやベラルーシ、ドイツ、ポーランドの展開をともにしてきた海外の友人たち、トルコ人医師のアルパー・オクテムさん、ドイツ人医師で核戦争反対国際医師会議ドイツ支部長のアンゲリカ・クラウセンさん、トルコ人アクティヴィストで今回の企画のコーディネートをしてくださっているプナール・デミルジャンさん、ベラルーシから参加された医師のラリーザ・ダニエロバさんなどと合流し、楽しい時間を過ごせました。なお今回は京都の友人の千田悦子さんも同行してくださっています。

今日はこれからみんなでシノップに向かいます。空港で新たにチェルノブイリ原発事故のよる黒海沿岸東部の汚染を研究しているトルコ人大学教授が合流します。明日から3日連続でこのチームで講演の旅をします。

今回、ラリーザ・ダニエロバさんとは初めての旅になりますが、昨夜、夕食後に町をあるいいるとき「私のおじいさんはパルチザンだったのよ!」と誇らしげに教えてくださいました。

パルチザン・・正規軍ではなくゲリラ部隊などの別働隊などをさします。もともとはイタリア語の「パルティジャーノ」から来ていますが、この場合は今のベラルーシに侵攻し、虐殺の限りを尽くしたナチス・ドイツに転校した人々を指しています。そのお孫さんのラリーザさんは今、人々を被曝から守ろうと奮闘しています。「私たちの国の政府は人々を守ることに積極的ではない。だからベラルーシの人を助けてくれる人を少しで増やすためにトルコまできたと語ってくださいました。

彼女にはベラルーシを訪れた山下俊一教授のことも聞きました。彼女によると「山下氏はアメリカ人たちにベラルーシの人たちにずっと優しかった。とてもノーブルな人だ」と語りました。僕が「でも山下さんは日本の多くの人々に嫌われています。事故の直後に安全だと言って回ったので」と言ったら「それはよく知っています。人々が怒るのは当然だと思います。私はきっとその罪は彼の心の深くにも入り込んでいると思います」と語っていました。

ただこの件は、僕の英語力が不十分でそれ以上、深く聞き取れませんでした。この旅の間にもっといろいろと彼女からいろいろなことを教わろうと思っています。

ところで今回で「チェルノブイリに学び福島を伝える」僕の海外への旅は4回目になりますが、今回泊まっているホテルは1年前、正確には3月に僕がはじめてトルコで講演した会場のすぐ隣でした。あのとき僕は腹痛がこうじていて講演前に痛み止めをうってもらいました。その後、向かいのレストランに行きましたが、そこで悶絶してソファに横たわっていたら、レストランのオーナーさんが「この人はどうしているのか」と聞いてくれて、そのまま彼女の経営している病院に僕を送り込んでくれたのでした。

そのときは極度の便秘になっていたのですが、すぐに大型浣腸をするとともに、一泊させてくれました。おかげで僕は翌日からシノップ、イズミルへと講演旅行を続けられました。

今回、再びそのレストランに連れて行ってもらえて、オーナーさんに再会できました!それではじめてお礼を言えました。彼女も僕をよく覚えていてくれて、「このソファに寝ていたねえ」と指差してくれました。

その後、食事。トルコ料理を心行くまで堪能できました。今回は最初の旅でほとんど口にできなかった世界三大料理のひとつ、トルコ料理を楽しむことも目的にしていたのですが、それがこのレストランで味わえて感激でした。14日は再びこのレストランの向かいの会場に戻ってきますが、そのときは彼女も講演会に来てくださるそうです。嬉しいです!

ともあれこれから空港に向かい、シノップに飛びます。

トルコの方たちとの連帯、世界の方たちとの核のない世の中に向けた連携を深めてきます!

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