【原作・「食物はすごい」・中央公論新社・田中修】
【脚色・toyo0181】
バラの花を見ていた、幼稚園の少女が、
なぜ、バラには、棘があるの?
植物に詳しい先生の眼を「じぃーっと」と見つめていた。
バラは、枝を折られたりね花を取られたりしないように
鋭いトゲで体を守っているのです。
君はどう思うの?
きれいな花を咲かせるバラが、痛いトゲをつけていてかわいそう!
バラのトゲを覗いて、じーっと見ていた。
先生はバラの花と、棘についての説明が子供には理解したと、思えなかった。
「バラは自分の体を守る為に、自分でトゲをはやし始めたのかもしれない
それとも、誰かに頼んで、つけてもらったのかもしれない」
と、云いながら、一緒にバラのトゲを触ったが、少女の眼は、棘を見つめたまま。
心の中では
事実は正確に伝えなければならない、
「鋭いトゲで、外敵から自分を守ってる事実と、バラのトゲは“すごさ”の象徴」
なのに、この少女は自分の説明に納得していない、どうしてだろう!
乏しい子供の反応に
「ひょっとすると、バラがあまりにきれいな花を咲かせるので
腹を立てた何者かが、恨んでつけたのかもしれない」
と?・・・・子供の顔が少しほほ笑んだような気がした。
大人のそっけない答えは、植物を優しく見る目を摘み取ったり、
植物をいとおしく、感じる、心を傷付けたりすることになる。
ひょっとすると、私たち大人が考えている答えも、「それが正しい」
と思っているだけかもしれない。
「子供の思いは、なぜバラには、棘があるのですか」と聞きつつ
「バラの花があまりにきれい過ぎるので、それを嫉妬した何者かが、あんな
トゲを付けたのだろうか」と
思い掛けない、想像をしていたのかもしれない。
「棘は昔から、ついているので、どうしてついているのか知らない!」
などとそっけなく答え、子供の想像力をしぼませることの無いよう!
気を付けたいものです!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【節三・ルーシーの投げキッスに】
1924年(大正13年)10月10日
節三27歳、アド・サンテルとの戦いは、先輩諸氏の遺恨を晴らす、
絶好の檜舞台になる。
排日気運が高まる、アメリカ。
邦人の多い、ロサンジェルスやシアトルでもただならぬ、
雰囲気が漂っていた時代。
日本の柔道とアメリカのプロレスの対決。
興奮のルツボと化した、中に
大輪を咲かせたような妖艶な年増の美人が観戦していた。
ルーシー・バニング・ロッス。
試合は60分3本勝負。
1本目、脇固めで、サンテルをぐいぐい、締め上げ、先制の勝利。
日本びいきのルーシーは、「アメリカ人の多い観衆の中で、
「ファイト・オオタ」と熱い声援と、投げキッスをしただけである・・・・が