現在ロシアW杯アジア最終予選が行なわれている中で日本代表は、
これまでヴァイド・ハリルホジッチ監督が掲げる‘縦に速いスタイ
ル’を今ひとつ消化しきれてない感が強かった。
中心選手の本田圭佑や香川真司らが提唱する‘自分達のスタイル’
というボールをしっかり保持しパスをつないで崩していくテクニカ
ルなスタイルを持ち味にしていたのだが、その面々に速攻スタイル
というのは相性が悪そうではあるものの彼らを中心にしたチーム作
りをしているのだから消化不良になるのも仕方ない。
縦に速いスタイルならばロンドン五輪の永井謙佑のような俊足系
か、高さや強さを持ち味にするハーフナー・マイクや豊田陽平らが
求められるにも拘らずテクニカルなスタイルを追及していたゆえに
代表からあぶれるという事態になっているようで人材殺しも甚だし
いのではないか。
思えば昭和の末期から高校サッカーで台頭してきたのが長崎県代
表の国見で徹底的に鍛えられたスタミナから裏打ちされた豊富な運
動量をベースにしたスタイルは瞬く間に好成績を残していた反面、
‘若年層では目先の勝利を目指すスタイルよりもテクニカルなスタ
イルを目指すべきなのに’と言う論調を中心にした国見スタイルに
対する否定的な声も多々あった。
そして05年度に滋賀代表の野洲がテクニカルにボールをつなぐ
スタイルで優勝したあたりからテクニカル信仰に拍車がかかって来
た感じだし10W杯で優勝したスペイン代表のスタイルもポゼッシ
ョン志向で、ジュニアレベルからフル代表まで同じスタイルを志向
しているという事が強調された結果ボールをつなぐスタイルこそ正
統で運動量で勝負したりカウンターを狙うスタイルは異端という思
想が主流を占めるようになった。
こうなると本来ゴールを決めるためのボール支配のはずが ややも
すればボールを失うと失点する可能性が限りなく上がるので、ボール
支配が目的となるスタイルに成り下がるというチームが代表を筆頭に
Jリーグのチームにも波及してしまう。
また若年層が年代別W杯出場を逃していた理由の1つにボールを
つなぐ事に拘泥しカウンターにやられる‘テクニカルで素晴らしいサ
ッカーをするものの勝負弱い’‘ボールを持たれてパスを回されても
怖くない’というイメージができての典型だろう。
日本が発展した理由の1つに‘八百万の神'を信仰する多神教とい
う価値観があると言われているがパスサッカーだけでなく、運動量
勝負やカウンター狙いといった多彩なスタイルを許容する必要があ
るのではないだろうか。
パスサッカーと言う名の一神教を妄信してもレベルアップはない
のだから。