
うそのようでほんとの話。
脚色なしの、ほんとの話。
現実は、小説よりも、奇なり。
臨時バイトで頼まれた仕事。駅前から30分かけてタクシーで移動する。
その病院への仕事も今月が最後。
タクシーでは本も読めなくて、たいていはボーっとするか居眠りの時間。
そんなタクシーの中で不思議な運転手と不思議な会話をした。
そんな、おはなし。
===============
「○○病院にお願いします。」
「○○病院??
はー、あそこのやつかな。いやあちらかな。
似た病院いっぱいありますからねぇ。
全部なんとか病院ですから。
いや、知ってるんですよ。知ってるんですよ。
ええ、ええ。
あっちだよなぁ。ああ、あっちで間違いない。」
「昔からある古い病院ですよ。霊園の近くのとこです。」
「はーはー。霊園ね。霊園。
あの桜がキレイなとこかなぁ。
はー、あそこにね。病院がね。はー。
まあ、とにかく走ってみますよ。
とりあえずまっすぐ行きますので」
「・・・・」
(30秒後)
「お客さん、この道、もちろん真っ直ぐですよね。
ええ、ええ。もちろん知ってますよ。」
「はい、真っ直ぐですよ。ずーーーっと道なりです。曲がるときは言いますから。」
「まあ右に行っても着くんでしょうけどね。
右でも左でも結局は着きますからね。うん。
でも、お客さん、たしかにまっすぐがいいですよね。
うん、まっすぐですね。
たしかにまっすぐだ。ええ、ええ。」
「僕はこの街は不慣れなのであまり知りませんけど、
まあ全ての道はつながってますしいづれ着くんでしょうけどね。」
「いやーお客さん、その通りだー。その通りだー。
ほんと、そうなんですよ。どこ行っても着くんですよ。
右に行っても、左に行こうとも結局は着くんですよ。
正しい道なんてありはしません。
いや、もちろん知ってるんですよ。はい。
ええ、ええ。」
その運転手は、ハンドルに体を密着するように運転をしていた。
3分に1回は「この道、まっすぐですよね。わかってるんですけど、真っ直ぐですよね、ええ、ええ。」と聞いてくる。
その間に、2分に1回は自分の目の前のダッシュボードを、汚れた雑巾でゴシゴシと拭く。
その2分と3分の独特なリズムは、タクシー内をさらに不思議な空間として演出していた。
「(外を見ながら)
あ、クミコちゃんだ。クミコちゃんが歩いてる。
ほら、あの派手な子ですよ。
クミコちゃん~。
かわいいんですよ。ほんとかわいいんですよ。
いやね、わたしが通い詰めているホステスです。
いくら貢いだか分かりません。
あの体、たまらないですよね。
頭の中で想像すると、もうたまらないってもんじゃありません。
いやー、いいなー。まさしく天使だぁ。
先生もクラブとか、もちろん行きますよね。
わたしの気持ち、きっと分かりますよね。」
「いや、僕はそういうの行ったことないんですよ。
興味も全然なくて。
だから、あんまりそういうの分からないです。
すみませんね。」
「ええ、ええ。先生は幸せな人だー。
幸せな人は、ああいうとこ行きませんからね。
ああいうとこは、不幸な人間のたまり場なんですよ。
お互いがそうなんですよ。
どこにも行き場がないから、みんな同じところに群れて集まるんです。
僕も、ほんとはお金もないし行きたくない。
全部お金もつぎ込んじゃう。
でもね、わたしの話を聞いてくれるのはクミコちゃんだけなんです。
あ、いや、すみません。
先生も、先生も、わたしの話聞いてくれてますね。
ええ、ええ。
珍しいですよ。こんなに話を聞いてくれるお客さんは。
だいたい、ほとんど無視されますから。さびしいんですよ。
私の話を聞いてくれるのは、お医者さんと水商売の人だけだなぁ。
あ、お客さん、この道、もちろん真っ直ぐですよね。
ええ、ええ。もちろん知ってますよ。」
「はい、真っ直ぐですよ。ずーーーっと道なりです。
曲がるときは言いますから心配しないでください」
「いやー、分かってるんですよ。
道はつながってますから。
どう行っても結局は着くんですよね。ええ、ええ。」
「まあ、そうと言えばそうだし、そうじゃないと言えばそうじゃないですけどね。」
「そういえばお客さん、相談していいですか。
誰も話し相手がいないんですよ。
先生はちゃんと話しを聞いてくれるから相談したい。
いいですか。毎日悩んでるんです。」
「どうぞ。病院に着く間に終わる話であれば構いませんよ。」
「いやー恩にきります。
いやね、私ね。新興宗教に入ったんですよ。
それがとびっきり怪しいんです。
よく分からないお水を20万円で買わされたんです。
水ですよ。水。どこから見ても、水です。
いやね、教祖様の波動エネルギーが入ってて、何でも万病に効くみたいなんです。
でもね、もし効かなかったら、わたしの信仰の力が足りないって言うんです。
別に何も変わらないんです。それは信仰の力が足りないということみたいで。
20万は高かったなー。
でもね、その水を毎日チビチビ飲んでますよ。
お客さんみたいなお医者さんから見て、
その万病に効く水って、どう思いますか。」
「医者というより普通の感覚で言いますよ。
宗教のことはよくわかりませんけど、
高いお金を払うっていうのは止めたほうがいいんじゃないですか。
ほんとうの宗教者ならば、すべて慈善行為でしょうし。
万病に効くっていうのも、どういう水か知りませんが、
なんだか大雑把な説明ですしねぇ。」
「そうですかー。いや、怪しいですよね。
怪しいのは分かってるんです。
だって、ただの水ですから。
僕もやめるべきかと思ってるんですよ。
でもね。私は誰かに全てを決めてほしいんです。
もう何も自分で決めたくないんです。それは疲れたんです。
もう何も考えたくないんです。全てを決めてほしい。
いっそのこと、お医者さんから<癌で予後2年だ>とか、
寿命も決めてほしいんです。
とにかく、誰かに全てを決めてほしいんです。」
「まあその気持はわからなくもないけれど、
未来のことなんて誰も分からないものですよ。
もし自分で怪しいと思っているのなら、
たしかにお医者さんに相談した方が、お金をとられるわけでもないし、
そう悪いことにはならないと思いますよ。
日々の生活とか細々したことも、何か決めてもらえばいいですし。
まあ、医者も当たりと外れがありますし、
合う、合わないってのがありますから、
その辺はなんとも言えませんけどね。」
「いやー。もうとにかく、誰でもいいから、私を全部決めてほしいんです。
わたしの人生、もうどうでもいい。とにかく、決めてほしい。
寿命も決めてもらえれば、せいせいします。
先生、わたしってあと2年くらいの寿命ですか。
あ、お客さん、この道、もちろん真っ直ぐですよね。
ええ、ええ。もちろん知ってますよ。」
「あ、次の信号の右手が病院です。裏口で止めてください。」
「あー残念だー。着きましたね。
でも、先生、ありがとうございました。
誰も私の話なんて、まともに聞いてくれないんですよ。
そんな、タクシーなんてたかが数分ですよ。
確かにお客さんはお金を払ってタクシーに乗っている。
私がお客さんを決めれないのと同じで、
お客さんも運転手を決めて乗っているわけではない。
ただ運んでくれればそれでいいんでしょうけどね。
でもね、とにかく私は話を聞いてほしいんです。
誰も私の話なんてまともに聞いちゃくれないんだから。
先生は、わたしのつまらない話しを聞いてくれた。
きっといい人だ。
ほぼ全員が私の話なんて聞いてくれません。
ええ、ええ。無視するのはいいほうですよ。
大抵怒鳴られます。切れられます。
まるでこの世の終わりのように怒鳴られます。
ええ、ええ。
ただ、先生は、最後までわたしのつまらない話を聞いてくれた。
わたしも先生の外来に通いたいくらいです。
ええ、ええ。
お邪魔なのはわかってますよ。
ええ。ええ。」
「僕の外来は心臓の持病がある人だけの心臓専門外来なんですよね。
しかも、今月でこの病院も辞めちゃうんですよ。」
「ええ、ええ。 いいですよ。
ええ、ええ。半分は冗談で半分は本気ですから。
先生とクミコちゃんくらいしか話を聞いてくれない。
それを伝えたかった。
どうもありがとうございました。
あ、忘れ物ないですか。」
タクシーを出て病院に入る直前、ふと後ろを振り向いた。
相変わらずハンドルにぴったり体をくっつけたまま、目の前にあるダッシュボードを汚れた雑巾でゴシゴシと拭いていた姿が見えた。
その姿勢と行為は、まるで宗教的な儀式の行為のように、まるで何かの祈りのように、見えたのです。
そして、僕はタクシー内への忘れものもなく、病院の仕事へと戻りました。
そんな、おはなしです。
脚色なしの、ほんとの話。
現実は、小説よりも、奇なり。
臨時バイトで頼まれた仕事。駅前から30分かけてタクシーで移動する。
その病院への仕事も今月が最後。
タクシーでは本も読めなくて、たいていはボーっとするか居眠りの時間。
そんなタクシーの中で不思議な運転手と不思議な会話をした。
そんな、おはなし。
===============
「○○病院にお願いします。」
「○○病院??
はー、あそこのやつかな。いやあちらかな。
似た病院いっぱいありますからねぇ。
全部なんとか病院ですから。
いや、知ってるんですよ。知ってるんですよ。
ええ、ええ。
あっちだよなぁ。ああ、あっちで間違いない。」
「昔からある古い病院ですよ。霊園の近くのとこです。」
「はーはー。霊園ね。霊園。
あの桜がキレイなとこかなぁ。
はー、あそこにね。病院がね。はー。
まあ、とにかく走ってみますよ。
とりあえずまっすぐ行きますので」
「・・・・」
(30秒後)
「お客さん、この道、もちろん真っ直ぐですよね。
ええ、ええ。もちろん知ってますよ。」
「はい、真っ直ぐですよ。ずーーーっと道なりです。曲がるときは言いますから。」
「まあ右に行っても着くんでしょうけどね。
右でも左でも結局は着きますからね。うん。
でも、お客さん、たしかにまっすぐがいいですよね。
うん、まっすぐですね。
たしかにまっすぐだ。ええ、ええ。」
「僕はこの街は不慣れなのであまり知りませんけど、
まあ全ての道はつながってますしいづれ着くんでしょうけどね。」
「いやーお客さん、その通りだー。その通りだー。
ほんと、そうなんですよ。どこ行っても着くんですよ。
右に行っても、左に行こうとも結局は着くんですよ。
正しい道なんてありはしません。
いや、もちろん知ってるんですよ。はい。
ええ、ええ。」
その運転手は、ハンドルに体を密着するように運転をしていた。
3分に1回は「この道、まっすぐですよね。わかってるんですけど、真っ直ぐですよね、ええ、ええ。」と聞いてくる。
その間に、2分に1回は自分の目の前のダッシュボードを、汚れた雑巾でゴシゴシと拭く。
その2分と3分の独特なリズムは、タクシー内をさらに不思議な空間として演出していた。
「(外を見ながら)
あ、クミコちゃんだ。クミコちゃんが歩いてる。
ほら、あの派手な子ですよ。
クミコちゃん~。
かわいいんですよ。ほんとかわいいんですよ。
いやね、わたしが通い詰めているホステスです。
いくら貢いだか分かりません。
あの体、たまらないですよね。
頭の中で想像すると、もうたまらないってもんじゃありません。
いやー、いいなー。まさしく天使だぁ。
先生もクラブとか、もちろん行きますよね。
わたしの気持ち、きっと分かりますよね。」
「いや、僕はそういうの行ったことないんですよ。
興味も全然なくて。
だから、あんまりそういうの分からないです。
すみませんね。」
「ええ、ええ。先生は幸せな人だー。
幸せな人は、ああいうとこ行きませんからね。
ああいうとこは、不幸な人間のたまり場なんですよ。
お互いがそうなんですよ。
どこにも行き場がないから、みんな同じところに群れて集まるんです。
僕も、ほんとはお金もないし行きたくない。
全部お金もつぎ込んじゃう。
でもね、わたしの話を聞いてくれるのはクミコちゃんだけなんです。
あ、いや、すみません。
先生も、先生も、わたしの話聞いてくれてますね。
ええ、ええ。
珍しいですよ。こんなに話を聞いてくれるお客さんは。
だいたい、ほとんど無視されますから。さびしいんですよ。
私の話を聞いてくれるのは、お医者さんと水商売の人だけだなぁ。
あ、お客さん、この道、もちろん真っ直ぐですよね。
ええ、ええ。もちろん知ってますよ。」
「はい、真っ直ぐですよ。ずーーーっと道なりです。
曲がるときは言いますから心配しないでください」
「いやー、分かってるんですよ。
道はつながってますから。
どう行っても結局は着くんですよね。ええ、ええ。」
「まあ、そうと言えばそうだし、そうじゃないと言えばそうじゃないですけどね。」
「そういえばお客さん、相談していいですか。
誰も話し相手がいないんですよ。
先生はちゃんと話しを聞いてくれるから相談したい。
いいですか。毎日悩んでるんです。」
「どうぞ。病院に着く間に終わる話であれば構いませんよ。」
「いやー恩にきります。
いやね、私ね。新興宗教に入ったんですよ。
それがとびっきり怪しいんです。
よく分からないお水を20万円で買わされたんです。
水ですよ。水。どこから見ても、水です。
いやね、教祖様の波動エネルギーが入ってて、何でも万病に効くみたいなんです。
でもね、もし効かなかったら、わたしの信仰の力が足りないって言うんです。
別に何も変わらないんです。それは信仰の力が足りないということみたいで。
20万は高かったなー。
でもね、その水を毎日チビチビ飲んでますよ。
お客さんみたいなお医者さんから見て、
その万病に効く水って、どう思いますか。」
「医者というより普通の感覚で言いますよ。
宗教のことはよくわかりませんけど、
高いお金を払うっていうのは止めたほうがいいんじゃないですか。
ほんとうの宗教者ならば、すべて慈善行為でしょうし。
万病に効くっていうのも、どういう水か知りませんが、
なんだか大雑把な説明ですしねぇ。」
「そうですかー。いや、怪しいですよね。
怪しいのは分かってるんです。
だって、ただの水ですから。
僕もやめるべきかと思ってるんですよ。
でもね。私は誰かに全てを決めてほしいんです。
もう何も自分で決めたくないんです。それは疲れたんです。
もう何も考えたくないんです。全てを決めてほしい。
いっそのこと、お医者さんから<癌で予後2年だ>とか、
寿命も決めてほしいんです。
とにかく、誰かに全てを決めてほしいんです。」
「まあその気持はわからなくもないけれど、
未来のことなんて誰も分からないものですよ。
もし自分で怪しいと思っているのなら、
たしかにお医者さんに相談した方が、お金をとられるわけでもないし、
そう悪いことにはならないと思いますよ。
日々の生活とか細々したことも、何か決めてもらえばいいですし。
まあ、医者も当たりと外れがありますし、
合う、合わないってのがありますから、
その辺はなんとも言えませんけどね。」
「いやー。もうとにかく、誰でもいいから、私を全部決めてほしいんです。
わたしの人生、もうどうでもいい。とにかく、決めてほしい。
寿命も決めてもらえれば、せいせいします。
先生、わたしってあと2年くらいの寿命ですか。
あ、お客さん、この道、もちろん真っ直ぐですよね。
ええ、ええ。もちろん知ってますよ。」
「あ、次の信号の右手が病院です。裏口で止めてください。」
「あー残念だー。着きましたね。
でも、先生、ありがとうございました。
誰も私の話なんて、まともに聞いてくれないんですよ。
そんな、タクシーなんてたかが数分ですよ。
確かにお客さんはお金を払ってタクシーに乗っている。
私がお客さんを決めれないのと同じで、
お客さんも運転手を決めて乗っているわけではない。
ただ運んでくれればそれでいいんでしょうけどね。
でもね、とにかく私は話を聞いてほしいんです。
誰も私の話なんてまともに聞いちゃくれないんだから。
先生は、わたしのつまらない話しを聞いてくれた。
きっといい人だ。
ほぼ全員が私の話なんて聞いてくれません。
ええ、ええ。無視するのはいいほうですよ。
大抵怒鳴られます。切れられます。
まるでこの世の終わりのように怒鳴られます。
ええ、ええ。
ただ、先生は、最後までわたしのつまらない話を聞いてくれた。
わたしも先生の外来に通いたいくらいです。
ええ、ええ。
お邪魔なのはわかってますよ。
ええ。ええ。」
「僕の外来は心臓の持病がある人だけの心臓専門外来なんですよね。
しかも、今月でこの病院も辞めちゃうんですよ。」
「ええ、ええ。 いいですよ。
ええ、ええ。半分は冗談で半分は本気ですから。
先生とクミコちゃんくらいしか話を聞いてくれない。
それを伝えたかった。
どうもありがとうございました。
あ、忘れ物ないですか。」
タクシーを出て病院に入る直前、ふと後ろを振り向いた。
相変わらずハンドルにぴったり体をくっつけたまま、目の前にあるダッシュボードを汚れた雑巾でゴシゴシと拭いていた姿が見えた。
その姿勢と行為は、まるで宗教的な儀式の行為のように、まるで何かの祈りのように、見えたのです。
そして、僕はタクシー内への忘れものもなく、病院の仕事へと戻りました。
そんな、おはなしです。
いや、ほんとに。まったく正直なところ。
だって滅多に出会えませんよ、そんな運転手さん。
いや、どちらかというと会いたくないです、その運転手さん。
だって、ほら、自分がどこの次元にいるのかわからなくなっちゃうじゃないですか。
自分の世界が他者から揺るがされたくないじゃないですが、仕事前の時間には特に。
「必死で保ってる世界をあなたに脅かされる筋合いはない!」って逆に怒ってしまうかもしれません。
いやね、でもそれも内心は面白いなあ、なんて思ってるのですよ。
ほら、いま私が書いてる文章だってなりきって書いてるんだから。
ええ、いいじゃないですか、彼も私もこんな風に関わってもね。
これは強迫神経症ではないのですか?
それはともかく、稲葉先生は本当に聞き上手ですね。私だったら「この人変じゃないの?」と警戒したり、「なんなんだその詐欺宗教は!」と冷静ではいられなかったりしたでしょう。
しかし、
>私は誰かに全てを決めてほしいんです。もう何も自分で決めたくないんです。それは疲れたんです。もう何も考えたくないんです。
こういう面が確かに人間にはあります。自分で自由に生きてみろと言われても、自分以外の全てが抵抗して思いどおりにならないし、だいたい自分の体が自分を苦しめるものです。
よって誰かに命令されて生きる方が楽なんですね。それは医者という権威であってもいいし、教祖なんか最大の権威というわけです。しかし、誰に従うかを選ぶのも結局自分なんですよね。そうなると、人生は生まれつきの性格で決まっちゃってるのかなあ……。とにかく今言えるのは、人は自由になりたがっているわけではないし、法律で行動を制限しているから社会が成り立つ、ということでしょうか。
こちらでははじめましてですかね。
いや、僕も村上春樹的だなぁと、ふと思い出しながら感じましたよ。
会話の中でも、僕が言った台詞で
「まあ、そうと言えばそうだし、そうじゃないと言えばそうじゃないですけどね。」
って台詞があって、こういう言語迷路みたいな会話も、よく春樹ワールドに出てくる。
でも、ああいう異界のような場所では、こういう台詞がすごくしっくりくるから不思議なもんです。
僕も、滅多に出会えないと思いますね。
でも、その反面。
この世界には、こういう事柄って、実は多いんじゃないかとも思うんです。
自分が無視して見ないようにしているだけで、この世界はものすごく不可思議なことが日々おきていて。あの運転手さんも、そんな迷宮に入って出られないような感じではないかとね。
ほんとはもっといろんな会話があるんですが、
どんどん小説になっていくし、その運転手をナビゲーターとしていろいろ付け加えたくなってきちゃうので(笑、ブログではこんな感じで終わらせました。
あの約2分と3分のリズムも、ほんと独特だったなー。
>>>>>>YUTA様
>これは強迫神経症ではないのですか?
まあ、病院に行っちゃえば、そうとういろんな病名つけられちゃうでしょうねぇ。
そりゃあ僕も医学知識はあるので、いろんな名前とか症状名をつけちゃいたくなるんですが、
ひとりの人間同士として会話するように努めたんです。
彼には、何かの精神的危機が訪れるように感じましたけど、それは何かが死んで何かが生れる瞬間ともいえるわけで、そういう意味では大事な時期なんでしょうねぇ。
まあ仕事上、スゴイ人に日々会うので、順応しちゃうというか。慣れて耐性ができるというか。
裏商売の人も散々相手してますし。
基本は、自分の主観でその人の物語に強引に侵入していくんじゃなくて、そっとその人の世界に入り込んでいくことなんですよね。
最初は、それこそ木とか石みたいな無生物の状態から、その人の物語に入っていって、そこからその物語の全貌を観察していくというか。
とにかく邪魔せず聞くこと。
僕は、単に聞いて話して吐き出せることも、立派な治療だと思ってるんです。
その人の体内にある毒とか膿を吐き出すのを、じっと見守る役目のような。
>自分で自由に生きてみろと言われても、自分以外の全てが抵抗して思いどおりにならないし、だいたい自分の体が自分を苦しめるものです。
ほんとそうですよね。
いろんなしがらみとか関係性とかをとっぱらって自由になるっていうのは、宇宙空間にひとり取り残されるようなものですし。
何かの枠組みを求めるものです。
僕個人では、<自然>ですかねぇ。山とか海とか川とか。
ある程度の人数が増えてくると、やはり規則とか、法律とか、道徳とか・・・そういうのは便宜的に求められるもので。
あくまでも便宜的なものですけど、それに縛られすぎると、自分が身動きできなくなっちゃうもので。自分の手足を縛られちゃって身体も精神も支配されちゃうことには、注意が必要なんだと思います。
聞き上手は物語を生みますよね。
村上さんも著作の中で、自分は人の話を効くことに関しては才能があるとか言ってましたね。
また期待しちゃいますね。
そうそう。
最近は、普通の人の普通の話を聞いていると、なんと奥が深くて面白いんだろうと常々感じます。
なんというか、自分と全然違う価値観を持って、違う視点から全てを見続けているお話なので。
ぜんぜん違う視点をていきょうしてくれるようなもので。
人って、頭の中にモヤモヤしているままだと、それが不安を生んだり、いろんな悪いことと連結していく気がするけれど、自分の中で言語化して、それなりの物語化させることで、なんとなく自分の中でいい塩梅に落ち着いていくものなんだろうと思いますね。
まあ仕事上の話だとあんまりかけないことも多いけど、
こういうタクシーの話とかだと書きやすい。
この前も、ユニクロの店員さんの動き方と話し方で、すごく奇妙な人がいて、遠くからコッソリ観察してしまったー。笑
「でもね。私は誰かに全てを決めてほしいんです。もう何も自分で決めたくないんです。それは疲れたんです。もう何も考えたくないんです。」は名台詞(?)ですね。狂気の源は『面倒くさい』であると言いますが、生きることすら面倒くさいといわんばかりのセリフですね。
こういう、身近ながらじわっと狂っている人の話は興味深いです。
そうそう。人の話って、実はそっくりそのまま聞いているとすごく興味深いんです。
僕らは、無意識に自分の人生に都合のあうひとだけ、都合のいい話だけをセレクションして聞いていることって多いと、最近ふと思うようになったんです。
最近は、その人の話を、その流れのようなものを阻害しないように聞いていると、いかにいろんな人間がこの世界にいて、それぞれがいろんな見方でこの世界を見ているのかというのが立体的に見えてきます。世界はそのハーモニーで。時には不協和音なのかもしれないけど。
その人は、何かにエネルギーを吸い取られて、消耗したような顔つきでした。
何か邪悪なもの、おぞましいものに、魂を吸い取られてしまったのかな。
それでも最後に求めるのが、皮膚と皮膚との、女性とのふれあいだというのが、何か象徴的で、何かものがなしい気持ちにもなりました・
ブログではあえて自分の心情を書かないようにあえて書きましたが・・・・。
皆、周囲から拒否されることを恐れているわけだけど、本当に「人としてrespect」するというのは、そうやって、真っ白のままで相手と向き合うことなのだろうね。
河合隼雄さんもそうだったんだろうな。ユーモアも持ち合わせているから、ほんと、温かさを感じさせてくれる人だったんだろうな~
生きてる間にほんとお会いしたかった~
そうそう。)
僕らが大・大・大・大・大好き河合隼雄先生ですが、一度お会いしたかったなー。
そうしたら、夜通し話を聞かせてもらいたかったー。
禅の言葉で、「人間本来、無一物(むいちもつ)」って言葉があって、すごく好きなんです。
人間は裸で生まれて、裸で死んでいく。
どんなにお化粧して装備を蓄えても、結局は丸裸ではじまるし、終わる。
だから、そういう丸裸の丸腰の状態っていうのを、けっこう意識するのです。
向こうはフル装備でも、こちらはなるべく丸腰で臨む。
そうすると、また見える風景も、聞こえてくる音も、まるで違ってくる気がするんだよねー。
まるで磁石のように。
そんないなばさんさんは研究者としても、臨床医としても活躍できる貴重な存在だと確信しています。
思い出したこと
私が京都にいた頃、河合隼雄先生はお元気でしたがお忙しくてお目にかかることなどあるはずもなかったですが、本の中ではお会いすることはできました。
京都でちょっぴり心理学の勉強をしていたそんな頃のことですが河合隼雄先生の近い御親戚である河合さん(お名前をど忘れしてしまいました…)という河合隼雄先生そっくり!の河合先生の学問の流れを受け継いだ女性講師から教わったことがあります。
懐かしい思い出です…
RTともこさん【皆、周囲から拒否されることを恐れているわけだけど、本当に「人としてrespect」するというのは、そうやって、真っ白のままで相手と向き合うことなのだろうね。】
と、ともこさんが仰っているように私も同感です。
最近ツイッターなるものに手を出したわけですがツイートだけでなくフォロー、リムーブ、リスト、ブロック、検索などから様々な模様が浮かび上がってきて怖ささえ感じるようになりました。
実際に生身の人間が向かい合っているわけではないことによって余計にそのような怖さが増幅されるのではないかと思っています。
生身でいきなりブロックされるという状況はもっと怖いですが…
私は本名を名乗らずたぶんお二人だけが気付いている環境だと思うのですが、つい最近あるハッシュタグの場所で個人的に何も関わりが無い方と、同じハッシュタグ付きの場所で私宛てに私個人のアカウント付きの意見を貼った方からいきなりブロックされて驚いたばかりなのです。
しかも彼女は大学の教師らしいので、ますます悲しくなってしまいました。
もう一人の女性は一般的には無名に近い詩人でした。(お二人は繋がりがあるようです)
お二人とも言葉を大切になさっているはずなのにいとも簡単にブロックを使われる方だと知りかなり落ち込んでしまいました。
何でも受け付けて下さるいなばさんに、つい愚痴を言ってしまいました(笑)