荒川弘(ひろむ)さんの「銀の匙 Silver Spoon」という漫画が最高。
=================
<内容紹介>
2012マンガ大賞 大賞受賞
日本中が大注目!荒川弘最新作!!
超ヒット作『鋼の錬金術師』の荒川弘の最新作!
大自然に囲まれた大蝦夷農業高校に入学した八軒勇吾。
授業が始まるなり子牛を追いかけて迷子、実習ではニワトリが肛門から生まれると知って驚愕…などなど、都会育ちには想定外の事態が多すぎて戸惑いの青春真っ最中。
仲間や家畜たちに支えられたりコケにされたりしながらも日々奮闘する、酪農青春グラフィティ!!
【編集担当からのおすすめ情報】
あの『鋼の錬金術師』の荒川弘先生がサンデーで週刊連載に初挑戦!その超話題作が早くもコミックスになりました!
濃厚すぎる農業高校を舞台に、主人公の八軒勇吾が悪戦苦闘しながらも、命の大切さを学んでいく…汗と涙と土にまみれた青春物語です。
前作のファンタジーとは、違った面白さが詰まっています。
こんな時代だからこそ、絶対に読んでほしい。そんな作品です!
=================
荒川さんには、「鋼の錬金術師」を読んでから、はまっていた。
当時「ユリイカ2010年12月号 特集=荒川弘 『鋼の錬金術師』完結記念特集」も買ってしまったほど。
(→しかも、この特集では「イムリ」や「ペット」で有名な三宅乱丈さんとの対談もあったのが貴重。お二人とも女性なんですよね。)
→むかし、三宅乱丈「PET」「イムリ」(2010-03-22)という感想も書いた。
■
ちなみに「鋼の錬金術師」は錬金術をテーマにしたファンタジー漫画。深い生命哲学を感じた漫画だった。
死んだ母親を生き返らせようとして、錬金術の兄弟はタブーの人体錬成(死者の復活)を行うが失敗する。タブーを犯した代償に、兄は左脚、弟は体全てを失う。兄は右腕を代価として、弟の魂を鎧に定着させることだけには何とか成功する。兄は失った右腕と左脚に機械の鎧(オートメイル)を装着し、仮の手足を手に入れた。
正式な国家錬金術師となった兄エドワードは元の体を取り戻すため、賢者の石を探す旅に出る。
というお話。
錬金術は、科学の歴史を考える上ではずして通れない領域。オカルティックな領域かと思うと、実はそうではない。
むしろ、「金」を作るという過程で化学・科学的な知識は進歩したし、副次的に西洋の心理学の素因を作ることにもなった。
ユングは、著書の「心理学と錬金術」において、錬金術師が元素を組み合わせて「金」を作ろうとする外的な過程は、心理的には自分の魂を練り高めていく内的なプロセスと照応していると考えていた。
意識と無意識の合一であり調和。それは中国で言う錬丹術の西洋版のようなもの。
ユング
「錬金術の作業の本質は、第一質料(混沌)を、 能動的原理(魂)と受動的原理(身体)とに分かち、しかるのちに両者が 化学の結婚(合一)によって人格化され、再統一されるところにある。」
錬丹術は不老不死の仙人になれる霊薬(仙丹)をつくること。生命力を高めて道(タオ)と合一することを目的とした。「気功」の源流の一つでもある。
錬丹術は内丹と外丹からなる。外丹は錬金術のように不老不死の薬を作るという目的がある。
「内丹」は、気の養生術を胎児の成長過程の再現に結び付けて作り出された身体技法。
内丹は、外丹での丹の錬成を、自己の心身の内的な修煉のプロセス(聖胎)として行うもの。「性」(こころ)と「命」(からだ)の身心一体を修める「性命双修」が必要となる。
このあたりはとても面白い事情が絡んでいるけれど、これは色々と調べているところでもある。
医療の歴史を知るときに、「不老不死問題」は避けて通れない。(個人的に面白いと思っているのは、なぜ人は死にたくないと思うのか、その心理学的な事情。ほかにも、過去の人々は不老不死を具体的にどういう風に実現しようとしたのか、その歴史的経緯・・・など)
錬金術のように現代でオカルトと誤解されている深いテーマを題材としつつ(「錬金術」は、「科学」の営みを別の観点から見直すために重要な視点だと思う。)、人間の生命や魂の世界を描いていく(弟は、機械に自分の魂だけが付いている存在だし)。しかも荒川さんの漫画はユーモアにあふれている。
ところで。
上野動物園に行ってきた。ごく近所。大人600円は映画館などと比べると安い。
僕らは物事を「概念」や「イメージ」で、伝聞などで知った気になっている。
ただ、実は実体験を伴って理解していることなんてごくわずか。
動物を生で見ることは、映画でどんなリアルなNatureドラマを作っても、絶対に行きつけないリアルさがある。
生で動く動物は衝撃的で刺激的で面白い。ゾウ、キリン、カバ、ヘビ、コウモリ、フクロウ・・・・
もちろん。動物園で見る動物と野生の動物とでは全く違う存在である事を理解するのも大事だし、本当の「野生」を僕らは到底理解でき得ない時代に生きていることを自覚する謙虚さも大事だと思うけれど。
自分が動物をよく理解できていないのと同じように、自分は錬金術も農業もよく理解できていない。だから、あらゆる手段を通じて知りたいと思う。
■
作者の荒川さんは農家の出の方。
この「銀の匙 Silver Spoon」という漫画は農業高校の学生たちの日常を描いていた。(やっと本題)
自分が知らなかった畜産や酪農の現場の話が色々出ていてとても勉強になる。
僕らが持つ不安や誤解や恐れのようなものは、「無知」から来ていることが多い。だから、「知る」ことは何よりもとにかく大事だと思う。
動物を食べることは、生命を殺めること、そして食すること。
動物をあやめることに抵抗があり、自分がベジタリアンになろうとも、植物を殺めていることには変わりない。自分がベリタリアンでも人類全体としては誰かが動物をあやめて食べていることには変わりはない。
「いただきます」という言葉には深いものを感じるし、自分の心臓の前で右手と左手をあわせて「いただきます」とする外的な所作にも何かとてつもなく深い歴史を感じる。
人類が文化として無意識に形作ってきた、肉体の動きとして保存している目に見える外的な「型」は、目に見えない内的な心のプロセスと何かしら必ず連動している。
身体を儀式的に動かすことは、肉体の安定だけではなく、心や魂の安定にもつながっている。
不安の反対は安心。安心は心の安定。心の安らぎ。
仏教学者の中村元さんは、仏教での「涅槃(ニルヴァーナ)」を「安らぎ」と訳された。
仏教では「空(くう)」の理解(精密に哲学化したのは龍樹)と「涅槃(ニルヴァーナ)」への理解を大切にした。
そして、人間だけでなくその他の生物の植物や動物の仏性さえも説いた。無生物への仏性も説いた。
「山川草木悉皆成仏」(これは天台本覚思想から?やはり密教の影響は大きいか?)
■
あまり概念や言葉に振り回されると本質を見失うけれど、荒川さんの漫画からは、農業を通しての深い生命哲学や愛のようなものを感じます。
こうして、生命や愛や魂のような概念を、深く織りこませながら描くスタイルはさすがだと思いました。
農業高校生の日常を見て思ったのは、「一生懸命」である、ひたむきである、ということ。
ひたむきに一生懸命になるとき、そこでは人間の自我(エゴ)は外れている、と思う。
エゴは肥大すると大変なことになるけれど、司令塔として大事な面はある。
人間である以上、「エゴ(自我)」というものと適切に付き合っていかないといけない。
エゴ(EGO)は、笑う時、深い睡眠の時、生まれた直後、死を覚悟した時、そして「一生懸命」になっているとき、人間から外れている。そのとき、人間は誰もが心の奥底に持つ仏性や神性と直結している(アートマン=innner most、最内奥の「私」である「魂」)。
だから、僕らは上手い下手を超えて、成熟や未熟さを超えて、誰かが何かに懸命に必死に一途になっている姿に心を奪われるのだと思う。
■
いろいろ脱線したのだけど(脳内に浮かぶことを活字にするとなぜこうも膨大になる!)、荒川さんの「銀の匙 Silver Spoon」という漫画は最高に面白い。愛あり、友情あり、笑いあり・・・。やっぱり漫画はいいなぁ。名作。荒川さん天才!
農業って本当に大事だ。衣食住。今は、農業や食の根本に関して疎かなっている。
医療に携わる者として、日々の食事は自分の肉体を作るものだから大切にしたい。
人間は魂や心が大切だ。それも声高に言わないと忘れやすいものだけど、その魂や精神を動かす「肉体」もすごく大事だ。body, mind, spiitの3つは適度なバランスをとらないといけない。そのバランスを医療はアシストしていかないといけない。
笑いながらも、色々深いところで考えさせられる漫画でした。
若い世代も、漫画から色んな種を無意識にいただいているんだろうなぁ。自分にとって手塚治虫先生がそうですし。(^^
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<内容紹介>
2012マンガ大賞 大賞受賞
日本中が大注目!荒川弘最新作!!
超ヒット作『鋼の錬金術師』の荒川弘の最新作!
大自然に囲まれた大蝦夷農業高校に入学した八軒勇吾。
授業が始まるなり子牛を追いかけて迷子、実習ではニワトリが肛門から生まれると知って驚愕…などなど、都会育ちには想定外の事態が多すぎて戸惑いの青春真っ最中。
仲間や家畜たちに支えられたりコケにされたりしながらも日々奮闘する、酪農青春グラフィティ!!
【編集担当からのおすすめ情報】
あの『鋼の錬金術師』の荒川弘先生がサンデーで週刊連載に初挑戦!その超話題作が早くもコミックスになりました!
濃厚すぎる農業高校を舞台に、主人公の八軒勇吾が悪戦苦闘しながらも、命の大切さを学んでいく…汗と涙と土にまみれた青春物語です。
前作のファンタジーとは、違った面白さが詰まっています。
こんな時代だからこそ、絶対に読んでほしい。そんな作品です!
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荒川さんには、「鋼の錬金術師」を読んでから、はまっていた。
当時「ユリイカ2010年12月号 特集=荒川弘 『鋼の錬金術師』完結記念特集」も買ってしまったほど。
(→しかも、この特集では「イムリ」や「ペット」で有名な三宅乱丈さんとの対談もあったのが貴重。お二人とも女性なんですよね。)
→むかし、三宅乱丈「PET」「イムリ」(2010-03-22)という感想も書いた。
■
ちなみに「鋼の錬金術師」は錬金術をテーマにしたファンタジー漫画。深い生命哲学を感じた漫画だった。
死んだ母親を生き返らせようとして、錬金術の兄弟はタブーの人体錬成(死者の復活)を行うが失敗する。タブーを犯した代償に、兄は左脚、弟は体全てを失う。兄は右腕を代価として、弟の魂を鎧に定着させることだけには何とか成功する。兄は失った右腕と左脚に機械の鎧(オートメイル)を装着し、仮の手足を手に入れた。
正式な国家錬金術師となった兄エドワードは元の体を取り戻すため、賢者の石を探す旅に出る。
というお話。
錬金術は、科学の歴史を考える上ではずして通れない領域。オカルティックな領域かと思うと、実はそうではない。
むしろ、「金」を作るという過程で化学・科学的な知識は進歩したし、副次的に西洋の心理学の素因を作ることにもなった。
ユングは、著書の「心理学と錬金術」において、錬金術師が元素を組み合わせて「金」を作ろうとする外的な過程は、心理的には自分の魂を練り高めていく内的なプロセスと照応していると考えていた。
意識と無意識の合一であり調和。それは中国で言う錬丹術の西洋版のようなもの。
ユング
「錬金術の作業の本質は、第一質料(混沌)を、 能動的原理(魂)と受動的原理(身体)とに分かち、しかるのちに両者が 化学の結婚(合一)によって人格化され、再統一されるところにある。」
錬丹術は不老不死の仙人になれる霊薬(仙丹)をつくること。生命力を高めて道(タオ)と合一することを目的とした。「気功」の源流の一つでもある。
錬丹術は内丹と外丹からなる。外丹は錬金術のように不老不死の薬を作るという目的がある。
「内丹」は、気の養生術を胎児の成長過程の再現に結び付けて作り出された身体技法。
内丹は、外丹での丹の錬成を、自己の心身の内的な修煉のプロセス(聖胎)として行うもの。「性」(こころ)と「命」(からだ)の身心一体を修める「性命双修」が必要となる。
このあたりはとても面白い事情が絡んでいるけれど、これは色々と調べているところでもある。
医療の歴史を知るときに、「不老不死問題」は避けて通れない。(個人的に面白いと思っているのは、なぜ人は死にたくないと思うのか、その心理学的な事情。ほかにも、過去の人々は不老不死を具体的にどういう風に実現しようとしたのか、その歴史的経緯・・・など)
錬金術のように現代でオカルトと誤解されている深いテーマを題材としつつ(「錬金術」は、「科学」の営みを別の観点から見直すために重要な視点だと思う。)、人間の生命や魂の世界を描いていく(弟は、機械に自分の魂だけが付いている存在だし)。しかも荒川さんの漫画はユーモアにあふれている。
ところで。
上野動物園に行ってきた。ごく近所。大人600円は映画館などと比べると安い。
僕らは物事を「概念」や「イメージ」で、伝聞などで知った気になっている。
ただ、実は実体験を伴って理解していることなんてごくわずか。
動物を生で見ることは、映画でどんなリアルなNatureドラマを作っても、絶対に行きつけないリアルさがある。
生で動く動物は衝撃的で刺激的で面白い。ゾウ、キリン、カバ、ヘビ、コウモリ、フクロウ・・・・
もちろん。動物園で見る動物と野生の動物とでは全く違う存在である事を理解するのも大事だし、本当の「野生」を僕らは到底理解でき得ない時代に生きていることを自覚する謙虚さも大事だと思うけれど。
自分が動物をよく理解できていないのと同じように、自分は錬金術も農業もよく理解できていない。だから、あらゆる手段を通じて知りたいと思う。
■
作者の荒川さんは農家の出の方。
この「銀の匙 Silver Spoon」という漫画は農業高校の学生たちの日常を描いていた。(やっと本題)
自分が知らなかった畜産や酪農の現場の話が色々出ていてとても勉強になる。
僕らが持つ不安や誤解や恐れのようなものは、「無知」から来ていることが多い。だから、「知る」ことは何よりもとにかく大事だと思う。
動物を食べることは、生命を殺めること、そして食すること。
動物をあやめることに抵抗があり、自分がベジタリアンになろうとも、植物を殺めていることには変わりない。自分がベリタリアンでも人類全体としては誰かが動物をあやめて食べていることには変わりはない。
「いただきます」という言葉には深いものを感じるし、自分の心臓の前で右手と左手をあわせて「いただきます」とする外的な所作にも何かとてつもなく深い歴史を感じる。
人類が文化として無意識に形作ってきた、肉体の動きとして保存している目に見える外的な「型」は、目に見えない内的な心のプロセスと何かしら必ず連動している。
身体を儀式的に動かすことは、肉体の安定だけではなく、心や魂の安定にもつながっている。
不安の反対は安心。安心は心の安定。心の安らぎ。
仏教学者の中村元さんは、仏教での「涅槃(ニルヴァーナ)」を「安らぎ」と訳された。
仏教では「空(くう)」の理解(精密に哲学化したのは龍樹)と「涅槃(ニルヴァーナ)」への理解を大切にした。
そして、人間だけでなくその他の生物の植物や動物の仏性さえも説いた。無生物への仏性も説いた。
「山川草木悉皆成仏」(これは天台本覚思想から?やはり密教の影響は大きいか?)
■
あまり概念や言葉に振り回されると本質を見失うけれど、荒川さんの漫画からは、農業を通しての深い生命哲学や愛のようなものを感じます。
こうして、生命や愛や魂のような概念を、深く織りこませながら描くスタイルはさすがだと思いました。
農業高校生の日常を見て思ったのは、「一生懸命」である、ひたむきである、ということ。
ひたむきに一生懸命になるとき、そこでは人間の自我(エゴ)は外れている、と思う。
エゴは肥大すると大変なことになるけれど、司令塔として大事な面はある。
人間である以上、「エゴ(自我)」というものと適切に付き合っていかないといけない。
エゴ(EGO)は、笑う時、深い睡眠の時、生まれた直後、死を覚悟した時、そして「一生懸命」になっているとき、人間から外れている。そのとき、人間は誰もが心の奥底に持つ仏性や神性と直結している(アートマン=innner most、最内奥の「私」である「魂」)。
だから、僕らは上手い下手を超えて、成熟や未熟さを超えて、誰かが何かに懸命に必死に一途になっている姿に心を奪われるのだと思う。
■
いろいろ脱線したのだけど(脳内に浮かぶことを活字にするとなぜこうも膨大になる!)、荒川さんの「銀の匙 Silver Spoon」という漫画は最高に面白い。愛あり、友情あり、笑いあり・・・。やっぱり漫画はいいなぁ。名作。荒川さん天才!
農業って本当に大事だ。衣食住。今は、農業や食の根本に関して疎かなっている。
医療に携わる者として、日々の食事は自分の肉体を作るものだから大切にしたい。
人間は魂や心が大切だ。それも声高に言わないと忘れやすいものだけど、その魂や精神を動かす「肉体」もすごく大事だ。body, mind, spiitの3つは適度なバランスをとらないといけない。そのバランスを医療はアシストしていかないといけない。
笑いながらも、色々深いところで考えさせられる漫画でした。
若い世代も、漫画から色んな種を無意識にいただいているんだろうなぁ。自分にとって手塚治虫先生がそうですし。(^^
荒川さんは、エッセイ漫画「百姓貴族」もおススメです!
http://www.amazon.co.jp/dp/4403670857
情報有難うございます。
自分も、今回の記事を書くにあたってアマゾンを見ていて、「百姓貴族」もかなり面白そうだなぁと思ってました。読みたい!
「鋼の錬金術師」が大ヒットしたのに、その方向性を180度変えてこういう漫画を新しく書いちゃうところに、荒川さんの懐の広さを感じます。(この大ヒット漫画も『月刊少年ガンガン』(スクウェア・エニックス)というマニアックな雑誌の連載だったんですよね)
いつものことながら、漫画はあなどれません・・・
ただ、あまりにいろんな新作が出ているので、全然追いつけていませんが・・(^^;