日常

キッチン

2008-08-18 02:39:05 | 
また、よしもとばなな作品に舞い戻ります。

キッチン
読みました。最高でした。

主人公の桜井みかげと、田辺雄一。
彼のお母さんでもありお父さんでもある、えり子さん。
基本的にこの3人のドラマです。

この作品は、常に死の匂いがつきまとっています。
ただ、生きていることは常に死と隣り合わせなのは事実。

わしも医療者なのでその非情や無情は常に感じますが、生と死が一セットなのは紛れもない事実です。 
そういう死を隣り合わせに話は進んでいきますが、
みかげが雄一をタクシーで追って、探しに、求めにいくシーンは心臓をバクバクさせながら読んでしまいました。手に汗握りました。  
カツ丼と共に夜空を見ているシーンは、かなり鮮明にイメージが沸いてくるほど、イメージを喚起するパワーが文章から溢れてます。
心臓がバクバクしました。


キッチンの文庫の中に、「ムーンライト・シャドウ」っていう短編も入ってて、これもイイ!!
この話もキッチンに似て、常に死が近接したものとして書かれています。

さつき、さつきの彼氏である等、その弟の柊、その彼女のゆみこ。そしてさつきの前に突如現れるうらら。この5人で話は進みます。

最後の数行、さつきが等に語りかける数行は体から力が抜けていくような感じで、なぜだか救わたような気になります。前に進めた。という感じ?


別れは出会いの始まりであり、出会いは別れの始まり。
始まりは終わりと一体であるし、終わりは始まりと一体である。

この世って、そういうことなんでしょうね。だからこそ切ないんでしょう。



文庫版のあと書きにも最高に感じ入るものがありました。
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私の実感していた

「感受性の強さからくる苦悩と孤独には
ほとんど耐えがたいくらいきつい側面がある。


それでも生きてさえいれば人生はよどみなくすすんでいき、
きっとそれはさほど悪いことではないに違いない。

もしも感じやすくても、それをうまく生かして
おもしろおかしく生きていくのは不可能ではない。
そのためには甘えをなくし、傲慢さを自覚して、
冷静さを身につけた方がいい。
多少の工夫で人は自分の思うようにできるに違いない」
という信念を、
日々苦しく切ない思いをしていることで
いつしか乾燥してしまって、外部からのうるおいを求めている、
そんな心を持つ人に届けたい。

それだけが私のしたいことだった。
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これは名文ですね。こういう哲学が根底に流れているのは、
文章を読んでいて文章の端々から感じるものに近かったです。



5 コメント

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キッチン (Shin.K)
2008-08-18 13:11:24
「キッチン」を読んだのは高校生のときだったから、実はさらっと読んでわかったようなわかっていないような気になってたような。
もう一回読もうと思って本棚を見たら、どうやら実家。
もう一冊買って読んでみよう。多分、感じ方は全く違うんだろうな。
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するめいか的 (マキ)
2008-08-18 13:50:45
噛めば噛むほど、なのよね。キッチンは私にとって読めば読むほど深みと広がりを増していくというか。私はこれを読んで、こういう感受性豊か過ぎるがゆえにときには大きく傷ついたり前に進めなくなったりするれども、それでも自分の感情に素直でいる女でありたいと毎回思います。
それから、ムーンライトシャドウは実は英語訳のついたきれいな絵のついた絵本が出版されていて、それをアメリカ人の友人に送ったことがあるけれども、自分では、やはり日本語の、吉本ばなな特有の表現力というかひらがなの美しさを英訳では表し切れないだろうなあ・・・なんて思いました。

>栗原君。わたしもまた、若かりし頃に読んだままの「TSUGUMI」とか読み返してみようかなあと思いましたよ。
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キッチンってタイトルがまたいいんだなぁ。 (いなば)
2008-08-18 20:30:20
>Shin.K
昔読むのと今読むのって、全然違うんでしょうね。学生のときの感情ってすごく好きだし、すごく青い恥ずかしいこともよくしていたと思うけれど、こうやってある程度社会に揉まれ、税金を納めたり生活をしたり、その合間に恋をしたり失恋したり・・。環境や状況が違えば、おそらく違い一文に惹かれるんでしょうな。そうやって、時を越えて読める作品って、それ即ち名作ですね。古典みたいなものでせう。色んな種が詰まっているのかなぁ。

僕も、なるべくブックオフで買わずに新品で買うようにしてます。なんか、ずっと本棚に保存して置きそうなものは必ず新品で買うようにしてるんです。それが作者への礼儀かなぁなんて思って。漫画とかも。 新品のぴかぴかの本だと、作者に対して、ありがとう!って気持ちになるのが不思議なとこです。そうやって僕が買ったささやかな本の印税を使って、もっと色んな体験をしてもらって、もっと素晴らしい作品を世に生んでほしいなぁと思いながら、好きな作者の本って買うようにしとるんです。



>マキ
そうね。貴女はそんな素直で素敵な女性だと、心から僕も思いますよ。環境が変わったり周りがかわっても、その自分の大切なコアのようなものを保ち続けるのって簡単なようで難しいよね。俺も、譲れないものは絶対譲らないどこうと思ってます。
卑近な話だと、たとえば、風俗に行ったりとか、俺の中でそういうのだけは絶対に行きたくないと思ってるのよね。よく行こうって誘われるけど、そこは頑なに行ってないし。なんか女性の性の商品化って感じだし、なんか不潔で品がないし。  女子高生のブルセラとか、援交とか、そういうのと似たもんで、自分の品やプライドや人間性を自分で安売りしてるように思えてならん。
話が脱線しましたが、そういう各個人が持つ絶対譲れないもの、自分が色々嫌な思いをしようとも、絶対譲らない方がいいと思います。マッキーもその意思の強さが魅力だしね。

ムーンライトシャドウ、なんか装丁が素晴らしいみたいね。見てみたいけどなぁ。
確かに英語だと、あのひらがな感覚の美しさはつたわらんだろうね。でも、そのハンディキャップがあっても、世界で翻訳され愛されるってものすごいことですな。

また今度みんなで集まって色々話しましょうね。

かなり盛り上がってる気がするけど、一部コアなファンの稲葉・Shin.K、マキ、れいこ、この4人でもりあがってるみたいね笑
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Unknown (れいこ)
2008-08-19 19:15:31
にわかに盛り上がったのに触発されて、最近けっこうばなな作品読み返してしまいました。
スタンダードにあんな感性溢れる文章書くって、めちゃめちゃ疲れそうだし、自分の心もきつそう、ってただただ感心します。

自分の心をゆっくりなぞるみたいに書く、あのまわりくどい文章も、全て表現のために計算されていると思います。あれがこちらの心に粘着?してくるのです。

こりゃ、ばななオフ会ですか?笑
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オフ会はやりましょう。ただペチャクチャ話すだけね。 (INABA)
2008-08-20 02:06:42
>れいこ
確かにあんだけ繊細な感情の移り変わりや切ない感情を書いていると、読んでる方以上に作者は疲労してるだろうね。そんだけ念をこめて書いてるのかもしれん。

【自分の心をゆっくりなぞるみたいに書く】っていう表現、貴女流石ね。流石うまいこと言うわー。そうそう、なんか目をつぶりながら、なぞりながら、その触感を実況しながら書いているような不思議な書き方だよね。そこがまた僕らの五感に響くんでしょう。五感全部使って書いてるって、まさにああいうことな気がする。

ばななオフ会、決まりだね。飲み物はバナナジュースで決まりね。最近ばななダイエット流行ってるし(うちの姉は実行中)。昔、山田邦子がやってた「MOGITATE!バナナ大使」って番組があって、有名人のゴシップをイニシャルトークをすることで一世風靡した番組ですが(れいこちゃん知らんでしょ。Generation Gap!)、この番組でいつもゲストと山田邦子がバナナジュース飲んでて、これ見るたびにバナナジュースが飲みたかったのをよく覚えています。

ばななオフ会が開かれるまでに、入手できるばなな本、できる限り読んどきまっせー。日時とかは、またみなさんにはメールででも連絡しますね。最終目標は、ばななさんとこの4人で対談ということにしましょうね!
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