なぜと問わなくてすむように 2021(その11)
《言葉の連立方程式》(2)
《A》自分が「なぜそう感じるのか」を知るためには、《a》自分が「何を感じているか」を知ることが必要だ。
たとえば、「自分が水を飲みたいと感じるのは、なぜか?」=自分の身体が「渇き」を感じているから。
「誰かに会いたいと感じるのはなぜか?」=心が「さびしい」と感じているから。
「大声で叫びたいと感じるのはなぜか?」=腹の底で「怒り」を感じているから。
自分との「やり取り」は言葉が、主ではない。
「そう感じる」理由を知るには、自分の身体の声に耳を傾けること、自分の内臓や神経系の感覚(主体感覚)に気づくことが、先にある。
□
子どもも同じ。
《B》子どもが「なぜ自分がそう感じるのか」を知るには、《b》子ども自身が「何を感じているか」を知る必要がある。
ただし子どもの場合、言葉で語るのは大人より難しい。
「自分が水を飲みたいと感じるのは、なぜか?」=「のみたいから」
「誰かに会いたいと感じるのはなぜか?」=「あいたいから」
「大声で叫びたいと感じるのはなぜか?」=「さけびたいから」
言葉にすれば、こんなふうになる。
子どもも、自分の身体の声を聴き、内臓や神経系の感覚を感じているが、言葉にするのは難しい。それでも子どもが、私と同じ主体感覚を持っているのは明らかだ。(言葉を持たない子も同じ。)
□
さて、本題はここから。
相手に「なぜ」と問う時、答えるのは「相手」だと思われている。
たとえば「なぜ、助けてと言えないのか?」と相手に問えば、答えるのは「相手」。
しかも、「言葉」で答えるのが当たり前。
だけどそれは、《B》の部分だけ。
「なぜ、助けてと言えないのか?」=「言えないから」
初めから、そうとしか答えようがない「問い」だ。
そこには《b》「子どもが何を感じているのか」を「言葉以外」で知ろうとする姿勢がない。相手の身体の声を聴くという姿勢がない。相手の主体感覚を大事にする姿勢がない。
《B》「子どもがなぜそうするのか」だけを問い、答えられないと「援助希求能力がない」「スキルを教えてあげる」という話を持ち出す。だから、気持ち悪いのだ。
(つづく)
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