「あほリズム」
(870)
かつて、欧米列強による植民地支配から遁れるために近代化を急い
だわが国は、エネルギー資源に乏しいことから海外からの輸入に頼ら
ざるを得なかったが、わが国のアジア大陸への進出を快く思わない欧
米列強が石油の輸出を禁止したことから経済が滞り、ついには日米戦
争へと突き進んで行った。こうして化石燃料が乏しいことがわが国の
経済発展にとって大きな障害であったが、ところが、いまや化石燃料
がもたらす温室効果ガスによって地球温暖化による気候変動が問題化
して、世界は温室効果ガスの排出量を減らそうと呼び掛けている。こ
れは化石燃料をこれまで輸入に依存するしかなかったわが国の経済に
とってまたとないチャンスに違いないはずだが、どうもそうではない
らしい。わが国の基幹産業である化石燃料を用いる自動車会社のトッ
プは、いわゆる「カーボン・ニュートラル」政策に対して異議を呈し
ている。たしかに、すでにある産業そのものを転換させるには大きな
リスクが生じるだろうが、輸入に依存しなければならなかった化石燃
料の転換は技術大国ニッポンにとって決して「カイゼン」できない問
題ではないはずだ。何よりも問題は、既存の生産システムに依存する
あまりすでに限界に達した近代社会の転換を見誤ることではないだろ
うか。そもそも化石燃料への依存から脱け出すことはわが国の宿年の
悲願だったはずではないか。つまり、われわれはこう言うべきである、
「遂に環境立国を掲げるわが国の時代が来た!」
と。そうでなければわれわれは既得権益のぬるま湯から脱け出せない
茹でガエルではないか。