【 2016年11月22日 】 MOVIX京都
小説の方は、9月の初旬に2日で読んでしまっていた。
本を読んで、「そういう棋士がいたなあ」とかすかな記憶を手繰り寄せる。その少し前の時期(平成5年)に、森安秀光九段が息子に刺殺される事件があって、そちらの方が強烈でよく覚えている。
「打倒!谷川」、「羽生に追いつき名人位をとる」を生涯唯一の目標に、病気と闘いながら順位戦を戦い続けたが、後半は体調がすぐれず、やむなく《不戦敗》をすることが多くなったが、年譜を見ると、平成5年の順位戦B級1組で、森安と村山が一緒の組にいて(森安九段はそれ以前、A級から陥落してB級2組まで落ちたがその後、B級1組まで戻ってきていたところ、上記の事件が起こった)、生涯1度だけの《不戦勝》をしていた。
そういう時代の棋士だったが、本を読んで知ったような《リアルタイムの記憶》は持ち合わせていなかった。
師匠である「森信雄」の名前はよく聞いていたが、本を読んで「こんな世話焼きの人もいるんだ」と改めて関心したり、棋士にもいろいろなタイプがあり、麻雀をやったりする人もいると知って(村山聖も)その組み合わせに違和感を感じたりもしたし、村山自身の生活も大変なものだったと実感した。
【 主演の松山ケンイチ 】
映画のいいところは、小説では感じ取れない雰囲気を伝えてくれることだ。どこまでリアルかは分からないが、「将棋会館」の内部の様子や、奨励会員たちが対局している風景が垣間見られて、臨場感があった。あんな狭いところに《すし詰め》になって対局しているなんて、驚きだった。
《勝ち負け》が全ての世界で、年齢制限で退会せざるを得ない者。地元では《神童》ともて囃されたのに、自分より年下の者が、抜いていく。その中で、「絶対王者」がいて、限られた人生の中で時間と争いながら、壮絶な対局を繰り広げる。
実名の棋士が出てきて、その個性が狭い空間の中でぶつかり合い、助け合い、生きていく。
リリー・フランキーが良い味を出している。
逆に、映画で残念だったのは、対局シーンは映っても、盤面の映像が殆ど無かったことだ。勝負の世界の映画だから、セリフで「さすが、村山君だ!」と言わせるだけでなく、【具体的にどんな手を打ったのか】示してほしかった。
もちろん【将棋を知らない人にも楽しめる】ということは重要な要素だとは思うが、名曲・名演奏の流れない『音楽映画』、名画の登場しない『画家の伝記映画』と同じように、何か腑抜けの感じがする。幸い、小説には、その辺の解説もあって、主な棋譜と年譜も乗っていたから、想像で若干はその興奮を味わえたが、全部とは言わないまでも、一つくらい《素人をうならせる》この一手くらい紹介してほしかった。
【 第10期「竜王戦」1組
名人 羽生 対 村山 戦 投了図 】
【 実物の 村山聖 と 羽生善治 】
【 文庫本『聖の青春』 】
『聖の青春』-公式サイト