【 2011年10月8日 】 京都シネマ
自閉症の子供を持つ父親の親子愛の物語である。
監督は、『北京バイオリン』でチェン・カイコーと共同脚本を書いた女性監督で、撮影があのクリストファー・ドイル(杜可風)と知って、それに惹かれて見に行ったと言っていい。
監督のシュエ・シャオルーの方は本作が初監督作品というから、よく知らないが、クリストファー・ドイルの方は、不思議な魅力のある人だ。
撮影監督としての仕事よりも、夫婦でもう30回以上は見ている映画『ラブソング』での英会話学校の講師『ジェレミー先生』のほうで、《初対面》してからずっと親近感を感じている。後に『花様年華』、『HERO』や『ブエノス・アイレス』で撮影を担当していると知って、びっくりしたものだった。
経歴を見ると、更に驚く。シドニーに生まれて、いろいろな職を経験し、『杜可風』という中国名まで持っている。人柄といい(ジェレミー先生役を通しての人柄しか知らないが)実に興味深い人だ。
ちなみに音楽は久石譲が担当し、父親役は(私にはほとんど縁がなく未知の俳優だが)有名なアクション・スターというジェット・リーがあたっている。
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水族館で働く父子が海で互いにロープで結びつけ自殺を図るが、もともと泳ぎの上手な二人は死にきれないし、息子の方は事態を飲み込めていない。
父親は肝臓癌で余命わずかと宣告されている。自分の存命中に、息子に独力で生きていくすべを教えないといけないとあせるが、なかなかうまくいかない。
それでも、水族館の上司も周囲の仲間も、父子を見る眼は温かい。その辺が国情の違いというものだろうか。
とはいえ、障害を持った人たちが住みにくい事情は中国でも変わりない。
監督自身が、自閉症支援施設で14年間、ボランティア活動で得た視点が暖かく感じられる映画である。
『海洋天堂』-オフィシャルサイト