【 2020年6月23日 】
今日の新聞を見ていたら、蓮佛徹さんの訃報に接する。
蓮佛さんの絵に出会ったのはだいぶ以前だ。建築家らしいしっかりした構図と、描かれている対象も地元京都の古い面影をの越した民家が多く、いっぺんにファンになった。早速画集も購入したが、ここ10年以上、書棚に置いたままで画集を開くことはなかった。
今日改めて見入る。上賀茂が多く描かれていることを以前はあまり意識していなかった。改めて自分の生んでいる街のことを意識した。
下の絵は、昨秋サイクリングで行った「美山・かやぶきの里」の近くだ。絵の風景を見ると、まだ観光化されていないようだ。
【 美山の里・北 】
【 舞鶴・吉原入江 】
【 綾部の家 】
蓮佛亨の描く絵の対象は、当然地元の京都が多いが(出身は鳥取県)、広島にも民家を描きに行ったが、その対象があまりなかったという。なぜかというと、原爆で古い民家が全て焼き払われてしまったからだという。
しかし京都でも、1990年代から《地上げ屋》などを介在した街壊しが始まっていた。下の絵は1980年の後半から1990年代初めの頃の様子と思われるが、今では大分様子が変わっていると思われる。
【 中京の屋並み 】
【 室町の屋並み 】
下賀茂神社の敷地にマンションが立てられ、仁和寺の門前にホテルが立てられようとしている現実に、蓮佛さんはどんなに心を痛めつけられたことだろうか。
【 中京・漆器屋 】 【 三条通りの家 】
【 元日銀京都支店 】 【 一之船入町筋 】
雲ケ畑には以前、自転車でよく通った。運動不足解消のための週1のトレーニングに、往復1時間はちょうどよい距離で、シャワーを浴びての出勤は気持ちよかった。同じくらいの所要時間の「京見峠往復」よりきつくなかったから、楽をしたいときは「「雲ケ畑行き」を選んだものだった。折り返し地点の「出会橋」の手前の坂を登り切ったカーブで、この家の正面玄関と対峙するから、「ああ、着いた!」と安心する。そんな目印の家だった。最近でも以前ほどではないがたまに天気のいい日に出かける。
【 雲ケ畑の家 】 (2020/06/23 撮影)
今日も確認のため、快晴の空のもと久しぶりに自転車で出かけ、撮影してきた。
【 社家町の土塀と明神川 】 (同上)
この辺りは、「歴史的風土保存地区」に指定され、近所の人に聞くと、自分の家なのに勝手に改修できないと話されていた。最近まで立っていた電柱も地中に埋められ、代わりにモダンな街灯がついた。
【 社家町・土塀のある家 】
上の絵の、「明神川」とある柱と、正面の門、その奥に描かれている建物は今は見あたらない。この絵に付けられた説明文に、『この家の前にある診療所を設計した。』とあるから、現在の「萬栖庵」あたりだと思うのだが、その向かいにあるのが普段お世話になっている「上賀茂診療所」である。もう何十年来の付き合いであり、だいぶ以前に建て替えられたのは覚えているが、それが蓮佛さんの設計によるものとは、その文章を改めて読んだ今日まで全く知らなかった。
ご冥福をお祈りします。
このブログの絵は、所蔵の本書よりスキャンさせていただきました。本にはここに紹介した絵を含め
50点ほどの-どれも魅力的な-絵が納められています。
『京の風情』 1992年 かもがわ出版刊
[ ISBN4-87699-038-7 C0039 ]