【2013年9月24日】
【第4日目】
5:00起床-5:30朝食-6:30水晶小屋出発-7:10水晶岳頂上着-7:35同出発
-8:15水晶小屋-9:15岩苔乗越着-10:25祖父岳着-10:40同出発-
-12:45雲ノ平山荘着-13:40同出発-14:30アラスカ庭園-14:50同出発
-17:40薬師沢小屋着-20:00就寝
【 第4日目の行程図 】
【 水晶小屋から「穂高連峰」の夜明け 】
昨日、『水晶岳』を往復できなかったので、今朝はまず『水晶岳」をピストンしなければいけない。早く起きなければ後の行程に遅れが出てしまう。5時に起床するが、リュックを置いて《空身》で小屋を出発してのは、結局6:30分になってしまった。
外に出ると、だいぶガスがかかっていたが上空を見れば青空が見える。朝靄みたいなもので、そのうち晴れるだろうと楽観する。
【ガスに煙る『水晶岳』への稜線】
大きな荷物は小屋に置いて、雨具と水筒だけを入れた簡易デイバック1つの空身で、6時30分に水晶小屋を出発する。時折ガスがかかって視界が遮られるが、長くは続かない。『水晶岳』までは直下の岩場を除いて、ほぼ水平な道が続く。そのうちガスもすっかり晴れてくる。
今年は本当に好天に恵まれる。
【『水晶岳』頂上直下のはしご】
鷲羽岳への登りも含めて、両手をつく岩場らしい岩場はまったく無かったが、初めてのはしごのついた岩場に出る。しかし、全然危険なことはない。
小屋をでてから40分ほどで、ガスもすっきり晴れた『水晶岳』頂上に午前7時10分に到着。何と幸運なことだろう。今回はいずれの頂に立っても、いずれも360度の大展望が見られた。ここ『水晶岳」でもだ。
じっくり大展望を楽しむ。
【『水晶岳』頂上からの『笠ヶ岳』】
【『水晶岳』頂上にて-後方に『黒部五郎岳』】
【『水晶岳』頂上からの『薬師岳』】
【『水晶岳』から読売新道『赤牛岳』方面を望む】
ぐるっと一周、360度の展望を観た後、遙か下方に目を移せば、今日これから行く『雲ノ平』が箱庭のように見える。中央に『雲ノ平小屋』の赤い屋根がかすかに見て取れる。
【『水晶岳』頂上からの圧倒的な眺め-『雲ノ平』を俯瞰する(中央に『雲ノ平小屋』)】
「昼にはあそこまで行くのか」と遠い道のりを目でたどる。
さあ、戻らねば夕方までに『太郎平小屋」はおろか『薬師沢小屋』までも行けなくなる。急ぎ足で小屋まで戻るが、途中ふたたびガスがかかってくる。『水晶小屋』に別れを告げ、再び重いザックを背負い次の目的地に向かう。『ワリモ岳北分岐』までほぼ水平な道だが、水晶岳方面には雲がかかり頂上は見えない。
時間が30分前後ずれていたら、あの大展望には巡り会えなかっただろうと思うと、改めて運が良かったと思う。
【ワリモ北分岐】
9:00、『ワリモ北分岐』に到着。ここから昨日来た『ワリモ岳』と『鷲羽岳』方面の道と分かれ、ガレた道を『祖父岳』の方に向かう。15分ほどで『祖父岳』への鞍部にあたる『岩苔分岐』に到着する。
ここは台地上の『雲ノ平』の回りの水脈を北と南に分ける分水嶺で、南方向は『鷲羽岳』の裾を通り、『黒部源流』となって『雲ノ平』の南側を『三俣蓮華岳』、『黒部五郎岳』、『北の俣岳』の裾を削りながら、『薬師沢』をへて黒部本流となって上廊下・下廊下に至っている。このルートをたどると、昨日泊まった『三俣山荘』に通じる。
【岩苔から南方向(三俣蓮華岳)を見る】
一方、北の方向は『岩苔小谷』から『高天原』をへて、『立石』で黒部本流と合流していて、遙か遠方には『薬師岳』が見える。このルートは17年前に訪れた『高天原山荘』に通じる。『高天原温泉』に寄っていきたい気持ちはやまやまだが、時間が許さない。
【岩苔乗越から北方向(薬師岳)を見る】
先ほどガスがかかっていた『水晶岳』は晴れてその姿を見せている。
【岩苔乗越から水晶岳を望む】
『雲ノ平』に行くには『祖父岳』の頂上を回らなければならない。南側から見ると『祖父岳』は、黒部源流側が山裾に行くほど深く切れ落ちていて近づけないが、北側と頂上付近はのっぺりとゆるやかな傾斜を持った変わった形の山だ。
【祖父岳の登りから樅沢岳】
そのゆるやかな登り道を行くと、山容に似合わないゴツゴツとした大きな岩の風景が目に入ってくる。
【祖父岳の登りの岩石帯】
【『祖父岳』から見える山-配置図】
さらに進むと、ケルンの多数並んだ広々とした山頂の一角に出る。
10:25、祖父岳山頂到着。どこが本当の頂なのか分からない、だだっ広い広場のような山頂だ。ここも大展望だ。【百名山】が競演するような《外輪山》の中央に据えられた、特等席の《テラス》から眺める景色はこれまた最高だ。
【祖父岳から水晶岳】
【祖父岳からワリモ・鷲羽岳】
【祖父岳頂上標識と三俣蓮華岳】
【祖父岳頂上から薬師・五色平方面】
【「祖父岳の下りはじめ」より日本庭園・黒部五郎岳方面】
ここでも時間のたつのを忘れそうになる。散々カメラのシャッターをきり、ビデオを撮影し、同じことの繰り返しになることを悟り、出発の準備をする。10:40、祖父岳を出発する。
【祖父岳下りから雲ノ平と薬師岳】
『岩苔乗越』からの登りと違って、ここはもう『雲ノ平』の庭の中の風景で、下りの道は『楽園』の中に降りていく感じである。眼下には『日本庭園』やら『スイス庭園』、『ギリシャ庭園』と名付けられた自然が作った庭園が広がる。その遙か向こうに『雲ノ平小屋』が小さく認められる。
【『三俣山荘』への分岐点】
『三俣山荘』への分岐点を過ぎ、斜面を下りきったところで、あとは庭園の中に付けられた水平な木道を30分も歩けば小屋に到着すると思われた。ところが上から見ていると、先行していたYさんが、小屋とは違う北の方向に歩みを進め、低木の生い茂った中に分け入っていく。大声で呼ぶが、声の届く距離ではない。慌てて後を追うが、Yさんはどんどん迷うことなく進んでいく。
上の方からでもはっきり見える桟道をどうしていかないのか不思議に思ったが、分かれ道に来て理由が分かった。
立て看板があり、直線の近道は「自然がかなり荒れているので保護のため通行禁止で迂回路を回って欲しい」旨の告示がしてあった。それで高台を大回りする道を強いられることになってしまった。30分ほど遠回りをした後、本来の道との合流点に来ると、先ほどと同じような立札がそこにもあった。
振り返れば何のことはない、先ほど迂回を強いられた場所はすぐ向こうに見える。
【『雲ノ平』の桟道から『水晶岳』を振り返る】
もうここから『雲ノ平山荘』は目の前だ。ようやく昼飯にありつける。
【『雲ノ平山荘』はもう目の前】
【独特な雰囲気の『雲ノ平山荘』】
12時45分、『雲ノ平山荘』到着。朝食が5時過ぎだから、遅い時間の昼食タイムである。3日間とも昼食時には缶ビールを飲んでいるが、今回は「あとは『薬師沢小屋』まで下るだけという安心感と周りの景観の心地良さに浮かされて、「焼きそば」にワインを注文してしまった。
これがまた、すごく美味しかったこと。
【『雲ノ平山荘』内部】
前回の『雲ノ平』来訪時もここに立ち寄った記憶があるが、建て替えたのか、こんなきれいだったか覚えていない。音楽なんかも流れていて良い気分になってしまった。
もう、今日の『太郎平』行きはとっくにあきらめていた。たっぷり1時間近く、休息してしまっただろうか。13時40分、前の広場で、最近には珍しい大人数の、女性を交えたワンゲル仲間らしき大学生が、はしゃいでいる間を縫って、出発する。
歩き始めて1時間ほど、『アラスカ庭園』と書かれた案内板の前あたりで小休止しようとザックを降ろしかけると、後方から人影が。見ると女性の2人組で、身軽な格好をしている。食料も雨合羽もなさそうなので気になって、「どこから来て、どこまで行くつもりなのか」とたずねると。『雲ノ平山荘』の従業員で、散歩に来たという。
私らを、昨日見たという。『三俣山荘』泊まったかどうか尋ねられたので、「泊まってない。」と答えると、首をかしげ、わたしの着ているTシャツ(北穂小屋で以前買った、小屋オリジナルデザインのもの)を指し、「うちの一緒に働いている人と同じモン着ていたから覚えていた。」という。
「泊まらなかったけど、昼飯は食べた。」というと、うなずく。(そういえば、あのランタンと一緒に撮った彼女か!?)
偶然は重なるものだ。
それにしても、昨日『三俣山荘』にいた人が、どうしてまた『雲ノ平山荘』に居るか聞くと、向こうがヒマになってこちらに回されたということだ。
山小屋で働く人たちは、朝早くから起きて、いつもせわしく働いているので、いままで立ち入ってゆっくり話を聞く時間もなかったから、山小屋での生活をちょっと聞いてみたくなった。
「山小屋での話、聞かせて。」から始まって、立て続けに質問攻めにするの、屈託無くあっけらかんと答えるあたり、やはり現代っ子か。
「いつまで山に入っているのか?明日の予定とか。」
明日は休みなので、『水晶岳』にでも登るつもりだという。下山は10月下旬の予定で、7月に山には入って一度も山を下りないという。その間「風呂になんか入ら無くても大丈夫なのか」と問うと入っているという。登山者である自分たちは、山には入れば、特別な地域ー例えば『立山の地獄谷』あたりとか、『高天原』や『白馬の槍温泉』のように温泉のわいているところ-を除いて、普通の山小屋では顔を洗う水はおろか、【浴槽に浸かって風呂に入る】などというのは、夢のまた夢の話だから、そんなことは無いものと思っていたが、聞けば従業員専用の風呂があるそうだ。それもそうだろう、遊牧民でもない現代人が-しかも女子が-三ヶ月観、風呂なしで仕事をしつづけるなんて、あり得ない。
「そうなんだ。」
それで今、どこまで足を伸ばすつもりか尋ねると、そろそろという。この辺りが『アラスカ庭園』と知ると、もうここまで来て戻ろうと思っていたという。
他に何をしゃべっただろうか。別れ際、「この山行のこと、ブログに書いておくから、写真1枚撮らせて」というと、にっこり笑ってポーズ!
【『アラスカ庭園』までやって来た山小屋従業員の女子大生】
「ブログ、見たらコメント入れておいてね」と言うと、「10月末までは見られない。」という。山にはパソコンも無いし、携帯・スマホも電波も通じないから当然だ。
「山おりたら、見てみます。」「じゃーっ。」と声をかけ、別れ、我々は薬師沢に向かい、彼女らは『雲ノ平山荘』に戻っていった。
木道が終わり、下りがだんだん急傾斜になり、足下が悪くなると、急に疲れが回ってきた。膝も笑いだし全く踏ん張りがきかない。
1時間半で行けるところを、2時間半近くかかり、Yさんに遅れること30分、5時半過ぎ、谷間はすっかり暗くなってしまったころ、ようやく『薬師沢小屋』に到着する。
Yさんの到着時刻も夕食時間に間に合わなく、二人ともこの日は持ち合わせの食料とビール、酎ハイで胃袋を満たす。たった4組のガランとした小屋で最後の山の夜を過ごす。
20時就寝。
【『薬師沢小屋』の内部】
(10月下旬までに【間に合うように書く】と約束したこのブログが今日(2月2日)になってしまった。写真のお二人さん、『ごめんなさい』!)
2013年秋の山行・第4日目-水晶小屋から水晶岳を往復し、祖父岳を通過して雲の平を横切り、薬師小屋まで