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この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『鉄くず拾いの物語』

2014-02-02 22:16:47 | 最近見た映画


           【2014年2月1日】    京都シネマ

 この映画は、ボスニア・ヘルツェゴビナで実際にあった【真実の話】の再現という。登場する人物も、医者を除いて、実際にそうした境遇にあった人々というから、映画には違いないが、いわゆる《映画》と言うより、『ルポルタージュ』だ。

 イタリア映画の『自転車泥棒』やフランス映画の『どん底』を思い起こす。

 鉄くず拾いをしながら、貧しい《その日暮らし》をしている家族に悲劇が襲う。3人目を身ごもった妻が、流産して医者にかからねばならない事態になるのだが、保険にも入っていないし、お金が無く医者にかかれない。
 妻が、痛さを訴えるため病院を訪問するが、お金がないのを理由に手術をしてくれない。1度はしかたなく帰るが、再び訪れた病院で、980マルクのお金を払えないなら手術できないと、またも拒否される。


                                               


 980マルクは約500ユーロ、日本円で7万円ほどだ。

 義理の妹の保険証を不正に貸してもらって、別の病院で手術をするが、また薬代がかかり、そのお金も準備できない。そのうち、電気も止められる。しかたなく、動かなくなった、おんぼろの自家用車を自ら解体して鉄くずにして売ったが、代金はたった100マルク未満。(7000円くらいか)

 先行きどうにもならない、どん底の世界。光も希望も展望もない。



 この物語が、ボスニア・ヘルツェゴビナで一般的な《よくある出来事》であったら、戦争の傷跡を引きずった《貧しい国》かと思ったが、そうでもないらしい。《特殊な事情》で起きた【事件】的なものと思われたのは、映画を見たあとのことだった。

 『ロマ』(『ジプシー』とどこが同じで、何が違うのかよくわからないが)がヨーロッパで、差別を受けている実情は、あまりよく知らない。

 この映画の『カタログ』を見たら、監督であるダニス・グダノビッチが、この《事件》のことを知り、怒りに燃えて映画の制作を決意したと書いてある。そして、映画の中の家族が『ロマ』だから《民族差別》を起こされて不幸な事件が起こったとは思いたくない、と語っているが、裏を返せば、そういった差別があるように思われる。だから、一般の貧困な市民を対象に常時起こっている事象でなく、《差別の一環としての事件》であったようだ。


                   


 そういえば、【鉄くず拾い】という職業も、『ロマ』が自分らの移動手段である車を扱うことから、『ロマ』の人の職業に「車の解体業」が多いと、どこかに書いてあった。
 (それは、次に見た映画『ある精肉店のはなし』にも関連するが、《屠畜》や《食肉加工業》、《皮の鞣し業》が『被差別民』の職業として結びつけられていた日本の歴史と通じるものがある。


 不正使用された《保険証》の問題がその後どうなるのか、当面の電気代は支払ったものの、今後の家族の生活はどうなるのか。ー先の見えない、不安な気持ちだけを残して映画は終わってしまう。


 よその国の問題-ボスニア・ヘルツェゴビナだけでの問題ではない。アメリカでは、医療費が払えなければ医者にかかれないし、お金によってできる手術にもランクがあることは常態化している。

 日本でも、程度の差こそあっても、そう変わらなくなるような事態が《合法性》を装って進行している。
 


   



  『鉄くず拾いの物語』-公式サイト

  『少数民族-ロマ』のことが解説されているサイト





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