【 2024年2月26日 追記 】
前半は、現政権の政治ーパーティー券に始まる裏金問題などの金権腐敗の話で、基地問題や戦争法にまつわる軍拡問題には触れられず時間が経過したが、「これから話す岸田の大軍拡問題は腐敗問題に比べれば小さな問題でしかないように思える」のことばで、ようやく本題に入る。
いきなり「日中戦争はあるかの問いに、私は十中八九、有ると思う」と白井さんは問題を突き付ける。なぜかと言えば、アメリカがやりたがっていると。
『この失われた30年間と言われるこの期間、腐敗しきって統治能力を失った政府が何をやって来たかというと、やってはいけないことだけをやってきた。』
『ひどい政治ー腐敗政治の中に置かれて、人々の不満はたまる一方で、その不満を解消する方法は戦争しかない』
ロシア・ウクライナ戦争もそうだし、過去の歴史を見ても為政者が人民の目をそらし、はけ口を求めたのはナショナリズムを煽り、国外に敵を作り、戦争を仕掛けることだった。ヒトラーもそうだし戦前の日本の軍部もそうだった。
しかし冷静に考えれば、日本が中国と戦争できるわけがない。最大の貿易相手国であるし、実質10%程度の自給率しかなく生活必需品のおおくを輸入に頼っている日本が戦争を始めたら、大量の餓死者が出ることははっきりしている。
一方、ウクライナ侵略戦争を通じてのアメリカの立ち位置はどうなのか。この戦争は、大局的・軍事的に見れば、ロシアの勝利に終わらざるを得ない。NATOが出れば世界大戦になるし、ある意味、ゼレンスキーは《勝つことも、負けることもできない戦争を戦っている》と白井さんは言う。その通りだと思う。
しかし、アメリカとしてはこの戦争が直ぐに終わってしまっては困る、とも。戦争が継続すれば武器は売れるし、ロシアの国力はそれなりに衰える。しかし落ち目のアメリカには独自に戦力を供給する力はもはやない。アフガンでもイラクでの多大な犠牲を払ってきた。だから、自国の兵を送る代わりにウクライナ人を犠牲にして長く戦争を継続させる。つまり代理戦争である。
同じことが、台湾や日中問題でもいえる。
【台湾の有事】は【日本の有事】といって、中国が今にも台湾に乗り込んで戦争を始めるかもしれないという危機感を盛んにあおり、岸田政権は国会にも諮らないで軍事費を5年間で総額43兆円の予算を計上することを決め、GDPの1%以内とする従来の枠を取り払い、2%まで拡大すること決め、アメリカ製の武器を大量に買い付けることまで、勝手にアメリカのバイデンと約束をしてきた。
周辺危機を勝手にあおり、大軍拡を進めようとする意図は何なのか、白井さんの熱弁が続く。
先月、読んだ『新しい戦前』というタイトルの本には内田樹さんとの対談で、台湾有事や米中対立の中での日本と米軍との従属関係=日米安保の矛盾というかアメリカの思惑が語られている。それによれば、【大軍拡】も【敵基地攻撃能力の取得】もアメリカの世界戦略の下で進められているという現実が理解できる。
中国が仮に台湾に侵攻してもアメリカは直接には中国に手を出さない。その代わりに日本が前面に立って戦えという。中国が日本の米軍基地を攻撃すれば、米軍が反撃しない訳にはいかない。だからそれを避けるため、米軍は基地をグァムまで撤退させるとも言う。その代わりに自衛隊に米軍並みの装備を整えてもらい、西南諸島が前線基地になって日本本土が戦場になり、米兵の代わりに日本の兵隊が最前線で闘い、多くの民間人も巻き添えになって死んでもらうということだ。
もともと日本が中国と争う必要などほとんどない。戦争を起こしてまで解決しなければならない問題なんて、中国側にもないはずだ。北朝鮮にしても日本に攻め込もうなんて思ってもいないはずだし、土台無理だという。
なら、どうして【敵基地攻撃能力】が必要なのか。先制攻撃か迎撃かの判断などできやしないから先に相手基地を叩くという。全部の基地をもれなく叩くことは不可能だから、相手からも当然、反撃があってミサイルが飛んでくる。しかしミサイルで迎撃するなんて不可能に近いし、ミサイルが発射されたら収拾がつかなくなり、悲惨な結果だけが待っているのは、この間の世界各地の紛争や戦争が証明している。*註
できるはずのない戦争を、統治能力を失った政権は、始めようとしている。
私たちは、それを何とかしなければいけないが、【覇権維持とドル防衛】で必死のアメリカの肩棒を担ぎ、それにかしずく事で【自らの保身を図ること】しか頭にない政府要人のもとで、あらゆる矛盾が露呈している。少子化で労働力が不足し、その質も下がり、生活のあらゆる場で歪みがみが生じているが、こうした現実を認めることから始めないと将来は開けないと、ちょっと悲観的に結んで講演は終った。
*註:この辺の事情については、以下の『11・3 憲法集会での猿田さんの講演』に詳しい
1例を挙げれば、【敵基地攻撃能力】の保持を位置付けた2023年に制定された「安保3文書」には、
一言も「民間人の犠牲」については触れられていない、と。パトリオットやらを購入し、高い迎撃能力を誇
っても高々7割だ。残りのミサイルは目標の施設や民間施設に着弾することになるが、どうなるかはウクラ
イナ戦争を見れば明らかだと。
『新しい戦前-この国の”今を”読み解く』(内田樹・白井聡の対談)のマイブログへ
【『生かそう憲法・守ろう9条11・3京都集会』での猿田佐世さんの講演 】のマイブログへジャンプ
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前半は、現政権の政治ーパーティー券に始まる裏金問題などの金権腐敗の話で、基地問題や戦争法にまつわる軍拡問題には触れられず時間が経過したが、「これから話す岸田の大軍拡問題は腐敗問題に比べれば小さな問題でしかないように思える」のことばで、ようやく本題に入る。
いきなり「日中戦争はあるかの問いに、私は十中八九、有ると思う」と白井さんは問題を突き付ける。なぜかと言えば、アメリカがやりたがっていると。
『この失われた30年間と言われるこの期間、腐敗しきって統治能力を失った政府が何をやって来たかというと、やってはいけないことだけをやってきた。』
『ひどい政治ー腐敗政治の中に置かれて、人々の不満はたまる一方で、その不満を解消する方法は戦争しかない』
ロシア・ウクライナ戦争もそうだし、過去の歴史を見ても為政者が人民の目をそらし、はけ口を求めたのはナショナリズムを煽り、国外に敵を作り、戦争を仕掛けることだった。ヒトラーもそうだし戦前の日本の軍部もそうだった。
しかし冷静に考えれば、日本が中国と戦争できるわけがない。最大の貿易相手国であるし、実質10%程度の自給率しかなく生活必需品のおおくを輸入に頼っている日本が戦争を始めたら、大量の餓死者が出ることははっきりしている。
一方、ウクライナ侵略戦争を通じてのアメリカの立ち位置はどうなのか。この戦争は、大局的・軍事的に見れば、ロシアの勝利に終わらざるを得ない。NATOが出れば世界大戦になるし、ある意味、ゼレンスキーは《勝つことも、負けることもできない戦争を戦っている》と白井さんは言う。その通りだと思う。
しかし、アメリカとしてはこの戦争が直ぐに終わってしまっては困る、とも。戦争が継続すれば武器は売れるし、ロシアの国力はそれなりに衰える。しかし落ち目のアメリカには独自に戦力を供給する力はもはやない。アフガンでもイラクでの多大な犠牲を払ってきた。だから、自国の兵を送る代わりにウクライナ人を犠牲にして長く戦争を継続させる。つまり代理戦争である。
同じことが、台湾や日中問題でもいえる。
【台湾の有事】は【日本の有事】といって、中国が今にも台湾に乗り込んで戦争を始めるかもしれないという危機感を盛んにあおり、岸田政権は国会にも諮らないで軍事費を5年間で総額43兆円の予算を計上することを決め、GDPの1%以内とする従来の枠を取り払い、2%まで拡大すること決め、アメリカ製の武器を大量に買い付けることまで、勝手にアメリカのバイデンと約束をしてきた。
周辺危機を勝手にあおり、大軍拡を進めようとする意図は何なのか、白井さんの熱弁が続く。
先月、読んだ『新しい戦前』というタイトルの本には内田樹さんとの対談で、台湾有事や米中対立の中での日本と米軍との従属関係=日米安保の矛盾というかアメリカの思惑が語られている。それによれば、【大軍拡】も【敵基地攻撃能力の取得】もアメリカの世界戦略の下で進められているという現実が理解できる。
中国が仮に台湾に侵攻してもアメリカは直接には中国に手を出さない。その代わりに日本が前面に立って戦えという。中国が日本の米軍基地を攻撃すれば、米軍が反撃しない訳にはいかない。だからそれを避けるため、米軍は基地をグァムまで撤退させるとも言う。その代わりに自衛隊に米軍並みの装備を整えてもらい、西南諸島が前線基地になって日本本土が戦場になり、米兵の代わりに日本の兵隊が最前線で闘い、多くの民間人も巻き添えになって死んでもらうということだ。
もともと日本が中国と争う必要などほとんどない。戦争を起こしてまで解決しなければならない問題なんて、中国側にもないはずだ。北朝鮮にしても日本に攻め込もうなんて思ってもいないはずだし、土台無理だという。
なら、どうして【敵基地攻撃能力】が必要なのか。先制攻撃か迎撃かの判断などできやしないから先に相手基地を叩くという。全部の基地をもれなく叩くことは不可能だから、相手からも当然、反撃があってミサイルが飛んでくる。しかしミサイルで迎撃するなんて不可能に近いし、ミサイルが発射されたら収拾がつかなくなり、悲惨な結果だけが待っているのは、この間の世界各地の紛争や戦争が証明している。*註
できるはずのない戦争を、統治能力を失った政権は、始めようとしている。
私たちは、それを何とかしなければいけないが、【覇権維持とドル防衛】で必死のアメリカの肩棒を担ぎ、それにかしずく事で【自らの保身を図ること】しか頭にない政府要人のもとで、あらゆる矛盾が露呈している。少子化で労働力が不足し、その質も下がり、生活のあらゆる場で歪みがみが生じているが、こうした現実を認めることから始めないと将来は開けないと、ちょっと悲観的に結んで講演は終った。
*註:この辺の事情については、以下の『11・3 憲法集会での猿田さんの講演』に詳しい
1例を挙げれば、【敵基地攻撃能力】の保持を位置付けた2023年に制定された「安保3文書」には、
一言も「民間人の犠牲」については触れられていない、と。パトリオットやらを購入し、高い迎撃能力を誇
っても高々7割だ。残りのミサイルは目標の施設や民間施設に着弾することになるが、どうなるかはウクラ
イナ戦争を見れば明らかだと。
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